投稿日:2025年7月15日

ロジカルな物事の組み立て方上手に伝えるための4原則聴き上手への3ステップを演習を通じて徹底的に学ぶ

ロジカルな物事の組み立て方とは何か

ビジネスパーソンのみならず、製造業の現場でも「ロジカルシンキング(論理的思考)」の重要性はますます高まっています。

特に調達購買、生産管理、品質管理のような分野では、現場の課題やクレーム、工程改善、サプライヤーやバイヤーとのやり取りなど、多くの場面で自分の考えを筋道立てて説明する力が求められます。

昭和時代の現場文化では、「見て覚えろ」「気合でどうにかしろ」という属人的なやり方が根付いていましたが、今やそれだけでは仕事になりません。

ロジカルな物事の組み立て方をマスターすることが、伝える力を強化し、納得を生み、ミスやトラブルを減らす近道なのです。

なぜ製造業にロジカルシンキングが必要なのか

組み立て作業や調達交渉、品質評価など、日々の現場では多様な判断や説明が求められます。
例えばバイヤーは「なぜこの価格でなければいけないのか」「仕様変更リクエストの根拠は何か」など具体的な説明が欠かせません。

また、現場改善を進める際も「なぜこの方法なのか」「どんな効果、リスクがあるのか」など、論理的に説明する力が問われます。

単なる主張だけでは相手を動かせません。
説得力のある根拠や背景、メリットデメリットまで一貫して筋道を立てて語ることで、現場のムダやコミュニケーションロスを減らし、成果を最大化することができるのです。

上手に伝えるための4原則を押さえよう

物事をロジカルに「伝える」ためには、次の4つの基本原則を意識することが大切です。

1. 結論から話す

まずは結論を最初に伝えましょう。
ビジネスのシーンでは、「何が言いたいのか分からない話し方」「背景ばかり長い説明」は大きなストレスになります。
特に製造現場で日々忙しい人ほど、端的な結論を先に聞きたいと感じています。

「結論→理由→具体例→再度結論」というPREP法を意識すると、伝え方の精度が格段に上がります。
例えば「今週の品質トラブル再発防止対策案について、ご提案します。最大のポイントは標準作業の手順徹底です。背景として…」というように、まず中心点を明確にしましょう。

2. 主語と述語を意識する

あいまいな話し方では、誰が何をするのか、結局何が問題なのかが不明瞭になります。
製造業の現場では、担当、責任範囲、現象、期待値が曖昧だと、ミスやクレームにつながります。

「誰が」「どんな行動を」「いつまでに」「どの程度」行うのか、必ず文章の主語・述語を明示する癖をつけましょう。

3. 具体例・数値を活用する

「たぶん」「かなり」「多分」といった曖昧な表現ではなく、実際の事例や数字を用いることで説得力が増します。
生産ラインの改善提案なら、「歩留まりを2%向上」「クレーム発生率を毎月10件から3件に削減」など、具体的なアウトカムを提示できるよう意識しましょう。

4. シンプルに要点に絞る

「要するにこうだ!」「一番伝えたいのはこれだ!」という核を意識しましょう。
背景や小話を入れすぎると、現場メンバーやサプライヤーとのコミュニケーションも冗長になります。
伝えるべきことを3点以内に絞り、一目で伝わる構成を心がけることがポイントです。

聴き上手になる3ステップとは

ロジカルに話せば伝わる…と思いがちですが、現場レベルでの信頼関係を築くためには「聴き上手」になることが欠かせません。
実は、バイヤーや現場管理者が優れたファシリテーターになるためにも、この“聴く力”は不可欠です。

下記の3ステップで、聴く力を体系的に養いましょう。

ステップ1:相手の意図を正しく受け止める

製造業の現場では、暗黙知や現場ノウハウ、経験則で語られることが多く、「相手が本当に言いたいこと」を正確にくみ取る能力が不可欠です。
一度そのままの言葉で受け止め、「相手が何を大事にしているか」にフォーカスして耳を傾けましょう。

「ポイントは何ですか?」と優しく尋ねたり、「○○というご意見であっていますか?」と、繰り返し確認することで、すれ違いを防ぐことができます。

ステップ2:相手の立場や背景に共感する

いきなり否定から入る、もしくは自社の事情だけを押し付けるコミュニケーションでは、サプライヤーも現場も動きません。
「なるほど、こういう背景やご苦労があったんですね」と一言添えることで、相手の心のガードが下がり、より深い対話が生まれます。

特に品質トラブルやコスト交渉など、難しいテーマほど「相手の背後にある事情」を理解しようとする姿勢が信頼形成に直結します。

ステップ3:主観と事実を切り分けて質問する

「こう感じたのですが、事実はどうでしょうか?」「何が本当にボトルネックなのでしょうか?」と、一歩踏み込んで質問してみましょう。
思い込みや先入観で「きっとこうだろう」と決め付けるのではなく、「事実確認→仮説→再質問」を繰り返すことで、問題本質にたどり着く精度が高まります。

このプロセスこそが、バイヤーとしてサプライヤーの信頼を得たり、現場改善リーダーとして今まで見落としていた新たな改善案を発見する大きなきっかけとなります。

演習を通じて学ぶ:現場での活用イメージ

ここまで述べた「ロジカルな伝え方の4原則」と「聴き上手3ステップ」を、実際の現場でどのように生かせるかを、具体的なワークを交えてご紹介します。

演習1:ロジカルスピーキングのワーク

1.日頃遭遇する課題(例:材料納期遅れへの対応、品質異常発生時の応急対策)を一つ選ぶ
2.「結論→理由→具体例→再度結論」に沿って1分間スピーチを行う
3.他者から「主語と述語が明確だったか」「具体例が分かりやすかったか」フィードバックをもらう

実際に自分の話し方を録音したり、第三者目線でアドバイスをもらうことで、話し方のクセや“慢性的な業界用語に頼りすぎて伝わらない”という落とし穴に気付くことができます。

演習2:聴き上手トレーニング

1.現場リーダー、作業員、サプライヤーとのヒアリングを設定
2.相手が話したことを一度「要するに○○ということですね」と要約し返す
3.「その背景や理由は?」「何が一番大変でしたか?」と共感をはさみながら深掘りする

バイヤーもサプライヤーも、この“要約&共感&深掘り”コミュニケーションが、難しい条件交渉や最新設備導入時の意思疎通で大きな力を発揮します。

アナログな現場文化を変えるカギ

「何十年もこのやり方できた」「現場の空気を読めば分かる」といった昭和型の暗黙知主義が根強い製造業。
しかし、人もモノも多様化し、現場のダイバーシティやグローバル化が急速に進む中、直観や経験頼みだけでは競争に勝ち残れません。

今までは“不文律”や“空気感”で動いてきた現場だからこそ、「論理的な伝え方」と「深い傾聴力」というデジタル的スキルが新しい信頼構築・イノベーションの起点となります。

まとめ:バイヤー・サプライヤー関係にも必須のスキル

製造業のバイヤーを目指す方も、サプライヤーの立場から“バイヤーが何を考えているか”を知りたい方も、この「ロジカルな伝え方・聴き方」は必ず武器になります。

1.ロジカルな組み立て方の4原則(結論から話す、主語と述語を明確に、具体例・数値を使う、シンプルに要点を絞る)
2.聴き上手になる3ステップ(意図をくみ取り、共感し、主観と事実を切り分けて質問)

これを日々の現場・交渉・社内報告・サプライヤー会議で意識的に使い続けることで、業務効率が上がり、コミュニケーションミスも格段に減ります。

アナログから抜け出せない現場こそ、一つひとつ新しいコミュニケーション文化を根付かせていく絶好のチャンスです。

明日からでもできる“伝える力”と“聴く力”の実践、ぜひ現場で試してみてください。

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