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マトリクスコンバータ回路設計と制御技術の応用事例

目次
マトリクスコンバータとは何か?基礎から理解する
マトリクスコンバータは、交流電圧をそのまま別の交流電圧に直接変換するパワーエレクトロニクス回路の一種です。
従来のダイオード整流器やインバータが交流を一度直流に変換してから再度交流にする「二段変換方式」であるのに対し、マトリクスコンバータは直流への変換を介さず、入力交流を出力交流へ一発で変換できる「直接変換方式」となっています。
その構造はシンプルでありながら高機能です。
三相交流の各線の組み合わせごとに電力用スイッチ(IGBTやMOSFETなど)を配置し、合計9つのスイッチをマトリクス(格子状)に接続します。
このマトリクス構造によって、任意の入力相を任意の出力相へ瞬時に接続することが可能になります。
製造現場では、特にモータドライブ用途でこのマトリクスコンバータが注目されています。
従来回路に比べて、力率の向上、装置の小型化、メンテナンス性の向上が可能だからです。
マトリクスコンバータ設計の実際
設計で押さえるべき基本要素
マトリクスコンバータ設計では以下のポイントが重要になります。
・スイッチング素子の選定
・駆動回路の設計
・制御アルゴリズムの最適化
・保護回路の強化
・冷却や絶縁などの信頼性対策
昭和のアナログ制御が根強い現場でも、現状のインバータ設計経験や回路保守ノウハウが応用できます。
例として、圧延設備や搬送ライン、攪拌機など大型モータを用いる現場では、従来のサイリスタインバータからの置換え提案も有効です。
また、長時間運転・現場保守性を考慮したスペア部品の標準化や、ユーザーによる現地部品交換に配慮したモジュール化設計も近年増加しています。
アナログ業界ならではの課題と変革
昭和時代から続く工場はコストや信頼性優先でアナログ回路が好まれる傾向にあります。
しかし、マトリクスコンバータは構造上、ソフトウェア制御と高速スイッチングが不可欠となるため、デジタル技術と組み合わせることで真価を発揮します。
下記の変革が必要とされています。
・オシロスコープによる波形確認からデジタル監視装置への移行
・現場熟練者だけでなく、若手オペレーターによる操作性向上設計
・予知保全指向のIoT連携
・高度なノイズ抑制技術(EMC対応)
これにより、工場全体の生産効率化とトラブル時のダウンタイム最小化が実現できます。
マトリクスコンバータの制御技術最前線
PWM制御アルゴリズムの革新
マトリクスコンバータの核となるのは制御アルゴリズムです。
現在主流なのがベクトル制御や空間ベクトルPWM制御(SVPWM)であり、これらにより、従来型インバータよりも高精度なモータ速度制御やトルク制御が可能です。
さらには、ディジタル信号処理技術を導入し、回転機械の突発な負荷変動や外乱にも柔軟に追従できる設計も増えています。
・瞬時最適化制御
・ノイズ低減フィルタ設計
・出力電圧波形の最適化(高調波抑制)
などの先進技術は、現場の省エネ推進や設備延命化にも寄与します。
予防保全・状態監視への応用
マトリクスコンバータの出力波形やスイッチング素子の発熱、動作パターンをIoT機器や現場PLCと連携させることで、異常兆候の早期検出や保守スケジューリングが可能です。
ベテラン技術者の「勘と経験」に頼りがちだった故障対応も、データに基づいた論理的なアプローチに転換できます。
実際の工場導入事例と現場での効果
事例1:自動車部品加工ラインでの活用
A社では、従来Vベルト駆動+リレー電源の工作機械を自在な速度コントロールが可能な交流モータ+マトリクスコンバータ駆動に刷新しました。
その結果、
・変速時の生産ロス20%減
・消費電力15%減
・モータメンテナンス頻度の年間3回→1回
と大幅な改善を実現しています。
事例2:半導体工場のクリーン搬送装置
極めて高いクリーン度が要求される半導体工場では、ファン制御や搬送モータにおいてサージ・ノイズの少ないマトリクスコンバータが評価されています。
これにより、製品不良率の低減に成功しています。
事例3:老朽化設備の省エネ改造
1970年代設置の空調用大型モータ設備を持つB工場では、従来のスタータ機器をマトリクスコンバータに置換。
突入電流対策や運転時の電流波形平滑化が可能となり、ピーク電流値30%カットを達成しました。
現場からは「待機電力抑制が簡易に実現できた」「省エネ報告書の根拠データに説得力が増した」と高評価を得ています。
バイヤー・調達担当が求めるポイント
バイヤーや調達担当者がマトリクスコンバータを検討する際の重視点は以下の通りです。
・調達コストだけでなく、ランニングコストの低減
・設備導入後のサポート体制や保守契約の有無
・既存設備との互換性、操作教育の負担感
・海外規格(UL、CEなど)への適合性
・長期稼働時の信頼性データ
サプライヤー側は、こうした要件をヒアリングで把握し、現場の実情や担当者の不安を解消する提案が重要です。
また、現場の担当者が「導入してよかった」と実感するためには、単なる仕様スペックではなく、「故障しにくい」「生産トラブル対応が簡単」「目に見える省エネ効果」といったリアルな現場価値の明示が不可欠です。
今後の動向と業界の課題
省エネ・カーボンニュートラル要求への対応
2020年代以降、製造業全体でCO2削減やカーボンニュートラルが強く求められる中、マトリクスコンバータは「高効率ドライブ」「無駄な電力消費カット」のソリューションとして期待されています。
工場全体のエネルギーフロー最適化システムとの連携も進むでしょう。
デジタルツイン・AI制御との融合
マトリクスコンバータの動作パターンをデジタルツイン空間でシミュレーションし、AIで最適運用シナリオを導出する動きが加速しています。
従来の手動最適化に比べて、生産変動や原価変動へ柔軟な対応が可能になるのです。
昭和のアナログからの脱却をどう推進するか
いまだ多くの現場では「アナログ装置=壊れにくい・信頼できる」という根強い信仰があります。
しかし今後は、マトリクスコンバータを中心に「止まらない設備」「電気・制御・生産管理が一体となったシステム」に進化するための技術者教育や、社内意識改革が不可欠です。
ベテラン作業員とIT人材の協業、外部ベンダーとのオープンな情報共有、DX推進リーダーの設置など、ミクロとマクロの両輪で進めることが成功の鍵となります。
まとめ:実践的導入で見える未来
マトリクスコンバータ回路は、単なる新技術ではなく―
・現場設備の効率化、省エネ化
・安定稼働と品質向上
・ITやAIとの融合によるスマート工場化
の切り札となります。
アナログに慣れた現場でも、丁寧なヒアリングと実データをベースにした提案、導入後のフォローで、確実な成果を出せるポテンシャルを秘めています。
調達バイヤー、工場エンジニア、サプライヤーが三位一体で取り組むことで、日本のモノづくりの新しい地平線が拓かれるはずです。
ぜひ、貴社の現場やチームでも、ラテラルに課題を探求し、マトリクスコンバータを軸とする革新にチャレンジしてみてください。
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