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投稿日:2025年5月27日

機械設計の要素技術と製品設計への活かし方

はじめに:なぜ「要素技術」が機械設計の核心となるのか

近年の製造業は、世界規模で技術競争が激化する中、伝統的な日本独自の強みである「ものづくり精神」だけでは生き残ることが難しくなりました。

さらに、昭和から続くアナログ文化や既存のやり方を盲信する現場も多く存在します。

こうした状況を突破するには、若手・ベテランを問わず、基礎力となる“要素技術”へ立ち返り、それをいかに製品設計へ融合させるかが重要です。

本記事では、現場で培った実践的視点と、今どきの製造業が直面する課題も交えながら、「要素技術の真価」「現場での活かし方」「設計者・バイヤー双方の視点」などを構造的に整理します。

要素技術とは何か——ものづくりの基礎体力

要素技術の定義とその広がり

要素技術とは、例えば「材料力学」「機構(カム、歯車、ねじ)」や「表面処理」「精密加工」「熱処理」など、部品を形作る基本的な技術です。

これらは一見“流行遅れ”にも映ることから、デジタル化やIoTといった華やかなテーマの裏に埋もれがちです。

しかし、例えばどれほど先進的なAI生産計画システムを導入しても、現場の締結部のトラブルや材料選定ミスには対応できません。

これが「要素技術」が“ものづくりの基礎体力”と呼ばれる所以です。

昭和アナログ現場がいまだに要素技術で回る理由

実際の工場現場では、昔ながらの職人技や口伝えのノウハウが根強く残っています。

たとえば町工場でよくみられる“バカ穴”(調整用の大きめな穴)や、“ちょっとした逃げ”の設計は、形には残りませんが極めて重要です。

また、日本企業は長年培った現場知の蓄積が巨大であり、新興国メーカーとの技術力の差は部品一点の“作り込み”に凝縮されています。

この点が、コスト競争だけでは測れない「見えにくい付加価値」の根源なのです。

最重要分野ガイド:現場で生きる要素技術の実践例

材料選定:軽視できない“地味な作業”の現代的意義

多くの設計初心者は、「材料はカタログから選べば終わり」と考えがちです。

しかし、例えば自動車部品メーカーでは、わずかな材料コストダウンによって信頼性が損なわれ、リコールに直結する問題も少なくありません。

現場のプロは、コスト・供給安定性・加工性・表面処理適性まで、多角的に材料を選び抜きます。

特に調達部門やバイヤーの視点でも、「なぜこの材料が必要か」「他の候補と何が違うのか」を明確に説明できる根拠作りが、商談や価格交渉で重要になります。

締結・接合技術:設計と生産現場の意思疎通の重要性

例えばネジ一本でも、現場では「誰が何を締めるのか」「緩み防止はどうするか」「電食リスクはないか」など、細かな課題が山積しています。

製品設計段階で十分な検討がされていないと、「組立現場で穴位置がずれて入らない」「指定トルクで締まらない」などのトラブルが必ず発生します。

設計部門と生産現場(製造・品質・調達)との密なコミュニケーションが不可欠となるこの分野では、従来のアナログ的ノウハウもデジタル化し、手順やリスクを見える化することが今後のカギとなります。

熱処理・表面処理:見えないが、信頼性の要

車載部品や航空機部品など、極限の環境下で使われる製品では、熱処理や表面処理が命運を分けます。

現場目線から見ると、「図面どおりに処理したのに割れる」「錆びてしまった」などの声が絶えません。

それは材料・形状・処理条件の最適な組み合わせが非常に難しく、現場の実績データとの突合せや「なぜこの処理が必要か」という根本的な理解が設計者・バイヤー双方に求められるからです。

配合材や処理業者選定のバイヤー現場力が、製品全体の寿命や品質保証に直結しています。

設計者に必要な“バイヤー目線”——コストと品質のバランス感覚

「図面スペック確定前」の情報戦が勝負を決める

先進的なメーカーでは、設計者自身がサプライヤー工程を現場訪問し、材料や加工法を自分の目で見て追加仕様を詰めることが増えています。

なぜなら、図面確定後にサプライヤーへ委託する日本型の伝統的調達では、追加工や工程増など非効率が見えにくいままコスト増に繋がるからです。

設計の“はしり”段階から量産現場やサプライヤーと議論を重ね、「このバリ取りは図面化すべきか」「公差は不要か」など、現実的なコスト感覚とものづくり視点のイテレーションが利益率向上の原動力になります。

バイヤーに求められる“現場感覚”——机上論を超える価値創造

調達バイヤーは、単なる価格交渉要員で終わってはなりません。

サプライヤーや工場とは、例えば「今この材質は海外動向に左右されやすい」「工程簡略化できる可能性」など、深い現場情報をキャッチアップし、設計部門へ逆提案を行うことが大切です。

さらに海外調達が拡大する現代においては、「グローバル標準の品質要求」「ローカルルールのギャップ」の狭間で、現場視点・現物対応力が一層重要となっています。

これはすなわち、昭和流のアナログ現場力とIT・デジタルの良いとこ取りが、製造業の未来を左右するということです。

要素技術を「見える化」する現場発のイノベーション

DX(デジタルトランスフォーメーション)と要素技術の融合

2020年代以降、「匠の職人技」を暗黙知のままにせず、データベース化やAI活用で見える化する挑戦が、どの製造業現場でも始まりました。

例えば某自動車メーカーでは、熟練技術者の加工条件設定をIoTセンサーと連動させ、NG品発生時の過去データと比較し要素技術の最適化を行っています。

こうしたアプローチは、「アナログ・現場の知恵」をデジタル化し、若手設計者やバイヤーが“全体最適”で意思決定できる強みを生みます。

設計・調達・生産現場が“三位一体”で取り組むべき理由

各部門が“縦割り”発想にとどまると、本来発揮できるはずの要素技術がサイロ化してしまいます。

設計・購買・品質・生産が一体となり要素技術情報をオープンに、誰もが使える仕掛けを整備することで、ブラックボックスで損失を生むリスクを最小限に抑えられます。

これこそが、「属人化解消」や「ニューノーマル時代のものづくり」を支えるキーファクターといえます。

要素技術×製品設計——新時代のものづくり地平線へ

“自社だからできる技術”を見極める——模倣できない差別化

要素技術は、コモディティ化の時代にあっても、自社独自の製品競争力を支える最大の武器です。

現場での試行錯誤や失敗事例の蓄積が、他社には真似できない“製品設計力の厚み”になります。

若手・中堅問わず、現場のリアルな声に耳を傾け、バイヤーやサプライヤーと徹底的にコミュニケーションすること。

これこそが、AI時代にも負けない人間力ベースのイノベーションです。

「ものづくり現場力」こそが日本製造業再興のカギ

デジタル技術が進化しても、現場目線での現物・現場・現実(3現主義)へのこだわりは普遍的な価値です。

組織を横断した要素技術の共有、それを活かす設計・調達・現場オペレーションの地力差。

そこにこそ、「これからも世界をリードする日本ものづくり」の真の地平線が開けてくるのではないでしょうか。

まとめ——要素技術の深化と現場主義が拓く製造業の未来

要素技術は、単なる基礎知識ではなく、会社・業界全体の底力です。

現場視点でその積み上げを重ね、設計や調達・バイヤー視点とリンクさせていくこと。

それがDX時代も生き抜く具体的な製品競争力に直結します。

アナログ・デジタルの良さを活かし、“実践し続ける現場魂”こそ、まさに新しい製造業の道を切り拓くカギなのです。

読んでいただいた皆さんが、それぞれの現場で、自分ならではの「要素技術の活かし方」を考え抜き、より高い付加価値を創造していかれることを願っています。

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