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レーザ樹脂溶着技術における各種工法および最適化のポイントトラブル対策

目次
はじめに
レーザ樹脂溶着技術は、近年の製造業における重要な接合技術の一つとして急速にクローズアップされています。
自動車やエレクトロニクス、医療機器をはじめとした幅広い分野で活用されており、強度・気密性・工程自動化の観点からも大きな注目を集めています。
一方で、昭和時代から続くアナログ志向の強い工場現場では、従来工法との違いや導入・運用時のトラブル対応で戸惑う現場も多く見受けられます。
本記事では、レーザ樹脂溶着技術の基礎から各種溶着工法の解説、最適化の要点や現場発のトラブル事例とその対策、バイヤーが押さえておくべき審査・導入ポイントまで、実務に根ざした目線で幅広く掘り下げます。
レーザ樹脂溶着技術とは何か
レーザ樹脂溶着は、主に可塑性樹脂部品同士を接合する際に、レーザ光を利用して局部的に加熱・溶融させて接合する技術です。
1980年代から研究・開発が進み、2000年代以降のレーザ発振器のコストダウン・小型化、光学系の進化、樹脂材料の複合化の流れを受けて、急速に実用化が進みました。
現在では、従来のヒートプレート・超音波・振動などの物理的な接合方法から、クリーンかつ精密な制御が容易な「レーザ溶着」への転換が進み、特に自動車の電子化や小型精密部品の拡大トレンドに合致した“現場を革新するテクノロジー”といえるでしょう。
代表的なレーザ樹脂溶着工法
レーザ樹脂溶着にはいくつか種類があり、用途や形状、対象材料によって選択肢が異なります。
主要な工法は以下の通りです。
透過吸収(トランスミッション)方式
溶着したい上下二つの樹脂部品のうち、上側をレーザ「透過性」、下側を「吸収性」に設計・材料選定し、レーザ光を上部から照射して下部で吸収・発熱・溶融させる方式です。
コントロール性・外観性・気密性に優れ、現在もっとも普及が進んでいます。
電子部品カバーや自動車ランプ、センサー封止、医療デバイスなどに多用されています。
表面吸収(サーフェスアブソープション)方式
部品表面にレーザが当たった面で加熱・溶融が発生するタイプです。
同種同色樹脂の接合や、複雑な3D形状部材にも利用されますが、一方で熱歪や表面焼けなどのリスクがあるため、条件最適化が要となります。
特殊材料の組み合わせや、従来溶着困難な素材での活用が可能です。
インターレイ方式
上記二方式の進化系で、透明部材同士をレーザで溶着する際に、吸収性の中間層(インターレイフィルムなど)を挟んで発熱・溶融させる手法です。
医療・光学デバイス分野の高い光学透明性要求などに応え、現場での活用が増えつつあります。
従来工法との比較でのメリット・デメリット
現場目線では、古くから使われてきた超音波溶着・ヒートプレート溶着などとの比較検討も欠かせません。
レーザ溶着の主なメリット
・非接触加熱で異物付着・パーティクルリスクが低い
・精密コントロールが可能で微細部品でも高品位な接合が可能
・外観、気密性、寸法精度、接合強度で有利な設計ができる
・自動化・インライン化への親和性が高い
・異種材料、複雑形状などにも適応
想定されるデメリットや注意点
・設計・材料選定・工程設計の自由度は高いが、最適化ノウハウが必要
・レーザ機器自体の初期投資・維持コスト
・適合しない材料・着色条件が存在(例:染料の吸収特性依存)
・作業者の安全確保、保護対策が不可欠
・溶着部の目視検証が難しい場合がある
設計時・工法選定時の最適化ポイント
レーザによる樹脂溶着では、「材料選定」「形状・構造設計」「工程管理」「品質管理」など多層的な最適化が不可欠です。
1. 材料と着色設計
溶着させたい部材ごとに「レーザ透過性」「吸収性」の設計を行い、適合材料や着色系を慎重に選定します。
たとえば炭素系ブラックマスターで吸収性を持たせ、クリア系・ナチュラル系で透過性を狙うなど、材料メーカーや色材メーカーとの早期連携がカギとなります。
特に自動車部品などでの耐候性や意匠性要求も加味し、材料試験や評価も重要です。
2. 最適な形状・寸法設計
溶着界面の形状設計(エネルギー誘導体=リブ設計、オーバーラップ量、応力緩和設計など)がレーザ接合には大きく影響します。
伝統的な溶着リブ設計とは別に、レーザ光の照射ムラや焦点位置のブレなども考慮し、密着性・気密性・強度が最適化できる形状案を検討しましょう。
CAEによる予測・シミュレーションの活用も有効です。
3. 工程・生産性設計
現場の生産方式(バッチ/インライン/セル生産等)や、自動化設備との親和性も事前に検討しておくことで、後工程でのトラブルや歩留まり低下を未然に防げます。
特にパーツフィーダーによる自動組み付けや、ロボットハンドリング、AIによる品質検査への展開をオプションとして用意しておくと、現場導入の有力なアピール要素となります。
現場でよく起きるトラブル事例とその対策
筆者が現場で目の当たりにした“よくある”トラブル事例と、その原因・対策をご紹介します。
1. 溶着不良・強度不足
原因は、材料同士の適合性不足、接合界面の未溶融、レーザ出力が低すぎるケースがよく見られます。
材料選定・着色の再検討、レーザパラメータ調整(出力・速度・焦点調整)、治具精度の再確認、界面の設計仕様再評価などを推奨します。
2. ヒートデフォーム(熱変形・歪み)
溶融温度設定が高すぎる、または照射時間が長すぎる場合に発生します。
低出力・短時間多回照射への切り替えや、エネルギー誘導体の形状最適化などの対応が有効です。
3. 白濁・気泡・焼け
レーザの条件最適化不足や、樹脂内の水分・異物、着色剤の分散不良などが原因です。
材料の事前乾燥・保管時の湿度管理、着色剤配合の最適化、定期的な樹脂受入検査の徹底が欠かせません。
4. 装置メンテナンス不備による連続不良
レーザ出力の低下、レンズ・ミラーの汚れ、アラインメントズレが原因で微細な品質劣化が連続発生します。
定期点検と設備の保守計画の徹底、IoTによる状態監視も積極活用したい分野です。
バイヤー・サプライヤー目線での審査・導入ポイント
製品検討やプロジェクト初期でバイヤーとして「どの溶着工法がベストなのか?」と悩む方、またサプライヤー視点でその意図や期待に沿いたい方に向けて押さえるべきポイントを整理します。
バイヤーが見るべき評価ポイント
・量産品質および安定性の再現性と歩留まり
・トータルコスト(設備投資、人件費低減、原価評価)
・工程自動化やインライン化への応用性
・現場1次対応や専門員の技術力・トラブル解決力
・材料メーカー・色材メーカーとの協業体制
・IoT/AI連携や予防保全など新しい提案力
サプライヤーが押さえるべき提案のコツ
・事前の打ち合わせで溶着部の意匠・強度要求などを明文化
・レーザ溶着への材料推薦や工程フロー、トライ計画
・過去トラブル原因・対策事例の蓄積と開示
・低エネルギー・省資源・低欠損工法への改善事例
・顧客現場でのトレーニング・教育支援体制の充実
今後の業界動向と現場での未来像
少子高齢化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の波、多品種少量化が加速する製造現場では、精緻な工法選定・自律型生産ラインの普及が求められます。
今後はレーザ自体の進化(波長の多様化・出力可変・AI補正)、CAE・AIによる自動条件最適化、リモート監視による品質保証、省スペースへの進化が現場の新たな課題・機会となるでしょう。
また老舗工場でもアナログ的な現場知見と、データ駆動型の制御の“ハイブリッド現場力”が問われる時代が到来しています。
まとめ
レーザ樹脂溶着は、製造業の工程イノベーションと高い市場要求の両方に応える「現場革命」の一翼です。
現場・設計・品質・バイヤー・サプライヤーといった多角的立場からポイントを整理・最適化し、従来の慣習や思い込みに囚われず、新しいものづくりを切り拓くリテラシーが現代の製造業には求められます。
本記事が、日々変化するものづくり現場でのより良い選択と成長の一助となれば幸いです。
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