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投稿日:2025年10月6日

めっき工程で起こる密着不良のメカニズムと対処法

めっき工程における密着不良とは

めっき工程は、製造業の現場において欠かすことのできない重要なプロセスの一つです。
しかし、めっき加工を施す中でしばしば発生するトラブルが「密着不良」です。
密着不良は、表面の金属皮膜が母材にしっかりと付着せず、はがれやすくなったり、局所的な浮き上がりが発生したりする現象を指します。
外観不良や耐食性低下の原因となるため、製品品質や信頼性の観点からも極めて重大な問題です。

密着不良の課題は、決して新しいものではありません。
昭和の時代から「なぜきちんとめっきが密着しないのか」というテーマは、現場の永遠の悩みとして語り継がれてきました。
アナログなものづくり現場では、未だに勘や経験に頼った原因追求が行われているケースが多々あります。

本記事では、最新の業界動向や現場目線のノウハウも交えながら、めっき密着不良のメカニズムと、バイヤー・サプライヤー両方の視点から実践的な対処法を詳しく解説します。

密着不良が発生する主なメカニズム

① 前処理工程の不備による原因

めっき密着不良の7割近くは、「前処理」のミスから発生すると言われています。
前処理とは、めっきをほどこす前に母材表面の油分、酸化膜、錆、不純物などを除去し、清浄な状態にする工程です。

たとえば脱脂作業が不十分だった場合、表面に油膜が残り、めっき薬剤が母材に密着しません。
またサンドブラストや酸処理が甘かった場合、酸化膜(スケール)が取り切れず、めっきが“めくれ”のようにはがれます。

この前処理の十分な標準化や管理ができていない現場は今でも多く、特に多品種少量生産や人手作業の工程が残る工場ではリスクが高い傾向にあります。

② 母材自体の問題

一部の合金やコーティング材料では、金属そのものの組成や結晶状態が密着不良の根源となることもあります。
たとえばアルミニウムやステンレスは化学的に安定しており、表面酸化膜が厚いため、直接電気めっきを施そうとしても密着しません。
適切な前処理や下地めっき(ニッケル、銅など)の実施が必須ですが、「納入された母材のロットごとのバラツキ」も重大な落とし穴です。バイヤー側はこの点への注意が不可欠です。

③ めっき液や薬剤の管理不良

めっき液の成分バランスや濃度、pH、温度、撹拌状況などが不適切な場合も、密着不良の大きな原因です。
古いめっき液を使用し続けた結果、金属イオンが枯渇したり、不要な副生成物が蓄積すると、均一で堅牢なめっき層が得られなくなります。

現場では「液管理がなんとなくになっている」ケースが根強く存在し、特に昭和型の経験依存工程では注意が必要です。

④ 通電や電流設計の抜けやムラ

電気めっきの場合、正極と負極の配置、電流密度設計が重要です。
不均一な通電や、電流のムラが発生するとごく一部の面だけ過剰または不足しためっき厚となり、結晶の粗さや密着性不良を招きます。

近年は工程の自動化も進みましたが、脆弱な治具設計や手作業による冶具接続ミスなどによっても局所的な密着不良が起こり得ます。

密着不良の検出と判定方法

密着不良の早期発見は、製造不良の拡大や信頼性低下を防ぐ上で極めて重要です。
現場で一般的に行われる検査は以下の通りです。

目視およびルーペ・拡大鏡検査

めっき表面のはがれや浮き、気泡の有無、光沢変化などを目視でチェックします。
細かな部分はルーペや光学顕微鏡を併用します。

テープ試験・ピールオフ試験

めっき皮膜にテープを貼り、急激にはがして密着性を確認する方法です。
強固な密着があれば、めっき皮膜の剥離はほとんど見られません。

切断・断面観察

断面試料を作製し、顕微鏡や電子顕微鏡(SEM)で観察します。
界面に空隙や異物がないか、析出境界が明瞭かどうかを詳細に調べます。

加熱・ショック試験(熱衝撃試験)

高温・低温を繰り返しかけることで、熱膨張差による密着の強度を検証します。

また最近はAIを活用した画像解析やX線分析機器による非破壊検査も一部現場で始まっています。
ですがコスト・ノウハウ面から、多くの現場では上述したアナログ系検査が主流になっているのが実情です。

密着不良の具体的な対処法

1. 徹底した前処理の徹底

密着性確保のための最重要ポイントは、何よりも「前処理の標準化」です。
具体的には下記のような点を見直しましょう。

・使用する脱脂剤・酸洗剤の選定と定期交換
・作業者ごとの手順バラつきチェック(多能工化の盲点に注意)
・前処理工程での清浄度確認(白紙や水滴での表面張力確認など)
・作業場の温度・湿度管理(特に温度依存性に注意)
・検査と記録の定期的なフィードバック

特にアナログな工程が残る工場では、「水洗を十分に行わない」「フックの握りが甘く、浮きが出る」など、つい手順が省略されがちです。
現場の標準作業手順書(SOP)の見直し、作業者教育、定期的な管理が不可欠です。

2. めっき液管理体制の強化

めっき液の管理では、現場でリアルタイムに液成分・物理パラメータをチェックできる体制が求められます。
液の濃度、酸度(pH)、金属イオン量、温度、撹拌状況を「見える化」し、定期的に交換や補充を行うことが重要です。

「古い液を貧乏性で使い続けたら不良発生が急増した」という事例は少なくありません。
またIoTやセンサーを活用した自動監視システムの導入は、ベテラン職人のカンに依存しない品質維持に大きく寄与します。

3. 良好な冶具設計と通電管理

電気めっき工程の場合は、冶具の設計・保守が密着不良の発生率に直結します。
治具形状から通電部の腐食・変形状態、装着角度、圧接強度まで細かな点を定期的に点検し、必要に応じて改良を行ってください。

電流値・電圧値の自動記録システムを設置し、異常値が出た場合はすぐにアラームが出る運用が理想的です。

4. 母材品質の事前評価とバイヤー視点の要求項目

母材メーカーやサプライヤーの選定には、材料品質(成分・表面粗度・結晶状態など)や、ロット間のバラツキに着目することが重要です。
特にバイヤーがサプライヤーを検討する際は「めっき性評価を事前に実施しているか」「材料証明書・RoHS証明書など品質保証資料を付帯しているか」などをしっかり確認しましょう。

また、材料変更時や新規採用時には初期流動管理を徹底し、量産前のサンプルで十分な密着性評価を行うことが不可欠です。

現場・サプライヤー・バイヤー、それぞれの立場から知っておきたいポイント

現場作業者・リーダーの視点

めっき工程の現場担当者は、毎日の作業習熟・工程管理が品質向上の鍵を握ります。
一人ひとりの作業ミスが、顧客不良やリコールの大元となるリスクを理解し、「手順を守る」「前処理後は素手で絶対触らない」「環境異常時は必ず報告」などの意識徹底が求められます。

サプライヤー担当の視点

顧客(バイヤーや元請け)に対しては、「当社は密着評価を徹底しています」と強みを明確にアピールしましょう。
加えて、「密着性測定のデータ供給」「初期流動管理の書類整備」「工程FMEA・PFMEAの提示」などが、信頼獲得への近道となります。
工程能力指数(Cpk等)や改善活動の実績も見える化すると優位に立てます。

バイヤーの視点(購入・調達側)

密着不良は重大な品質トラブルに直結するため、「どこでどんな密着評価が行われているか」「サプライヤーのめっき工程の工程管理体制は堅固か」を見抜く目が必要です。
契約前後で「抜き打ち監査」「製品ごとの密着規格設定」「不良時の再発防止体制のヒアリング」なども積極的に行いましょう。

特に海外サプライヤーや低コスト案件の場合、工程管理レベルの地域差・企業差は極めて大きいため、現場監査やエンジニアによる事前技術指導も欠かせません。

まとめ:密着不良ゼロは現場と技術の両輪強化で

めっき工程における密着不良は、現場の勘や経験だけに頼っていては、根絶することはできません。
設備の自動化やIoT活用、前処理〜めっき液管理・設備点検までを一貫して標準化・可視化し、全員参加の品質改善活動が求められます。
またバイヤー・サプライヤー双方の密な協力体制と情報共有こそが、高い信頼性と競争力あるものづくりの基盤となるのです。

安易な「コスト削減による工程短縮」や「担当者任せの現場依存」は長期的に大きなリスクとなるため、ぜひ今一度、自社のめっき工程を“見直す”きっかけにしてください。

高品質な密着めっきの実現は、組織力・技術力・現場力の三位一体で初めて達成されるもの。
製造業界の持続的発展に向け、地に足の着いた改善を積み重ねていきましょう。

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