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接着のメカニズムと接着剤の特徴・選定のポイントと評価および効果的な使用方法

目次
はじめに:製造業における接着の重要性
製造業の現場において、「接着」は非常に身近でありながらも奥の深い技術です。
ボルトやリベット、溶接といった伝統的な接合方法と並び、軽量化・多様な素材の組み合わせ・工程短縮といった現代製造業のニーズに応える接着技術のポテンシャルは日々高まっています。
本記事では接着のメカニズム、各種接着剤の特徴、素材や使用環境に合わせた選定ポイント、加えて正しく安全に最大効果を引き出す使用方法について、現場目線で実践的に解説します。
接着のメカニズムとは
接着の原理
接着とは、異なる2つ以上の素材を「接着剤」を介して結合させる工程です。
このとき、接着現象の根本は大きく分けて以下の2つによります。
・物理的な密着:接着剤が素材表面の微細な凹凸に入り込み、アンカー効果をもたらす
・化学的な結合:接着剤の分子と素材表面の分子が化学反応を起こし、化学結合状態を作り出す
この2つの作用が発現することで、金属・樹脂・ガラス・木材といった多様な素材同士を強固に、かつ広範囲に結合させることができます。
昭和時代から根強く残るアナログ的思考とその壁
製造現場ではいまだに「溶接やネジ止めの方が信頼できる」「接着剤だとバラし作業が大変」といった昭和からのアナログ文化が色濃く残っています。
しかし近年の自動車、航空機、電子機器などの分野では軽量・高強度・デザイン性向上の観点から接着へのシフトが加速しています。
正しい知識と評価方法を知らないまま、イメージや経験則で接着を敬遠するのは業界の進化を妨げる要因にもなり得ます。
主要な接着剤の種類と特徴
エポキシ系接着剤
エポキシ系は構造用接着剤の代表格です。
2液混合型(主剤と硬化剤)で硬化し、金属・樹脂・セラミックスなど幅広い素材に対応します。
耐熱性・耐薬品性にも優れており、大きな負荷がかかる部材の接合にも適しています。
瞬間接着剤(シアノアクリレート系)
瞬間接着剤は、ほぼ一瞬で硬化するのが大きな特徴です。
プラスチックやゴム、金属にも使えます。
ただし衝撃・剥離には弱く、耐熱性や耐水性も限定的なので用途選定が重要です。
ウレタン系・アクリル系接着剤
ウレタン系は弾性があり、振動・熱膨張が大きい部分の接着に向いています。
アクリル系は被着体の表面状態に左右されにくく、難接着材料(PPやPEなど)にも対応するものもあります。
その他(シリコーン系、ホットメルト、テープなど)
シリコーン系は耐熱性・耐候性・耐薬品性に優れ、ガラスやセラミック、屋外用途で活躍します。
ホットメルトや接着テープは自動車・家電の現場でも作業効率化に大いに貢献しています。
接着剤選定の5大ポイント
1. 被着材の種類と表面状態
金属・樹脂・ゴム・ガラス・木材など、素材ごとに適する接着剤は異なります。
表面の清浄度や粗さ、油分の有無も接着強度に大きな影響を与えるため、最適な前処理プロセスもセットで検討することが肝心です。
2. 使用環境(温度・湿度・屋外/屋内)
高温環境での使用・寒冷地・屋外曝露など、使用環境によって耐久性や劣化の速度が変わります。
耐熱・耐水・耐候性のスペックを十分に確認しましょう。
3. 負荷のかかり方(引張、せん断、剥離、衝撃)
接着した製品の使用中、どの方向からどんな力が加わるかを明確にしましょう。
引張・せん断・剥離・衝撃負荷のいずれかによって、推奨される接着剤は変わります。
4. 工程との親和性(硬化時間、作業性、管理のしやすさ)
現場作業において硬化時間が長いとスループット低下の要因になります。
混合の手間、塗布しやすさ、保存性など現場のオペレーション全体を考慮した選定が大切です。
5. コストとサプライチェーン
大規模なラインで使う場合はコストが直接製品価格に跳ね返ります。
また安定した供給体制が確保できるかも重要な視点です。
近年は特定メーカーの原料不足による納期遅延も非常に問題化しています。
接着強度の評価と信頼性の確保
接着強度の評価方法
工場現場では、JIS(日本工業規格)に準拠した「引張せん断試験」「剥離試験」などが広く採用されています。
実際の製品の想定使用環境や負荷条件に合わせて、現場で評価サンプルを自作し、迅速にフィードバックを得る仕組み作りが好ましいです。
現場でよくある品質トラブルとその防止策
・「想定以上に剥がれやすい」
・「接着層にクラックが生じる」
・「経年劣化で強度が激減」
これらは多くが「表面処理不足」「接着剤の選定ミス」「硬化条件や塗布ムラ」などが原因です。
QC工程での抜き取り検査や、量産スタート時の監査の徹底で未然防止が可能です。
トレーサビリティとドキュメンテーションの重要性
BtoBビジネスでの信頼確保や大規模リコール時の迅速対応の観点からも、どのロットに何の接着剤をどんな工程管理で使ったのかをきちんと記録しておくことは現代の「新しい普通」になりつつあります。
効果的な接着剤の使い方~プロの現場ノウハウ~
1.「ひと手間」の表面処理が段違いの性能を生む
素材表面の汚れや油分、酸化皮膜は接着の妨げになります。
シンナーやIPA(イソプロピルアルコール)による脱脂、サンドペーパーやブラストによる粗面化など、ひと手間加えることで接着強度が二倍三倍にもなります。
2.塗布量・塗布方法の最適化
「厚塗りすれば強力」ではありません。
推奨膜厚(通常0.1〜0.2mm程度)を守り、エア抜けが生じないよう均一に塗布することが重要です。
ライン生産では自動ディスペンサーの活用でムラのない再現性が得られます。
3.硬化条件の厳守
所定の温度や湿度、時間を守ることで本来の性能が発揮されます。
特に2液混合型の場合は混合比・混合精度も性能にダイレクトに影響しますので、しっかり管理しましょう。
4.安全衛生への配慮
溶剤フリーや低臭の接着剤も増えていますが、多くの製品で有機溶剤が含まれます。
現場作業員の安全確保のため、換気やマスク・手袋の着用を徹底してください。
バイヤー/サプライヤー/エンジニア目線での接着新時代
接着剤の選定・提案は、単なる購買活動にとどまりません。
「どんなバリューチェーンで原材料が集まり、どう管理され、どのように生産ラインに投入されるのか」まで広く見渡せる視点が今、求められています。
・サプライヤーとしては、技術資料の開示・トライアル提供・初期評価サポートで伴走型提案ができるかがカギです。
・バイヤー自身も現場の声をよく聞き、真に必要なスペックと経済合理性のバランスを探る必要があります。
・エンジニアは「古い決め打ち」から脱し、サンプル評価や工程試作を経てフレキシブルに材料選定する柔らかい頭が不可欠です。
まとめ:現場の知見を共有し、製造業を「接着新時代」へ
「接着」というテーマは、単なる材料選定の話ではなく、工場全体のものづくり文化改革、サプライチェーンマネジメント、さらに現場安全や環境対応まで含む総合的な経営課題です。
この現場の知恵と経験を制約なく共有することで、業界の壁を越えた生産性向上と新たな技術革新が生まれます。
今こそ「昭和の常識」にしがみつくのではなく、ユーザー起点・現場起点で最適な材料・工程・評価体制を築いていきましょう。
この記事が、製造業の現場で日々格闘される皆さん、バイヤー職を志望する方、サプライヤーの課題解決を目指す方々への実践的なヒントとなることを願っています。
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