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MISRA C機能安全規格逸脱手続書AutomotiveSPICE ISO26262信頼性向上

目次
MISRA C、Automotive SPICE、ISO 26262とは何か?
現代製造業に求められる「信頼性」の本質
現代の自動車産業や組込み機器では、製品の「信頼性」には徹底的な担保が求められます。
信頼性とは、製品がその本来の役割を誤りなく果たし続ける能力のことです。
近年、ソフトウェアによる制御が急速に拡大する中、「ソフトウェア品質=製品の命」となってきました。
MISRA C、Automotive SPICE、ISO 26262は、現代の製造現場、とりわけ自動車業界で「信頼性」を実現するための三本柱といえる規格です。
それぞれは重なり合いながらも役割は異なります。
MISRA Cの概要
MISRA Cは、ソフトウェアのバグや事故の発生を防ぐため、C言語におけるコーディングルールを厳格に定めています。
英国を中心とした自動車関連団体MISRA(Motor Industry Software Reliability Association)が策定しました。
あいまいな構文や処理結果が分かりづらい記述を明確に制限し、人間のうっかりミスや予期しないバグの発生可能性を徹底的に排除します。
Automotive SPICEの役割
Automotive SPICE(Software Process Improvement and Capability dEtermination)は、ソフトウェア開発プロセスそのものの「成熟度」や「一貫性」を評価し、管理するための仕組みです。
「良いソフトを作るには、工程(プロセス)の成熟度が不可欠」という観点から、欧州自動車業界を中心に普及しています。
開発や納品における品質保証、顧客との信頼構築、トレーサビリティ向上など、プロセス管理の観点で信頼性を徹底します。
ISO 26262の重要性
ISO 26262は「自動車機能安全規格」と呼ばれ、車載システムに求められる安全性を体系的に定めた国際規格です。
ソフトウェア・ハードウェアの両面から設計段階~廃棄までのライフサイクル全体にわたり、システムの安全機能やリスク低減措置、開発・設計時の安全活動などを要求します。
特に「ASIL(Automotive Safety Integrity Level)」によるリスク分類が厳格に運用されます。
実践で求められる「機能安全規格逸脱手続書」とは
規格逸脱(Deviation)とは何か
現場では、規格要件を忠実に守っていく中で、どうしても「この部分だけは形式通りには実装できない」「意図的にルール逸脱せざるを得ない」というケースが少なからず発生します。
たとえば、サードパーティ製ライブラリの利用、既存資産の流用、納期やコストとの兼ね合いなどによる例外対応です。
この時、闇雲に例外扱いを増やすと、品質のばらつきや不具合リスクが急増してしまいます。
そこで必要となるのが「機能安全規格逸脱(Deviation)手続書」です。
これは規格要件からの逸脱理由・影響範囲・代替措置・承認フローなどを厳格に文書化し、意思決定を明確にすることで、リスクを管理・最小化するものです。
MISRA C逸脱の典型例と現場視点
MISRA Cでは、「なぜそのルールを敢えて逸脱したのか」「逸脱によるバグの温床や安全リスクが確実に排除できているか」を明確に検証・文書化することが絶対条件です。
例えば、「型変換のルール違反だが性能要件を満たすために必要」「既存コードの資産流用上やむを得ない」といった逸脱は、
・その理由
・潜在リスク
・どのような安全対策でカバーするか
・第三者によるレビューや承認
これらを手続書として残し、関連部署とも情報共有します。
現場目線では、「運用の手間」を理由に形骸化しがちですが、「逸脱が必要な背景には現場の知恵や創意もある」という前向きな側面があります。
精緻な手続書の運用を通じて、技術的ナレッジが蓄積され、次世代開発や社内教育にも大きな価値をもたらします。
Automotive SPICE、ISO 26262における逸脱手続書の意義
プロセスアセスメントの観点から
Automotive SPICEでは「プロセス逸脱」が発生した場合、その背景・影響範囲・是正措置・承認責任者まで一連の記録が要求されます。
逸脱手続書が整備されていることは、「プロセスを理解・運用・管理できる組織である」証明でもあります。
外部監査や顧客監査でも、決して軽視されません。
機能安全、サイバーセキュリティと逸脱管理
ISO 26262における「機能安全」は、命や社会インフラに関わる重大な領域です。
逸脱が発生した時こそ、「どれほど徹底的にリスク低減できているか」「現場の判断が過信や思い込みによるものではないか」を組織ぐるみでレビューします。
また、サイバーセキュリティ(ISO/SAE 21434等)の観点でも、逸脱管理の重要性が高まっています。
最近は製造現場のDX化(デジタルトランスフォーメーション)により、仕組みとして逸脱記録やナレッジをデータベース管理し、再利用・分析・改善に役立てるトレンドが出てきました。
なぜ逸脱管理が「信頼性向上」の鍵となるのか
昭和の現場から抜け出せない課題
製造現場では「現場判断」や「職人技」が長らく美徳とされてきました。
しかし、その場しのぎの個人技だけでは、大規模なリスクや失敗を防げません。
特に、グローバルサプライチェーン化と車載電子化の波は、その問題を顕在化させました。
逸脱管理手続書を通じて「論理」「トレーサビリティ」「標準化」を徹底することが、今求められています。
サプライヤー—バイヤー関係における逸脱手続の活用法
多くの製造現場では、サプライヤーとバイヤー(調達者)の関係性がプロジェクトの成否を大きく左右します。
バイヤーの立場からは「安定品質・納期順守・コストダウン要求」が厳しく突き付けられます。
一方サプライヤーでは「限られたリソースの中で、品質・納期・コストのトライアングル」を日々バランスさせなければなりません。
この時、規格逸脱の事実や手続き・承認履歴が明確にドキュメント化されていれば、バイヤーが「なぜそれが例外なのか」正確に把握し、適切な判断や追加要求をタイムリーに伝えることができます。
逸脱手続書が「組織知識」へと昇華する
形だけの書類作成では意味がありません。
現場が抱えた「なぜ逸脱したのか」「今後どうすれば再発しないか」をナレッジ化することで、後継メンバーや他プロジェクトへの横展開が可能です。
逸脱した事例に基づく「リスク予見ノウハウ」は、新人教育・現場改善・品質向上の基盤となります。
具体的な逸脱手続書作成・管理のベストプラクティス
1. 逸脱判断のトリガーを確実に設定する
・どのような場合に逸脱申請を行うのか(難読・自動生成コードの利用、性能優先実装など)
・現場レベルですぐにエスカレーションできるルール明文化
2. 申請内容の粒度と厳格なレビュー体制
・逸脱理由(なぜ従えない・従わないのか)の論理的説明
・影響範囲(安全、品質、納期、コスト)と根拠資料
・リスク低減策と代替措置、必要に応じてテストケース追加
3. 適正な承認フロー
・ラインマネージャー/技術責任者/品質保証部/顧客担当バイヤーなど、関係者の明確化
・承認の記録と逸脱案件ごとのトレーサビリティ
4. データベース・テンプレート活用
・過去の逸脱事例、レビューコメント、再発防止策などを一覧化
・テンプレート化で申請工数と判断バラつきを削減
5. 継続的改善(PDCA)
・定期的な事例レビュー会議で全社知識へ昇華
・逸脱案件数や是正効果をKPI化し、現場力強化
まとめ:逸脱管理は「組織の知性」である
MISRA C、Automotive SPICE、ISO 26262のような機能安全規格は守るだけで価値が出るものではありません。
現場が直面する課題やノウハウ、その小さな「逸脱」を組織的に記録し、知識へと変換することで、製造業の信頼性は飛躍的に向上します。
昭和の現場感覚と最新デジタルの両輪を活かし、「逸脱」に誠実に向き合う体質は、これからのグローバル競争や不断の技術革新の時代において、かけがえのない財産となるでしょう。
サプライヤーもバイヤーも現場の知恵と手続きを学び、「逸脱管理は信頼づくり・競争力の源泉である」と実感していただきたいと願います。
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