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生産技術者が理解しておくべき金型メンテナンスと耐久試験の考え方

目次
はじめに
製造業の現場では、金型が製品の品質と生産効率を左右する極めて重要な設備のひとつです。
特に生産技術者にとって、金型のメンテナンスや耐久試験に関する知識・考え方は現場力を高めるための基礎となります。
ところが、多くの現場では属人的な判断や経験則に頼った金型運用が抜け切れず、結果的に設備ダウンや品質不良、コスト増といった課題が根強く残っています。
本記事では、昭和から続くアナログ志向の現場でも実践的に役立つ金型メンテナンスと耐久試験の真髄を解説します。
生産技術者のみならず、バイヤーを目指す方やサプライヤーの立場からバイヤーの考えを理解したい方にも有益な視点を盛り込みます。
金型の重要性を再確認する
金型は製品とコストの根幹
現場で20年以上、数多くの金型立上げやトラブル対応に関わってきて感じるのは「金型=製品そのもの」であるという事実です。
たとえば自動車部品メーカーでは一つの金型が何年にも渡り量産を支え、時には数百万ショットにも及びます。
金型トラブルが発生すれば生産ラインは停止し、多額の損失が発生します。
金型の健全な維持管理は、納期遵守やコスト削減、ひいては顧客満足度の向上に直結しています。
昭和的な属人管理からの脱却
現場にはベテランの職人技に支えられた金型管理文化が根強く残っています。
「匂いでわかる」「音でわかる」といった経験値は強みである一方、属人性が高まり属代替が困難です。
また、記録やデータ管理が不十分な現場では、型寿命の予測や定量的なメンテ頻度設定が難しいという課題もあります。
今こそ“データドリブン”な金型メンテナンスへの進化が必要です。
金型メンテナンスの根幹的考え方
予防保全と事後保全の違い
金型メンテナンスには大きく「予防保全」と「事後保全」の2つがあります。
予防保全は、トラブルが発生する前に決められたタイミングで実施する計画的なメンテナンスです。
一方、事後保全はトラブルや異常発生後に対応するメンテナンスです。
多くの昭和的現場では「トラブルが出てから直す」が主流ですが、不良発生・生産停止の損失は甚大です。
予防保全型のメンテナンスへの移行が、コスト削減とライン安定の鍵となります。
メンテナンススケジュールとショット管理
合理的な金型メンテナンスの第一歩は、ショット数(成形回数)や稼働時間を記録し、メンテナンス基準を設定することです。
たとえば「10 万ショット毎に分解清掃」「30 万ショットで摺動部交換」といった基準を設けます。
この積み重ねが型寿命の見える化、計画的な交換や補修、コスト最適化につながります。
ITツールやIoTデバイスを活用した自動記録も進めることで、属人的判断から組織的管理へレベルアップが図れます。
メンテ記録の資産化
メンテナンスの実施内容や交換部品の履歴、異常発生履歴を詳細に記録することが重要です。
これらのデータはPDCAの振り返り材料となるだけでなく、新規型設計時のフィードバックやバイヤーとの交渉材料としても有益です。
BtoBビジネスでは「根拠ある説明力」が信頼を生みます。
耐久試験を巡る発想をアップデートする
なぜ耐久試験が重要なのか
金型の開発~量産初期フェーズでは「耐久試験(寿命試験)」が欠かせません。
この試験により、どの程度のショットまで金型が健全に動作するか予測し、保守計画やコスト見積もりの根拠とします。
耐久試験は顧客の要求品質(スペック)を満たす信頼性確保、納期遵守、原価低減の三方良しの指標でもあります。
試験は現実的に、柔軟に考える
耐久試験といえば「20 万ショット無故障」といった規定数値に縛られがちです。
しかし、実際の現場では「リピート生産の頻度」「製品形状の変化」「材料ロットによる負荷」など数多くの変動要素があります。
単なる規定消化だけでなく、ダメージ進行や摩耗限界を多面的に評価する“現場目線”が欠かせません。
場合によっては加速試験やシミュレーションを併用し、現実と乖離しない判断が重要です。
データ活用による耐久信頼性の向上
耐久試験で得られた摩耗量、バリ発生率、ショートショット等のデータを蓄積・可視化します。
類似品や他ロットの結果と比較、経時変化を分析することで、設計段階から根拠ある耐久性アップが実現可能です。
また、この知見はサプライヤー選定やバイヤー向け提案資料の説得力強化にも役立ちます。
金型メンテナンス・耐久試験と調達購買の接点
バイヤーに求められる視点
バイヤーを目指す方は「金型=調達でコスト交渉する材料」と考えがちですが、金型の耐久性・保全性こそが調達コスト削減の鍵です。
現場と連携し、実績データや型寿命で“トータルコスト”を把握できる知識がバイヤーには必須となります。
金型の「初期コスト」と「メンテ・再製作までのランニングコスト」を天秤にかけ、双方にとってWin-Winな調達戦略を立案することが求められます。
サプライヤーが知っておくべきバイヤーの視点
サプライヤー側でも、単純な「安売り」や「初期費用の叩き合い」ではなく、「長期間安定稼働」のためのメンテプランを提示することが重要です。
耐久試験やメンテデータに基づき、“生涯トータルコストが最も安くなる”提案は確実にバイヤーから評価されます。
また、サプライヤー側も現場実行部隊の知見(メンテ頻度・コスト・トラブル傾向)を積極的にバイヤーへフィードバックし、差別化の武器とすることが重要です。
デジタル時代の金型管理、少し先の地平線
データ駆動型現場への転換
IoTやクラウド活用の進展とともに、金型管理の世界にも変革が訪れつつあります。
センサー内蔵による異常検知、メンテ履歴のクラウド共有、AIによる劣化予測などがスタートしています。
業界的にはまだ“昭和レトロ管理”が主流ですが、一歩進んだ現場ではデジタルシフトによる省力化・属人脱却・コスト低減が加速度的に進んでいます。
今後、この分野の“データ資産競争”が企業価値を左右するといえるでしょう。
人と技術の協調、現場発の知見を世界へ
ただし、どんな優れたITツールも現場のリアルな知見なしには使いこなせません。
ベテランの技術者と若手、現場作業者と管理者が知見を言語化・データ化し、デジタル技術と掛け合わせる“ハイブリッド力”が最強の武器となります。
現場“発”の金型メンテ・耐久ノウハウは、やがて世界市場での競争優位や同業他社との差別化につながる資産です。
まとめ:プロの現場力を未来へつなぐために
生産技術者にとって金型メンテナンス・耐久試験の正しい知識と実践力は、品質・納期・コストの全てに直結する生命線です。
属人的な“昭和型発想”から脱却し、データに裏付けられた“未来型運用”への進化が企業力を大きく左右します。
また、バイヤーやサプライヤーも金型管理の現場視点を理解することで、単なる価格勝負から“価値共創”の戦略へと進化できます。
目の前の現場から得られる知見を社会と共有し、技術と人の協調による持続的な製造業発展を、今こそ実現していきましょう。
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