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伝える力と聴く力を高めるロジカルコミュニケーション実践術

目次
はじめに:製造業に不可欠な現場のコミュニケーション力
製造業の現場では、調達購買から生産管理、品質管理、工場の自動化に至るまで、日々多彩な情報と意思決定が飛び交っています。
そのなかで最も基本的で、かつ重要なのが「コミュニケーション力」です。
特に、現場のベテランや管理職になればなるほど、対人関係において「伝える力」と「聴く力」の両輪が求められます。
昭和時代からの慣習やヒエラルキーが根強く残るアナログな現場では、「上司の言うことは絶対」「察する文化」といった風土が未だに存在しています。
しかし、今や多様性や働き方の変化、人材の若返り、国際化の波を受け、誰もが分かりやすく、ロジカルにコミュニケーションする訓練が必要不可欠なのです。
本記事では、製造業メーカーの現場で20年超経験を積んだ筆者の視点から、「伝える力」と「聴く力」をどう磨き、ロジカルコミュニケーションを実践できるかを、具体例を交えて解説します。
ロジカルコミュニケーションとは何か
「ロジカル」とは感情を切り離すことではない
ロジカルコミュニケーションと聞くと、「まるで冷たい計算機のように、感情を排除して理屈だけ話す」と誤解している方も少なくありません。
実際は、伝えたい内容や目的、課題を筋道立てて分かりやすく伝え、「相手と共通認識を持てるかどうか」が真髄です。
感情も適度に添えながら、事実・論拠・結論・提案を明確に整理することで、理解や納得感を高めることができます。
製造業現場で求められる3つのポイント
1. 情報の正確さ:作業指示や進捗管理、異常連絡などでは「いつ」「何を」「どのように」が明確でなければなりません。
2. 検証と裏付け:なぜその判断や提案が必要なのか、過去データ・品質基準・コスト比較などの根拠提示。
3. 目的とゴールの共有:最終的にどうなればOKなのか、誰がどの役割を持つのかまで言語化して合意を得ること。
これらが整理されているほど、現場でのミスやトラブルは格段に減少します。
伝える力の鍛え方:現場で差がつく5つのテクニック
1. 結論ファーストで話す
製造業の現場では時間が有限です。
指示や報告をする際は、まず「結論」から入り、そのあと「理由」「背景」を補足することが鉄則です。
例えば、「〇号機の不具合で生産停止中です。予備部品の在庫がないため、納期遅延が発生します」と先に事実を伝えます。
その後、「不具合内容」や「対応案」「要望」に話を展開します。
こうすることで、受け手は最初に状況を即座に把握でき、次のアクションを考えやすくなります。
2. 数値とファクトによる補強
「なんとなく~と思います」「多分~でしょう」という曖昧表現は信頼を損ないます。
日々の業務報告や改善提案でも、「歩留まりが95.5%で先週比+0.8%改善した」「コストダウン効果は年間40万円」など、できるだけ数字や具体的な指標を必ず盛り込む癖をつけましょう。
ファクトがあることで、現場・管理部門・経営層問わず、誰もが納得しやすくなります。
3. 図やフローで可視化する力
現場作業や工程改善を説明するとき、口頭や文章だけだと誤解のもとになります。
簡単なレイアウト図やフローチャート、マッピング、写真などのビジュアル資料を添えましょう。
例えば、「このレイアウトのままだと、材料の移動距離が一日200mも発生し、作業者の負担が大きい」という話に、実際の動線図や工程写真を見せることで、深い理解と納得を引き出せます。
4. 「なぜ」を3回繰り返し、真因を伝える
現場トラブルや品質問題が発生した際、「見かけ上の原因」だけでは根本解決に至りません。
5W1Hや「なぜなぜ分析」を活用し、少なくとも「なぜ?」を3回掘り下げて説明しましょう。
例えば、「部品Aが破損した → なぜ? → 過大な力が加わった → なぜ? → 組立工程で治具不良 → なぜ? → 治具メンテナンスが不十分」など、真因までたどり着くことで、現場全体のレベルアップと再発防止が可能になります。
5. 相手の立場で伝え方を調整する
同じ内容でも、相手が現場作業スタッフなのか、バイヤー、協力会社、経営層かによって「知っている前提」「必要な情報量」「使う言語」は異なります。
「全員に伝わればよい」ではなく、「この人に何を伝えたいか?どこを納得してもらいたいか?」を意識し、相手が知りたい観点・ゴールから逆算して話す調整力が重要です。
聴く力の磨き方:徹底的な傾聴で本質を引き出す
1. 相手の言葉の裏にある「意図」を聴く
製造現場では「あの部品は使いにくい」「納期が厳しい」といったストレートでない言い方が多いものです。
発言の背後にある、「どんな痛みや課題を感じているのか」「真の困りごとは何か」を聴く姿勢が不可欠です。
事実だけではなく、周辺情報や背景のニュアンスにも敏感になることで、現場改善や調達先との信頼構築につながります。
2. オウム返しと質問で深掘りする
会話のなかで、「今おっしゃった〇〇という点は、具体的にはどのようなことでしょうか」「○○という認識で合っていますか?」といったオウム返しや質問をはさむことで、相手の理解を促し、自身も認識違いを減らせます。
特に外部サプライヤーや後輩指導では、相手の意図を引き出すテクニックとして有効です。
3. 「黙って聞く」勇気
現場経験が長いと、「自分の方が知識も経験もあるから」と、ついアドバイスや指示を先回りで出したくなります。
しかし、相手が納得するプロセスや自身の気づきを阻害しかねません。
ときには沈黙の時間を許容し、相手が自分の考えをまとめて言葉にするまで、じっと待つ勇気と余裕も持ちましょう。
現場でよくある失敗例と成功例
失敗例:伝言ゲームの末、指示ミスが頻発
A工程→B工程→C工程で各担当者が口頭で情報を引き継いでいたとします。
工程Bで「昨日の不良率は普段よりやや多い」と簡単にだけ報告したところ、C工程の担当が「軽微な問題だろう」と判断。
その結果、不良品が最終出荷まで流れてしまい、客先クレームにつながりました。
このケースでは、伝え方の曖昧さと聴く側の受け身姿勢の両方に課題があります。
成功例:改善提案が全員の協力で一気に推進
現場作業者の「この動線、毎日ムダだと感じています」という一言に対し、管理者が「具体的に何に困っているか教えてもらえますか?」とじっくり傾聴。
その後、作業内容・移動距離・改善アイデアなどをチームで可視化して整理し、工場レイアウトを部分的に変更。
結果的に工数15%削減、作業ミスゼロ化という大きな成果につながりました。
伝える力と聴く力、両方のバランスが革新の土台となります。
アナログ業界にこそロジカルコミュニケーションは必要
昭和のままの「黙って背中を見て覚えろ」「空気を読んで当たり前が分かるだろう」というような、暗黙知や空気読みへの過度な信仰は、これからの人材多様化・グローバル化の流れの中、ますます限界を迎えています。
デジタルツールやDX推進の土台となるのも、こうした「見える化」「合意形成」の文化です。
紙の帳票が残るような現場こそ、まずはコミュニケーションの“当たり前”からロジカルに進化させることで、あらゆる改革・改善が加速します。
サプライヤー・バイヤーの視点で見たロジカルコミュニケーション
サプライヤーが知っておくべき「バイヤーのロジック」
バイヤー(調達担当)は、コスト・納期・品質の三立を常に考えながら、社内外を調整しています。
サプライヤー視点で「どうしたらバイヤーに選ばれるか」には、事実と数字で状況説明する「伝える力」と、「バイヤーが何に困っているのか」「何を重視しているのか」を聴く傾聴力の両方が不可欠です。
「自社都合」や「感覚的な説明」ではなく、「御社のラインで××を短縮できる点が訴求ポイントです」といったように、バイヤー目線に立った伝え方・提案力を養いましょう。
バイヤーが身につけたい「異文化対応力」
バイヤー自身も、国内外の多様なサプライヤーとやりとりする以上、「異なる価値観や文化背景を理解しようという姿勢」「まずは相手の話を否定せず受け止める懐の深さ」が必須となります。
与えられた説明を鵜呑みにせず、自社・顧客目線で細部まで問い直す力、また相手の苦労や立場への共感力を並行して鍛えていくことが、強いバイヤーの条件です。
まとめ:コミュニケーションは一生磨き続けるスキル
製造業の現場で生き抜いていくために、また業界を越えて活躍していくためにも、「伝える力」と「聴く力」というロジカルコミュニケーションは、時代に左右されない絶対的基礎体力です。
現場と管理部門の架け橋、バイヤーとサプライヤーの信頼構築、社内プロジェクトの合意形成――どんな場面でも欠かせません。
今日からできる小さな「意識変革」と「実践」を積み重ね、昭和型“ムード頼み”から、世界標準の“見える・伝わる・動く現場”へ。
あなた自身の成長と、製造業の未来への貢献につなげていきましょう。
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