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伝える力と聴く力を磨くロジカルコミュニケーション実践講座

目次
はじめに:製造業におけるコミュニケーションの重要性
製造業の現場で最も求められている能力の一つが「伝える力」と「聴く力」です。
昨今のデジタル化の波が押し寄せる一方、製造業界では依然としてアナログ的なやりとりや、属人的な調整が根強く残っています。
例えば、不良品の発生原因を調査する際や、コストダウン案を提案する場面、調達交渉の現場でも、このコミュニケーション能力が欠けていると、プロジェクトの遅延や品質トラブルにつながる危険性があります。
本記事では、約20年以上にわたる現場管理・バイヤー・サプライヤー経験を活かし、「伝える力」と「聴く力」を磨き上げるためのロジカルコミュニケーション実践的なテクニックを紹介します。
現場で求められるロジカルコミュニケーションとは
ロジカルコミュニケーションの基礎と特徴
ロジカルコミュニケーションとは、情報や意見・考えを論理的にわかりやすく伝えるコミュニケーションスタイルを指します。
製造業の現場では「なぜこれをやるのか」「どのようにやるのか」「やった結果どうなったのか」を筋道立てて説明する必要があります。
また、相手側(例えば、現場担当者や購買バイヤー、サプライヤー)がどのような背景・意図を持っているのかを確認しながら進めることも重要です。
昭和的アナログ現場の「以心伝心」からの脱却
多くの工場では「分かってくれるだろう」という暗黙の了解、いわゆる「以心伝心」が根付いています。
しかし、市場環境はグローバル化し、世代も多様化した今、これが大きなリスクに変わりつつあります。
明確な根拠を持つ説明、記録に残る具体的な報告を心がけることで、人的ミスやトラブルを未然に防ぐことができます。
これは、近年求められている「ジョブ型雇用」や「多様性」を重視した現場運営にも不可欠な考え方です。
伝える力を高めるための実践テクニック
事実ベースで話す習慣を身につける
「なんとなく思う」「多分こうです」といった曖昧表現は、製造現場の混乱や工程不良の温床です。
事実を「いつ」「どこで」「誰が」「どうした」という情報で構成し、5W1Hを基本として説明しましょう。
例えば、「昨日14時、組立ラインBで使用部品Xに異常音が発生した。担当者Yが現認し、即時停止措置を実施」のように具体的な情報を伝達することが重要です。
数字や定量データを根拠に使う
話の説得力を格段に高めるのが「数字」です。
「通常比1.5倍の不良発生率です」といった定量的根拠や、「コスト削減効果は年間200万円を見込みます」といった具体的な数値を挙げることで、相手の納得感を生み出せます。
これが、部門間交渉やサプライヤー評価の際に信頼を勝ち取る大きなポイントとなります。
要点を三段論法でまとめる訓練
ロジカルな説明を簡潔にするためには「結論 → 理由 → 具体例」の三段論法が有効です。
バイヤーがサプライヤーにコスト交渉をする場合であれば、
1. 結論:「御社の見積りは再検討をお願いしたい」
2. 理由:「なぜなら、原材費の市場価格が低下しているためです」
3. 具体例:「たとえば、ステンレス材料は昨年比15%下落しています」
この順序で説明することで、相手が目的・背景・実例を理解しやすくなり、無駄な摩擦を減らせます。
聴く力を伸ばすためのポイント
相手の背景や立場を意識して傾聴する
製造現場では、ライン担当、品質管理者、工程リーダーなど、それぞれ役割ごとに異なる視点を持っています。
バイヤーとサプライヤーの交渉現場では、価格交渉だけでなく、「何に困っているのか」「どこに改善の余地があるか」を傾聴する姿勢が信頼関係構築のカギとなります。
相手の発言を遮らずに最後まで聞くこと、相手の表情や身振り手振りから意図を汲み取る観察力も重要です。
相手が言いたい本音や暗黙のメッセージを探る
単に言葉だけを追うのではなく、「なぜ、その発言をしたのか」「本音はどこにあるのか」を読み取る力が製造業では特に求められます。
例えば、工程リーダーから「今の工数でなんとかやってみます」と返事があった時、単純に了承したのか、実は無理を重ねているのかを見極めましょう。
具体的には、「何か困っていることはありませんか?」とフォロー質問をすることで、真の課題を引き出せます。
オウム返し(リフレクション)を活用する
相手の言葉を繰り返し返すことで、「ちゃんと聴いてくれている」という安心感を与えます。
「部品調達納期が厳しい」と言われたら、「納期が厳しいということですね」と繰り返す。
このひと手間だけで相手の信頼感はぐっと高まります。
また、思い違いや認識違いを事前に防ぐ効果も期待できます。
バイヤー業務に直結するコミュニケーションの知恵
価格交渉はwin-winアプローチが基本
価格交渉の現場では、「限界まで下げろ」と一方的な要求をする古いスタイルは、サプライチェーン全体の脆弱化につながります。
相手が困っている要因(材料高騰・人手不足・設備老朽化等)を丁寧に傾聴し、その中でお互いに納得できる着地点を探る視点が重要です。
「今回は基準コストを下げて頂く代わりに、次期開発品の協力も視野に」など、信頼関係を前提にしたロジカルな提案が長期的なパートナーシップを築きます。
現場目線の改善提案は、現場“外”からの視点も生かす
多忙な現場はしばしば「いつものやり方」から抜け出せません。
ここに、調達・購買や他部門との積極的なコミュニケーションがブレイクスルーを生み出します。
「サプライヤーAでは、同じ型の金型を複数回転で運用していますが、現場Bにも適用できませんか?」といった他社事例の活用、「工程短縮アイデアとして、内製化・外注化のバランスを再考しませんか?」といった俯瞰的視点をシェアしましょう。
こうした提案は、単なる取りまとめ担当から価値創造型バイヤーへと進化する一歩です。
令和の現場で活きるアナログとデジタルの“ハイブリッド型”コミュニケーション
デジタル時代の「見える化」とアナログの「空気感」
社内外のコミュニケーションでは紙からメール、チャットツール、デジタル掲示板など多様な手段が用いられるようになりました。
一方で、昭和から続く現場のアナログ的な察し・空気感も、現場力を維持する上で一定の価値があります。
例えば、週次の対面進捗会議で直接やりとりすること、現場で小さな声にも耳を傾けることなどは、デジタルツールだけではカバーできません。
大事なのは、目的や内容によって伝達手法を柔軟に使い分ける“ハイブリッド型”の運用です。
人間関係の「間」を大切にする工夫
ロジカルな説明と同時に、相手のペース・立場への気配りを忘れずに。
たとえば、プレスラインで工程異常が発生している現場では、まず負担に共感し「お疲れ様です」と声をかける。
その上で、「どこからサポートできますか?」「次の増員が必要なら検討します」と細やかな“間”をつくることが信頼につながります。
若手や中途採用者への伝承マネジメントの視点
OJTやジョブローテーションを通じて「現場の空気」「部品一点一点の重み」「相手に配慮した伝え方・聴き方」を、論理的かつ情緒的に伝えていくことが重要です。
特に若手や異業種出身者には、「過去どうだったか」だけではなく、「なぜそうなっているか」「どんな変革が可能なのか」を対話の中で明確に伝承しましょう。
これにより、伝える・聴く双方の感度が研ぎ澄まされ、現場の底力が増します。
まとめ:ロジカルコミュニケーションで現場改革を起こそう
製造業の発展には、最先端の技術や自動化設備だけでなく、普段のコミュニケーション能力の進化が不可欠です。
「伝える力」と「聴く力」を組み合わせたロジカルコミュニケーションは、現場の属人化・ムダ・トラブルを飛躍的に減らし、新たな価値を生み出す基盤となります。
今こそ、アナログとデジタルのバランスを意識しながら、現場を変革する“本物のコミュニケーション力”を共に磨いていきましょう。
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