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投稿日:2025年7月5日

特許明細書を読み解く検索調査と侵害リスク回避の実践法

はじめに:製造業における特許明細書の重要性

製造業の競争が激しさを増す中、自社の技術や製品を守り、成長するためには知的財産、特に特許に対する理解が不可欠です。
特許明細書は、単なる権利の証明書ではありません。
新製品の開発や新たな取引の際、ご自身やお取引先がイノベーションを行ううえで、特許明細書を「読み解く」力が、侵害リスクの最小化やスムーズなビジネス推進の鍵を握ります。

昭和から平成、令和と時代が流れても、アナログな現場感覚と、デジタル時代に即した知財リテラシーの両立が求められているのが、今の日本の製造業の現実です。
本記事では、調達・購買担当者、生産管理の方、さらにはサプライヤーとしてバイヤーを目指す方々にも役立つ、特許明細書の検索調査および実践的な侵害リスク回避法について、現場目線で深堀りしていきます。

特許明細書とは何か:現場視点で知るべき基本

特許明細書は、発明の内容や範囲、根拠となる技術情報を詳細に記載した法的な文書です。
具体的には「特許公報」として公開され、発明者・出願人・発明の目的や構成、そして請求項(クレーム)など複数の項目で成り立っています。

なぜバイヤーやサプライヤーが特許明細書を見る必要があるのか

バイヤーは、新たな部品や技術を調達する際、それが第三者の特許を侵害していないか事前にチェックしなければなりません。
これはコスト面のみならず、自社製品の販売停止や損害賠償リスクを回避するためにも不可欠です。

一方サプライヤーは、納品先バイヤーが求める知的財産の安全基準に応え、安心できるパートナーとなるためにも、特許情報の把握が必須となります。
また、バイヤーの思考や判断基準を知ることで、自社技術のアピールポイントや今後の開発方針を的確に定めることができます。

特許明細書の読み方:本丸は「請求項」と「実施例」

特許明細書を読む際、最も重要なのは「請求項(クレーム)」と「実施例(エンボディメント)」です。

「請求項」で権利範囲をつかむ

請求項は、その特許が実際に何を保護しているか、言い換えれば「あらゆる設計や実現方法のうち、どこまでを自社の権利範囲と主張するか」を示す部分です。
現場レベルで例えるなら、「このネジの形状や構造、この素材の選定が権利範囲なのか、それとも溝の深さや用途までも含むのか」といった具体的な判断のもととなります。

「実施例」で発明の具体的な形を知る

実施例は、その発明をどのような方法・装置・プロセスで実現できるか、具体例を示したものです。
実施例から技術の本質や、権利を避けて異なる構成を採るヒント(いわゆる回避設計)を得ることができます。

製造業現場における特許検索調査の実践フロー

新製品開発や新規取引先の選定時には、特許侵害リスクを事前に把握するための「特許調査」が必須です。
ここでは、実際の現場で行われている(または望まれる)調査手順を紹介します。

1. 関連技術の特許公開情報を収集

まずは自社製品や調達対象の技術用語(キーワード)を抽出し、特許庁のJ-PlatPat、Google Patentsなどの無料公開データベースで該当する特許・実用新案を検索します。

2. 先行技術(Prior Art)と権利範囲を照会

ヒットした特許明細書の請求項・実施例を確認し、自社製品の設計や仕様がどこまで類似または異なるかを照合します。
設計変更や仕様見直しが容易な段階で行うことが肝要です。

3. 弁理士への相談と専門家判断

グレーゾーンと思われる技術については、弁理士など知財の専門家に事前相談し、侵害性や回避設計の可能性を判断してもらいます。
現場担当者自身が一次調査を行い、要点をまとめて専門家に提示することで、コストと時間の削減につながります。

侵害リスク回避のために現場でできる実践的対策

法務や知財部門の力は重要ですが、日々の現場でこそできるリスク回避策も数多く存在しています。

1. 設計段階での「抜け出し」発想を持つ

特許明細書から権利範囲を正しく理解し、【A】を【B】に変える、素材や構造、用途の一部を独自の発想で変化させるなど、他社特許を「回避する設計力」を意識しましょう。
たとえばネジの固定構造で、既存特許が溝の深さと形状を網羅していた場合、「まったく別の締結方法」を提案するとネガティブリストを避けられます。

2. サプライヤーとの密な知財情報共有

パートナーサプライヤーと相互に技術情報や対応可能な設計変更案を共有しましょう。
バイヤー側からは、納品物に関する「特許クリアランス証明」を求める、一部は共同開発契約時に知財リスク分担条項を盛り込むなど、より安心できる取引基盤を整備します。

3. 社内教育と仕組みの浸透

現場担当者に対し、基本的な特許検索や回避設計の知識を周知しましょう。
昭和的な「経験と勘」頼みのものづくりから一歩進め、若手や異業種出身者も活躍できるよう、特許明細書の読み方や調査フローを標準化することが肝要です。

特許侵害の現実例と業界動向:日本製造業の課題

実際の現場では、以下のような課題やトレンドが見受けられます。

自社開発品の「うっかり侵害リスク」

OEMやODM生産で、サプライヤーからの部品調達後にトラブルが発生するケースは少なくありません。
たとえば、海外で取得済みの特許を見逃し、輸出差止や高額な損害賠償請求に発展した事例もあります。
この背景には、サプライヤー任せ・現場任せのまま、知財を「自分ごと」と捉えきれていない昭和的意識が残っています。

オープンイノベーションとパテント・トロールの台頭

企業間連携・業種横断型のオープンイノベーションが加速する一方で、非製造業系の「パテント・トロール」(投資目的の特許保有者)による特許権行使も増えています。
市場投入前に入念な特許調査、そして有効な契約書締結がますます重要になっています。

現場目線の「ラテラル思考」とDX化への展望

特許明細書の活用は、単なるリスク管理ではなく新たな発想やビジネスモデル創出のきっかけにもなります。
例えば、特許情報から他業界の技術を参考に自社向けに応用(クロスイノベーション)する、それによって新たな特許を創出し競争力を高める戦略なども、現場発のアイデアとして生まれています。

近年はAIによる特許データ解析ツールも登場し、検索・比較作業の自動化、侵害リスクの事前アラート化が進んでいます。
ITツールと現場の知恵をかけあわせ、知財活動の「昭和脱却」「DX化」に踏み出すことが、日本の製造業の強み再生につながります。

まとめ:製造業現場から始める特許活用の第一歩

特許明細書の検索・調査や侵害リスク回避は、決して知財部だけの仕事ではありません。
現場の知識と経験、そしてラテラル思考を活かしながら、サプライヤー・バイヤー間で知財情報を共有し、全員で守る意識がこれからの製造業の未来を切り開きます。

今日からぜひ、特許明細書に自分の目で触れ、読み解き、現場で使える知財マインドを育てていきましょう。

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