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投稿日:2025年7月3日

実験計画法で効率的に条件探索する統計解析実践講座

はじめに:実験計画法が製造現場に与えるインパクト

製造業の現場では「どうすればもっと効率よく、確実に最適な条件にたどりつけるか」という課題がつきものです。

例えば新製品の立ち上げや、品質不良対策、コストダウン活動など、現場で直面する課題の多くは「組み合わせが多すぎて、何から試せば良いのかわからない」「手当たり次第に試すにはリソースが限られている」といった悩みにつながります。

こうしたとき、力強い武器となるのが統計手法の一つ「実験計画法(Design of Experiments:DOE)」です。

本記事では、20年以上の工場現場経験を持つ筆者の視点から、昭和の時代から抜け出せないアナログ思考の職場でも現実的に使える、実践的な実験計画法のノウハウや、実際に成果を上げてきたエピソードを交えつつ、バイヤーやサプライヤー双方が知っておきたい現場目線のメリットを解説します。

なぜ実験計画法が今、製造業で求められているのか?

1. 多変量時代の到来―「思いつき実験」はもう通用しない

長い間、現場では「一つずつ条件を変えてみる」や「経験勘で試してみる」手法が主流でした。

しかし材料も工程も複雑化し、一度に複数の要因が絡み合う現在では、これでは到底間に合いません。

働き方改革の流れで試作や検証に割ける人時(にんじ)も減り続け、闇雲な試行錯誤ではもはや太刀打ちできない時代となっています。

2. データドリブンな意思決定への進化

取引先のグローバル化、ESG(環境・社会・ガバナンス)重視など外部環境も変わり、社内外へのエビデンス提示が必須に。

「このやり方のほうがなんとなく安心」という感覚的な根拠では、サプライチェーン全体の競争力強化にはつながりません。

実験計画法を通じて「なぜその条件最適なのか?」「どの要因から優先的に改善するべきか?」が証明できれば、社内説得だけでなく、取引先や顧客への技術説明にも大きな武器となります。

3. 人材の多様化による「品質コミュニケーション」の共通言語に

経験豊富なベテランから若手や外国人まで、多様な人材が活躍する今日、説明責任や技術継承は以前にも増して重要です。

実験計画法による定量的な判断基準は、世代や価値観を問わず共通言語となり、ブラックボックスだったノウハウの可視化推進にも役立ちます。

実験計画法の基本と、従来の単純な実験との違い

1. 実験計画法の本質:「できるだけ少ない実験回数で本質を見抜く」

DOEは「効率的に実験を設計し、本当に重要な因子やその影響・最適条件を明らかにする」ための方法論です。

最大の特徴は、
– 「たった数回の実験で多くの組み合わせをカバー」
– 「一つ一つの要因だけでなく、要因同士の相互作用も見極める」
点にあります。

例えば「温度」「圧力」「時間」の3因子がそれぞれ2段階だと単純に全部組み合わせたら8回、4因子なら16回にもなります。

DOEを使えばその半分以下、工夫次第ではわずか4回で主要な情報をほぼ取り切ることも可能です。

2. 単純な「1要因実験」との違い

伝統的に現場で行ってきた「一つずつ変えていく(One Factor at a Time)」実験は、
– 要因同士の相互作用が分からない
– 無駄な試行が増える
– 最適解でも妥協案しか得られない

…といった弱点があります。

これに対し実験計画法なら「本当は二つの因子が同時に変化したときだけ生まれる効果(交互作用)」まで見抜くことが可能です。

3. 最新トレンド:直交表法、最適化アルゴリズムの進化

昭和世代がよく知る「タガチ(田口)メソッド」の直交表や、最新の反応曲面法(RSM)、各種最適設計アルゴリズムなど、実験計画法も絶えず進化しています。

エクセルやJMPなど市販ソフトの進歩で、誰でも手軽に解析できるようになったのも大きな追い風です。

現場目線での実践ステップ~今日からできるDOE活用

1. 問題を「数値で言語化」するところから始める

現場でもっともつまずきやすいのが「そもそもどの要因を試すべきかわからない」という出発点です。

まずは不良発生率や歩留まり、工程条件、材料規格など、必ず数字で書き出しましょう。

「大体まあまあ」「そこそこの温度」といった曖昧表現を使うと、再現性も判断基準も曖昧になります。

2. テーマ設定:目的意識の明確化

「異常の原因を探したい」のか、「どこまで工程を攻めていいかを確認したい」のか。

目的によって「因子の数」や「水準の設定」は大きく変わります。

無駄のない条件探索を目指すために、必ず「何を達成したいのか?」を事前にチームですり合わせてください。

3. 適切な実験計画を立てる

直交表を使うのか、全因子組み合わせか、分割法や逐次法など応用的な手法を用いるのか。

会社や工程の規模によって最適なDOEの方式は異なります。

筆者の経験上、「一番シンプルな直交表」から慣れるのがおすすめです。

たった数回の実験でも、現場に与えるインパクトは絶大です。

4. データ取得と現場参加の重要性

よく「試験室任せで現場不在」のままDOEが進行し、読むだけの報告書になってしまう例があります。

必ずライン担当者・作業者・現場リーダーを巻き込み、実験時の「現象の変化」を体感してもらうこと。

この経験が、「現場でなぜこの設定がベストなのか?」の納得感につながり、実行力を高めます。

5. 解析と対策の実行

DOEで得られた定量データは、グラフ化・主効果図・交互作用図を使い、現場の勘や体感とも突き合わせて解釈します。

パソコン解析に頼りすぎず、現場感覚とのすり合わせが現実的な対策案に落とし込む鍵となります。

バイヤー・サプライヤー視点で考えるDOEの真の価値

1. バイヤーが求めているのは「再現性」と「説明力」

調達部門やバイヤーの立場からみて、最も重要なのは「工程条件がきっちり管理されているか」「なぜOKなのかきちんと説明できるか」という信頼です。

DOEを活用し「これが最適な条件として科学的に導き出されました」と根拠を示せる現場は、価格交渉やサプライヤー選定で圧倒的に有利です。

2. サプライヤーは「言い訳から卒業し、根拠を積み上げる」時代へ

「工程が複雑すぎて、現場判断で仕方なく…」という昭和的な言い訳は時代遅れです。

むしろ「この条件で本当に安定している」ことをDOEデータで示せれば、技術力アピール・品質保証・コスト妥結…全てにおいて強力な武器となりえます。

3. Win-Winへの進化–現場協働の起点としてのDOE

近年は自社だけでなく「サプライチェーン全体での最適化」を求める動きが加速しています。

共同実験計画やデータ共有は、取引先との信頼構築や改善提案の原動力となり、単なる価格競争から価値共創への移行の鍵ともなります。

昭和から脱却できないアナログ現場に、どうやってDOE文化を根付かせるか

現場には「新しいことは面倒」「今までどおりでいい」という抵抗感があります。

ですが、小さな成功体験を積み重ねることで意識変革は必ず起こります。

– 「やってみたらわずか4回のテストで5年以上の謎が解けた」
– 「経験や思い込みではなく、本当にデータで最適条件が見えた」
– 「新人や外国人スタッフでも堂々と条件根拠を説明できるようになった」

こうしたエピソードを現場でシェアし、「このやり方なら自分でもできそう」と感じられる工夫が普及のカギです。

まとめ:実験計画法の活用で、製造現場を「見える化」「最適化」「価値創造」へ

工場の未来を創るうえで、いまや「勘・経験・度胸」ではなく「データで語れる現場」が不可欠です。

実験計画法はその第一歩となる、現場改革の強力な促進剤です。

– 少ないリソースで最大の成果を引き出す
– 品質・コスト・納期のバランス最適を見える化
– バイヤー・サプライヤー間の共通言語となる技術力の証明

など、様々な面で製造業の根幹を支える存在といえます。

今日からでも、どんな現場でも、身近な課題一つからはじめてみてください。

実験計画法による統計解析の実践は、あなたの工場に「新たな地平線」を切り拓く力となるはずです。

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