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投稿日:2025年6月14日

架橋発泡ポリエチレンのリサイクル技術と環境への貢献

はじめに:なぜ今、架橋発泡ポリエチレン(XPE)のリサイクルが注目されているのか

日本の製造業現場は、時代の変化とともに省人化や自動化など様々なイノベーションを取り入れてきました。

しかし、その一方で多くの工場では未だに昭和時代のアナログ文化が色濃く残っていることも事実です。

環境への配慮が企業活動の中心テーマとなっている現代において、材料の再利用やリサイクルは避けて通れない課題の一つです。

その中でも「架橋発泡ポリエチレン(XPE)」のリサイクルは、特にハードルが高いものとして業界内外から注目されています。

本記事では、現場目線に立って、XPEのリサイクル技術の現状や課題、今求められる工夫と業界動向について深掘りしていきます。

製造業の調達担当者や生産現場の方々はもちろん、サプライヤーの立場からバイヤーの思考を知りたい方にも役立つ内容にまとめています。

架橋発泡ポリエチレン(XPE)とは何か

XPEの基礎知識

架橋発泡ポリエチレン(Cross-linked polyethylene foams、通称XPE)は、基材となるポリエチレン分子同士を架橋させることで分子構造を強固にし、優れた物性と耐久性、柔軟性、断熱性、衝撃吸収性をもたらす発泡プラスチックです。

自動車や建築、家電、梱包材など、多岐にわたる産業用途で活躍しています。

特に自動車産業では、断熱材や吸音材など車内快適性向上に欠かせない材料として長年信頼されています。

なぜ架橋が「発泡」と強い相性を持つのか

ポリエチレンを発泡させることで軽量化が可能となりますが、それだけでは応力や耐熱性に限界があります。

架橋反応を経ることで、泡構造を保持したまま熱や力への耐性を飛躍的にアップできます。

この二重構造こそが他の発泡材にはないXPE独自の強みです。

XPEリサイクルが難しい理由と業界の現実

リサイクル困難の本質的要因

一番の課題は「架橋構造」にあります。

熱可塑性樹脂である未架橋のポリエチレンは、加熱溶融すれば成形し直して新たな材料にリサイクルできます。

しかし一度架橋されたXPEは、分子鎖が網目状に固定化されてしまうため、加熱しても溶融せず、通常の「溶かして再生」という手法が効かなくなります。

つまり、サイクルのたびに品質劣化や原料グレードダウンが避けられず、「単なる廃棄物」として処理せざるを得ないケースがほとんどでした。

回収・分別の実態

XPEの大半が複数材料との複合品となっているため、現場では分別回収も大きな障壁となります。

そもそも「混ぜればゴミ、分ければ資源」とは言いますが、回収コストと分別作業の煩雑さ、そして現状の売却先の問題など、調達部門や環境担当部署の頭を悩ませています。

また、最終ユーザーからの回収協力体制を整えるにも、まだまだ企業間意識に差が出ているのが実情です。

XPEリサイクル技術の現状と新たなチャレンジ

既存のリサイクル手法とその限界

現在国内で主流なのは、以下の二つのアプローチです。

1. 物理的リサイクル(粉砕再資源化)

回収したXPEを細かく粉砕し、主に別用途の詰め物や緩衝材・埋め戻し材料など、物性要求の低い用途にリプロダクトする手法です。

しかし、元のXPEのしなやかさや強度は再現しにくく、品質確保が課題です。

2. 焼却やケミカルリサイクル

燃焼による熱回収や、ケミカルリサイクル(分解して油や原料に戻す)も一部で模索されてきました。

しかし、分解コストや設備投資が高く、広範化は進んでいません。

XPEリサイクルにおける最新技術動向

注目されているのは「超臨界流体」や「深層加水分解」などの新技術です。

例えば超臨界流体は、通常とは異なる高温高圧下でXPEの架橋部を断ち切り、可塑性を回復させるという技術です。

これにより、より高付加価値の用途にもリサイクル材を展開できる期待が出ています。

実用化に向けては「どこまでの物性復元ができるか」「コスト効率」「CO2削減効果」などを精査し、現場の実需と折り合う工夫が必要です。

また、メーカー各社はXPEの設計段階から「リサイクルしやすさ」を考慮した材料開発に着手しており、製品ライフサイクル全体での最適化がキーワードになっています。

製造現場で活かしたい“現実的”リサイクルへのアプローチ

現場主導の分別・回収とサプライチェーン全体での工夫

私が工場長を務めていた時代、廃棄物の分別教育や回収ラインの組み直しは非常に地味ながら重要な取り組みでした。

現場でできることは、「混ぜない」「丁寧に分ける」ことに尽きます。

例えば、加工工程で発生する端材や不良品を、他材料と混ざる前に分別回収できればサイクル効率が大幅に向上します。

また、サプライヤー側も「回収しやすいパッケージ」「材料識別マークの活用」など、ユーザー現場の手間を減らす工夫が求められます。

こうした細かな改善の積み重ねが、最終的には調達コストや処理コストの削減につながるのです。

コミュニケーションがカギ:バイヤーとサプライヤーの意識醸成

XPEのリサイクルを推進するためには、バイヤー側がサプライヤーによるリサイクル材供給力やリサイクルフローの現実を理解し、現場と連携しながら挑戦していく姿勢が不可欠です。

一方で、サプライヤーも「要求仕様や品質条件のどこまでが譲歩可能なのか」「リサイクル材の特徴とメリットをどう提案できるか」を考えるべきです。

両者が「できない」「前例がない」で止まるのではなく、互いの現状と課題、コスト・手間・リスクを正直に共有することが、実務上の突破口となります。

「現場の強さは地味な積み重ねに宿る」――これが私の持論です。

環境負荷低減と企業価値向上へのインパクト

XPEリサイクルによるCO2削減効果と社会的意義

石油化学由来のXPEは、新規原料からの生産で大量のエネルギー・資源を消費します。

これに対し、回収・リサイクル材を混合利用することでCO2排出量を大幅に抑制できる計算です。

新たなCO2排出規制や炭素税対応も現実味を帯びるなか、XPEリサイクル推進はサステナブル調達・グリーン生産の一環として、企業価値を高める武器になります。

メーカー・バイヤー・サプライヤーの「三方よし」を目指して

最前線で奮闘する工場現場、マクロ視点で方針を描くバイヤー、供給力と技術力を磨くサプライヤー。

三者の目線が交わるポイントにこそ、本質的なXPEリサイクルの進化が潜んでいます。

現場発想のリサイクル設計が調達コスト低減に直結し、その成果がブランドイメージの向上や優秀な人材獲得にも波及していきます。

単なるリサイクルを超えて、「脱炭素」「循環型社会の実現」という大きな目標への一歩として、XPEリサイクルは今後さらに存在感を増すはずです。

おわりに:一歩先の“ラテラルシンキング”で新たな地平線へ

20年以上現場を見てきて実感するのは、「業界常識」や「これまでのやり方」こそが変革のブレーキになるという事実です。

架橋発泡ポリエチレンのリサイクルは、依然として技術的・経済的ハードルが高い分野ですが、だからこそ、既存の枠に縛られない“ラテラルシンキング”が重要です。

「XPEの再資源化は無理だ」と思考停止せず、現場から分別や回収の工夫、小さな実践を重ね、サプライチェーン全体で知恵を出し合うことで、必ず突破口が見えてきます。

業界の進化は現場から。

今こそ一人ひとりが声を上げ、小さなイノベーションを積み重ねて、製造業の新しい未来を切り拓いていきましょう。

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