原産地規則とEPA(経済連携協定)——調達で使える場面と書類 | newji
製造業の見積・発注クラウド

その単価は妥当か。
AI が根拠付きで分析。

相見積の比較も発注も進捗管理も、ひとつの画面に。

サービス資料をダウンロードPDF・無料/1分で受け取れます

投稿日:2026年10月1日

原産地規則とEPA(経済連携協定)——調達で使える場面と書類

この記事のポイント(結論先出し)

EPA(経済連携協定)の低い税率は、相手国で作られたというだけでは使えない。協定ごとに決められた原産地規則を満たす「原産品」であることを、書類で示せる必要がある[2]。調達の担当者が関わる場面は二つある。一つはEPA 税率で部材を輸入するときで、納税義務者である輸入者は、相手国の公的機関の証明書があっても原産性を自分で把握し、税関に説明できるようにしておく必要がある[3]。もう一つは自社の製品を EPA で輸出するときで、国内で買った材料・部品を「原産」として数えるには、その仕入先からの情報が要る[5]。どちらも、仕入先・材料・工程を変えたら原産性を確かめ直すことが運用の要になる。以下は 2026 年 10 月時点で確かめた税関・ジェトロの資料に基づく。

EPA 税率は「原産品」にしか使えない

💡 こうした調達・受発注の属人化、Newji one なら「ひとつの画面」で解決。見積依頼から発注・進捗・承認までAIが下支えします。
サービス資料を見る(無料)→

原産地規則は、物品の「国籍」を決めるルールである[1]。EPA の原産地規則は、原産品と認める基準(原産地基準)と、それを証明・申告する手続(原産地手続)の二つでできている[1]。EPA を結んでいる国から輸入した品であっても、その協定の規則を満たす原産品であることを確かめ、協定に決められた手続を踏まなければ、低い税率は使えない[2]。

原産品と認められるのは、基本的に「完全生産品」「原産材料のみからなる産品」「実質的変更基準を満たす産品」の三つである[1]。製造業の部材でいちばん関係するのは三つ目で、第三国の材料を使っていても、最終の産品が元の材料から大きく変わっていれば原産品と認められる。その「大きな変化」を判断する基準は品目ごとに決まっており、品目別規則として協定の附属書にまとめられている[1]。

品目別規則の考え方は、次の三つかその組み合わせである[1]。どれを使うかで、仕入先に頼む資料が変わる。

基準 何を見るか 裏付けになる書類の例
関税分類変更基準 非原産材料の関税分類番号と、できた産品の番号が一定以上変わっているか(項=4 桁、号=6 桁など) 関税分類番号を書いた総部品表または材料一覧表、製造工程フロー図、生産指図書
付加価値基準 締約国で付加された価値が、産品の価額に対して基準値(例: 40%)以上か 製造原価計算書、仕入帳、伝票、請求書、支払記録、価格表
加工工程基準 化学反応など、決められた工程が締約国で行われたか 契約書、製造工程フロー図、生産指図書、生産内容証明書

表の書類の例は、税関の RCEP 協定の手引きに挙げられているものである[4]。付加価値の計算例として、税関の資料は、産品の価額 10,000 米ドルのうち非原産材料が 2,000 米ドルなら、付加された価値は(10,000−2,000)÷10,000 で 80% になり、40% 以上という基準を満たす、という例を示している[1]。

輸入するとき——証明書があっても、責任は輸入者にある

税関は、EPA 税率で輸入するまでの流れを、相手国と EPA を結んでいるかの確認、関税分類番号の特定、EPA 税率があるかの確認、適用される原産地基準の特定、基準を満たすかの確認、原産地手続、税率の適用、必要に応じた事後確認への対応、の順に説明している[2]。一つの国と複数の EPA を結んでいる場合は、どれを使うかを利用者が選ぶ。税率の差だけでなく、その協定の原産地規則を満たせるか、満たすことを確認する負担がどれくらいかも選ぶ材料になる[2]。

購買の担当者が誤解しやすいのは、相手国の公的機関が出した原産地証明書があれば安心、という見方である。税関の FAQ は、第三者証明の制度でも通関時に追加書類や説明を求められたり事後確認を受けたりすることがあり、輸入者は納税義務者として原産性を十分に把握し、税関の求めに応じて明らかにする必要があるとしている。記載内容の不備や、原産性のない貨物への発給、偽造によって特恵が否認された事案もあるという[3]。

輸入者自身が原産品申告書を作る自己申告の制度もある。日豪 EPA と CPTPP では、生産者や輸出者が作った誓約書に基づいて輸入者が申告書を作ることも原則として認められているが、取引契約や継続的な取引関係を前提にした合理的な信頼が必要で、税関から生産者や輸出者に情報提供を求めたときに速やかに出せることが前提になる[3]。日 EU・EPA と日英 EPA では、輸入申告の時点で輸入者が原産品であることの情報を持っていることが前提とされている[3]。

購買の立場からは、ここで仕入先に頼むことが決まる。

  • どの協定のどの基準で原産品と判断したかを、品番ごとに出してもらう。同じ関税分類番号の品でも、原材料や工程が違えば原産性の判断が違うため、まとめて扱えない[3]
  • 税関から求められたときに、根拠の資料を速やかに出すことを取引条件にしておく。出せなければ EPA 税率が否認される場合がある[3]
  • 申告書に不備があっても、輸入者は直せない。原産品申告書の訂正は作成者しかできない[3]。受け取ったら記載を確かめ、誤りは作成者に直してもらう

課税価格が 20 万円以下で申告書の提出を省略できる場合でも、原産地規則を満たしていることは必要である[3]。また、原産品申告書に誤りがあって特恵が否認され、適用する税率が変わった場合には、過少申告加算税の対象になる場合がある[3]。

保存する書類と期間

原産性を示す書類には保存の義務があり、期間は協定と立場で違う。RCEP 協定では、日本の輸入者は、産品が原産品であることを証明するために必要なすべての書類を、輸入許可の日の翌日から 5 年間保管する。輸出者・生産者として原産品申告書を作った場合は、作成した日から 3 年間である[4]。第三者証明の制度でも、原産地証明書の発給を申請した人や原産品判定を依頼した人には、発給日の翌日から協定に定められた期間(3 年または 5 年)の保存義務がある[5]。

保存を怠ると、事後確認のときに十分な情報を出せず、EPA 税率の適用が否認される可能性がある[3]。保存の対象には、申告書のほか、契約書、仕入書、価格表、総部品表、製造工程フロー図、投入記録、出荷記録、支払記録、帳簿などが挙げられている[4]。購買の書類だけを別に保存していると、事後確認の時点で工程や投入の記録とつながらない。経済産業省の資料も、根拠資料は原産地証明の担当部門で保管していなくてもよく、関係部署から適宜得られる社内体制になっていればよいとしている[5]。どの部署が何を何年持つかを一覧にしておく。発注書・見積書の保存期間の考え方は 注文書・見積書は何年保存するかで書いた。

RCEP 協定の原産品申告書には、作成の日から 1 年間という有効期限もある[4]。継続して輸入する品は、期限を台帳で管理する。

輸出するとき——国内の仕入先に何を頼むか

自社の製品を EPA で輸出する側に立つと、今度は自社が仕入先に情報を求める立場になる。付加価値基準や関税分類変更基準で、使った材料・部品を「原産」として扱うには、その部材が協定の品目別規則を満たす原産品であることを確かめる必要がある[5]。経済産業省の原産地証明室は、国内で調達した材料・部品については、その供給者(サプライヤー)からの情報が根拠資料になるとしている[5]。

確認の方法は、対比表や計算ワークシートで原産性を示す方法のほか、「サプライヤー証明書」でもよい[5]。同じ資料は、サプライヤー証明に書く内容として、作成年月日、供給先名、製造者の名称・住所、担当者の氏名・部署・連絡先、利用する協定名、原産品であることを証明する旨、品名(英文)、製造番号・型番などの特定情報、HS コード、判定基準、生産場所を挙げている[5]。

ここで発注側が気をつけたいのは、仕入先に全部の部品の証明を求めないことである。同じ資料は、仕入先に証明を求めるときは、付加価値基準なら価格が高い部品や原産性を確認しやすい部品に限るなど、負担をできるだけ小さくするのが望ましいとしている[5]。ジェトロのマニュアルにも、積み上げ方式で計算するとき、閾値を超えるまでの原産材料だけを積み上げればよく、すべての原産材料の価額を出す必要はないという例が載っている[6]。基準をどう満たすかを先に試算し、必要な部品だけ仕入先に頼む。部品表を調達に使える形で整えておくことが、この作業の前提になる(部品表(BOM)とは)。

製造を他社に委託している場合も、条件を満たせば自社が生産者として原産品判定を依頼できる。経済産業省の資料は、①生産の企画・仕様の決定、②原材料の調達・支給・指定、③製造全般の管理・指揮を自社が行い、相手に製造させる場合は、両社とも生産者に当たるとしている。その場合は、相手との関係を示す委託契約書、注文書・納品書、図面や QC 工程表、材料の手配書なども保存する[5]。

仕入先・材料・工程を変えたら、原産性も変わる

原産性の確認は一度やれば終わりではない。税関の FAQ は、同じような産品でも、使う材料や生産工程、材料の使用割合が違えば、それぞれ原産性を確かめる必要があるとしている[3]。購買の現場で起きやすいのは次のような変更である。

  • コストダウンで、材料の購入先を EPA の締約国外に変えた
  • 仕入先が、材料のグレードや下請の加工先を変えた
  • 為替や材料費の変動で、非原産材料の価額の割合が上がった

三つ目は見落としやすい。付加価値基準は価額の割合で判断するので、何も変えていなくても、材料の値上がりで基準を割ることがある。継続して使う品目は、価格改定のたびに計算を見直す手順を入れておく。

関税分類番号にも注意が要る。協定ごとに採用している HS(関税分類の国際的な統一システム)の年版が違い、原産地証明書にはその協定が採用している年版の HS コードを書く必要がある[6]。ジェトロの整理では、たとえば日 EU・日米・日英は 2017 年版、RCEP の品目別規則は 2022 年版になっている(2024 年 2 月時点)[6]。仕入先に HS コードを書いてもらうときは、どの年版かも書いてもらう。

米国向けの原産地は、EPA とは別のルール

米国の追加関税は、EPA の原産地規則ではなく、米国の非特恵の原産地の考え方で国が決まる。商流を変えるだけ、単純な組立をするだけでは原産地は変わらないと判断されるケースが大半だとジェトロは注意を促している(2026 年 2 月)[7]。EPA で原産品と認められた品でも、米国の判断とは結論が違いうる。米国関税と契約の決め方は 米国の関税措置と購入契約の記事で、調達先を国ごとに分けるときの考え方は チャイナプラスワンの記事で扱う。

購買の手順に組み込む

EPA の確認を通関担当や輸出担当だけに任せていると、購買側の変更が伝わらずに原産性が崩れる。購買の業務に、次の点を入れておく。

1. 品目マスタに原産地の情報を持つ。原産国、HS コードと年版、適用している協定と基準、根拠資料の所在。

2. 見積依頼で原産情報を求める。EPA を使う品は、見積の段階で原産国と原産品の判断の有無を回答項目に入れる。英文の見積依頼に書く項目は 英文の見積依頼・発注書の書き方を参照。

🛠 見積依頼なら — 取引先はアカウント登録なしで、届いたメールのリンクから回答できる Newji one(製造業の見積・発注クラウド/サービス資料は無料)

3. 変更の連絡を取り決める。材料・工程・下請先を変えるときは事前に知らせてもらう。

4. 価格改定のたびに付加価値を再計算する。

5. 保存の分担を決める。どの部署が、どの書類を、何年持つか。

まとめ

EPA 税率は原産品にしか使えず、原産品かどうかは協定ごとの品目別規則で決まる[1]。輸入するときは、証明書があっても輸入者が原産性を把握し、求められれば説明する責任を負う[3]。輸出するときは、国内で買った部材を原産として数えるために仕入先の情報が要り、負担を小さくするため対象の部品を絞って頼むのがよい[5]。そして、仕入先・材料・工程・価格のどれかが動けば、原産性は確かめ直しになる。購買の手順に原産地の確認を組み込んでおけば、税率の差を取り逃がすことも、事後確認で否認されることも減らせる。

出典・参考資料

  1. 原産地規則の概要(財務省関税局・税関/2024 年 7 月)
  2. EPAを利用して日本に輸入する方法について(税関 EPA・原産地規則ポータル)
  3. 「自己申告制度」利用の手引き FAQ(財務省関税局・税関/2025 年 6 月)
  4. 「自己申告制度」利用の手引き~RCEP協定~(財務省関税局・税関/2025 年 6 月)
  5. 原産地証明書(第三者証明制度)における保存書類、検認とその事例(ジェトロ EPA ウェビナー)(経済産業省 貿易経済安全保障局 原産地証明室/2025 年 9 月 18 日)
  6. これだけは知っておきたいEPA/FTA 要点と注意点(日本貿易振興機構/2024 年 2 月 1 日)
  7. 米国関税措置に関連する留意点 ~意図せず不正行為を行わないために~(日本貿易振興機構/2026 年 2 月)

通商のルールを、購買の手順の側から読む

NEWJI総研は、調達・購買を中心に製造業の実務・法令・規格・市場動向を調べ、研修テキスト、実務書式、法令・規格の改訂対応、実務トレンドレポートの棚にまとめて出している調査の場です。

NEWJI総研を見る

WHITE PAPER

この記事の理解を深める
無料ホワイトペーパーをプレゼント

製造業の現場で使える実務資料(PDF)を無料でお届けします。"こんな資料が届きます" ↓ 下のボタンからどうぞ。

FREE DOCUMENT — サービス資料(PDF・無料)

見積依頼から比較まで、
ひとつの画面にまとめる方法

Newji one は、製造業の調達・受発注に特化したクラウド/AIエージェント。見積依頼・発注書作成・進捗管理・承認をひとつの画面に集約し、AIが比較と異常検知を担当。最後の「GO」だけ人が押す仕組みです。

  • 見積〜発注〜納期を一元管理。催促・転記のムダをゼロに
  • AIが相見積もり比較と異常検知。あなたは判断だけに集中
  • 取引先は「招待」で完全無料。自社コストだけで取引先ごとデジタル化

※ 取引先から招待された企業様は完全無料でご利用いただけます

NEWJI総研

購買・調達や設計・品質の実務を、
研修テキストと実務書式にまとめています。
無料サンプルで中身を確かめられます。

NEWJI総研の資料を見る

OEM/ODM 生産委託

アイデアはある。作れる工場が見つからない。
試作1個から量産まで、加工条件に合わせて最適提案します。
短納期・高精度案件もご相談ください。

加工可否を相談する

AI/DX支援

見積・発注、紙・FAX、品質記録など、
人に頼って回っている業務を、AIと仕組みで回る形に。
まずは無料でご相談ください。

AI/DX支援を見る

見積・発注クラウド Newji one

受発注が増えるほど、入力・確認・催促が重くなる。
受発注管理を“仕組み化“して、ミスと工数を削減しませんか。
見積・発注・納期まで一元管理できます。

機能を確認する

You cannot copy content of this page