英文の見積依頼・発注書の書き方|そのまま使える雛形と、通じない日本語表現 | newji

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投稿日:2026年8月27日 | 更新日:2026年8月31日

英文の見積依頼・発注書の書き方|そのまま使える雛形と、通じない日本語表現

この記事のポイント(結論先出し)

海外サプライヤーへの見積依頼で失敗するのは、英語力ではなく条件の書き落としである。日本の取引で暗黙になっている項目——検査の要否、梱包仕様、輸送費の負担区分、支払条件——は、海外では必ず明示しなければ相手の標準が適用される。本記事では、そのまま使える英文の見積依頼(RFQ)と発注書(PO)の雛形、そして日本語の商習慣をそのまま英訳すると通じない項目を整理する。

英文 RFQ で最初に決めるのは Incoterms

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国内取引の見積依頼で「納入場所:〇〇工場」と書けば、輸送費は売り手が持つのが通例である。しかし国境をまたぐ取引では、どこまでの費用と危険を誰が負担するかをIncoterms(インコタームズ)で明示する。これを書かなければ、相手は自社に有利な条件で見積る。

実務でよく使われるのは次の 3 つである。

条件 費用と危険が移る地点 買い手が負担するもの
EXW(工場渡し) 売り手の工場 輸出通関・海上輸送・保険・輸入通関・国内輸送
FOB(本船渡し) 積出港の本船上 海上輸送・保険・輸入通関・国内輸送
CIF(運賃保険料込み) 積出港の本船上(費用は仕向港まで) 輸入通関・国内輸送

比較のためには、依頼する全社に同じ条件を指定する。A 社が EXW、B 社が CIF で回答すれば、金額を並べても意味がない。港名まで含めて「FOB Shanghai」「CIF Yokohama」のように書く。

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英文 RFQ の雛形

Subject: Request for Quotation – Mounting Bracket BR-1042

Dear Sir or Madam,

We are XX Co., Ltd., a manufacturer based in Japan. We would like to request your quotation for the following part.

1. Item
Part name / number: Mounting Bracket / BR-1042
Drawing: See attached (BR-1042 Rev.C)
Material: SS400 equivalent, t3.2
Surface treatment: Trivalent chromate

2. Quantity
Initial order: 200 pcs
Estimated annual volume: 2,400 pcs (estimate only, not a firm commitment)
Please also quote unit prices for 500 / 1,000 / 2,000 pcs.

3. Delivery
Required delivery: by 15 October 2026
Trade terms: FOB Shanghai
Please state your lead time after receipt of order.

4. Quality
Inspection report: Dimensional inspection report required for the first lot
Material certificate: Mill certificate required
Packing: Individual poly bag, then carton (please advise your standard packing)

5. Payment
Proposed terms: T/T 30 days after B/L date
Currency: USD

6. Reply
Quotation due: 10 September 2026
Validity of quotation: Please state
Questions: Please reply to this email by 3 September 2026

We look forward to your reply.
Best regards,

日本語のまま英訳すると通じない項目

「検収」

「検収後に支払い」を acceptance と訳しても、相手には支払時期が伝わらない。いつ支払うかを日付の起算点で書くのが確実である。「T/T 30 days after B/L date」「T/T 45 days after delivery」のように、起算日を明示する。

「なるはや」「できるだけ早く」

ASAP と書くと、相手の「できるだけ早く」が適用される。希望日を書き、そのうえで「Please advise the earliest possible date if the above is not feasible」と添える。

「善処します」「検討します」

日本語では留保の表現だが、直訳すると前向きな回答と受け取られる。判断が決まっていないなら「We will confirm and reply by 〇日」と、いつ答えるかを書く。

「特急対応」

特急料金の有無を明示しないと、通常価格で受けて後から追加請求になる。「If expedited production is required, please quote the additional charge separately」と書いておく。

「品質基準」を言葉で書かない

「高品質でお願いします」「日本品質で」といった依頼は、相手にとって判断基準にならない。何をもって合格とするかを、数値と方法で書く

寸法なら公差と測定箇所、外観なら限度見本の有無、表面処理なら膜厚の範囲と試験方法。「Appearance: no scratches」ではなく「No scratches longer than 0.5 mm on surface A (see drawing)」のように、判定できる形にする。曖昧な基準は、不良が出たときに双方の主張が食い違う原因になる。

初回は少量で試す前提を書く

新規の海外サプライヤーでは、いきなり量産数量を発注しない。初回サンプル、初回量産(少量)、本量産と段階を分け、それぞれの数量と評価基準を RFQ の段階で示す。相手も設備と工程の準備を計画しやすくなる。

We plan to proceed in three steps:
1) Sample: 5 pcs, for dimensional and appearance evaluation
2) Initial production: 200 pcs, after our approval of the sample
3) Mass production: from 500 pcs per order
Please quote unit prices for each step.

英文発注書(PO)に入れる項目

発注段階では、見積で合意した条件を PO に落とす。国内取引であれば取適法第 4 条が明示事項を定めているが[1]、海外取引でも記載すべき項目は実質的に重なる。国内の 12 項目については発注書に明示しなければならない 12 項目で扱っている。

PURCHASE ORDER

PO No.: PO-2026-0915
Date: 15 September 2026
Buyer: XX Co., Ltd. (address)
Supplier: YY Co., Ltd. (address)

Item: Mounting Bracket BR-1042 (Drawing Rev.C)
Quantity: 200 pcs
Unit price: USD 3.85
Total amount: USD 770.00
Currency: USD

Trade terms: FOB Shanghai
Delivery date: by 15 October 2026
Shipping mark: XX / BR-1042 / C/No.
Payment terms: T/T 30 days after B/L date

Required documents: Commercial Invoice, Packing List, B/L, Mill Certificate, Dimensional Inspection Report

Remarks: Any change in specification or quantity requires written agreement from the buyer prior to production.

最後の Remarks は入れておきたい。仕様や数量の変更に事前の書面合意を求める一文があるだけで、勝手な材料変更や数量の切り上げを防ぎやすくなる。

必要書類(Required documents)を書き落とさない

輸入通関と社内の受入検査で必要な書類は、PO に列挙しておく。後から依頼すると、出荷後では作れない書類がある。

書類 用途
Commercial Invoice 通関・支払
Packing List 通関・入荷検品
B/L(船荷証券)または AWB 貨物の引き取り
Mill Certificate 材質の証明
Inspection Report 受入検査
Certificate of Origin 関税上の原産地確認(必要な場合)

国内取引との違いで注意すること

海外サプライヤーとの取引には、国内の取適法は適用されない。ただし逆に、国内の取引先に対して海外の慣行を持ち込むと問題になる場面がある。

たとえば、海外では発注後の数量変更や納期変更が交渉事項として扱われることがあるが、国内で同じ運用をすると、取適法が禁じる「不当な給付内容の変更」や「協議に応じない一方的な代金決定」に触れうる[2]。国内外で調達を並行して行う場合、手順書を分けておくのが安全である。

また、日本国内で行われた取引であれば、取引の相手方が外国法人であっても本法が適用される場合がある[1]。海外企業の日本法人と取引する場合は、国内取引として扱われるかを確認しておきたい。

海外調達でも、国内の明示ルールを土台にする

英文の書式をゼロから作る必要はない。国内の発注書で求められる項目が、そのまま海外取引でも役に立つ。取適法が定める明示事項には、給付の内容、受領する期日、受領する場所、検査を完了する期日、代金の額、支払期日などが含まれる[1]。これらはいずれも、英文 PO でも必ず書く項目である。

異なるのは、国内では暗黙で通る項目を明示しなければならない点である。輸送費の負担区分(Incoterms)、通貨、必要書類、梱包仕様——国内なら「いつもどおり」で済むものが、海外では毎回書く対象になる。

なお取適法では、発注書面を電子メールなどの電磁的方法で明示することが、相手の承諾なしに可能となった[3]。海外取引ではもともとメールと PDF が中心なので、この点で国内外の運用を揃えやすくなった。

支給材がある場合は特に注意する

金型や材料を支給して海外で加工してもらう取引では、支給品の扱いを PO に明記する。国内取引では、原材料等を有償支給する場合に品名・数量・対価・引渡しの期日・決済期日・決済方法の明示が求められる[1]。海外でも同じ項目を書いておくと、支給材の紛失や過剰消費が起きたときの取り決めが明確になる。

あわせて、支給した金型の所有権と保管責任、生産終了後の返却または廃棄の条件も書いておく。ここが曖昧なまま取引が終わると、金型が現地に残ったまま連絡が取れなくなることがある。

相手が国内の事業者なら取適法がかかる

英文でやり取りしていても、取引の相手方が国内の受託事業者であれば取適法の対象になる[5]。海外の商社を経由する場合でも、実際に製造を委託する先が国内の中小企業なら、発注時の明示義務や支払期日の制限がそのまま適用される。

特に注意したいのが価格の決め方である。大量発注を前提に決めた単価を、少量の発注にもそのまま適用するような進め方は、買いたたきの具体例として挙げられている[4]。英文の見積依頼では数量を明示するのが通例なので、その数量が変わったときに単価を据え置かないよう注意する。

逆に、相手が海外の事業者だけで完結する取引なら、取適法の適用はない。ただし条件を書き切る必要性は変わらない。むしろ法律による最低限の保護がないぶん、契約書と発注書の記載がすべてになる。

まとめ

英文の見積依頼と発注書で重要なのは、流暢さではなく条件を数字と固有名詞で書き切ることである。Incoterms を全社同一にする、支払時期を起算日で書く、必要書類を列挙する——この 3 点を守れば、多くの行き違いは防げる。

そして、条件を書き切ることは相手のためだけではない。仕様が明確な依頼ほど回答が早く返り、比較もしやすくなる。海外調達で時間がかかる原因の多くは、輸送日数ではなく往復のやり取りにある。

あいまいな表現を避けるという原則は、日本語の見積依頼と変わらない。見積依頼メールの書き方と例文で整理した項目を、そのまま英語に置き換えるところから始めるとよい。

出典・参考資料

  1. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  2. 取適法・振興法(公正取引委員会)
  3. 2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!(取適法リーフレット)(公正取引委員会)
  4. 下請法 知っておきたい豆情報 その12(公正取引委員会 中部事務所)
  5. 中小受託取引適正化法(取適法)関係(公正取引委員会)

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