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PETシート(A-PET・PETG)の発注——JIS Z 1716 の厚さ許容差とヘーズ、再生材の区分 SF1・SF2・SN

この記事のポイント(結論先出し)
透明な PET シート(A-PET)を「PET 0.5t 透明」とだけ書いて発注すると、厚さの許容、透明さの基準、再生材の混ぜ方、食品に触れてよいかが決まらない。包装用の無延伸 PET シートには JIS Z 1716 があり、厚さ 2.0 mm 未満のシートについて、厚さの許容差(0.5 mm 以上なら ±10 %)、長さ・幅の許容差(0〜+20 mm)、透明シートのヘーズ 10 % 以下、固有粘度による 4 区分、再生材と食品接触の区分(SF1・SF2・SN)を決めている[1]。PETG と呼ばれる材料はシクロヘキサンジメタノールを使ったコポリエステルで、JIS K 6937-1 の記号なら TP 2T/CHT(エチレングリコール・シクロヘキサンジメタノール・テレフタル酸のコポリエステル)で表せる組成だが、「PETG」という呼び名そのものはプラスチックの記号の規格に載っていない[2][7][8]。発注では規格番号と表示記号、又は材料メーカーとグレード、厚さ、透明さの指標と測り方、食品接触の区分を書く。電気絶縁に使う PET は別の規格(JIS C 2318)の延伸フィルムになる[5]。
目次
「PET シート 透明」では何が決まらないのか
装置の窓やカバー、治具の保護板、部品トレー、ブリスター(成形した透明な包材)、銘板の下地など、工場では透明な樹脂シートを材料として買う場面が多い。PET シートはその候補の一つで、注文書には「PET 0.5t 透明 1000×2000」のように厚さと寸法だけが書かれやすい。届いたシートが少し曇っている、厚さが場所によって違う、熱成形したら白くなった、というときに、良否を言う基準がない。
この記事は、工業用途の部材・包材として PET シート(A-PET や、PETG と呼ばれるコポリエステルのシート)を発注するとき、注文書と仕様書に何を書き、受け取るときに何を確かめるかを整理する。3D プリンター用の材料の話ではない。樹脂としての PET の性質(結晶と非晶、乾燥、再生材の扱い)はPET 樹脂の選び方で扱ったので、ここでは平らなシートとして買うときの指定に絞る。透明な板の比較相手としては、アクリル板(PMMA)JIS K 6718 の発注、塩ビ板(硬質 PVC)JIS K 6745 の発注、ポリカーボネート(PC 樹脂)部品の発注がある。ガラスで作る場合は強化ガラス・板ガラスの発注で扱った。
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JIS Z 1716 の範囲——包装用・2.0 mm 未満・無延伸
JIS Z 1716(包装用無延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)シート及びフィルム)は、未使用の PET、再生された PET、又はその組合せの原料から作った無延伸の PET コポリマーのシートとフィルムについて、要求性能と試験方法を定めた規格である。2015 年改正の版で、ISO 13636:2012 を基に国内の実情に合わせて変更している[1]。
適用範囲には限定が 3 つある。①包装用であること、②発泡シートと収縮フィルムは除くこと、③厚さ 2.0 mm 未満のシートとフィルムだけに適用できること[1]。装置のカバーに使う 3 mm のシートは、この規格の範囲の外である。範囲の外の用途でも、厚さの許容差や透明さの基準を決める物差しとして借りることはできるが、「JIS Z 1716 品」と書いて範囲外の厚さを頼むと、どの規定が当てはまるのかで争いになる。範囲外なら、借りる項目を数字で書き写す。
原料は、主として JIS K 6937-1 に規定するエチレングリコールとテレフタル酸から重合した未使用の PET 若しくはコポリマー又はその組合せとし、JIS K 7390-1 に定義された PET ボトル再生材料でも作ることができる、とされている[1]。
厚さと寸法の許容差
JIS Z 1716 の寸法の許容差は次のとおりである[1]。
| 項目 | 条件 | 許容差 |
|---|---|---|
| 厚さ | 0.2 mm 以下 | ±20 % |
| 厚さ | 0.2 mm を超え 0.5 mm 未満 | ±15 % |
| 厚さ | 0.5 mm 以上 | ±10 % |
| 平板の長さ・シートの幅 | — | 0〜+20 mm(違う許容差は協定による) |
| ロールの長さ | — | マイナスを認めない |
厚さは校正された厚さ測定器で 0.01 mm 単位で測る[1]。0.3 mm のシートなら ±15 % で 0.255〜0.345 mm の幅があり、熱成形して深く絞る容器や、厚さで剛性を決める部材では、この幅が広すぎることがある。必要なら許容差を数字で別に書く。長さ・幅はプラス側だけ(0〜+20 mm)なので、切断寸法をきっちり合わせたい部材は、シートを買ってから自社か加工先で切る前提にするか、切断品として公差を指定する。
透明さは、ヘーズと全光線透過率で書く
「透明」とだけ書くと、わずかな曇りが不良かどうかが決まらない。JIS Z 1716 は、透明なシートについてヘーズ(光の広角の散乱で生じる曇りの度合い)を 10 % 以下と定め、JIS K 7136 の方法で、シートの幅方向の中央から採った 3 個の試験片の平均を報告することとしている[1]。
JIS K 7136(プラスチック-透明材料のヘーズの求め方)は 2026 年 10 月 20 日に改正されたばかりで、透明で基本的に無色のプラスチックに使い、ヘーズ値 40 % 未満の材料に適用でき、蛍光物質を含むものには適用しないとしている。試験片の厚さを 3 か所測り、シートなら 0.02 mm まで記録し、報告には厚さの平均値と光源の種類を書く[3]。ヘーズは厚さで変わるので、値だけでなく厚さと一緒に受け取る。
どれだけ光を通すかは全光線透過率で見る。JIS K 7361-1(同じく 2026 年 10 月 20 日改正)は、平らで透明な基本的に無色のプラスチックの可視領域の全光線透過率の試験方法で、厚さ 10 mm を超えない成形材料・フィルム・板に適用する[4]。窓やカバーで「見えればよい」のか「読み取りカメラが透過して読める必要がある」のかで、要る指標が変わる。曇りが問題ならヘーズ、明るさが問題なら全光線透過率を書く。
再生材と食品接触の区分——SF1・SF2・SN
JIS Z 1716 は、原料を食品接触の基準で区分し、シートの層構成と組み合わせてクラスを決めている[1]。
SF1:層を未使用原料(V)か、食品に直接触れてよい追加処理をした再生原料(MRP-FD)で構成するもの。食品に直接接触する層に使える。
SF2:食品側の A 層は V か MRP-FD、外層か中間層の B 層は食品に間接的に触れてよい再生原料で構成するもの。B 層は食品に直接触れて使えない。
SN:食品以外の用途の再生原料を含むもの。食品接触のいかなる用途にも使えない。
食品用の器具・容器包装に使うシートは、昭和 34 年厚生省告示第 370 号のポリエチレンテレフタレートを主成分とする合成樹脂製の器具又は容器包装の規格基準に適合しなければならない、とも定めている[1]。食品用の器具・容器包装には令和 2 年 6 月 1 日施行のポジティブリスト制度もかかり、厚生労働省は 2025 年 6 月 1 日以降の制度のページを公開している[6]。食品工場の設備の窓や、食品に触れるトレーの材料として買うなら、クラスを注文書に書き、適合の説明を出してもらう。確かめ方は食品に触れる材料を調達するときで扱った。
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食品に触れない部材でも、再生材の有無は透明さや異物に関わる。「SN でよい」と決めるなら、その代わりにヘーズと異物の受入基準を書いておく。
固有粘度の区分と、表示の読み方
JIS Z 1716 は、シートを固有粘度(分子の長さの目安)で 4 つに分け、用途例を挙げている。IV1 は 0.60 dl/g 未満で機械的強度を必要としない容器包装、IV2 は 0.60 以上 0.70 未満で一般の熱成形の容器包装、IV3 は 0.70 以上 0.80 未満で厚肉・深絞りの容器包装、IV4 は 0.80 以上で耐熱性容器(CPET)である[1]。要求性能としては、ほかに引張降伏応力(長さ・幅方向とも 45 MPa 以上)、長さ方向の加熱収縮率(60 ℃ で 30 分以上加熱して 3 % 以下)、酸素透過係数がある[1]。
規格に沿ったシートの包装には、規格番号・食品接触の分類・固有粘度の分類・層構成で記述した表示をする。規格の例では「JIS Z 1716-APET-SF1-IV3-V/MRP/V」のように書き、APET は無延伸 PET シートの略号である[1]。この記号を注文書にそのまま書けば、クラス・粘度・層構成が一度に決まる。
PETG は記号で言うと何か
英国の接合・材料の研究機関 TWI は、PETG を、PET の分子鎖のエチレングリコールをより大きなシクロヘキサンジメタノールに置き換えて結晶化を抑えた、透明で非晶の熱可塑性ポリエステルと説明している[8]。JIS K 6937-1(熱可塑性ポリエステル(TP)成形用及び押出用材料-第 1 部:呼び方のシステム及び仕様表記の基礎)は、この規格がホモポリマーと種々の組成のコポリマーに適用されるとし、コポリエステルの化学構造を示す記号の例に「TP 2T/CHT:エチレングリコール,シクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸(又はそのエステル)からなるコポリエステル」を挙げている[2]。PETG と呼ばれる材料の組成を JIS の記号で書くなら、この TP 2T/CHT が近い。
一方、プラスチックの記号と略語を定めた JIS K 6899-1 には、PET(ポリエチレンテレフタレート)や PCT(ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)は載っているが、「PETG」という略語は載っていない[7]。つまり「PETG」は業界の呼び名で、組成の割合も決まっていない。注文書に「PETG」とだけ書けば、どの組成のコポリエステルが来るかは仕入先次第になる。PETG を指定するなら、材料メーカーとグレードで固定するか、少なくとも JIS K 6937-1 の記号と、要る性質(透明さ・耐衝撃・熱成形の条件)を書く。
電気絶縁に使う PET は別の規格
モーターの絶縁紙やトランスの層間絶縁、太陽電池のバックシートに使う PET は、包装用の無延伸シートではなく、二軸に延伸したフィルムである。JIS C 2318(電気用二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム)は、電気・電子機器、電線などの電気絶縁用とコンデンサの誘電体用のフィルムを、1 種(一般電気用)から 5 種(耐熱耐加水分解性を更に高めたもの)まで 5 種類に分けている[5]。厚さそのものは規定せず、1 種なら 12〜500 µm などの推奨範囲を示している[5]。
絶縁の目的で「透明 PET シート」を買うと、包装用の A-PET が届くことがある。電気絶縁に使うなら、JIS C 2318 の種類と厚さで指定する。呼び方の例は「ポリエチレンテレフタレート-JIS C 2318-PET-1種-100-20-200-nc」のように、名称・規格番号・種類・厚さ(µm)・幅・長さ・色の順である[5]。
注文書と仕様書に書くこと
以下は規格の要求ではなく、発注側の実務としての提案である。
- 材料の特定包装用で範囲内なら「JIS Z 1716-APET-SF1-IV2-V」のような表示記号。範囲外やコポリエステルなら材料メーカーとグレード、又は JIS K 6937-1 の記号。
- 厚さと許容差規格の許容差で足りなければ数字で。測る場所と測定器も。
- 寸法シートで買うか、切断品として公差付きで買うか。
- 透明さヘーズ(JIS K 7136)か全光線透過率(JIS K 7361-1)の上限・下限と、測る厚さ。
- 食品接触触れるかどうか。触れるならクラスと告示・ポジティブリスト制度への適合の説明。
- 表面の保護と外観保護フィルムの有無、きず・異物・ブロッキングの受入基準。
- 変更の連絡原料・再生材の割合・製造場所を変える前に知らせること。
受け取るときに確かめること
初回は、包装の表示(規格番号と分類、寸法、製造業者、製造年月)と注文の一致を見る[1]。厚さは数か所を測り、許容差に入っているかを見る。透明さが要る部材は、ヘーズか全光線透過率の試験成績を厚さの記載つきで出してもらう。JIS Z 1716 は外観として、きず・ひび・たるみ・しわ・汚れ・異物・色むら・凸凹・ブロッキング(シートどうしが張り付くこと)などの使用上支障となる欠陥がないことを求めている[1]。どこまでを支障とみなすかは限度見本で決める。外観の決め方は外観の合否基準を仕入先と決めるで扱った。
よくある質問
Q. 3 mm の PET 板を JIS Z 1716 で指定できますか。
A. できない。JIS Z 1716 は厚さ 2.0 mm 未満のシートとフィルムだけに適用できる[1]。厚い板は、材料メーカーとグレードで指定し、厚さの許容差や透明さの基準を数字で書く。
Q. 「PETG」と書けば A-PET より割れにくいものが来ますか。
A. 呼び名だけでは決まらない。PETG は記号の規格に載っておらず、JIS K 6937-1 では TP 2T/CHT のようなコポリエステルとして扱われ、組成も幅がある[2][7]。割れにくさが要るなら、グレードを固定し、衝撃や曲げの確認を試作で行う。
Q. 部品を入れる袋も透明なものにしたい。
A. 袋は別の規格で指定する。ポリエチレンの袋はポリ袋(PE 袋)JIS Z 1711 の発注で扱っている。
まとめ
PET シートは「透明」と厚さだけで発注しない。包装用で厚さ 2.0 mm 未満なら JIS Z 1716 の表示記号(APET・食品接触のクラス・固有粘度・層構成)で書け、厚さの許容差は 0.5 mm 以上で ±10 %、透明シートのヘーズは 10 % 以下である。範囲外の厚さやコポリエステル(PETG)はメーカーとグレードで固定し、透明さはヘーズか全光線透過率を厚さと組で書く。電気絶縁なら JIS C 2318 の延伸フィルムを種類で指定する。
出典・参考資料
- JIS Z 1716:2015 包装用無延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)シート及びフィルム(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2015 年 8 月 20 日改正)
- JIS K 6937-1:2002 プラスチック-熱可塑性ポリエステル(TP)成形用及び押出用材料-第 1 部:呼び方のシステム及び仕様表記の基礎(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2002 年 2 月 20 日制定・2026 年 6 月 22 日確認)
- JIS K 7136:2026 プラスチック-透明材料のヘーズの求め方(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2026 年 10 月 20 日改正)
- JIS K 7361-1:2026 プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法-第 1 部:一般的方法(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2026 年 10 月 20 日改正)
- JIS C 2318:2020 電気用二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2020 年 9 月 23 日改正・2025 年 6 月 20 日確認)
- 食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について(2025年6月1日以降)(厚生労働省)
- JIS K 6899-1:2015 プラスチック-記号及び略語-第 1 部:基本ポリマー及びその特性(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2015 年 2 月 20 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
- What is PETG? (Everything You Need To Know)(TWI/技術 FAQ・2026 年 10 月 26 日閲覧)
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