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飲食店がオリジナル商品を作る際に見落としがちな「流通中の温度管理」

目次
はじめに:オリジナル商品の市場拡大と温度管理の重要性
近年、飲食店が自らのブランド力を活かしてオリジナル商品を開発し、店頭販売やECサイト、協力小売店での展開を進めるケースが増えています。
大手飲食チェーンはもちろん、個人経営店までもが「ここでしか買えない」オリジナル商品を武器に新たな収益源を開拓しています。
一方で、この流れに追従する中でしばしば見落とされるポイントが「流通中の温度管理」です。
安全・品質に敏感な現代社会だからこそ、たった一回のトラブルで消費者の信頼は崩れ、ブランドイメージに大きな傷がついてしまいます。
本記事では、現場のリアルな視点と製造業・流通業の実務経験から、飲食店がオリジナル商品を世に送り出す際に、なぜ「流通中の温度管理」がこれほどまでに重要なのかを掘り下げて解説します。
飲食店のオリジナル商品開発が直面する隠れたリスク
店舗での品質保証だけでは「本当の安心」が守れない
多くの飲食店が慎重にレシピ開発や原材料選定、厨房での調理工程には細心の注意を払っています。
しかし、その後の商品が自分たちの「目の届かない場所」に出される時、想像以上のリスクが潜んでいます。
たとえばチルド商品や冷凍食品、半生菓子、乳製品、精肉加工品などは、温度管理の乱れによる品質劣化や食中毒リスクが発生しやすい代表格です。
自社店舗だけの販売ならば店舗スタッフが庫内温度や衛生状態を直接管理できます。
ですが、委託先倉庫や運送業者、小売店、最終消費者の手元に届くまでの「温度監視」は目視できない工程が多いのです。
アナログ慣習が根強い流通現場の現実
特に食品流通業界は、未だにアナログ的な管理慣行の色濃く残る業界でもあります。
「伝票に温度を書き留めておけばOK」「積み替え時に一時的に常温になるのは仕方がない」など、現場都合や長年の暗黙知が横行している流通網は少なくありません。
温度記録計や自動計測装置を導入し、完全なエビデンス(証拠)管理まで徹底している先進的な物流会社は、まだ一部に限られています。
なぜ流通中の温度管理が見落とされるのか
開発から流通までを一気通貫で考える視点の不足
そもそも飲食店の多くは、「厨房の衛生管理」「調理工程の最適化」「原価管理」などにノウハウの蓄積があります。
一方で、商品開発から量産体制の構築、パッケージング、流通工程、アフター対応までをワンストップで統括できる体制や経験値は十分に揃っていないことが多数です。
パートナー商社や物流会社に委託した段階で「後はプロに任せた」という心理が働き、自店の基準でのトレーサビリティ管理や温度監視にまで意識が及ばなくなる、というのが実態です。
バイヤーもサプライヤーも「暗黙の了解」で済ます背景
さらに、商品を仕入れるバイヤー側も「商品スペック」や「納品価格」「ブランドイメージ」ばかりに目線が偏り、現場の温度管理体制について厳密なチェックや改善指示を行わないケースがあります。
サプライヤー(飲食店)側も、「取引先がそこまで要求しないから…」と現状維持を選びがちです。
このような暗黙のルールが、気が付けば「安全管理が盲点になる」土壌になっています。
実際に起こりうるトラブル例とそのインパクト
冷凍なのに微生物増殖、味・見た目の変質
一例として、冷凍惣菜の流通を考えましょう。
フック配送(中継拠点を経由する配送)の際、短時間でも常温に近い温度帯にさらされてしまうと、たとえ再冷凍したとしても内部で解凍→再凍結が起こるため食品の細胞が壊され、ドリップが出て食感が著しく悪化します。
最悪の場合、完全に冷凍されず微生物が活動しやすい温度帯(4〜10℃)に長時間留まってしまうことで、商品ごと回収となるリスクも。
ブランド毀損だけでなく、回収コスト・販路停止という甚大な損失となります。
チルド商品での「温度逸脱」→腐敗臭・味覚クレーム
乳製品や低温保存が必須な総菜の場合、混載配送や一時的な積み下ろし時に保冷車から外れることで、想定外の高温に曝されてしまうことがあります。
消費者クレームが発生した際に、「どの流通工程で問題が起きたのか」正確な温度履歴が残っていないと、原因特定も再発防止策も講じられません。
課題解決の糸口:現場発想で見る流通温度管理の進化
「見える化」と「エビデンス化」でブランド信頼を作る
現代の製造業・流通業では、IoTを活用したリアルタイム監視や、温度ロガーを利用した履歴管理が進んでいます。
商品ごとに温度情報を紐づけて管理し、「この商品はここからここまでこの温度帯で維持された証拠」が可視化できれば、取引先や最終消費者への信頼性は飛躍的に高まります。
物流ラベルにQRコードを付与し、トレーサビリティシステムに連携するケースも増えています。
バイヤー側も「温度管理基準を明文化」する流れ
一流のバイヤー企業はサプライヤー選定や監査時に「温度管理工程表」や「異常発生時の対応手順」を明文化した安全基準書を求めています。
逆にサプライヤー側も、「自社の商品はこのような温度管理下で流通できる」という管理力そのものを強みとして訴求できる時代に変わってきました。
現場目線で実践したい、流通温度管理チェックリスト
下記は私が実務の現場で感じた、飲食店・サプライヤーが実践すべき温度管理ポイントです。
- 物流委託前に、荷役・配送・保管現場の温度帯管理方法を実地確認する
- パッケージやコンテナ単位で「一次・二次的な保冷能力」「パッキング状態」の検証を行う
- 全工程の温度履歴を記録するロガーや温度ラベル導入を協議する(コスト投資価値あり)
- 異常発生時のエスカレーションルートを取引先含め明確化する(曖昧なままのリスクを防ぐ)
- 最終消費者に対し「どう保管してほしいか」をパッケージやWebで積極啓発する
これからの飲食オリジナル商品:昭和慣習卒業への一歩
現場の執念と「脱アナログ」が未来を切り拓く
温度管理の精度やトレーサビリティレベルは、「どうせそこまでしなくても…」と軽視してしまえば一生昭和のままです。
むしろ、現場経験者だからこそ「ここで事故が起きたら…」というリアルな危機感を主導力に変え、バイヤーともサプライヤーとも建設的な議論・協業を進めることが大切です。
バイヤーにも伝えたい「本質的な卸選び」の軸
バイヤー側が流通温度管理まで評価軸に加えることで、価格競争だけでは測れない安全・安心の差別化が明確になります。
飲食店サプライヤーは「うちは温度履歴まで提出できます」と訴求できれば、短期的な売り先確保を超え、中長期的な信頼・商機を安定獲得できるでしょう。
まとめ:温度管理を制する者が、オリジナル商品流通を制する
飲食オリジナル商品開発・流通は、アイディアや味覚だけではなく「目に見えない品質保証」の積み重ねが命です。
流通中の温度管理を見直し、現場発想の工夫と新しい仕組み作りで、消費者からも取引先バイヤーからも信頼される商品流通を実現しましょう。
最終的には、飲食業界全体の競争力・信用度向上にもつながるはずです。
温度管理をすり抜けることなく、「わかっている現場発」の安全・安心を、ぜひ今一度見直してみてください。
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