投稿日:2024年12月1日

購買担当者が知るべき国際調達における関税とFTAの活用術

国際調達と関税

グローバル市場で競争力を維持するためには、購買担当者が国際調達の重要性を理解し、関税についても深く知識を持つことが不可欠です。
国際調達とは、取引先が自国を超える、世界中のサプライヤーから最適な製品やサービスを取得するプロセスを指します。
このプロセスにおいて、関税はコスト構造に大きく影響を与える要素の一つです。

関税とは、輸入品に対して政府が課す税金であり、その目的は主に国内産業の保護、政府の収入源としての役割です。
購買担当者は、これらの関税が自社の調達コストにどのように影響するかを理解する必要があります。
例えば、関税率が高い場合、商品の総調達コストが上がり、ひいては製品の競争力を損ないかねません。

関税の基本とその影響

輸入関税について理解するためには、いくつかの基本的な概念を抑える必要があります。
まず、関税分類についてです。
関税分類は、HSコード(Harmonized System codes)と呼ばれる国際的に統一された分類システムを使用します。
HSコードは、6桁から成る番号で、国際的な貿易商品を識別し、どの関税が適用されるかを決定するために使われます。

関税は、その対象品目や国によって、異なる税率を設定しています。
基本税率は、WTOの最恵国待遇税率(Most Favoured Nation: MFN)に基づいて設定されることが多く、これは非差別的な基本税率です。
関税率は特定の国と地域とで異なるため、輸入先選定において重要な要素となります。

関税は単なる輸入コストに留まらず、企業の競争力の鍵を握る要素です。
関税が高いと、仕入れコストが増し、最終的な製品価格にも影響を及ぼす可能性があります。
そのため、購買担当者は常に関税率や貿易協定の動向に注意を払い、調達戦略を調整することが求められます。

FTA(自由貿易協定)の活用術

自由貿易協定(Free Trade Agreement: FTA)は、複数の国々が締結する協定で、互いの輸出入商品に対する関税を軽減または撤廃することを目指しています。
これは国際調達における大きな利点として、コスト削減や新市場開拓の機会を提供します。

FTAの具体的な利点としては、次の点が挙げられます。

1. 関税障壁の緩和

FTAによる関税削減は、原材料や製品の調達コストを大幅に引き下げます。
これにより、企業はより競争力のある価格で商品を提供できるようになります。

2. サプライチェーンの効率化

FTAは、特定の地域からの調達を促進し、サプライチェーン全体の効率性を向上させます。
輸送コストや時間の節約も考えられ、在庫管理の最適化にも寄与します。

3. 新市場へのアクセス

FTAは、新しい市場へのアクセスを容易にし、企業が多様な国々で市場を拡大するための足掛かりとなります。

購買担当者がFTAを有効に活用するためには、対象となる商品の原産地要件を満たすことが重要です。
原産地証明の取得といった手続きを知ることは、コスト削減を実現するために必要な具体的な手段です。

製造業におけるFTAと関税の最新動向

近年、製造業を取り巻くFTAの状況はダイナミックに変化しています。
例えば、アジア太平洋地域におけるRCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership)は、世界最大の自由貿易協定であり、多くの国々が参画しています。
日本、韓国、中国、ASEAN諸国などが参加するこの協定は、世界の輸出の30%をカバーし、関税の削減や非関税障壁の撤廃が進んでいます。

また、北米地域におけるUSMCA(United States-Mexico-Canada Agreement)は、以前のNAFTAに代わる協定であり、米国、カナダ、メキシコ間での貿易のさらなる自由化を促進しています。
このような大規模なFTAは、それぞれの地域での製造業の調達活動に大きく影響を与える可能性があります。

購買担当者は、これらの国際環境の変化に応じて調達戦略を適時に見直し、新たなFTAの締結によって提供される可能性を最大限に活用する準備が求められます。

購買担当者が取るべき具体的な行動

国際調達の最適化に向けて、購買担当者が取るべき具体的な行動をいくつか挙げます。

1. 関税・FTAの知識を深める

貿易の法律や制度は頻繁に変動するため、継続的な学習が必要です。
専門家の意見を求めたり、セミナーやウェビナーに参加することで、最新の情報を常にキャッチアップすることが大切です。

2. 原産地の最適化

調達品目の原産地を最適化することにより、関税恩恵を最大化することが可能です。
各FTAの原産地規則を詳しく理解し、効果的に対応することが求められます。

3. サプライヤーネットワークの構築と管理

グローバルなサプライヤーネットワークを効果的に構築し、管理するための基盤を整備します。
新しいFTAが締結された場合や関税が変更された際にも迅速に対応できるような柔軟性を持たせておくことが重要です。

4. 競争力のある価格設定

関税削減により得られたコストメリットを、製品やサービスの価格設定に反映させ、競争力を維持します。

まとめ

国際調達における関税の理解とFTAの活用は、購買担当者にとって非常に重要なスキルです。
関税によるコストの影響を最小化し、FTAを利活用することで、企業の競争力を一層高めることが可能です。
市場のダイナミックな動きを注視し、柔軟な調達戦略を構築することが、現代の製造業に求められる購買担当者の姿勢といえるでしょう。

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