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トライ品の挙動と量産品が一致しない典型トラブル

目次
はじめに:製造業の悩み「トライ品と量産品の不一致」
製造業に携わる現場担当者やバイヤー、サプライヤーにとって、「トライ品(試作、初品)」と「量産品」の挙動が一致しないというトラブルは、避けて通れない大きな課題です。
この問題は、製品開発や量産立ち上げの現場だけでなく、取引先企業との信頼関係や納期、品質保証にも大きく影響します。
昭和の時代から令和の現場まで、今も根深く残っているこの課題に対し、現場視点から実践的な対策と最新の業界動向、そして新たな発想での解決策を掘り下げていきます。
この記事を通じて、製造業に関わる全ての方が「未来に通用する量産立ち上げ力」を身につけられることを目指します。
なぜ「トライ品」と「量産品」で挙動が食い違うのか?
初期流動と本流動の「見えない壁」
トライ品(試作)では問題がなかったのに、量産品になって品質トラブルが発生した。
多くの現場で「この現象、なぜ発生したのか」頭を抱えたことがあるはずです。
結論から言うと、サンプル生産と量産では、生産条件、設備状態、治工具、作業者技術、部材のサプライチェーン、はたまた管理体制までもが微妙に異なっています。
トライ品は「一品入魂」で工程を最適化しますが、量産は「大量・繰り返し生産」で効率を重視します。
ここに「見えない壁」が生まれるのです。
業界共通の典型的なギャップ例
1. 原材料ロット差
2. 設備の温調や圧力のムラ
3. 金型・治工具の摩耗
4. 作業者の技量差(慣れやミス)
5. 生産環境(温湿度、埃など)の変化
昭和から脈々と続く「現物合わせ主義」は、ときにギャップ解消の妨げにもなっています。
トライ品・量産品不一致による現場の混乱
トライ段階では、開発部門や営業、品質保証が細かくチェックしますが、量産移行後は、”これで問題なし”の油断が現場に生まれがちです。
一度発生した不良は、数百・数千ロット単位で拡大し、大きな顧客クレームとなり得ます。
しかも、サプライヤーにとっては「検証不足だ」と責任問題に。
バイヤー側は、納期遅延で調達計画全体に影響が及ぶため、リスキーな瞬間です。
トップ5 「トライ品と量産品の不一致」典型トラブル事例
1. ※寸法不良やバリ発生(プレス・成形部品)
トライ試作では、厳密な圧力・速度・温調で最適な製品が得られますが、量産時は、機械の稼働率重視でタイミングがズレ、金型の摩耗も加わり寸法バラツキやバリ、カジリなどが発生します。
2. ※表面処理・コーティングムラ(表面処理部品)
トライ品は手塗りや手作業で行うことがあり、塗布厚さや均一性が担保されますが、量産設備では槽の劣化や自動搬送のズレで塗膜に不具合が生じます。
3. ※電子部品のハンダ付け(電子基板組立)
トライ品は熟練者による手作業でハンダが乗りますが、量産工程では自動機や事業所ごとの装置性能、オペレータースキルの差で導通不良やブリッジが起きやすくなります。
4. ※樹脂部品の変形・ガス抜け不良
試作時の金型は未使用のためコンディションが良いですが、量産では樹脂流動の変化や数百回での型の歪みからワレやヒケといったトラブルが現れます。
5. ※プリントやレーザーマーキングのズレ、かすれ
手作業の1ショットではなく、自動化設備で一括処理する量産現場でノズル目詰まりや位置決めズレ、用紙のロット変動によるかすれが発生しやすくなります。
トライ→量産で一致させるための具体的なステップ
1. 初期流動管理と量産条件の明文化
量産化前の初期流動管理(Initial Production Control:IPC)がますます重要になっています。
従来は「ウン、これでいけそう」だったところを、『生産条件書』や『設備点検リスト』『各種記録表』を数値管理しましょう。
設備の温度・圧力・速度・工程時間は、全工程で”再現性確認”が必須です。
2. 「一点管理」ではなく「幅管理」へ
トライ品・試作段階で極限まで条件を詰めるのは大切ですが、それは”理想的状況”です。
量産では材料の受入ロット、設備のチューニング、作業者の交代など日々の揺らぎがあります。
現場で現実的に再現できる”幅”を設計段階から確保し、「許容バラツキマネジメント」(Tolerance Management)を仕組み化しましょう。
3. マスバリデーションとPPAP取得(自動車部品ならでは)
トップバイヤー企業では、量産に先立ち「マスバリデーション」(大量生産性検証)や「PPAP認証」(生産部品承認プロセス)が義務付けられています。
これにより、”たまたま良品”から”継続して良品”が作れる体質が求められます。
サプライヤーは早期からバイヤーと合意し、「設備固有条件」「部材のロットごとのサンプル提出」なども徹底しましょう。
4. トレーサビリティと現物現場重視のモノづくり
あいまいな管理は、80年代の工場では当たり前でしたが、グローバルSCMでは致命的です。
温度・湿度・材料ロット・作業者シフト・検査結果を「トレーサビリティ管理」し、現場の変化点(「アンドン」など)をすぐ拾える仕組みづくりが重要です。
5. コミュニケーションの深化:設計・現場・サプライヤーの連携
「連絡ミス」「伝達不足」「思い込み」によるトラブルは今も後を絶ちません。
昭和の手書き電話メモから、令和のチャット・オンライン会議へ。
工程FMEAレビュー、現場ヒアリング、直接現場立会いなど、部門横断型コミュニケーションが効果的です。
バイヤー/サプライヤーに求められる新しい視点
AI・IoT・データ分析の活用
近年は、AI・IoT(工場のスマート化)を利用した生産プロセスモニタリングが進化しています。
量産初期の「異常シグナル」や「傾向予兆」検知、ビッグデータによるトレンド解析が現場活用されています。
難しい技術のように見えますが、中小企業向けにも低コストで導入可能なソリューションも増えてきました。
SDGs対応とサステナブル調達
「環境負荷低減」「廃棄物管理」「再生材利用」といったSDGs視点でのトライ品と量産品の比較も重要になっています。
バイヤーやサプライヤー間でサステナブル認証やCO2計測値を事前に合意する動きが活発化しています。
「工場の自動化・省人化」への価値転換
昭和流の「人海戦術」「現物合わせ」「気合い調整」が通用しない現代。
自律型ロボットやAGVによる物流効率化、画像処理検査装置の活用は、ヒューマンエラーの低減に直結します。
“現場の匠”のノウハウを「デジタル」で可視化・標準化しておくことが肝要です。
ラテラルシンキングで未来へ挑む~アナログの壁を越えるには
「トライ品の美談」から「しくみで守る」時代へ
昭和の現場では、納期ギリギリでベテラン作業者が神業を発揮する、ドラマチックな成功体験が語られがちです。
でも、これでは再現性や標準化が追いつきません。
現場の叡智を「しくみ」で守り、新人でも高品質な量産品を安定して作れるしくみ作りこそ、これからの製造業発展のカギです。
バイヤーは「サプライヤー管理」から「サプライヤー共創」へ
調達購買部門(バイヤー)は、これまでの「管理・監督」姿勢から「共創・パートナーシップ」姿勢へ転換する時期です。
「不一致トラブル」は単純な指導では解決せず、サプライヤーと一体となって、工程設計・条件管理を進めることが信頼獲得に繋がります。
ノウハウ共有と現場DXで真の「日本のものづくり」へ
ベテランの往年の技術や失敗談、注意点は、積極的に社内外で情報共有しましょう。
工場の現場知から生み出すノウハウを、IoT端末や動画、VR/AR教育で次世代につないでいくこと。
本記事が、アナログでは解決できない時代に「新しい製造業の知」を共に考えるきっかけになれば幸いです。
まとめ:トライと量産は“別物”と心得て、再現性構築を
トライ品と量産品のギャップは、「人と機械としくみの差分」が根本です。
「サンプル品は完成したが、量産したら不良多発」――この典型的課題に対し、
1. 生産条件の明確化と管理幅の確立
2. 標準化&自動化、そしてDX(デジタル変革)
3. バイヤー・サプライヤーが現場本位で協働するパートナーシップ
これらを地道に進めることで、昭和の勘と経験頼りを超える「未来志向のモノづくり工場」が実現します。
読者の皆様が、それぞれの現場で「トライ品の挙動と量産品の一致」を追求し続けることで、日本の製造業に新たな成長の種が生まれることを心より願っております。
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