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カテゴリ戦略を再定義して相見積の効果を最大化する進め方

目次
カテゴリ戦略を再定義する背景と相見積もりの重要性
日本の製造業は、いまだに昭和時代の「顔見知り取引」や「なあなあ」での価格決定が根強く残る業界です。
デジタル化が進んではいるものの、多くの現場では発注や見積もり作業においてFAXや紙書類が使われ続けています。
その中で調達業務、とくに「相見積もり(あいみつもり)」の手法は一見すると古いやり方と思われがちですが、実はこのアナログ的な手法こそが、カテゴリ戦略と結びつけることで非常に強力な武器に変化します。
ここでは、カテゴリ戦略を再定義し、相見積もりの効果を最大限に引き出す実践的な進め方について、現場目線で解説していきます。
カテゴリ戦略とはなにか?現状の課題認識から再整理する
カテゴリ戦略とは、購入品目(部材・副資材・サービスなど)を“カテゴリー”ごとに定義し、それぞれに最適な調達・購買戦略を立案、実行していく手法です。
従来型の製造業では「とりあえず安く、たくさん、速く」の発注を重視し、全てを同じ戦略で調達しがちでした。
しかしバリューチェーンの多様化とグローバル競争の激化により、「もの」と「サービス」の本質的な違い、「標準品」と「カスタム品」の違い、「単発取引」と「継続契約」の違い、といったカテゴリ固有の特徴を理解する必要性が増しています。
カテゴリごとに求められる付加価値は違う
例えば電気部品の購入においては「大量に・安価に・安定供給」が重視されますが、特殊治具や金型などの一品物では「品質・短納期・設計ノウハウ」が優先されます。
また、物流や廃棄物処理のようなサービス調達では「コスト」だけでなく、「地域性」や「法規制対応力」が求められるなど、カテゴリごとにバイヤーが目指す目的も異なります。
カテゴリ戦略を再定義するとは、こうした現場ならではの本質的な「バリュー(価値)」を正しく捉え、「なぜ、今、この調達先から買っているのか?」をゼロベースで問い直すことから始まります。
“昭和流”の根づいた慣行を見直す
昭和時代からの付き合いで“うちあい”一社だけに頼っている部品はありませんか?
年に一度の取引先見直しがただの形式になっていませんか?
このような慣行が残っていると、調達全体のパフォーマンスやコスト意識が曖昧になりがちです。
カテゴリの本質価値から逆算した「最適なバイヤー行動」を設計し直すことで、形だけの相見積もりから脱却し、真の競争原理が働く購買へ変革できるのです。
カテゴリごとの調達戦略 〜「横並び」から「個別最適」へ〜
多くの現場では、金額ベースや購入頻度でザックリとしたカテゴリ分けをして、そのすべてに等しく「相見積もり三社取得」「最低価格採用」といった単純なルールを敷いていませんか?
この「横並び」発想が価格競争力やリスク管理の観点では、むしろ足かせになるケースが目立ちます。
代表的なカテゴリ分類と最適な調達アプローチ
1. 日常消耗品・汎用品:
→競争原理重視。調達先複数化・定期的な相見積もりで単価・納期・品質を総合比較。
→電子カタログや購買システムの活用で調達コストの可視化。
2. カスタム部品・設計品:
→設計段階からサプライヤーと協業。見積もり取得時には細やかな仕様明示とコミュニケーションが重要。
→「総額」ではなく、工程ごとの分解見積もりを依頼し、コスト構造をオープンにする。
3. サービス・外注作業:
→「入札」や「相見積もり」だけに頼らず、サプライヤーの実績・地域特性・応答の質を見極める。
→実際の現場見学や担当者面談を通じて “本物の競争力” を判断する。
4. 戦略的パートナーシップ領域:
→単なる価格競争ではなく、共創による付加価値・中長期の信頼関係の構築を優先。
→ただし、数年ごとのベンチマークや競合調査は継続し、イノベーション機会を逃さないようにする。
このようなカテゴリごとの違いを意識し、型通りの「見積もり文化」から「バリュー創出型調達」へと進化させることが重要です。
相見積もりの効果を最大化するための実践ステップ
カテゴリ戦略を再設計した上で、現場で相見積もり(比較見積もり)の効果をしっかり引き出すためには、以下の具体的な進め方が有効です。
1. 仕様・要件の徹底的な明確化
最も重要なのは「何を、どこまで、どの水準で」調達したいのか、仕様と要件を徹底して明確化することです。
曖昧な見積もり依頼は、サプライヤー間の条件比較ができず、価格だけの争いに陥って本来的な価値が見落とされます。
同じ図面、スペック、数量条件で「横並び比較」ができる状態をつくりましょう。
特にカスタム部品や外注案件では、検査基準・納入条件・アフター対応など、付帯要件まで丁寧に記載してください。
2. サプライヤー選定の透明性と候補リストの多様化
いまだ“馴染みの業者”中心の現場も多い一方、候補サプライヤーの選定段階でバイアスがかかっていませんか?
カテゴリごとに「過去実績」「得意分野」「改善実績」「海外リソースの活用可能性」まで含めて優先度付けし、意図的に新規業者を加える工夫が相見積もりの質的向上につながります。
実際、偶数年には「新規3社トライアル」など、ルール化して登録業者プールを拡げる現場も増えています。
3. “落札価格”だけでなく“総合バリュー”を評価
最安値だけを重視する昭和的な意思決定は、納期遅れや品質トラブルといった「隠れコスト」を招きがちです。
「一次見積→ヒアリング→二次交渉」等の段階を経て、納期遵守率、品質体制、担当者スキルなどの「定量・定性評価」も加味して比較しましょう。
現場で役立つ管理表サンプルや評価テンプレートを活用すると、部門間の合意形成も円滑になります。
4. 正しい情報開示とフェアな交渉
サプライヤー間の健全な競争を促すため、見積依頼時に「競合提案歓迎」「複数方式の提案OK」など、前向きな情報開示を心掛けましょう。
また、価格だけで不透明な値引き要求を続けるのではなく、「コスト構造分解」や「提案型取引(VE/VA)」をセットで依頼することで、サプライヤーの知見を引き出しやすくなります。
デジタル化・自動化時代における相見積もりの進化形
現場のアナログ文化でも、DXの波は着実に押し寄せてきています。
見積もり・購買業務のデジタル化により、従来の “紙”・“FAX” 文化から脱却し、「データに基づいた最適意思決定」の時代へ進んでいます。
電子見積もりプラットフォームの活用
大手企業では調達専用のクラウドプラットフォームを活用し、見積もり依頼と返答を定型化・データ化しています。
これにより「発注履歴」「価格傾向」「調達先ポートフォリオ」の可視化が実現し、属人的な調達業務を“見える化”できます。
相見積もり依頼もワンクリックで複数社に配信され、時間短縮と調達品質の両立が可能となります。
AI活用による最適サプライヤーマッチング
今後はAIによるデータ解析を活用し、カテゴリごとに最適なサプライヤーをレコメンドする機能が拡がるでしょう。
価格以外の「品質実績」「納期遵守」「イノベーション提案力」等のスコアをデータベース化し、バイヤーの判断ミスを低減する仕組みが登場しています。
サプライヤー側も自社の強みを“データ”で訴求する時代が到来しているのです。
バイヤーだけでなく、サプライヤーも「相見積もり」を武器にせよ
相見積もり=バイヤーの専売特許、と思われがちですが、実はサプライヤー(売り手)こそ「自社がどこで、どの技術・サービスで選ばれているのか?」を見極め、逆にバイヤーに提案するチャンスでもあります。
サプライヤー視点での提案力アップ
1. 調達側のカテゴリ戦略や調達方針(重視点)を事前分析
2. 見積もり金額だけでなく、設計変更案やコストダウン提案(VA/VE)付きの見積書提出
3. 「納期短縮」「品質保証延長」「設備投資実績」など自社のバリューを数値でアピール
こうした“戦略的提案型見積もり”で差別化することで、単なる価格勝負から脱却し、取引量拡大やパートナー昇格のチャンスにつながります。
まとめ:カテゴリ戦略の再定義こそが相見積もり効果最大化のカギ
カテゴリ戦略を単なる「品目分類」や「購買運用ルール」ではなく、“現場起点のバリュー創出”という本来の趣旨に立ち返って再定義しましょう。
その上で相見積もりを、単なる「価格調査」や「儀式」ではなく、“サプライヤーの知恵・競争力を引き出し、最適なQCDバランス(品質・コスト・納期)を実現するための本格的ツール”に進化させていくこと。
これが現場からアナログ時代の限界を突破し、バイヤーもサプライヤーもともに成長できる“新時代の調達戦略”になるのです。
時代遅れと思われがちな「相見積もり」――今だからこそ、その価値を再発見し、「カテゴリ戦略」と組み合わせて最大の効果を追求していきましょう。
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