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スタートアップによる工場改善効果を定量化する測定ポイント

目次
はじめに:スタートアップの現場改善が注目される理由
近年、製造業を取り巻く環境は大きく変化しています。
国内外の競争激化や人手不足、ESGへの対応など、従来のやり方では通用しなくなりつつあります。
そのなかで特に注目されているのが、スタートアップ企業が持ち込む斬新なテクノロジーやソリューションです。
AIやIoT、クラウド基盤、モバイル端末を活用した製造現場のデジタル化・自動化。
こうした先端技術を導入することで、工場の生産性向上や品質改善、コストダウンが期待されます。
しかし、現場では「変革疲れ」「投資対効果が不明」「過去と比べてうまくいっているかわからない」といった声も少なくありません。
本記事では、スタートアップによる工場改善の“効果”をどのように定量化し、評価・検証していくべきか。
製造業で20年以上現場を指揮してきた筆者が、昭和型のアナログ現場もカバーしつつ、実践的な測定ポイントを解説します。
効果測定の前提:なぜ定量評価が必要なのか
まず、なぜスタートアップの工場改善において、定量的な効果測定が重要なのでしょうか。
その理由を整理します。
現場の“肌感覚”だけでは組織説得力に欠ける
「なんとなく便利になった」「自分の作業がラクになった」――。
現場改善プロジェクトの初期フェーズでは、こうした声が上がりやすくなります。
しかし、その効果が全体最適につながっているのかどうか、経営層や他部門に伝える際には、漠然とした感想だけでは十分とはいえません。
「数値で説明できる現場」は、みんなが納得した意思決定へとつながります。
ROI(投資対効果)の判断材料になる
特にスタートアップが導入を提案する場合、初期費用やランニングコスト、社内の教育コストなど「新たな投資」が必ず発生します。
これに見合うだけの「成果」を、数字で示すことができなければ継続的な予算化や横展開は困難です。
ROI(投資対効果=Return on Investment)は、工場の自動化やDXに取り組む経営者・バイヤーにとって最重要視する視点のひとつといえるでしょう。
製造業における代表的な工場改善測定ポイント
具体的な効果測定ポイントを、現場でよく活用されている指標から紹介します。
ここでは「バイヤー」「現場リーダー」「サプライヤー」それぞれの立場から関連性も意識して整理します。
1. 生産性(productivity)指標
生産現場において最も基本的な効果測定ポイントです。
代表的なものに「1時間あたりの生産数」「1人当たりの付加価値額」「設備稼働率」「稼働停止時間」などがあります。
スタートアップ導入前後で、この値がどれだけ向上(またはムダが減少)したかを比較します。
製造管理システムやIoTセンサーで自動収集できる時代になりましたが、作業日報やロジ記録との照合も重要です。
2. 品質(quality)指標
主なものは「不良率」「クレーム件数」「再加工率」「歩留まり率」などです。
スタートアップのソリューションがプロセス制御や予知保全の分野で効果を発揮した場合、この数値が大きく改善しているかを確認します。
実際に不良低減の効果が得られたとしても、“測り方”が現場でバラバラの場合は、客観的評価が難しくなります。
共通フォーマットでデータを取り続けることがポイントです。
3. コスト(cost)指標
直接材料費、間接費、省力化による人件費削減、エネルギーコスト……。
コスト構造は会社によって様々ですが、「いかにして無駄なコストを省けたか」も重要な判断基準です。
スタートアップ製品の導入でメンテナンス工数が短縮し、総工数削減→コスト低減、といった効果は比較的測定しやすい分野です。
4. リードタイム(lead time)指標
受注から納品までのリードタイム、工程間リードタイム、切替作業時間短縮など、スタートアップが得意とする「工程最適化」「フロー改善」に直結する指標です。
工程単位・ライン単位・工場全体単位など、多階層で測定することが実践では求められます。
5. 安全・環境指標
たとえば現場事故発生率や、有害物質使用量、省エネ量(CO2削減効果)、廃棄物量などです。
ESG経営が重視される今、これらの数値が“見える化”されていることはサプライヤー評価や顧客アピールにもつながります。
昭和型アナログ業界でも定量化を成功させるコツ
従来型の職人文化や“紙&エクセル管理”がまだ主流な現場でも、定量化は可能です。
数多くの現場をみてきた筆者が提案する、3つの実践ポイントを紹介します。
1. 現場で「納得できる指標」「現実的な測定方法」を選ぶ
いきなり高精度な自動データ収集を目指す必要はありません。
まずは「担当者が無理なく記録できる」「現場で“納得感”が得られる」指標を選ぶことが肝要です。
日報集計や出荷数、クレーム一覧表――。
一見アナログでも「全員で同じルールを守って数値をとる」ことがスタートラインになります。
2. BEFORE→AFTERだけではなく、トレンドを追う
一度きりの“導入前後比較”では、現場特有の季節変動やイレギュラー発生に影響されやすく、誇張された成果・課題になる可能性があります。
少なくとも3カ月、6カ月、1年と「トレンドで数値がどう変化しているか」をみることも大切です。
時系列分析ができれば、経営者への説明力も格段に高まります。
3. “小さく始めて段階的に広げる”アプローチ
特に昭和型現場では、いきなり全社導入ではなく「1工程」「1ライン」など限定的なパイロットから始めましょう。
ここでしっかり説明力のある「数値の効果」が得られれば、他工程展開・本工場展開、ひいてはグループ会社への波及も現実的になります。
バイヤー・サプライヤー双方に求められる“定量化力”とは
工場改善プロジェクトが成功するかどうかは、現場だけでなくバイヤーとサプライヤーの“目線合わせ”の巧拙にもかかっています。
バイヤー目線:評価基準を明確に伝える
調達担当(バイヤー)は、社内で「どの指標を重視して評価するか」「どんな目標値をめざしているか」をサプライヤー側に丁寧に伝えましょう。
たとえば「10%以上の省エネ効果」「3カ月以内にリードタイム短縮」「クレーム発生件数ゼロ化」など、数値でのゴール設定は必須です。
これによりサプライヤーも「どんな機能・技術を押し出せばよいか」が見えやすくなります。
サプライヤー目線:数値データを根拠に、現場の“困り事”に寄り添う
スタートアップや技術ベンダー側は、“モノ売り”に止まらず、現場ヒアリングから課題仮説データを蓄積し、その現場ならではの指標(KPI)をバイヤーに提案するスタンスが重要です。
「この工程でこの数字が改善されれば、従来の困りごと(例:注文遅延、突発不良、手直し過多)がどれだけ緩和されるか」など、現場に根差した“あるある課題”と数値指標を一体で示すことがポイントです。
数字で現場を変え、共創する時代へ
昭和から続く現場重視の文化は、日本の製造業の強みの一つです。
一方で、スタートアップの新技術やデジタルツールがもたらす“新しい改善の風”を最大限活かすためには、「効果の定量化」「現場目線のKPI設計」が欠かせません。
バイヤーと現場、サプライヤーが“三位一体”で数値をもとにオープンな会話を重ね、日々の生産活動の中で新たな効果を見つけ、積み上げていく。
そのプロセスこそが、これからの製造業の“競争力”の源泉となります。
現場で数値を測ることはゴールではありません。
あくまで「なぜよくなったのか」「次に何ができるか」を考えるための出発点です。
スタートアップによる工場改善の“成果”は、現場の「気付き」と「行動変革」にひとつずつ繋がっていく。
その歩みを、ぜひ多くの製造業のみなさまとともに進めていきたいと強く願っています。
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