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電子帳簿保存法の対応|システムなしで満たす方法と、5,000万円以下の緩和

この記事のポイント(結論先出し)
電子帳簿保存法への対応は、システムを買わなくても始められる。国税庁は、専用ソフトがない場合の方法としてファイル名に「日付_取引先_金額」を入れて保存する方法を具体例つきで示している。さらに、基準期間の売上高が 5,000 万円以下でダウンロードの求めに応じられる場合は、検索機能の確保そのものが不要になる。まず自社がどの区分に当たるかを確認し、必要な措置だけを取るのが最短である。
目次
何を保存しなければならないか
国税庁は、申告所得税・法人税に関して帳簿・書類を保存する義務のある者が、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などに相当する電子データをやりとりした場合には、その電子データを保存しなければならないとしている[1]。
ここで押さえておきたい点が 3 つある[1]。
① データでやりとりしたものだけが対象。紙でやりとりしたものをデータ化する義務はない。FAX で受け取った注文書を紙のまま保管するのは問題にならない。
② 受け取った場合だけでなく、送った場合も対象。自社が発行してメール送信した見積書・発注書も保存する。この点は見落とされやすい。
③ ファイル形式は問わない。PDF に変換したものやスクリーンショットでも差し支えないとされている。
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必要な措置は 3 つ
| 要件 | 内容 | 費用をかけない方法 |
|---|---|---|
| 真実性(改ざん防止) | タイムスタンプの付与、訂正・削除を禁止するシステム、削除防止に関する事務規程の策定など[2] | 事務処理規程を定めて守る(サンプルが国税庁サイトに掲載[1]) |
| 検索機能 | 「日付・金額・取引先」で検索できること[1] | ファイル名に 3 項目を入れる、または Excel で一覧表を作る[3] |
| 可視性 | ディスプレイやプリンタ等を備え付け、容易に出力できること[1][2] | 通常の PC とプリンタがあれば足りる |
システムがなくても検索要件は満たせる
国税庁は、取引データを保存するシステムがない場合に検索機能の確保の要件を満たす方法として、次の 2 通りを示している[3]。
方法 1:Excel で一覧表を作る
表計算ソフトで、取引年月日その他の日付・取引金額・取引先の情報を入力した一覧表を作る。その機能により、入力された項目間で範囲指定ができ、2 以上の任意の記録項目を組み合わせて条件設定ができる状態であれば、検索機能の確保の要件を満たすものと考えられるとされている[3]。ファイル名には通し番号を入れて、一覧表と対応させる。
方法 2:ファイル名に 3 項目を入れる
税務職員のダウンロードの求めに応じられるようにしたうえで、ファイル名に「取引年月日その他の日付」「取引金額」「取引先」を含め、統一した順序で入力しておく方法である[3]。国税庁は具体例として次を挙げている[4]。
2021 年(令和 3 年)1 月 31 日に株式会社霞商店から受領した 110,000 円の請求書
⇒ 20210131_㈱霞商店_110000
さらに、取引先ごとにフォルダを分けて保存している場合は、ファイル名に日付と金額だけを入れておく形でも、3 項目で検索条件を設定できるなら要件を満たすとされている[3]。
売上高 5,000 万円以下なら検索機能が不要になる
見落とされやすい緩和がある。判定期間に係る基準期間(通常は 2 年前)の売上高が 5,000 万円以下であり、税務職員のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索機能の確保が不要となる[4]。
また、電磁的記録を出力した書面を取引年月日その他の日付および取引先ごとに整理して提示・提出できるようにしておき、ダウンロードの求めに応じるようにしている場合も同様である[4]。
この条件に当てはまる企業は、ファイル名の統一も一覧表の作成も不要になる。まず自社の基準期間の売上高を確認するところから始めたい。ただし改ざん防止の措置と、データそのものの保存は引き続き必要である点には注意する。
猶予措置は「紙だけ」では認められない
対応が間に合わない場合の措置もあるが、内容が変わっている。
令和 5 年 12 月 31 日までに行う電子取引については、宥恕措置により、電子データを単に保存しておくか、出力書面を保存して税務調査等の際に提示等ができるようにしておけば差し支えないとされていた[5]。
これに対し、令和 6 年 1 月 1 日以後に行う電子取引については、税務署長が相当の理由があると認め、かつ保存義務者が税務調査等の際に税務職員からの求めに応じてその電子データおよび出力書面の提示等をすることができる場合に、保存時に満たすべき要件にかかわらず電子データの保存が可能となる措置(猶予措置)が講じられている[5]。
両者の違いは決定的である。国税庁は「令和 6 年 1 月以降に行う電子取引を対象とした猶予措置では、出力書面のみを保存することで対応することは認められておらず、出力書面の提示等に加え、電子データそのものも保存しておき、提示等ができるようにしておく必要があります」と明記している[5]。
つまり「印刷して紙で保管しているから大丈夫」は、現在は通らない。データは必ず残す。
受発注の実務で、どのデータが対象になるか
製造業の調達購買では、次のようなデータがやり取りされる。いずれもメールや Web でやり取りしていれば保存対象になる[1]。
| データ | 送受の別 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 見積依頼書 | 送信 | 自社が送ったものも対象 |
| 見積書 | 受信 | 不採用にした社の見積も、受領した以上は対象 |
| 発注書 | 送信 | システムから送信した PDF も対象 |
| 注文請書 | 受信 | メール本文での承諾も取引情報にあたりうる |
| 納品書・送り状 | 受信 | 紙で同梱されたものは対象外 |
| 請求書 | 受信 | Web からダウンロードしたものも対象 |
| 支払通知書 | 送信 | 自社発行分の控えを残す |
特に注意したいのは 2 行目である。不採用にした会社の見積書も、受領していれば保存対象になる。断りの連絡だけ済ませてデータを捨てる運用にしていないか確認したい。相見積の進め方については相見積とは|取適法で変わった取り方の注意点で扱っている。
取適法の明示と、保存はセットで考える
2026 年 1 月 1 日施行の取適法では、発注時に 12 項目を書面または電磁的方法で明示する義務がある[6]。電子メールでの明示が承諾なしに可能になったため[7]、発注書を PDF でメール送信する運用が増える。
そのメール送信した発注書は、電子帳簿保存法の保存対象でもある[1]。明示義務(取適法)と保存義務(電帳法)は別の法律だが、対象になるデータは同じである。発注書の様式を作り直すときは、両方を同時に満たすかを確認しておくと二度手間にならない。明示すべき 12 項目は発注書に明示しなければならない 12 項目で整理している。
よくある誤解
「小規模だから対象外」ではない
保存義務は、申告所得税・法人税に関して帳簿・書類を保存する義務のある者に課される[1]。売上規模による免除はない。売上高 5,000 万円以下で緩和されるのは検索機能の確保であって、保存義務そのものではない[4]。
「クラウドに置いてあるから大丈夫」ではない
データがどこかに存在していることと、要件を満たして保存していることは別である。改ざん防止の措置がとられているか、必要なときに 3 項目で探し出せるか、画面表示と出力ができるか。この 3 点で確認する[1][2]。
「メール本文は関係ない」ではない
取引情報が本文に書かれている場合、そのメール自体が電子取引データにあたりうる。金額や納期を本文で伝えているなら、添付ファイルだけ保存すれば足りるとは限らない。実務上は、取引情報を添付ファイルに集約し、本文では参照だけにしておくと整理しやすい。
「システムを入れれば自動的に対応できる」ではない
システムを入れても、システム外でやり取りしたデータは対象のまま残る。担当者が個人メールでやり取りした見積書、取引先の Web サイトからダウンロードした請求書——これらをどこに集めるかを決めていないと、対応が中途半端になる。
今日から進める手順
手順 1:基準期間の売上高を確認する
5,000 万円以下なら、ダウンロードの求めに応じられる体制を整えるだけで検索機能の確保が不要になる[4]。ここで対応の重さが大きく変わる。
手順 2:対象データを洗い出す
どの書類をメール・Web でやり取りしているかを、前掲の表で確認する。送信側も忘れない。
手順 3:改ざん防止の方法を決める
システムを使わないなら、事務処理規程を作成して備え付ける。サンプルは国税庁のサイトにある[1]。
手順 4:保存先とファイル名の規則を決める
検索機能が必要な場合は、ファイル名を「日付_取引先_金額」で統一するか、Excel の一覧表を作る[3]。統一した順序で入力することが条件なので、途中で規則を変えないよう最初に決める。
手順 5:担当と運用を決める
誰がいつ保存するか。メールを受け取った担当者が個人のフォルダに置いたままでは、検索も提示もできない。共有の保存先を決める。
調達購買の現場で起きやすいこと
担当者ごとにメールで完結している
見積依頼から発注まで、担当者が自分のメールボックスでやり取りしていると、データは個人に紐づく。異動や退職でアクセスできなくなれば、保存義務を果たせない状態になる。共有メールボックスにするか、共有フォルダへ保存する運用を決める。
取引先の Web からダウンロードした請求書が漏れる
大手サプライヤーでは、請求書を自社ポータルからダウンロードさせる形が増えている。メールに添付されないため、保存の対象として意識されにくい。毎月どのサイトから何を取得しているかを一覧にしておく。
担当者が退職してデータの所在が分からない
個人のメールボックスに保存が集中していると、退職や異動で辿れなくなる。共有フォルダに移すのは、担当が変わる前に済ませる。保存の義務は会社にかかるので、担当者がいなくなったことは理由にならない。
不採用の見積を捨てている
前述のとおり、受領した見積書は不採用でも保存対象になる[1]。断りの連絡を出した時点でメールごと削除する運用になっていないか確認する。断り方については相見積の断り方で扱っている。
同じ請求書が紙と電子の両方で届く
郵送とメールの両方で送ってくる取引先がある。この場合、電子で受け取ったものは電子取引データとして保存の対象になる。紙を正としてファイリングし、電子を捨てる運用にすると要件を満たさない。どちらを業務で使うかとは別に、電子データは残しておく。
ファイル名の規則が途中で変わる
検索要件をファイル名で満たす場合、統一した順序で入力することが条件になる[3]。担当者が変わったタイミングで規則が変わると、過去分と現在分で検索方法が揃わなくなる。規則は文書化して、保存先のフォルダに置いておく。
まとめ
電子帳簿保存法への対応は、まず自社に必要な措置がどこまでかを確認するところから始まる。売上高 5,000 万円以下でダウンロードの求めに応じられるなら、検索機能の確保は不要になる[4]。そうでなくても、ファイル名の統一か Excel の一覧表で満たせる[3]。
一方で、「紙に印刷して保管」だけでは現在は認められない[5]。データそのものを残すことが前提である。ここだけは、どの規模の企業でも避けて通れない。
対応の重さは、システムの有無ではなくやり取りの整理具合で決まる。データが個人のメールボックスに散っている状態では、どんなシステムを入れても集まらない。まず保存先を一つに決め、そこへ集める運用を作るところが出発点になる。
出典・参考資料
- 電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください【令和 6 年 1 月以降用】(国税庁/令和 5 年 7 月)
- 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】Ⅱ 適用要件【基本的事項】(国税庁)
- 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(国税庁/令和 7 年 6 月)
- 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(国税庁)
- 電子帳簿等保存制度特設サイト(国税庁)
- 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
- 2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!(取適法リーフレット)(公正取引委員会)
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