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投稿日:2026年8月28日 | 更新日:2026年8月31日

FAX と電話の見積依頼・発注は、電帳法でどう保存するか

この記事のポイント(結論先出し)

ファクシミリの扱いは「ファクシミリだから」では決まらない。受け取った機器がデータとして残す形式だったのか、受信と同時に紙を出したのかで結論が変わる。国税庁は、ペーパーレス化されたファクシミリ機能を持つ複合機を利用した取引を電子取引に含めている[1]。一方、公正取引委員会は、受信と同時に書面により出力されるファクシミリへ送信する方法を「書面の交付」による明示に当たるとしている[2]。二つの法律が同じ切り分けをしている。電話だけで済ませた発注は、どちらの法律から見ても記録が残らない。

ファクシミリは一つの手段ではない

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製造業の調達では、いまも見積依頼や注文がファクシミリで届く。ここで混乱が起きるのは、送る側と受け取る側で機器の種類が違うためである。送信側が複合機から送っても、受信側が昔ながらの感熱紙の機械なら紙が出てくる。逆に、受信側が複合機でデータとして受け取れば、紙は 1 枚も出ない。

電子帳簿保存法も取適法も、この違いを見ている。「ファクシミリで送った」という事実だけでは、どちらの法律の判断もできない。

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電子帳簿保存法から見たとき

データとして受けたなら、それは電子取引である

電子帳簿保存法における「電子取引」とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいう。ここでいう取引情報とは、取引に関して受領または交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項を指す[1]

具体例として国税庁が挙げているものの中に、電子データ交換による取引、電子メールによる授受、そしてペーパーレス化されたファクシミリ機能を持つ複合機を利用した取引が並んでいる[1]。仕入や経費の精算方法を列挙した設問でも、複合機を利用した場合が電子取引に該当するものとして扱われている[1]

紙で出てきたものを、わざわざデータにする必要はない

逆側も明確である。国税庁のパンフレットは、保存が必要なのは紙でやりとりしていた場合に保存が必要な書類に相当するデータであり、あくまでデータでやりとりしたものが対象で、紙でやりとりしたものをデータ化しなければならないわけではないと説明している[3]

受信と同時に紙が出るファクシミリで注文書を受け取ったなら、その紙は従来どおり書類として保存すればよい。電子取引データの保存義務は生じない。「電子帳簿保存法が始まったから、届いた注文書を全部スキャンしなければ」と考えて作業を増やしている現場があるが、その必要はない。紙のまま保管せず電子化したい場合は、別の制度であるスキャナ保存の要件を満たす必要がある。

データと紙の両方が来たとき

同じ内容が電子と紙の両方で届く運用も珍しくない。国税庁は、電子データと書面の内容が同一で、書面を正本として取り扱うことを自社内等で取り決めている場合には、その書面の保存のみで足りるとしている[1]

ただし例外がある。書面で受領した取引情報を補完するような取引情報が電子データに含まれているなど、内容が同一でない場合は、書面と電子データの両方を保存する必要がある[1]。ファクシミリで注文書の紙が届き、同時にメール本文で「数量は前回と同じで」といった補足が来ているなら、そのメールも保存対象になり得る。

受け取り方 電子帳簿保存法の扱い 必要になる対応
複合機でデータとして受信(紙を出さない) 電子取引 データのまま保存。改ざん防止と検索の要件
受信と同時に紙が出る機器で受信 紙の書類 紙のまま保存。データ化は不要
データで受信し、自社で印刷して綴じている 電子取引 印刷は自由だが、データの保存が別途必要
同じ内容が紙とデータで届き、紙を正本と取り決め 紙の保存で足りる 取り決めを社内で明文化しておく
紙が正本だが、データ側に補足情報がある 両方が対象 紙とデータの両方を保存
電話で条件を決め、記録を残していない 保存すべきデータが存在しない 取適法の明示義務を別途果たす必要がある

取適法から見たとき

同じ機器の違いを、公正取引委員会も見ている

取適法第 4 条は、製造委託等をした場合は直ちに、明示事項を書面または電磁的方法により相手に明示することを求めている[2]。電磁的方法として認められる手段の一つに、明示事項を記載した書面等を、電磁的記録をファイルに記録する機能を有する相手方のファクシミリへ送信する方法が挙げられている[2]

そしてその直後に注記がある。受信と同時に書面により出力されるファクシミリへ送信する方法は、「書面の交付」による明示に該当する[2]。つまり同じ送信操作でも、相手の機器がデータで残す型なら電磁的方法、紙を出す型なら書面の交付になる。

実務上の意味は小さくない。電磁的方法で明示した場合、相手からその事項を記載した書面の交付を求められたときは、原則としてこれに応じる必要がある[2]。相手の機器が何であるかを把握していないと、自社がどちらの方法で明示したのかも分からないままになる。

2026 年 1 月から、相手の承諾がいらなくなった

改正法の施行にあわせて、書面交付義務について相手方の承諾の有無にかかわらず電子メールなどの電磁的方法によることが可能になった[4]。改正前は電磁的方法を使うのに相手の承諾が要ったため、承諾を取っていない相手にはファクシミリや紙で送る、という運用が残っていた。この制約が外れたことで、注文書を電子メールに一本化しやすくなっている。

電話での発注はどう扱われるか

口頭では明示義務を果たせない

取適法第 4 条の明示は、明示事項を記載した書面の交付、または明示事項を記録した電磁的記録の電磁的方法による提供により行わなければならないとされている[2]。電話で伝えるだけでは、このどちらにも当たらない。

この規定が置かれた理由も明記されている。口頭による発注は発注時の取引条件等が不明確でトラブルが生じやすく、トラブルが生じた場合に受注側が不利益を受けることが多いためである[2]。制度は「電話での発注が起きること」を前提にして、その後の明示を求めている。

電話で決めた後に、何を送るか

急ぎの案件で電話が先行するのは避けられない。問題は、そのあと何も送らずに納品まで進んでしまう運用である。電話の直後に注文書を送れば、明示義務は果たせる。送る内容は発注書の 4 条明示 12 項目と同じで構わない。受けた側が何を書き添えて返すべきかは見積依頼への返信の書き方にまとめてある。

その時点で決まっていない項目があってもよい。内容が定められないことについて正当な理由がある事項(未定事項)については、当初の明示から外すことが認められている。ただしその場合は、未定事項の内容が定められない理由と、内容を定めることとなる予定期日を明示し、定まった後は直ちに補充の明示を行う必要がある[2]

社内メモだけを残す運用の危うさ

電話の内容を自社の受注管理システムに入力し、相手には何も送らない——この運用は二重に弱い。取適法の明示義務を果たせないうえ、電子帳簿保存法の観点でも、自社が入力しただけのデータは相手とやりとりした取引情報ではない。認識の食い違いが起きたときに、こちらの入力内容は証拠として弱い。

最低限、電話の後に「本日お電話でご依頼いただいた内容です」として条件を書き出したメールを送り、相手の了解を得る。この一往復があれば、双方に同じ記録が残る。

データで受けたファクシミリに必要な措置

改ざん防止は四つのうちどれか

電子取引データをそのまま保存する場合、真実性を確保する観点から次のいずれかを満たす必要がある[5]

1. タイムスタンプが付与されたデータを受領する
2. 受領後、速やかにタイムスタンプを付す
3. 訂正削除の記録が残るシステム、または訂正削除ができないシステムで授受と保存を行う
4. 訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定・運用し、備え付ける

複合機で受信したデータについて、国税庁は、一般に受領者側で訂正削除が可能であることから、タイムスタンプが付与されていない場合には受領者側でタイムスタンプを付すか、事務処理規程に基づいて適切にデータを管理することが必要だとしている[1]。実務では 4 番目の事務処理規程が現実的で、国税庁が規程のサンプルを公開している[3]

検索は「日付・金額・取引先」

保存したデータは、取引年月日その他の日付、取引金額、取引先を検索の条件として設定できる状態にしておく必要がある。加えて、日付または金額は範囲を指定して条件設定できること、二以上の記録項目を組み合わせて条件設定できることが求められる[1]

システムがなくても方法はある。表計算ソフトで日付・金額・取引先を入力した一覧表を作る方法か、ファイル名に日付・金額・取引先を統一した順序で入力しておく方法である[1]。ファイル名で対応する場合、取引先ごとにフォルダを分け、そのフォルダ内のファイル名に日付と金額を入れる形でも要件を満たし得る[1]。具体的な手順はシステムを入れずに電子帳簿保存法へ対応する方法にまとめてある。

売上高による緩和

税務職員のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合、範囲指定と項目の組合せの要件は不要になる。そのうえで、判定期間に係る基準期間における売上高が 5,000 万円以下の事業者、または電磁的記録を出力した書面を取引年月日その他の日付および取引先ごとに整理したものを提示・提出できるようにしている事業者は、検索機能の確保の要件がすべて不要となる[1]

小規模な事業者ほど、この規定を知らずに索引簿の整備に時間をかけていることがある。自社の売上高を確認してから作業量を決めたい。

要件を満たせないときの猶予措置

令和 6 年 1 月 1 日以後に電子取引を行う場合、要件に従って保存できなかったことについて所轄税務署長が相当の理由があると認め、かつ税務調査等の際にデータとその出力書面の提示または提出ができるようにしているときは、保存時に満たすべき要件にかかわらずデータの保存が可能とされている[1]

ただし注意点がある。この猶予措置があっても、データの保存に代えて出力した書面のみで保存することは認められない[1]。紙に印刷して綴じておけばよい、という理解は誤りである。

実務で起きやすい不備

複合機の受信設定を把握していない

複合機は、受信したファクシミリを自動で印刷する設定にも、共有フォルダへ保存する設定にもできる。設定を変えた時点で法律上の扱いが変わるのに、変更が総務や情報システムの判断で行われ、経理に伝わらないことがある。設定を変える前に、保存の運用とセットで決める。

印刷したから安心してデータを消す

データで受信したものを印刷して綴じ、複合機の保存フォルダを定期的に空にしている運用がある。印刷して整理すること自体は差し支えないが、データの保存は別途必要である。

電話の後に送る書面が「見積書の写し」だけ

相手から届いた見積書に「これで進めてください」と書いて送り返す形は、明示事項を満たさないことがある。数量、納入場所、検査の期日、支払期日まで見積書に書かれているかを確認してから使う。

保存側のシステムだけで改ざん防止を満たしたつもりになる

訂正・削除の記録が残るシステムでデータを保存していれば改ざん防止の措置になる、と考えるのは誤りである。国税庁は、この方法で措置を講じたことにするには、保存だけでなくデータの授受も当該システム内で行う必要があるとしている[1]。複合機で受信したデータを後から文書管理システムへ入れているだけの運用は該当せず、別途、事務処理規程を定めて守るなどの方法が要る[1]

注文番号が電話とメールで食い違う

電話で口頭の番号を伝え、後から送った注文書で別の番号を振ってしまうと、納品書や請求書の突合ができなくなる。番号は書面側で採番し、電話ではその番号を伝えない運用にするほうが混乱が少ない。

よくある質問

複合機で受けたファクシミリの保存期間は

電子帳簿保存法は国税に関する法律の特例を定めるものであるため、電子取引データも、それぞれの法律で定められた期間保存する必要がある[1]。ファクシミリで受けたからといって短くなることはない。書類ごとの年数は発注書・見積書の保存期間で確認できる。

ファクシミリをやめて電子メールに一本化してよいか

取適法の側では、相手の承諾なしに電磁的方法で明示できるようになっているため、制度上の障害はない[4]。ただし相手の受信環境と社内の保存運用を同時に決めておかないと、保存すべきデータが個人の受信箱に散る結果になりやすい。受発注の仕組みを見直す際の論点は受発注システムの選び方で扱っている。

受信したデータの形式を変えてもよいか

国税庁は、表計算ソフトや文書作成ソフトの形式で受領したデータを可搬型の文書形式に変換して保存すること、パスワードが付与されたデータのパスワードを解除してから保存することについて、取引内容が変更されるおそれのない合理的な方法により編集したものと考えられるため問題ないとしている[1]。相手とやりとりしたデータそのものを保存しなければならないとまでは解されない、という整理である[1]。複合機が独自形式で保存する場合も、この考え方で扱える。

電話で値下げを求められた場合は

価格に関するやりとりは、口頭で完結させないほうがよい。コスト上昇等が生じた場面で、協議に応じなかったり必要な説明を行わなかったりして一方的に代金を決めることは禁止されている[6]。記録の残る形でやりとりしておくと、後から経緯を示せる。

まとめ

ファクシミリの扱いは、送信の事実ではなく受信の形態で決まる。データとして残る形で受け取ったなら電子取引として保存し、紙が出てきたなら紙のまま保存する。取適法の側も同じ線引きで、受信と同時に紙が出る機器への送信は書面の交付として扱われる。

電話については、法律のどちらの側にも「電話だけで完結してよい」という規定はない。急ぎで電話が先行しても、その直後に条件を書いたものを送る。この一手間が、後の食い違いをほぼ全部防ぐ。

出典・参考資料

  1. 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(国税庁/令和 7 年 6 月)
  2. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  3. 電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください【令和 6 年 1 月以降用】(国税庁/令和 5 年 7 月)
  4. 2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!(取適法リーフレット)(公正取引委員会)
  5. 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】Ⅱ 適用要件【基本的事項】(国税庁)
  6. 取適法・振興法(公正取引委員会)

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