試作N台で不具合0件なら不良率は何%以下か——早見表と必要台数 | newji
製造業の見積・発注クラウド

その単価は妥当か。
AI が根拠付きで分析。

相見積の比較も発注も進捗管理も、ひとつの画面に。

サービス資料をダウンロードPDF・無料/1分で受け取れます

投稿日:2026年9月25日

試作N台で不具合0件なら不良率は何%以下か——早見表と必要台数

この記事のポイント(結論先出し)

試作 N 台で不具合が 0 件だったとき、言えるのは「不良率は 0%」ではなく「不良率は ○% 以下」という上限だけで、その上限は 1−(1−信頼水準)^(1/N) で計算できる。10 台で 0 件なら、信頼水準 90% で 20.6% 以下、95% で 25.9% 以下までしか言えない。逆に「不良率 0.1% 以下」を 0 件の結果だけで示そうとすると、90% で 2,302 台、95% で 2,995 台が要る。試作の台数でこの差を埋めることはできないので、台数で言える範囲をはっきり書いたうえで、残りを不利な条件の試作品・特性値の測定・量産条件との照合で補うのが現実的な進め方になる。

「10 台やって 1 台も壊れなかった」は何を示しているか

💡 こうした調達・受発注の属人化、Newji one なら「ひとつの画面」で解決。見積依頼から発注・進捗・承認までAIが下支えします。
サービス資料を見る(無料)→

設計評価の報告書に「試作 10 台で耐久試験を実施し、不具合 0 件。問題なし」と書かれていることは珍しくない。読む側もたいていそれで納得する。ところが、量産に入って数百台、数千台と出荷した後に、同じ試験項目に関係する故障が出てくることがある。報告書は嘘をついていないし、試験も正しく行われていた。食い違いの原因は、0 件という結果から何が言えるのかを数字で確かめていなかったことにある。

試作台数が少ないこと自体の問題点や、評価体制の限界については試作台数不足で統計的な信頼性が得られない設計評価の限界で扱っている。この記事はその先の、「では、手元の 10 台 0 件から何%までなら言ってよいのか」を計算で答える側に絞る。計算は電卓か表計算ソフトで済み、特別な統計ソフトは要らない。

先に結論を置くと、10 台で 0 件という結果は(信頼水準 90% で)「この設計の不良率は 20% を超えるほど悪くはなさそうだ」という程度のことしか示していない。20% というのは 5 台に 1 台の割合である。量産で問題になる 1%、0.1% といった水準については、10 台の結果は何も語っていない。この感覚と実際の数字の差を、以下で順に確かめる。

📄 実務で使うなら — 設計段階で不具合をつぶす(全 6 章・無料サンプルあり)

上限を出す式は、二項分布から 1 行で出る

不良率が p の設計から試作品を n 台作り、それぞれが独立に不良になるかどうかが決まると考える。このとき、n 台すべてが良品になる確率は (1−p)^n である。不良率が高い設計ほど、0 件で済む確率は小さくなる。

「信頼水準 C で不良率の上限を出す」とは、「0 件という結果が起きる確率が 1−C まで下がってしまうような不良率を、上限とする」ということである。式にすると (1−p)^n = 1−C で、これを p について解くと次のようになる。

不良率の上限 = 1 − (1 − C)^(1/n)

同じ式は、日本接着学会誌に掲載された電子部品の信頼性試験の解説で、故障 0 個の試験結果が得られたときの母集団の不信頼度として示されている。同じ論文は、信頼水準と目標の不信頼度を決めたときに必要な試料数を n = ln(1−C) / ln(1−F) で求める式も並べている[4]。米国国立標準技術研究所(NIST)の統計ハンドブックも、不良数が少ない場合や試料数が小さい場合には正規分布による近似では精度が足りないことがあるとして、二項分布の累積確率を所定の値に置いて上限と下限を解く厳密な方法を示している[2]。NIST が示しているのは両側の区間で、上限の式は不良数以下になる確率を α/2 と置いている。片側の上限だけが欲しいときにこれを α(=1−C)と置き、不良数に 0 を入れると、上の式と同じになる(この書き換えは本記事で行った計算)。

本記事の数値はすべてこの式で計算し、10 台・0 件・信頼水準 90% のとき 1−0.1^(1/10) = 0.2057、つまり 20.6% になることを確かめた。NIST の厳密法を片側に置き換えて同じ条件を入れても、値は一致する。

「信頼水準 90%」の正しい読み方

ここでいう信頼水準は、同じ台数・同じ条件の試験を何度も繰り返し、そのたびに同じ考え方で上限を出したとすると、出てきた上限が真の不良率を下回らずに済む(真の値を取りこぼさない)回が、全体の少なくとも 90% になる、という意味である(不良の数は整数でしか数えられないため、真の不良率によっては 90% を上回り、100% になることもある)。NIST は信頼水準を、同じ母集団から何度も試料を取って区間を作ったとき、その区間が真の値を含む割合として説明している[1]。

したがって「真の不良率が 20.6% 以下である確率は 90%」と言い換えるのは、厳密には正しくない。NIST は、従来の統計の考え方では母集団の値は決まった一つの値であり、信頼区間は試料から計算した数値が真の値を捉える見込みについての頻度の記述であって、真の値そのものについて確率を述べることはできない、と注意している[7]。確率を持っているのは試験と計算の手順の側で、設計の不良率の側ではない。報告書に書くときは「信頼水準 90% で、不良率の上限は 20.6%」とするのが正確である。

もう一つ、用語の混同に注意したい。信頼性工学では「信頼度」という語を、製品が所定の時間にわたって機能を果たす確率の意味で使う。前出の論文も、信頼度 R(t) = 1−F(t) と、推定の確からしさを表す信頼水準(CL)を別の記号で書き分けている[4]。社内の資料で「信頼度 90%」と書くと、製品の信頼度が 90% なのか、推定の信頼水準が 90% なのかが読み手によって割れる。統計の話をしているときは「信頼水準」と書いておくほうが誤解が少ない。

早見表:N 台で不具合 0 件のときに言える不良率の上限

試作や評価でよく使われる台数について、信頼水準ごとの上限をまとめた。値はすべて上の式で計算したもので、1% 以上は小数第 2 位、1% 未満は小数第 3 位を四捨五入している。

試験した台数(0 件) 信頼水準 80% 信頼水準 90% 信頼水準 95% 信頼水準 99%
3 台 41.5% 53.6% 63.2% 78.5%
5 台 27.5% 36.9% 45.1% 60.2%
10 台 14.9% 20.6% 25.9% 36.9%
20 台 7.7% 10.9% 13.9% 20.6%
30 台 5.2% 7.4% 9.5% 14.2%
50 台 3.2% 4.5% 5.8% 8.8%
100 台 1.6% 2.3% 3.0% 4.5%
300 台 0.54% 0.76% 0.99% 1.5%
1,000 台 0.16% 0.23% 0.30% 0.46%

表を横に読むと、同じ結果でも信頼水準を上げるほど上限は大きくなる(言えることが弱くなる)。縦に読むと、台数を 10 倍にしても上限はおおむね 10 分の 1 にしかならない。上限を半分にしたければ、台数はほぼ倍にしなければならない。

表の値は、ざっくり「信頼水準 90% なら 2.3÷台数、95% なら 3÷台数」で近似できる。台数が大きくなるほど近似はよく合い、100 台以上ではほぼ一致する。10 台程度では近似のほうが大きめに出る(95% で 30% と 25.9%)ので、試作の少ない台数で使うときは式で計算したほうがよい。この 2.30 と 3.00 という係数は、NIST が時間で数える信頼性試験の計画表で「故障 0 件」の行に載せている値とも同じである[3]。

見方を変える:不良率が本当は何%なら、10 台で 0 件になるか

上限の意味は、逆向きに計算するとつかみやすい。真の不良率が決まっているとして、10 台すべてが良品になる確率 (1−p)^10 を並べると次のようになる。

真の不良率 10 台すべて良品になる確率 読み方
0.1%(千台に 1 台) 99.0% ほぼ必ず 0 件で通る
1%(百台に 1 台) 90.4% 10 回に 9 回は 0 件で通る
5%(20 台に 1 台) 59.9% 半分以上の確率で 0 件で通る
10%(10 台に 1 台) 34.9% 3 回に 1 回は 0 件で通る
20.6% 10.0% ここが信頼水準 90% の上限

不良率 1% の設計は、10 台の試験では 10 回に 9 回「不具合 0 件」になる。不良率 0.1% の設計と 1% の設計は、10 台の試験ではまず見分けがつかない。ここが「0 件だったから良品」と読んではいけない理由である。0 件という結果は、不良率 20% 前後の悪い設計を弾く力は持っているが、量産で問題になる水準の設計を良い設計と区別する力は持っていない。

逆算:目標の不良率を 0 件の結果だけで示すには何台要るか

評価計画を立てる側からは、目標の不良率と信頼水準を先に決め、必要な台数を n = ln(1−C) / ln(1−p) で出す形になる[4]。計算結果を切り上げたものが次の表である。

示したい不良率の上限 信頼水準 80% 信頼水準 90% 信頼水準 95% 1 件まで許す場合(90% / 95%)
20% 8 台 11 台 14 台 18 台 / 22 台
10% 16 台 22 台 29 台 38 台 / 46 台
5% 32 台 45 台 59 台 77 台 / 93 台
1% 161 台 230 台 299 台 388 台 / 473 台
0.1% 1,609 台 2,302 台 2,995 台 3,889 台 / 4,742 台

「0.1% 以下」を信頼水準 90% で 0 件の結果から言うには 2,302 台、95% なら 2,995 台が要る。試作で用意できる台数とは桁が違う。日本信頼性学会誌の解説でも、信頼水準 90% で不信頼度 1% を検証する条件を「230 個で故障 0 個」として扱っており、表の値と一致する[5]。さらに市場で求められる初期故障の水準が ppm(100 万分の 1)単位になると、必要な試料数は実現不可能な数になり、限られた小サンプル数の信頼性試験はそのような小さな不信頼度を直接検証する能力を持たない、と前出の接着学会誌の解説は書いている[4]。

「1 件までは許す」にすると何が変わるか

表の右端の列は、試験中に 1 件の不具合が出ても合格とする計画にしたときの台数である。同じ上限を示すのに必要な台数は、信頼水準 90% で約 1.7 倍、95% で約 1.6 倍に増える。不具合が 1 件出た場合の上限は、表計算ソフトのベータ分布の逆関数(前出の解説では BETAINV(信頼水準, 不具合数+1, 台数−不具合数))で求められる[4]。たとえば 10 台で 1 件なら、信頼水準 90% で上限は 33.7%、95% で 39.4% になる。

台数が増えるのに 1 件を許す計画にする理由は、0 件合格の試験が「厳しすぎる」ことにある。NIST は時間で数える試験の計画について、故障を 1 件も許さない試験がいちばん短く済む一方で、境目に近い、本来は合格してよい装置を偶然の故障で落とす見込みが大きく、供給者にとって公正さに欠けると説明している[3]。試作の評価でも同じで、0 件合格にすると、1 台の偶発的な不具合で設計全体が不合格になる。どちらの計画を採るかは、不合格にしたときの手戻りの重さと、試作を増やす費用を比べて決めることになる。

なお、試験で実際に 1 件出たときに大事なのは、数字の上限を計算し直すことより、その 1 件の原因を調べることである。原因が設計にあるなら、残りの台数が何台 0 件であっても評価は振り出しに戻る。数えることで扱えるのは偶然のばらつきだけで、原因のわかった不具合は数の問題ではない。

0 件が「言っていない」3 つのこと

上限の計算は、試験した台数が量産品を代表していて、試験の条件と時間が実際の使われ方を代表している、という前提の上に成り立っている。この前提が崩れていると、計算した上限そのものが当てにならない。

1. 試作品は、量産品と同じものではない

電子情報技術産業協会(JEITA)の信頼性評価ガイドは、試験に使った供試品は製造したときの条件だけに依存した出来栄えの一母集団にすぎず、試験に合格したという結果はその母集団に対する品質判断であって、その後の量産品すべての信頼性を保証していないかもしれない、と指摘している[6]。同じガイドは、試験後に製造設備・加工条件・製造場所などが変わっていたことを試験の担当者が知らないまま量産に移り、条件に依存した故障が市場に出る事例も挙げている[6]。試作から量産までの間に何が変わったかを拾う方法は変化点管理を DRBFM の議論につなぐ方法で扱う。

2. 試作品は、公差の真ん中あたりでできていることが多い

同じ JEITA のガイドには、懸念していた故障が寸法や電気的特性の上下限で初めて起きる性質のものだったのに、試験に使った供試品がその不利な条件を含んでいなかったため、試験では起きず、量産で特性が上下限側にばらついて市場で起きた、という事例が載っている[6]。試作品は腕の良い担当者が丁寧に作るので、ばらつきの中央に寄りやすい。そういう 10 台で 0 件だったことは、公差の端で作られた量産品については何も示していない。

3. 0 件は「その試験時間・その条件まで」の話でしかない

計算した上限は、その試験を打ち切った時点での不良率についての話である。前出の接着学会誌の解説は、限られた試料数で検証できる不信頼度は、市場の耐用寿命で許される不信頼度よりかなり大きな値になることが多いので、試験時間はその差を累積するまでの時間を含めて設定する必要があるとし、10 年を検証するために 22 個を実稼働 15 年・20 年相当で打ち切る試験では検証不足になる可能性があると書いている[4]。また、日本信頼性学会誌の解説は、規格で試料数と試験時間を固定し、その範囲で故障がなければ合格とする規格試験が広く使われているが、新しい製品で条件が変わっているのに固定されたまま打ち切られ、必要な手直しが行われないまま市場投入に至る事態を招いている、と指摘している[5]。

加速試験で時間を縮める方法や、寿命分布を使って試験個数を設計する方法はライフテストのサンプルサイズ最適化で詳しく扱っているので、ここでは繰り返さない。故障 0 件のときの上限の式と「2.30÷台数」の近似も、同じ記事がロットの合否判定(LTPD)の言葉で扱っている。この記事は、その計算を試作の台数の早見表と必要台数の逆算に絞って示したものである。

台数で言えない分を、何で補うか

上の表のとおり、試作の台数だけで量産水準の不良率を示すことはできない。だからといって試作の評価が無意味になるわけではない。台数で言える範囲をはっきり書いたうえで、残りを別の手段で埋める。よく使われる手段を、何を補うものかと合わせて整理する。

補う手段 埋めるもの 限界・注意
不利な条件の試作品を作る(公差の上下限など) 試作品が中央に寄る問題 どの特性が効くかを先に故障モードから決めておく必要がある
壊れたかどうかでなく特性値を測る 0/1 の数え方では情報が少ない問題 特性値と故障の関係(判定基準)が決まっていることが前提
故障モードごとに試験を分ける 「何を確かめた 0 件か」が曖昧な問題 洗い出していない故障モードは確かめられない
類似品の実績を事前の情報として使う 試作の台数そのものが足りない問題 事前の情報が不正確なら結論を誤る。顧客が認めないことがある
量産条件との差を記録し照合する 試作と量産の条件がずれる問題 記録を残していないと後から照合できない

不利な条件の試作品を意図して作る

JEITA のガイドは対策として、想定する故障モードの発生の仕組みに応じて、不利な条件を持つ供試品を用意して試験に使うことを挙げ、そうすれば量産中に品質がばらついても信頼性を保証できることを確かめられる、としている[6]。10 台を同じ条件で作るより、たとえば 4 台を寸法の上限側、4 台を下限側、2 台を中央で作るほうが、同じ 10 台でも得られる情報は多い。ただしこの場合、表の計算の前提(全台が同じ母集団から取られている)とは違う使い方になる。上限の数字を報告するより、「上下限の条件でも起きなかった」という事実として書くほうが正確である。

壊れたかどうかを数えるのでなく、特性値の変化を測る

0 件か 1 件かを数える方法は、1 台あたり「良い・悪い」の 1 ビットしか情報を取らない。前出の接着学会誌の解説は、計数による抜取試験では必要な試験時間が実現困難になる場合に、故障判定に使う特性の分布を抜取試料から推定して判定基準に対する不適合率を調べる計量抜取試験に切り替えることで、限られた試験時間でも検証できる場合があると説明している[4]。日本信頼性学会誌の解説も、故障数 0 個だから合格と判定するのではなく、試験で採取した特性データの分布状態を調べて不信頼度を推定し、目標寿命の範囲で顕著に増加しないことを確かめる解析を勧めている[5]。10 台すべてについて、判定基準までの余裕がどれだけ残っているかを記録しておけば、同じ 10 台から得られることは大きく増える。

ただし、平均値だけを見る試験には別の落とし穴がある。同じ解説は、破壊耐量を 3 個程度で評価する試験は平均の耐量を調べるもので、その値より耐量の低いものが約 50% の確率で含まれる可能性を残している、と注意している[4]。「3 個とも規格をクリアした」は「全部がクリアする」ではない。

故障モードごとに「何を確かめた 0 件か」を分ける

JEITA のガイドは、製品仕様書や試験基準書だけに従って試験を計画し、問題ないことを確かめたにもかかわらず市場で故障が出た事例を挙げ、試験計画は FMEA・DRBFM・FTA などで想定した故障モードやその未然防止策の有効性に着目して決めるよう求めている[6]。「耐久試験で 0 件」と一括りにせず、「はんだ接合の疲労について、温度サイクル何回で 0 件」「締結部の緩みについて、振動何時間で 0 件」と故障モードごとに書けば、どこが確かめられていてどこが確かめられていないかが報告書から読める。洗い出した故障モードにどの順で手を打つかはFMEA の優先順位を RPN から AP へ替える理由で扱う。

類似品の実績を使う(ただし使い方に注意する)

前の世代の製品や類似の構造で積み上がった実績は、試作の少ない台数を補う材料になる。NIST は、過去の試験データや技術者の合意にもとづく判断を事前の分布として組み込むベイズ的な方法を紹介し、事前の情報が良好なら、所定の信頼水準で目標を確かめるのに必要な新たな試験が少なくて済む場合があるとしている。一方で、事前の情報が不正確なら誤った結論を生む、事前の情報の入れ方に唯一の正解がなく方法によって結果が変わる、顧客が事前のデータや技術的な判断の妥当性を認めないことがある、結果が客観的に自立しない、という欠点も並べている[7]。類似品の実績を使うなら、どこが同じでどこが違うかを変更点として書き出し、違う部分は新たな試験で確かめる、という組み合わせにするのが無理のない使い方である。過去の不具合を次の設計の評価に引ける形で残す方法は過去トラをデザインレビューで使える形にしておく方法で扱う。

報告書にはどう書くか

試作評価の結果を上位の会議や顧客に出すとき、書き方で受け取られ方が変わる。数字が同じでも、次のように書き分けると、何が言えて何が言えていないかが読み手に伝わる。

避けたい書き方 言えることに合わせた書き方
試作 10 台で不具合なし。信頼性に問題なし 試作 10 台・不具合 0 件。信頼水準 90% で不良率の上限は 20.6%。量産目標(1% 以下)はこの結果だけでは確認できていない
信頼度 90% で合格 信頼水準 90% の上限で評価(製品の信頼度とは別の意味)
耐久試験 0 件 故障モード A(温度サイクル何回)0 件、故障モード B(振動何時間)0 件。故障モード C は未評価
(試作条件の記載なし) 試作条件:設備・材料ロット・寸法の実測範囲を記載。量産条件との差を別表で照合

「確認できていない」と書くのは弱気に見えるかもしれないが、言っていないことを言ったことにするよりはずっと安全である。量産後に不具合が出たとき、報告書に「上限 20.6%、量産目標は未確認」と書いてあれば、評価の不足ではなく残したリスクとして議論できる。「問題なし」と書いてあれば、評価そのものの信用が問われる。

よくある質問

信頼水準は 90% と 95% のどちらを使えばよいか

決まった答えはない。顧客の要求や社内の規程で決まっていればそれに従う。決まっていない場合は、両方の値を並べて書いておけば読み手が選べる。表のとおり、10 台 0 件なら 90% で 20.6%、95% で 25.9% と、信頼水準の選び方で上限は 5 ポイントほど動く。自分に都合の良い信頼水準を後から選ぶのは避け、評価計画の段階で決めておくのが筋である。

試作 3 台しかない。何か言えることはあるか

3 台で 0 件の場合、信頼水準 90% での上限は 53.6% で、不良率についての情報はほとんど無い。3 台の試験は不良率を確かめる試験ではなく、設計の弱点を探す試験、あるいは特性の平均的な値を確かめる試験として位置づけるのが正直である[4]。日本信頼性学会誌の解説は、最初に作られた試作品は初期の設計段階では予期できなかった重大な欠陥を常に持っており、試作品を試験にかけて問題点を見つけ手直しを重ねることで信頼性が向上する、という趣旨の記述を引用している[5]。少ない台数の試作は、不具合を見つけて直すために使うほうが得るものが大きい。

「3÷台数」の近似は、どこまで使ってよいか

信頼水準 95% で 0 件のときの近似として便利だが、台数が少ないほど実際の値より大きく出る。10 台では 30%(実際は 25.9%)、20 台では 15%(同 13.9%)、100 台で 3%(同 2.95%)になる。大きく出る方向のずれなので安全側ではあるが、評価計画の台数を決めるときは式で計算するほうがよい。

試験中に 1 件出たら、その試作は失敗なのか

不具合 1 件は、数字の上では上限を押し上げる(10 台で 1 件なら信頼水準 90% で 33.7%)。しかしそれ以上に大事なのは、その 1 件が設計に原因のある故障か、試験の設備や取り扱いに原因のある故障かを切り分けることである。JEITA のガイドには、供試品の取り扱い時の静電気放電や、試験槽内の温度分布の不均一など、製品とは別のところに原因がある試験の失敗事例が多数まとめられている[6]。原因を調べずに「1 件だから許容範囲」とも「1 件出たから不合格」とも決めないことが先になる。

まとめ

試作 N 台で不具合が 0 件だったとき、言えるのは不良率の上限だけで、その値は 1−(1−C)^(1/N) で計算できる。10 台で 0 件なら信頼水準 90% で 20.6%、95% で 25.9% が上限で、不良率 1% の設計も 0.1% の設計も 10 台の試験では見分けられない。0.1% を 0 件の結果だけで示すには 2,302 台(90%)が要り、試作の台数では届かない。

だからこそ、台数で言える範囲を報告書に数字で書き、言えない分は、不利な条件の試作品、特性値の測定、故障モードごとの試験の切り分け、類似品の実績、量産条件との照合で補う。計算そのものは 1 行で済む。難しいのは、その 1 行が示す範囲を超えて「問題なし」と書かない規律のほうである。

出典・参考資料

  1. NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methods 7.1.4 What are confidence intervals?(米国国立標準技術研究所)
  2. NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methods 7.2.4.1 Confidence intervals(米国国立標準技術研究所)
  3. NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methods 8.3.1.1 Exponential life distribution (or HPP model) tests(米国国立標準技術研究所)
  4. 品質保証のための電子部品の信頼性試験(松岡敏成/日本接着学会誌 Vol.50 No.10/2014 年)
  5. 品質工学と信頼性工学を融合させた信頼性評価(松岡敏成/日本信頼性学会誌「信頼性」Vol.37 No.4/2015 年)
  6. 電子部品の信頼性評価ガイド(失敗事例から学ぶ評価実務)(一般社団法人電子情報技術産業協会 電子部品部会 部品安全専門委員会/2019 年 5 月)
  7. NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methods 8.1.10 How can Bayesian methodology be used for reliability evaluation?(米国国立標準技術研究所)

試作の台数が少ないときの設計評価を、社内で教えられる形に

この記事で扱った「試作の台数と不良率の上限」の考え方を、演習・解答・修了確認テストつきで社内で教えられる形にまとめた研修テキストが、NEWJI総研の「設計・品質 研修テキスト① 設計段階で不具合をつぶす」です。FMEA と FTA の使い分け、工程 FMEA、DRBFM、デザインレビューとあわせて、試作の台数が少ないときの設計評価を 1 章で扱っています。DRBFM ワークシートと工程 FMEA シートの様式が付いています。

目次と無料サンプルを見る

WHITE PAPER

この記事の理解を深める
無料ホワイトペーパーをプレゼント

製造業の現場で使える実務資料(PDF)を無料でお届けします。"こんな資料が届きます" ↓ 下のボタンからどうぞ。

FREE DOCUMENT — サービス資料(PDF・無料)

見積依頼から比較まで、
ひとつの画面にまとめる方法

Newji one は、製造業の調達・受発注に特化したクラウド/AIエージェント。見積依頼・発注書作成・進捗管理・承認をひとつの画面に集約し、AIが比較と異常検知を担当。最後の「GO」だけ人が押す仕組みです。

  • 見積〜発注〜納期を一元管理。催促・転記のムダをゼロに
  • AIが相見積もり比較と異常検知。あなたは判断だけに集中
  • 取引先は「招待」で完全無料。自社コストだけで取引先ごとデジタル化

※ 取引先から招待された企業様は完全無料でご利用いただけます

調達購買アウトソーシング

調達購買アウトソーシング

調達が回らない、手が足りない。
その悩みを、外部リソースで“今すぐ解消“しませんか。
サプライヤー調査から見積・納期・品質管理まで一括支援します。

対応範囲を確認する

OEM/ODM 生産委託

アイデアはある。作れる工場が見つからない。
試作1個から量産まで、加工条件に合わせて最適提案します。
短納期・高精度案件もご相談ください。

加工可否を相談する

NEWJI DX

現場のExcel・紙・属人化を、止めずに改善。業務効率化・自動化・AI化まで一気通貫で設計します。
まずは課題整理からお任せください。

DXプランを見る

受発注AIエージェント

受発注が増えるほど、入力・確認・催促が重くなる。
受発注管理を“仕組み化“して、ミスと工数を削減しませんか。
見積・発注・納期まで一元管理できます。

機能を確認する

You cannot copy content of this page