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投稿日:2026年10月1日

EUのCBAM本格適用——鉄鋼・アルミ製品の輸出で求められる排出量データ

この記事のポイント(結論先出し)

2026 年 10 月 1 日に欧州委員会の公式ページで確かめた内容である。EU の炭素国境調整措置(CBAM)は 2026 年 1 月 1 日から本格適用に入り、鉄鋼・アルミニウム・セメント・肥料・電力・水素の対象品を年 50 トンを超えて輸入する EU の輸入者に、排出量の申告と CBAM 証書の購入・納付を求めている[1]。2026 年の輸入分の最初の申告と証書の納付の期限は 2027 年 9 月 30 日である[4]。義務を負うのは EU 側の輸入者だが、ねじ・ボルト(CN コード 7318)や管用継手などの鉄鋼製品を EU に出す日本の企業は、輸入者から製品ごとの排出量の提供を求められる[5]。実測値を出せなければ国別のデフォルト値が使われ、デフォルト値には 2026 年の 10% から段階的に上乗せがつく[5]。だから、自社が買う鋼材やアルミ地金の排出量データを上流から取れるかどうかが、輸出品の競争条件になる。

本格適用で何が変わったか

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欧州委員会の税関・税制総局のページによれば、CBAM は 2023 年から 2025 年までの移行期間を経て、2026 年 1 月 1 日から本格適用の段階にある[1]。本格適用では、輸入者に認可の取得、報告、CBAM 証書の購入と納付の義務がかかる[1]。CBAM 対象品の輸入量が、単一の質量基準である年 50 トンを超える EU の輸入者(またはその間接的な通関代理人)は、認可 CBAM 申告者の地位を申請しなければならない[1]。

証書の価格は EU 排出量取引制度(EU ETS)の排出枠の競売価格をもとに計算し、2026 年は四半期ごとの平均、2027 年以降は週ごとの平均で決まる[1]。欧州委員会は 2026 年の四半期価格として、第 1 四半期を 75.36 ユーロ、第 2 四半期を 75.28 ユーロと公表している[3]。証書は 2027 年 2 月から共通の中央プラットフォームで購入する[3]。輸入者は毎年、輸入品に含まれる排出量(体化排出量)を申告し、それに見合う枚数の証書を納付する[1]。2026 年の輸入分については、2027 年 9 月 30 日が最初の申告と証書の納付の期限である[4]。

50 トンの基準について、欧州委員会は 2026 年 9 月 30 日、2025 年 4 月から 2026 年 3 月までの期間で見ると、この基準で除外される体化排出量は全体の 0.87% で、1% の上限を下回っているという評価を公表した[4]。小口の輸入者の多くは対象外になるが、対象品の排出量の大部分は引き続き対象に残る、という設計である。

日本の企業は、どこで関わるか

ジェトロの算定実務マニュアル(2026 年 3 月)は、CBAM の報告と証書の購入義務は EU 域内の輸入事業者が負い、域外の施設で生産した対象品を EU に輸出する企業は、輸入事業者から体化排出量に関する情報の提供を求められると整理している[5]。EU にある子会社が対象品を輸入している場合は、その子会社自身が報告と証書購入の義務を負う[5]。

対象かどうかは EU の関税分類である CN コードで判断する[5]。同じマニュアルは、鉄鋼の統合製品カテゴリ「鉄または鋼製品」に、熱間圧延品(7208)などの鋼材のほか、管用継手(7307)、構造物とその部分品(7308)、ねじ・ボルト類(7318)、その他の鉄鋼製品(7326)が含まれると示している[5]。CN コードの確定権限は輸入国の税関にあるため、正式なコードは事前教示などで確かめる必要があるとも書いている[5]。部品メーカーにとって、CBAM は鉄鋼メーカーだけの話ではない。

対象品の範囲は広がる可能性がある。欧州委員会は 2025 年 12 月、鉄鋼・アルミの含有率が高い 180 の川下製品を対象に加える改正案を出した[7]。欧州議会調査局の 2026 年 9 月 7 日の資料によれば、EU 理事会は 2026 年 6 月 12 日に対象を 200 品目とする一般的アプローチに合意し、欧州議会の環境委員会は 457 品目に広げる報告を採択して、9 月の本会議で議会の立場を決める予定だった[7]。2026 年 10 月 1 日時点で確認できた範囲では、改正はまだ成立していない。どの品目が加わるかは、成立した規則の付属書で確かめる。

排出量は「施設」と「前駆体」で決まる

CBAM の体化排出量は、製品を作った施設の排出だけでなく、その製品に使った前駆体(材料になる対象品)の排出も含めて計算する[5]。ジェトロのマニュアルは、対象品・統合製品カテゴリ・施設と生産プロセス・前駆体を特定し、施設の排出量を生産プロセスに帰属させ、前駆体の排出量を足して、最後に製品の特定体化排出量を出す手順を示している[5]。外注先は施設から外して考えられるが、算定の範囲(システム境界)には含まれる[5]。一方で、鉄鋼製品のめっき・切断・溶接・仕上げ、アルミ製品の切断・溶接・仕上げの工程は、境界から除外して算定の対象外にできる[5]。ジェトロの簡素化規則の解説(2026 年 2 月)も、EU ETS の範囲に含まれない独立した設備で行う仕上げ工程は CBAM の対象範囲から除外され、そこで生じる排出は算出の対象外になると説明している[6]。

購買の立場で重いのは前駆体である。ボルトを作る会社にとって、前駆体は自社が買う線材や棒鋼で、その排出量は鉄鋼メーカーの施設で決まる。前駆体の排出量に実測値を使うなら鉄鋼メーカーからデータをもらう必要があり、もらえなければデフォルト値を使うことになる[5]。自社の施設は実測値、前駆体の一部はデフォルト値、という組み合わせでの報告もできる[5]。

実測値かデフォルト値か

デフォルト値は、CBAM 対象品ごと、国・地域ごとに実施規則の付属書で定められている[5]。簡素化規則では、輸入者が実際の排出量を適切に算定できない場合に限る、という条件が外され、デフォルト値を使えるようになった[6]。ただし、デフォルト値は実際の排出量を下回らないよう保守的な上乗せ(マークアップ)が加えられ、その率は 2028 年までに 10%、20%、30% と段階的に上がる(肥料は各年 1%)[5]。

ジェトロのマニュアルは、日本産の熱間圧延品(CN コード 7208)を前駆体とする例で、上乗せ前のデフォルト値 2.10 tCO2/t が、2026 年に 2.31、2027 年に 2.52、2028 年以降に 2.73 になると示し、同じ例で実測値に基づく体化排出量(2.09 tCO2/t)よりデフォルト値を使った値のほうが高くなることを示している[5]。デフォルト値は 2027 年末までに再評価される予定とも書いている[5]。

項目 実測値で申告する デフォルト値で申告する
必要なデータ 施設の燃料・電力の使用量、生産量、前駆体の排出量 対象品の重量と原産国(値は付属書で決まっている)
第三者の検証 認定検証者の検証が必要 不要
値の水準 施設の実績どおり 国の平均値に上乗せ。2026 年 10%、2027 年 20%、2028 年以降 30%
輸入者から見た負担 証書の枚数が少なくなる傾向 証書の枚数が多くなる傾向

表はジェトロのマニュアル[5]と簡素化規則の解説[6]から作った。簡素化規則の解説は、実際の排出量で申告するほうがデフォルト値より低い排出量が報告される傾向があり、十分で正確なデータを出せる事業者が競争上有利になる一方、データの提供が不十分な企業は市場での魅力が下がる可能性があると指摘している[6]。

検証の日程

実測値の検証は、製品を作る施設の単位で行う[2]。欧州委員会の検証のページによれば、EU 加盟国の認定機関による CBAM 検証者の認定は 2026 年 4 月に始まり、最初の検証者の認定は 2026 年 9 月ごろの見込みで、同月から書類審査や現地訪問を含む最初の検証が始まる[2]。認定検証者が最初の検証報告書を出せるのは 2027 年 1 月からで、域外の施設の事業者はそれを申告者に共有できる[2]。EU 域外の検証会社は、この認定サービスを提供するどの国の認定機関にも申請できる[2]。域外の事業者は、求めに応じて事業者と施設の情報を CBAM 登録簿に登録でき、登録した施設の製品については申告者がその情報を使える[5]。

日本の炭素価格は差し引かれるか

欧州委員会は、輸入品の生産時にすでに炭素価格が支払われていることを輸入者が証明できれば、その分を差し引けるとしている[1]。日本では GX 推進法に基づく排出量取引制度が 2026 年度に始まった[8]。しかし、ジェトロの解説は 2026 年 2 月時点で、EU が最終的にどの国の炭素価格制度を CBAM の枠組みで正式に認めるのかは明らかになっていないとしている[6]。2026 年 10 月 1 日に確認した欧州委員会のページでも、日本の制度の扱いを示す記述は見当たらなかった。差し引きを前提に価格を決めないことが無難である。国内の制度の中身は 排出量取引制度(GX-ETS)の本格化と、調達への影響 で扱った。

調達側がすること

1. 輸出品を CN コードで洗い出す。
自社の輸出品、EU の子会社や顧客に出している品目のうち、鉄鋼・アルミの統合製品カテゴリに入るものを特定する[5]。商社経由の輸出も、最終的に誰が EU で輸入しているかを確かめる。

2. 前駆体の仕入先を特定する。
その品目に使う鋼材・アルミ材を、どの施設が作ったかまで遡る。ミルシート(材料証明書)で製造所まで追えるかどうかが、ここで効いてくる。証明書の出所の確かめ方は ミルシート Type 3.1 を出せない仕入先を発注前に見抜く で扱った。

3. 前駆体の排出量データを依頼する。
施設単位の実測値と、検証の予定を聞く。出せないと言われたら、その品目はデフォルト値で申告されることを輸出先と共有する。データの頼み方の一般論は 仕入先に CO2 排出量(CFP・Scope3)のデータを頼むとき にまとめた。

4. 契約に書く。
排出量データの提供、検証への協力、データの範囲と利用目的、費用の分担を、継続取引の契約や仕様書に入れる。費用や秘密の扱いを協議せずに一方的に求めると、取引条件の押しつけになりうる点は国内のデータ依頼と同じである。

5. 実測値とデフォルト値の差を見積りに反映する。
どちらで申告されるかで、輸入者が払う証書の額が変わる[6]。輸出先と価格を協議するとき、この差をどちらが負うかを先に決めておく。

鋼材・アルミの市況そのものや価格スライドの作り方は、鋼材価格の改定と、購入契約で決めておくこと と アルミの価格変動と、価格スライド条項の作り方 で扱う。値上げの申し入れを受けたときの協議の進め方は 仕入先から値上げの申し入れが来たら を参照してほしい。

よくある質問

Q. 自社は EU に直接輸出していない。関係あるか。
自社の製品が商社や顧客を通じて EU に輸入され、それが対象品であれば、上流の供給者として排出量の提供を求められることがある。ジェトロのマニュアルも、EU に輸出する企業のサプライチェーンに関係する企業は間接的に影響を受ける可能性があるとしている[5]。

Q. めっきや切断だけを請け負っている。算定の対象になるか。
鉄鋼製品のめっき・切断・溶接・仕上げは、システム境界から除外して算定対象外にできる[5]。ただし、どの工程が除外になるかは実施規則の条件によるので、輸出者と確かめる。

Q. 検証者が見つからないうちは、どうなるか。
最初の検証報告書が出せるのは 2027 年 1 月からで[2]、2026 年分の申告期限は 2027 年 9 月 30 日である[4]。検証を受けられなければ、その分はデフォルト値で申告されることになる。

まとめ

CBAM は 2026 年 1 月から本格適用に入り、年 50 トンを超える EU の輸入者は排出量を申告して証書を納付する[1]。最初の期限は 2027 年 9 月 30 日、証書の購入は 2027 年 2 月からである[3][4]。日本の輸出者は輸入者から製品ごとの排出量を求められ、その中には自社が買った鋼材・アルミ材の排出量も含まれる[5]。実測値を出せなければ上乗せのついたデフォルト値が使われ、上乗せは 2028 年に 30% まで上がる[5]。輸出品を CN コードで洗い出し、前駆体の製造所まで遡ってデータを依頼し、その条件を契約に書いておくことが、調達側の準備になる。

出典・参考資料

  1. CBAM definitive regime(European Commission, Directorate-General for Taxation and Customs Union/2026 年 10 月 1 日閲覧)
  2. Verification of CBAM emissions(European Commission, Directorate-General for Taxation and Customs Union/2026 年 10 月 1 日閲覧)
  3. Price of CBAM certificates(European Commission, Directorate-General for Taxation and Customs Union/2026 年 10 月 1 日閲覧)
  4. CBAM communication and news(European Commission, Directorate-General for Taxation and Customs Union/2026 年 10 月 1 日閲覧)
  5. EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)に対応する排出量の算定実務マニュアル(日本貿易振興機構 調査部/2026 年 3 月)
  6. EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の簡素化規則の解説(日本貿易振興機構 調査部・ブリュッセル事務所/2026 年 2 月)
  7. Extension of CBAM scope to downstream goods and anti-circumvention measures(European Parliamentary Research Service/2026 年 9 月 7 日)
  8. 排出量取引制度について(排出量取引制度ポータルサイト)(GX 推進機構/2026 年 10 月 1 日閲覧)

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