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投稿日:2026年10月1日

育成就労制度への移行で、仕入先の人手の何を確かめるか

この記事のポイント(結論先出し)

技能実習制度は発展的に解消され、2027 年 4 月 1 日から育成就労制度が始まる[1]。2026 年 10 月時点では、監理支援機関の許可(2026 年 4 月 15 日から)と育成就労計画の認定(同 9 月 1 日から)の施行日前申請がすでに受け付けられている[2]。発注側に関わる変化は三つある。一定の条件のもとで本人の意向による転籍が認められること、日本語講習や送出し費用の一部を受け入れる企業側が負担すること、そして移行期に仕入先の現場で人の入れ替わりが起きうることである[1][2]。技能実習生を使う事業場への監督指導(違反が疑われる事業場が対象)では 73.2% で法令違反が見つかっており[3]、政府の人権尊重ガイドラインは受入れ企業に仲介業者や費用負担の確認を例示している[5]。発注側は、仕入先の人手を品質の変化点と人権の確認の両面から見ておく。仕入先との取引が取適法の対象に入るなら、費用の増加を理由とした価格の協議に応じる義務がある[6]。

2026 年 10 月時点の制度の位置——何がいつ変わるか

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2024 年 6 月 21 日に、出入国管理法と技能実習法を改正する法律が公布された。技能移転による国際貢献を目的とする技能実習制度を発展的に解消し、人手不足分野での人材の育成・確保を目的とする育成就労制度を創設するもので、育成就労制度は 2027 年(令和 9 年)4 月 1 日から運用を始める[1]。育成就労の目的は、受入れ分野で 3 年間の就労を通じて特定技能 1 号の水準の技能を持つ人材を育てることとされている[1]。

施行の前から手続きは動いている。出入国在留管理庁の Q&A によると、2026 年 4 月 15 日から監理支援機関の許可、同年 9 月 1 日から育成就労計画の認定について、施行日前の申請を受け付けている[2]。受入れ分野は 2026 年 1 月 23 日に閣議決定された分野別運用方針で定められ[2]、2026 年 7 月時点では特定技能の 19 分野のうち自動車運送業と航空を除く 17 分野が育成就労の対象である[1]。製造業に関わる「工業製品製造業」の分野には、機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理、紙器・段ボール箱製造、電線・ケーブル製造、ゴム製品製造などの業務区分が並ぶ[1]。

受入れの規模にも上限が設けられた。2028 年度末までの受入れ見込数(受入れ上限数)は、特定技能 1 号が 80 万 5,700 人、育成就労が 42 万 6,200 人で、合計約 123 万人とされている[2]。これは分野ごとの上限の総計で、いまの在留者数に上乗せする数ではないと説明されている[2]。

技能実習と育成就労の違い(発注側に関わる点)

項目 技能実習 育成就労 発注側から見た意味
目的 技能移転による国際貢献 人手不足分野での人材の育成・確保(3 年で特定技能 1 号水準) 「労働者として育てて定着させる」制度になる
本人の意向による転籍 認められなかった 一定の技能・日本語、転籍制限期間(分野ごとに 1〜2 年)などを条件に、同じ業務区分の中で認める 仕入先の熟練した作業者が他社へ移ることがある
監理する団体 監理団体 監理支援機関(許可制。基準を厳格化) 仕入先の受入れの体制が組み直される
日本語 (本記事では扱わない) 就労開始前に A1 相当の試験合格か相当講習(100 時間以上)。費用は受入れ側が措置 受け入れる仕入先の費用が増える
送出し費用 (本記事では扱わない) 本人から徴収できるのは月給の 2 か月分まで。超える分は受入れ企業か監理支援機関が負担 同上。価格の協議の材料になる

表の育成就労の列は、出入国在留管理庁の制度概要と Q&A による[1][2]。目的の違いと、技能実習では本人の意向による転籍が認められなかったことも同じ資料に書かれている[1][2]。

発注側にとっての論点 1:転籍は「品質の変化点」になる

本人の意向による転籍の条件として、出入国在留管理庁は、分野ごとに定める一定水準の技能と日本語能力を身につけていること、転籍制限期間(分野ごとに 1 年以上 2 年以下)を超えて今の受入れ先で働いていること、転籍先が優良な受入れ先であることなどを挙げている[2]。転籍先は同じ業務区分の中に限られる[2]。また、本人の意向で転籍した場合は、元の受入れ先が受入れに使った初期費用の一部を、転籍先が在籍期間に応じて負担する仕組みが設けられる[2]。

この条件を読むと、転籍できるのは一定の技能と日本語を身につけた人である。つまり、仕入先にとって育ってきた作業者ほど、他社へ移る可能性がある。同じ業務区分の中で動くので、移る先は同じ地域の同業者であることも考えられる。

発注側にとっては、これは品質の変化点である。外観検査や溶接、めっきの前処理など、人の技能で出来ばえが変わる工程で作業者が入れ替われば、不良の出方が変わることがある。次のことを確かめておくとよい。これは法令の要求ではなく、実務の提案である。

1. どの工程に外国人材が就いているか
工程ごとの人数と経験年数を、個人を特定しない形で聞く。

2. その工程の作業標準と検査基準が文書になっているか
人が替わっても同じ判断になる仕組みがあるかを見る。

3. 作業者が替わったときの連絡
重要な工程の担当者の交代を変化点として連絡してもらい、必要なら初物の確認をする。

人の交代を含む変化点をどう取り決めるかは、量産開始の時点で決めておくのが確実である。考え方は量産承認で仕入先に何を出させるかで扱っている。工程が一人の熟練者に頼っている場合の備えは仕入先の廃業・後継者不在も参照してほしい。

発注側にとっての論点 2:受け入れる側の費用は増える

育成就労では、就労を始める前までに日本語能力 A1 相当以上の試験に合格するか、認定日本語教育機関などで A1 相当の講習を 100 時間以上受けることが求められ[2]、日本語能力の向上のための措置は、費用の負担も含めて受入れ企業か監理支援機関がとることとされている[2]。受入れ企業は、目標とする日本語水準に向けた講習を受けられるよう措置する義務も負う[2]。送出機関が本人から取れる費用は月給(所定内月額)の 2 か月分までとされ、これを超える費用は受入れ企業か監理支援機関が負担する[2]。

外国人材を受け入れている仕入先は、移行にあわせて費用が増える可能性が高い。仕入先から労務費の上昇を理由に価格の協議を求められたとき、その取引が取適法の対象(資本金や従業員数の区分と、製造委託などの取引の種類で決まる)であれば、発注側は応じなければならない。2026 年 1 月施行の取適法は、費用の変動などがあって中小受託事業者が代金の協議を求めたのに応じない、あるいは必要な説明や情報を出さずに一方的に代金を決めることを禁じており(第 5 条第 2 項第 4 号)、ここでいう事情の例に労務費の上昇を挙げている[6]。仕入先の規模が大きいなどで対象から外れる取引では法律上の義務にはならないが、どの仕入先が対象かを先に一覧で分けておかないと、応じるべき申し入れを取りこぼす。値上げの申し入れの受け方は仕入先から値上げの申し入れが来たら、最低賃金の引上げとの関係は最低賃金の引上げと、仕入先からの値上げ要請への向き合い方で扱う。

発注側にとっての論点 3:人権の確認は「どこを聞くか」を決めておく

監督指導の結果が示すこと

厚生労働省によると、2024 年に全国の労働基準監督署等が、技能実習生を使用していて労働基準関係法令の違反が疑われる 11,355 事業場に監督指導を行ったところ、73.2% にあたる 8,310 事業場で違反が見つかった[3][4]。主な違反は、使用する機械等の安全基準(25.0%)、割増賃金の支払(15.6%)、健康診断結果についての医師等からの意見聴取(14.9%)の順で、重大・悪質な違反として送検したのは 16 件だった[3]。特定技能外国人を使用する事業場についても同年から公表が始まり、5,750 事業場のうち 76.4% で違反が見つかっている[3]。

読むときの注意がある。これは違反が疑われる事業場を選んで監督した結果で、技能実習生を受け入れる事業場全体の違反率ではない[4]。それでも、違反の上位が機械の安全基準と割増賃金であることは、発注側が仕入先の工場で何を見ればよいかの手がかりになる。

政府のガイドラインが例に挙げていること

政府の「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」は、脆弱な立場に置かれることが多い属性として外国人を挙げ、技能実習生を含む外国人について、ヒアリングなどの調査をし、その際は本人が分かりやすい言語を使う例を示している[5]。構造的な問題への対処の例としては、技能実習生を受け入れている企業が、悪質な仲介業者が入っていないか、不適正な費用を本人が負担していないかを、監理団体と連携して本人や送出機関に確認することを挙げている[5]。同じガイドラインは、取引の停止は最後の手段として検討されるべきものだとしている[5]。

育成就労では、送出し費用の上限や二国間の取決めなど、まさにこの論点を制度で手当てする仕組みが入る[1]。発注側が仕入先に確かめるときは、制度の手続きがそろっているかだけでなく、ガイドラインの例のように本人の費用負担と仲介の実態まで聞けるとよい。人権デュー・ディリジェンス全体の進め方は人権デュー・ディリジェンスを調達でどう進めるかで扱う。

確かめ方の例

以下は、上の資料を踏まえた質問の例である。仕入先に一律に送る質問票に入れておくと、特定の仕入先を疑っているように受け取られにくい。

1. 受入れの区分と人数
技能実習・特定技能・育成就労などの区分ごとの人数と、移行の予定。

2. 監理する団体・支援機関
どこが監理・支援しているか、許可を受けているか。

3. 本人が負担した費用
送出機関への支払いの有無と額をどう確かめているか。

4. 労働条件
機械の安全措置、割増賃金、健康診断後の医師の意見聴取をどう管理しているか。監督指導で多かった違反に対応する。

5. 相談の窓口
本人が母語で相談できる窓口があるか。

個人の情報を求める必要はない。答えに不明な点があれば、取引を止める前に改善の計画を一緒に作るのがガイドラインの考え方に沿う[5]。

よくある質問

施行日の時点で技能実習中の人はどうなるのか

出入国在留管理庁の資料によると、施行日(2027 年 4 月 1 日)の前に入国し、施行日の時点で技能実習を行っている人は、引き続き技能実習を行うことができ、要件を満たせば次の段階の技能実習まで続けられる[1]。この場合は技能実習制度のルールが適用され、技能実習から育成就労に移ることはできないとされている[1]。仕入先の現場では、しばらく二つの制度が並ぶことになる。

海外の顧客から強制労働の確認を求められている。この制度変更は関係あるか

関係しうる。本人の費用負担や職場を移る自由は、海外の強制労働の規制で確認される論点と重なるところがある。輸出先ごとの求めはEU 強制労働製品禁止規則と、仕入先の確認と米国ウイグル強制労働防止法と、調達の書類で扱う。

まとめ

育成就労制度は 2027 年 4 月 1 日に始まり、2026 年 10 月時点で施行日前の申請がすでに動いている[1][2]。一定の技能と日本語を身につけた人は同じ業務区分の中で転籍できるようになり[2]、仕入先の作業者の入れ替わりは品質の変化点になる。日本語講習や送出し費用の超過分は受入れ側の負担になり[2]、取適法の対象となる仕入先から労務費を理由に協議を求められたら、協議の場を設けずに断ることはできない[6]。人権の面では、監督指導で違反が多かった機械の安全基準と割増賃金[3]、ガイドラインが例示する仲介業者と本人の費用負担[5]を、全仕入先に同じ質問票で確かめるのが現実的である。

出典・参考資料

  1. 育成就労制度の概要(令和 8 年 7 月改訂)(出入国在留管理庁)
  2. 育成就労制度Q&A(出入国在留管理庁)
  3. 外国人技能実習生又は特定技能外国人を使用する事業場に対して行った令和 6 年の監督指導、送検等の状況を公表します(厚生労働省/令和 7 年 9 月 26 日)
  4. 別紙 1 技能実習生を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況(令和 6 年)(厚生労働省)
  5. 責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン(ビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議/令和 4 年 9 月)
  6. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)

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