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投稿日:2026年10月2日

SPCC・SPHC・SECCは記号だけでは決まらない——調質・スケール・めっき付着量・塗油の指定

この記事のポイント(結論先出し)

SPCC・SPHC・SECC は「種類の記号」にすぎず、それだけでは一つの品物に決まらない。冷延鋼板は調質と表面仕上げ、熱延鋼板はスケール除去とエッジの種類、電気亜鉛めっき鋼板はめっき付着量・化成処理・塗油まで指定して初めて仕入先の見積がそろう。SPCC は標準の状態では引張強さを規定しておらず、引張試験で受けたいなら SPCCT と指定する。厚さの許容差は縁から一定以上内側に適用され、電気亜鉛めっき鋼板はめっき分を加えた製品厚さで判定する。成績書(検査文書)は注文時に求めた場合に出る。

鋼板の材料欄に書くべきこと

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図面の材料欄に「SPCC t1.0」とだけ書かれていることは多い。JIS G 3141:2021(冷間圧延鋼板及び鋼帯)は、注文時に受渡当事者が確認することが望ましい事項として、鋼板か鋼帯かの別とみがき帯鋼の指定の有無、種類の記号と付加記号 T、調質記号、表面仕上げ記号、寸法と寸法の許容差を挙げている[1]。熱延の JIS G 3131:2024 はもっと強く、注文者は注文時に少なくとも、鋼板か鋼帯かの別、種類の記号、エッジの種類(ミルエッジかカットエッジか)、寸法、スケール除去の要否と方法を提示しなければならないとしている[2]。

規格がこれらを注文者に求めているのは、指定しなければ仕入先が選ぶ項目だからである。選び方によって価格も、加工のしやすさも、さびの出やすさも変わる。以下、三つの規格について発注で指定する項目を順に見る。この記事は材料の指定に絞る。プレス・板金品の寸法公差はプレス・板金品の公差の記事で扱っている。

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SPCC(冷間圧延鋼板):調質と表面仕上げ

五つの種類と用途

JIS G 3141 の種類は五つで、SPCC(一般用、適用厚さ 0.10〜6.0 mm)、SPCD(絞り用)、SPCE(深絞り用)、SPCF(非時効性深絞り用)、SPCG(非時効性超深絞り用)である[1]。SPCF と SPCG は、製造工場出荷日から起算して 6 か月間、非時効性を保証する。ここでいう時効とは、経時変化で伸びが規定を満足できなくなることや、加工時にストレッチャストレインが出ることをいう[1]。深絞りで SPCF・SPCG を使う部品は、在庫の期間がこの 6 か月を超えないように発注の量と時期を決める必要がある。

SPCC は標準では引張強さを規定していない

見落とされやすいのが機械的性質である。JIS G 3141 の引張強さと伸びの表は、SPCD〜SPCG に引張強さ 270 N/mm² 以上と厚さごとの伸びを定めているが、SPCC は「規定しない」になっている[1]。SPCC の調質区分が標準調質か焼なましのままの場合に、受渡当事者間の協定で引張試験を規定するときは、種類の記号の末尾に付加記号 T を付けて SPCCT と表示してもよく、そのときの引張強さは 270 N/mm² 以上、伸びは厚さに応じて 23〜39 % 以上になる[1]。

強度計算で SPCC の引張強さを使っている部品で、受入時に材料強度を確かめたいなら、SPCCT として発注する。ただの SPCC で発注し、成績書に引張強さが載っていないと言っても、規格上は不備ではない。

調質記号と表面仕上げ記号

調質区分は、焼なましのまま(A)、標準調質(S)、そして SPCC だけに設定された 1/8 硬質(8)、1/4 硬質(4)、1/2 硬質(2)、硬質(1)がある。調質区分の指定がない場合は標準調質になる[1]。硬質材(8・4・2・1)は引張強さと伸びを規定せず、硬さで規定する。ロックウェル硬さ HRB で 8 が 50〜71、4 が 65〜80、2 が 74〜89、1 が 85 以上で、注文者の指定がある場合はビッカース硬さによってもよい[1]。

表面仕上げはダル仕上げ(D)とブライト仕上げ(B)で、調質記号 A の鋼板には適用しない[1]。標準調質でブライト仕上げを行った鋼板の伸びは、表の規定値から 2 を減じた値とする注もある[1]。塗装下地にする部品と、光沢のまま使う部品では選ぶ仕上げが違う。規格の表示例は「SPCC-S D」で、種類の記号(一般用)、調質記号(標準調質)、表面仕上げ記号(ダル仕上げ)を並べたものである[1]。

SPHC(熱間圧延鋼板):スケールとエッジ

JIS G 3131 の種類は SPHC(一般用、適用厚さ 1.2〜14 mm)、SPHD・SPHE・SPHF(加工用)の四つで、いずれも引張強さ 270 N/mm² 以上と厚さごとの伸びが規定されている。受渡当事者間の協定で引張強さの上限(SPHC は 440 N/mm²)を適用してもよい[2]。曲げ性は SPHC だけに適用される[2]。

熱延鋼板は圧延したままでは表面に酸化物(スケール)が付いている。JIS G 3131 は、スケール除去の要否と方法は注文者の指定によるとし、除去する場合は酸洗かショットブラストによるとしている[2]。塗油は、特に指定のない限り、スケールを除去した鋼板には塗油し、圧延したままの鋼板には塗油しない[2]。酸洗材を指定すると、規格上は油が付いて届く。塗装や溶接の前に脱脂が要るかどうかは、この塗油と関係する。

エッジの種類はミルエッジかカットエッジで、注文者が提示する項目に入っている[2]。もう一つ注意したいのが鋼帯の先端と尾端である。規格は、熱間圧延鋼帯は圧延時の先端部と尾端部の非定常部で形状、寸法、機械的性質が不安定になり、商習慣上この不安定部を切除せずに出荷する場合があるとし、引張強さや厚さの許容差をその部分に適用しないとしている[2]。コイルで買って自社で切る場合は、この部分の扱いを仕入先と決めておく。

外観の扱いも冷延と違う。JIS G 3131 は外観を JIS G 3193 によるとしたうえで、鋼板の溶接補修は行ってはならないとしている[2]。JIS G 3193:2025 自体は、熱間圧延鋼板の表面の欠点を製造業者がグラインダ手入れや溶接補修で除去・補修してもよいとし、手入れ後や補修後の厚さは許容差の範囲内でなければならないと定めている[5]。SPHC で買う限り溶接補修された板は来ないが、グラインダ手入れの跡は残りうる。外観面に使う部品なら、手入れ跡を許すかどうかを決めておく。

SECC(電気亜鉛めっき鋼板):めっき付着量・化成処理・塗油

JIS G 3313:2021(電気亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)の SECC は、JIS G 3141 の SPCC(ダル仕上げ)を原板とする一般用で、適用する表示厚さは 0.3〜3.2 mm である[3]。SECC も SPCC と同じく、標準調質と焼なましのままの場合に注文者の指定で引張試験を規定するときは SECCT と表示する[3]。

めっき付着量は記号で指定する

めっきの付着量は片面ごとの記号で表し、板の場合は積載された板の上面/下面の順に書く。非合金めっきの E8、E16、E24、E32、E40 などがあり、たとえば E16 の最小付着量は等厚めっきで片面 17.0 g/m²、差厚めっきで 16.0 g/m² である[3]。表示例の「E16/E32」は、片面が E16、もう片面が E32 の差厚めっきを意味する[3]。表裏で付着量が違う材料をプレスで使うときは、どちらの面が製品の外側になるかを図面で決めておかないと、外観面に薄い側が来る。

化成処理と塗油は、指定しなければ既定値になる

化成処理は、特に指定がない場合はクロメートフリー処理(六価クロムを含まない化成処理)で、無処理を求めるなら記号 M を指定する[3]。塗油は、特に指定がない場合は無塗油(X)で、塗油するなら O を指定する[3]。冷延鋼板の JIS G 3141 では「さびを防止するため塗油してもよい」としているのに対し、電気亜鉛めっき鋼板は既定が無塗油である。保管期間や輸送の条件で塗油が要るなら、注文で O を指定する。規格の表示例「SECC S NC O E16/E32」は、調質区分(標準調質)、化成処理(クロメートフリー処理)、塗油、めっき付着量を並べたもので、クロメートフリー処理の記号は受渡当事者間の協定によるとされている[3]。後から化成処理を追加する部品の指定は三価クロメート・化成処理の記事で、さび止めの指定全般は防錆の指定の記事で扱う。

厚さは「めっき前」か「めっき後」か

JIS G 3313 は、めっきを施す前の原板の厚さを表示厚さ、めっきを施した後の厚さを製品厚さとし、厚さの許容差は、表示厚さに付着量の記号ごとの相当めっき厚さ(E16 で片面 0.003 mm)を両面分加えた製品厚さに適用するとしている[3]。図面の板厚が製品の実寸のつもりなのか、表示厚さのつもりなのかで、受入時の測定値の判定が変わる。

厚さの許容差はどこで測るか

どの規格でも、厚さの許容差は板の縁から一定距離より内側に適用する。冷延の JIS G 3141 は縁から 15 mm 以上内側、熱延の JIS G 3131 は 20 mm 以上内側である[1][2]。端部を切り出して小さな部品を作る場合、受入でその部品の板厚を測ると、規格が保証していない位置の厚さを測っていることがある。厚さ 1.6〜2.0 mm の許容差を例に比べると次のとおりで、熱延は冷延より許容差が大きい。

項目 冷延 JIS G 3141 熱延 JIS G 3131
厚さの許容差(厚さ 1.60〜2.00 mm 未満) 幅 600〜1 000 mm 未満で ±0.11 mm、幅 1 000〜1 250 mm 未満で ±0.12 mm 幅 1 200 mm 未満で ±0.16 mm、幅 1 200〜1 500 mm 未満で ±0.17 mm
許容差を適用する位置 縁から 15 mm 以上内側 縁から 20 mm 以上内側
引張強さ SPCC は規定しない(SPCCT で 270 N/mm² 以上) SPHC は 270 N/mm² 以上
塗油 さび防止のため塗油してもよい。無塗油指定ならさびは有害な欠点としない スケール除去材は塗油、圧延のままは塗油しない
注文時の指定 確認が望ましい:種類、付加記号 T、調質、表面仕上げ、寸法 提示しなければならない:種類、エッジ、寸法、スケール除去

表の値は JIS G 3141 の表 15 と JIS G 3131 の表 5 による[1][2]。冷延には幅 600 mm 未満で冷間圧延する場合の許容差の表もあり、幅の狭い帯鋼は別の表が適用される[1]。

外観は「片側の面」に適用される

JIS G 3141 は、鋼板と鋼帯は使用上有害な欠点があってはならないとしつつ、鋼帯は欠点を除去する機会がないため若干の欠点を含むことがあるとしている。さらに、表面の欠点は、特に指定のない限り,片側の面に適用するとし、片側の面とは、通常、鋼板の場合は包装で上側にある面、鋼帯の場合は外側の面をいうと注記している[1]。両面とも外観面になる部品なら、両面に適用することを注文で指定する。

同じ箇条には、注文者が無塗油を指定する場合、塗油しないために発生するさびやすりきずは有害な欠点としない、という規定もある[1]。洗浄の手間を省くために無塗油で買うなら、さびは自社の責任で管理することになる。

成績書は注文時に求める

三つの規格とも、あらかじめ注文者の要求がある場合に製造業者は検査文書を提出し、検査文書の種類は特に指定のない場合は JIS G 0415 の検査証明書 3.1 によるとしている[1][2][3]。JIS G 0415:2024 は、検査証明書 3.1 を、製造業者が受渡検査による試験結果を記載し注文書の要求事項に適合していることを宣言して発行する文書で、製造部門から独立し権限を与えられた検査代表者が妥当性を確認しなければならないものとしている[4]。一次製品を購入して自らの製品に使う製造業者が、一次製品の試験結果を転記してもよい場合の条件も定めている[4]。

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コイルセンターや加工業者を通して買う場合、手元に届くのが材料メーカーの証明書の写しなのか、加工業者が転記した証明書なのかを確かめる。証明書の区分と確かめ方はミルシート区分の記事で扱っている。

発注書に書く項目

1. 規格番号と種類の記号
JIS G 3141 SPCC、JIS G 3131 SPHC、JIS G 3313 SECC など。引張試験で受けたいなら SPCCT・SECCT。

2. 調質と表面仕上げ(冷延)
例:SPCC-SD。硬質材なら調質記号 8・4・2・1。

3. スケール除去とエッジ(熱延)
酸洗かショットブラストか、圧延のままか。ミルエッジかカットエッジか。

4. めっき付着量・化成処理・塗油(電気亜鉛めっき)
例:E16/E16、化成処理の種類、塗油 O か無塗油 X。

5. 寸法と許容差
厚さ×幅×長さ。めっき鋼板は表示厚さか製品厚さか。幅の許容差の表の選択。

6. 外観を適用する面
両面とも外観面なら明記する。

7. 検査文書の要否と種類
求めなければ出ない。

鋼材の種類のうち、機械構造用の棒材の指定は機械構造用鋼の記事、銅合金の指定は銅合金の材料指定の記事で扱う。

よくある質問

Q. 図面に「SPCC」としか書いていない。何を補えばよいか。
A. 調質(指定がなければ標準調質)と表面仕上げ(ダルかブライトか)を確認し、強度を受入で確かめたいなら SPCCT にする。厚さの許容差の表、外観を適用する面、塗油の有無も決めておく。

Q. SPHC の酸洗材を SPHC-P と書いて注文してよいか。
A. JIS G 3131 の種類の記号は SPHC・SPHD・SPHE・SPHF で、スケール除去は注文者が要否と方法(酸洗かショットブラストか)を指定する項目として定められている。社内や業界の略記を使う場合でも、発注書には「スケール除去:酸洗」のように規格の項目で書いておくと、仕入先が替わっても伝わる。

Q. SECC を無塗油で買ったらさびが出た。仕入先に返品できるか。
A. JIS G 3313 は塗油の既定を無塗油としている。冷延の JIS G 3141 にある「無塗油を指定した場合のさびは有害な欠点としない」という規定は、JIS G 3313 の外観の箇条には見当たらない。返品できるかは、発注時に決めた受入基準とさびの原因(輸送・保管中か、納入前か)で判断することになるので、受入の基準を個別に決めておく。保管や輸送の条件でさびが心配なら、塗油(O)を指定するか、梱包の条件を決める。

まとめ

SPCC・SPHC・SECC は種類の記号で、それだけでは品物は決まらない。冷延は調質と表面仕上げ、熱延はスケール除去とエッジ、電気亜鉛めっきはめっき付着量・化成処理・塗油を指定する。SPCC は標準では引張強さを規定していないので、強度で受け入れたいなら SPCCT とする。厚さの許容差は縁から一定以上内側に適用し、めっき鋼板は製品厚さで判定する。外観は指定がなければ片側の面に適用され、検査文書は注文時に求めた場合に出る。

出典・参考資料

  1. JIS G 3141:2021 冷間圧延鋼板及び鋼帯(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2021 年 4 月 20 日改正)
  2. JIS G 3131:2024 熱間圧延軟鋼板及び鋼帯(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 11 月 20 日改正)
  3. JIS G 3313:2021 電気亜鉛めっき鋼板及び鋼帯(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2021 年 2 月 22 日改正・2025 年 6 月 20 日確認)
  4. JIS G 0415:2024 鋼及び鋼製品-検査文書(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 6 月 20 日改正)
  5. JIS G 3193:2025 熱間圧延鋼板及び鋼帯の形状,寸法,質量及びその許容差(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2025 年 4 月 21 日改正)

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