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部品の清浄度を仕入先に指定する——異物の大きさ・数・測り方を決める

この記事のポイント(結論先出し)
図面の「異物なきこと」「清浄であること」は、測り方が決まっていないので受入の基準にならない。部品の清浄度(部品に付いた粒子状の異物の量)を定める ISO 16232 は、測り方と結果の書き方をそろえる規格であって、部品ごとの上限値は定めていない。上限値は部品とそれが組み込まれる装置を知る人が決めるものだとしている[1]。発注側が決めるのは、どの面を対象にするか、どうやって異物を洗い出すか(抽出)、何で数えるか(分析)、大きさの区分ごとの上限、試料の数と頻度、梱包である。クリーンルームの等級(空気中の粒子)や作動油の汚染度コードは、部品の清浄度とは別の物差しなので、取り違えない[3][5]。
目次
「異物なきこと」では、何が決まっていないか
油圧・燃料・ブレーキの部品、軸受、精密な摺動部品、医療機器の部品などでは、加工のときの切りくず、バリのかけら、研磨材、繊維などが部品に残っていると、組み込んだ後で摩耗や詰まり、作動不良の原因になる。そのため図面に「異物なきこと」「清浄であること」と書く例があるが、この書き方では、どの大きさの異物を、どの面で、どうやって探し、何個まで認めるのかが決まらない。目で見て見えなければ合格、という運用になりやすい。
ISO 16232:2018(道路車両-部品及びシステムの清浄度)は、自動車の機能上重要な部品やシステムに付いた粒子状の汚れを求める方法(清浄度検査)について、方法の適用と記録の要求事項を定めている[1]。清浄度検査は、初回の検査と評価、部品の受入と出荷の検査、洗浄・表面処理・組立など清浄度に関わる工程の管理に使われるとしている[1]。そして、試験結果の情報の質と比べやすさを高めること、自動車のサプライチェーンの中で清浄度の仕様と試験結果を標準化した形で表すことを目的に挙げている[1]。
この規格は対象外も明記している。油やグリースのような膜状の汚れの検出、部品を目で見る・きれいな布で拭くといった数値にならない検出方法、燃料・油・冷却液などの作動流体そのものの評価は扱わない[1]。つまり、「目視で異物なし」や「ウエスで拭いて汚れが付かない」は、この規格の意味での清浄度検査ではない。
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規格は上限値を決めてくれない
ISO 16232 は、特定の部品やシステムの清浄度の上限値を定めていない[1]。必要な清浄度はさまざまな個別の要因で決まり、清浄度の仕様は、その部品だけでなく組み込まれるシステム、その後の使用条件、技術的に実現できるやり方、製造工程やサプライチェーンへの影響まで知っている専門家が決めるべきだとしている[1]。上限値の導き方の手引きは附属書 H にあるとされている[1]。
油圧機器の部品についての ISO 18413:2015 も同じ構造である。この規格は、油圧部品の清浄度の要求と、その清浄度を評価する検査方法の両方を書いた検査文書の中身を定め、抽出と分析の方法の指針を与えるが、個々の部品にどの清浄度が適切かを決めることは範囲外だとしている[2]。システムに必要な清浄度は ISO 12669 で、部品の清浄度とシステムの清浄度の関係は ISO/TR 10686 で扱うと示している[2]。
発注側の実務に置き換えると、規格番号を書くだけでは上限値は決まらない。上限値は自社(または顧客)が決め、測り方は規格に合わせる、という分担になる。上限値を決める材料がない場合は、承認の段階で仕入先の現状の値を何ロットか測り、それと不具合の関係を見ながら決めていく、という進め方を仕入先と相談する(当方の提案)。
似た物差しと取り違えない
清浄度という言葉は、空気、作動油、部品の表面について使われる。発注の仕様で取り違えると、測っているものが違うので、合格していても目的を果たさない。
| 規格 | 何の清浄度か | 粒子の大きさ・表し方 | 上限値を定めるか |
|---|---|---|---|
| ISO 16232:2018 | 自動車の部品・システムに付いた粒子状の汚れ | 仕様と結果を標準化した形で表す[1] | 定めない[1] |
| ISO 18413:2015 | 油圧部品の接液面・内部容積の粒子状の汚れ | 要求と検査方法を一つの検査文書に書く[2] | 定めない[2] |
| JIS B 9933:2023(ISO 4406:2021) | 油圧の作動油中の固体微粒子 | 4 μm(c)・6 μm(c)・14 μm(c) 以上の個数をコードで表す。コードが一つ増えると粒子数はおおむね 2 倍[3] | 表し方の規格 |
| JIS B 9920-1:2019(ISO 14644-1:2015) | クリーンルームの空気 | 0.1 μm〜5 μm の浮遊粒子の個数濃度でクラス分け[5] | クラスを定める |
| ISO 14644-9:2022 | クリーンルーム内の固体表面 | 0.05 μm〜500 μm の粒子[6] | 特定の工程への適否は扱わない[6] |
よくある取り違えは二つある。一つ目は、「クリーンルームで組み立てること」を部品の清浄度の要求の代わりにすることである。JIS B 9920-1 は、クリーンルームの空気を、光散乱式の気中粒子計数器で数えた 0.1 μm〜5 μm の浮遊粒子の濃度で分類する規格で[5]、部品に何が付いているかは測っていない。部品に残った数百 μm の切りくずは、部屋の空気の等級とは関係なく残る。クリーンルームの規格の全体像はISO 14644 クリーンルーム規格の基礎と実務の記事で扱っている。
二つ目は、作動油の汚染度コードを部品の仕様に流用することである。JIS B 9933 は、作動油中の固体微粒子の数量をコードに変えて表記を簡単にするための規格で[3]、対象は油である。部品の清浄度を「その部品を洗った液の汚染度コード」で書く運用もありうるが、その場合は、どれだけの液で、どう洗い出したかが決まっていなければ、コードの数字は比べられない。洗い出しの条件こそが部品の清浄度の仕様の中身になる。
仕様書で決めること
対象の面と、試料の単位
部品全体を測るのか、機能上重要な面(油が触れる内面、摺動面、シール面)だけを測るのかを決める。ISO 18413 は、油圧部品の接液面と内部容積の粒子状の汚れに適用されると範囲を書いている[2]。結果を「部品 1 個当たり」で表すのか、「面積当たり」「容積当たり」で表すのかも決める。小さな部品は 1 個では異物が少なすぎて測れないので、何個をまとめて 1 試料とするかも書く(当方の提案)。
抽出の方法と条件
部品に付いた異物は、液で洗い出して(抽出して)から数える。どの方法で洗い出すか(液を吹き付ける、液に浸して超音波をかける、液を内部に流す、振るなど)、どの液を何 mL 使うか、何回繰り返すかで、出てくる異物の量は変わる。ISO 16232 は、こうした方法の適用と記録の要求を定めて結果を比べやすくすることを目的にしている[1]。仕入先と自社で結果を比べるなら、同じ抽出方法と同じ条件で測ることを仕様書で決める。承認のときに同じ部品を両方で測って、差がどれだけ出るかを確かめておくとよい(当方の提案)。
分析の方法と、大きさの区分
洗い出した液をろ過して、フィルタに残った異物を数えるか、重さを量る。重さで量る方法は、作動油については JIS B 9931 が二通りの質量法を定めている[4]。重さで決める仕様は単純だが、総量が少なくても大きな粒が 1 個あれば困る部品では役に立たない。その場合は、大きさの区分ごとの個数の上限か、最大の粒子の寸法の上限で決める。金属の粒と繊維のように、種類によって害の大きさが違うなら、種類を分けて数えるかどうかも決める(当方の提案)。
試料の数・頻度と判定
清浄度の検査は破壊を伴わないことが多いが、時間がかかり、部品を検査のために洗うことになる。毎ロット何個測るのか、承認時と工程変更時だけにするのか、洗浄工程の管理(洗浄液の交換頻度など)と組み合わせるのかを決める。上限を超えた場合に、ロット全体を再洗浄するのか、再検査するのかも書いておく(当方の提案)。
清浄度は、梱包と輸送で失われる
仕入先の洗浄工程の出口できれいでも、梱包材の繊維、段ボールの紙粉、輸送中の擦れで、受入のときには異物が増えていることがある。ISO 16232 の目的に「サプライチェーンの中で」仕様と結果をそろえることが入っているのは、部品が工場を出た後も清浄度が問題になるからである[1]。仕様書には、どの時点(洗浄後か、梱包後か、受入時か)の清浄度を保証するのかを書き、梱包の方法(袋の材料、仕切り、箱の内装)を合わせて指定する(当方の提案)。
防錆との兼ね合いにも注意する。鉄の部品は防錆油を塗って出荷することが多いが、ISO 16232 は油やグリースのような膜状の汚れの検出を対象外としている[1]。粒子の清浄度と、油膜の有無や量は別の要求なので、「防錆油を塗る」「受入後に脱脂する」「油膜を残さない」のどれにするかを、清浄度とは別に書く。防錆の指定は出荷時の防錆の指定の記事で扱う。シール部品のように清浄度と材質の両方が効く部品はO リング・ガスケットの発注の記事、ステンレス部品の表面の処理はステンレスの不動態化処理の指定の記事も参照してほしい。
業界ごとの規格があるか確かめる
部品の種類によっては、清浄度の評価の規格が別にある。ISO 12345:2021 はディーゼル燃料噴射装置の清浄側に残る異物の量を評価する手順を定め、道路車両の液回路の部品には ISO 16232 などがあるが、この規格はエンジンメーカーや補修市場に供給される燃料噴射装置の組立品に焦点を当てているとしている[7]。転がり軸受については ISO 7544:2024 が清浄度検査の手順と装置を定めている[8]。顧客の要求書がどの規格を引いているかを確かめ、仕入先に同じ規格で測らせる。規格がない部品では、ISO 16232 や ISO 18413 の考え方(要求と検査方法を一つの文書にまとめる)を借りて、自社の検査仕様書を作る[2]。
発注のときに決めておく理由
清浄度の上限や測り方を、量産が始まってから厳しくすると、仕入先は洗浄設備や梱包を変えなければならず、費用も時間もかかる。それまでの基準で合格していた部品を、後から決めた基準で不合格にすると、受け取りを断ることや作り直しの扱いが問題になる。清浄度の基準は発注の時点で渡し、変えるなら次の発注分から適用するか、費用と納期を合意してから行う。考え方は受領拒否・返品・やり直しの記事で整理している。接着する面の清浄さが問題になる部品は接着剤・シーラントの仕様指定の記事も参照してほしい。
よくある質問
Q. 「ISO 16232 に準拠」と書けば足りますか。
足りない。ISO 16232 は測り方と結果の表し方の規格で、部品ごとの上限値を定めていない[1]。上限値、対象の面、抽出と分析の方法、試料の数を仕様書に書き、規格番号はその測り方の根拠として添える。
Q. 目視検査で異物がないことを確かめれば、清浄度の管理になりますか。
目視は見える大きさの異物を見つけるのには使えるが、数値の清浄度にはならない。ISO 16232 は目視や布で拭く方法のような数値にならない検出方法を対象外としている[1]。機能に効く大きさの異物が目に見えない部品では、抽出して数える方法を決める。
Q. 仕入先の測定値と、自社の受入の測定値が合いません。
まず抽出の方法・液の量・回数、ろ過に使ったフィルタ、数える装置が同じかを確かめる。条件が違えば値は比べられない。同じ部品を両方で測る比較を承認時に行い、どちらの測り方を基準にするかを決めておく。
Q. クリーンルームを持たない仕入先には出せませんか。
部品の清浄度は、部屋の空気の等級ではなく、洗浄・乾燥・梱包の工程で決まる部分が大きい。クリーンルームの有無よりも、洗浄工程の管理と、測定の結果で判断する。部屋の空気の等級が必要な工程(たとえば半導体や医療機器の一部)では、それは別の要求として書く[5]。
まとめ
部品の清浄度は、「異物なきこと」ではなく、対象の面・抽出・分析・大きさの区分ごとの上限・試料と頻度・梱包で決める。ISO 16232 や ISO 18413 は測り方と記録をそろえる規格で、上限値は使う側が決める[1][2]。クリーンルームの等級や作動油の汚染度コードとは物差しが違う[3][5]。承認時に仕入先と同じ部品を測って測り方を合わせ、基準は発注の時点で渡しておく。
出典・参考資料
- ISO 16232:2018 Road vehicles — Cleanliness of components and systems(国際標準化機構(ISO)/2018 年 12 月発行)
- ISO 18413:2015 Hydraulic fluid power — Cleanliness of components — Inspection document and principles related to contaminant extraction and analysis, and data reporting(国際標準化機構(ISO)/2015 年 3 月発行)
- JIS B 9933:2023 油圧-作動油-固体微粒子に関する汚染度のコード表示(JIS 検索)(日本産業標準調査会/2023 年 8 月改正)
- JIS B 9931:2000 質量法による作動油汚染の測定方法(JIS 検索)(日本産業標準調査会)
- JIS B 9920-1:2019 クリーンルーム及び関連する制御環境-第 1 部:浮遊粒子数濃度による空気清浄度の分類(JIS 検索)(日本産業標準調査会)
- ISO 14644-9:2022 Cleanrooms and associated controlled environments — Part 9: Assessment of surface cleanliness for particle concentration(国際標準化機構(ISO)/2022 年 5 月発行)
- ISO 12345:2021 Diesel engines — Cleanliness assessment of fuel injection equipment(国際標準化機構(ISO)/2021 年 6 月発行)
- ISO 7544:2024 Rolling bearings — Test and assessment methods for cleanliness(国際標準化機構(ISO)/2024 年 9 月発行)
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