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見積の回答が揃わないとき——回答状況表と督促・辞退・期限延長の記録の付け方

この記事のポイント(結論先出し)
見積の回答が揃わない案件で困るのは、督促の文面より先に、「どの会社がいまどういう状態か」が担当者の受信箱の中にしかないことである。回答状況を「1 行=1 依頼×1 社」の表に出し、状態は決めた出来事が起きたときだけ動かし、督促は列ではなく行で残し、辞退は無回答と分けて「回答の一つ」として数える。期限を延ばすときは全社に同じ日付で伝え、期限後に届いた見積も依頼に対するものなら保存の対象として扱う[2]。表に日付・金額・取引先の列を持たせれば、受け取った見積データの索引簿を兼ねられる[1]。
目次
回答が揃わない案件を、受信箱で追っていないか
5 社に見積を依頼して、期限の前日になっても 2 社しか返ってきていない。この状況を把握するために、多くの担当者は受信箱を開き、依頼メールのスレッドを 1 つずつ見て、どの会社から返信があったかを数えている。返信の中には「確認して来週お送りします」という連絡もあれば、質問だけのものもあり、見積書が添付されているものもある。担当者はそれを読み分けて、頭の中で「回答済み 2 社・質問中 1 社・連絡なし 2 社」と整理している。
この整理は、担当者が毎日受信箱を見ている限りは回る。回らなくなるのは、同じ担当者が同時に 5 件、10 件の依頼を抱えたとき、担当者が休んだとき、そして期限を過ぎてから「あの会社に督促は送ったか」を確かめたいときである。返ってこない理由の切り分けと、督促の文面・頻度・法令の線は見積回答が返ってこないときの督促と期限管理で詳しく扱った。この記事は、その前提になる「回答状況をどう記録し、追える形にするか」を Excel とシステムの両方について書く。
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受信箱で追うと、どこで詰まるか
状態が、担当者の頭の中にしかない
受信箱は時系列で並ぶので、「この依頼について、この会社はいまどの状態か」という問いには直接答えてくれない。スレッドを開けば分かるが、開かなければ分からない。担当者以外の人が状況を知るには、担当者に聞くしかない。
督促の履歴が残らない
督促をいつ、どの手段で、誰に送ったかは、送信済みフォルダと通話の記憶に分かれて残る。結果として、同じ相手に短い間隔で重ねて送ってしまう、逆に送ったつもりで送っていない、ということが起きる。電話で督促した分は、どこにも残らない。
辞退が「連絡なし」に混ざる
「今回は見送らせてください」という返信は、受信箱の中では見積が添付されていない返信の一つでしかない。担当者が読み落とすと、辞退した会社に督促を送ることになる。逆に、連絡のない会社を辞退扱いにして候補から外し、後から見積が届くこともある。
期限の延長が、一部の会社にしか伝わらない
1 社から「あと 3 日ほしい」と言われて応じたとき、その延長を他の会社に伝え忘れることがある。早く出した会社は短い期限で、遅く出した会社は長い期限で見積したことになり、比較の前提が揃わない。
依頼が、いつまでも閉じない
発注先が決まっても、依頼そのものを「締めた」記録がなければ、回答していない会社は依頼がまだ生きていると思って作業を続けるかもしれない。見積の作成は相手にとって手間のかかる作業で、受注の見込みがなくなった依頼に時間を使わせるのは避けたい。
回答状況表を作る——1 行=1 依頼×1 社
受信箱から状態を取り出すには、依頼ごと・会社ごとに 1 行を持つ表を作る。依頼が 1 件で 5 社に送ったなら 5 行になる。次の例は、ある依頼の回答期限の前日時点を想定した架空の表である。
| 取引先 | 状態 | 送付日 | 相手が最後に動いた日 | 督促の回数 | 回答金額(税抜) |
|---|---|---|---|---|---|
| 甲社 | 回答済み | 9 月 1 日 | 9 月 8 日 | 0 | 184,000 円 |
| 乙社 | 回答済み | 9 月 1 日 | 9 月 11 日 | 1 | 176,500 円 |
| 丙社 | 質問中 | 9 月 1 日 | 9 月 10 日 | 0 | — |
| 丁社 | 辞退 | 9 月 1 日 | 9 月 4 日 | 0 | — |
| 戊社 | 依頼済み | 9 月 1 日 | —(なし) | 1 | — |
この表があれば、期限の前日に手を打つべき相手は丙社と戊社の 2 社だと一目で分かる。丙社は質問への回答待ちなので、督促ではなく質問に答えるのが先になる。戊社は 1 回督促したのに、送付日から相手の側が一度も動いていないので、まず依頼が届いているかを確かめる。辞退した丁社には何も送らない。
表には、ほかに「依頼番号」「回答期限」「次に何をするか」「次にやる日」の列を足しておくとよい。「次にやる日」で並べ替えれば、その日に手を打つべき相手だけが上に集まる。
状態は、決めた出来事が起きたときだけ動かす
表を作っても、状態の書き方が人によって違えば、表は受信箱と同じくらい読みにくくなる。「回答済み」に見積書が届いたときだけを入れる人と、「来週出します」の連絡も入れる人が混ざると、回答済みの数が信用できなくなる。状態ごとに、何が起きたら動かすかを先に決めておく。
依頼済みは、依頼を送った時点。受付確認は、相手から「受け取った」「見積します」といった連絡があった時点。質問中は、相手から仕様などの質問が来て、こちらがまだ答えていない間。回答済みは、見積書そのもの(金額の入ったもの)を受け取った時点で、「来週出します」は含めない。辞退は、相手から見積を出さないという連絡があった時点。締切時未回答は、回答期限を過ぎて依頼を締めた時点で、それまでに回答も辞退も無かったもの。
大事なのは最後の二つを分けることである。辞退は相手が意思を示した結果で、締切時未回答は意思が分からないまま終わった結果である。二つを同じ「回答なし」にまとめると、次に誰へ依頼するかを考えるときに、断りの連絡をくれた会社と黙っていた会社の区別がつかなくなる。取引先ごとの回答の傾向を数えるやり方は見積依頼の回答率・辞退率を数えるで扱う。
督促は、列ではなく行で残す
回答状況表に「督促日」の列を 1 つだけ置くと、2 回目の督促を書いたときに 1 回目が消える。督促は、状況表とは別に「督促の記録」の表を作り、1 回の督促を 1 行として残す。列は、依頼番号・取引先・日時・手段(メール・電話・FAX)・送った人・内容の要約・相手の反応である。状況表の「督促の回数」は、この記録の行数を数えて出す。
督促のやりとりの中では、価格の話が出ることがある。「その単価ではもう受けられない」「材料が上がっているので出し直したい」という返事は、ただの遅れではなく、価格の協議の入口である。振興基準は、労務費・原材料費・エネルギー価格などのコストが上昇した場合で中小受託事業者からの申出があったときは、定期的な協議以外の時期でも遅滞なく協議に応じるものとし、委託事業者と中小受託事業者の双方がそれぞれ取引対価の協議の記録を保存するものとしている[3]。公正取引委員会は、労務費転嫁指針の改正に当たって、受注者から協議の要請があった場合にそれに応じず一方的に取引価格を据え置くことは、取適法上の協議に応じない一方的な代金決定として問題となるおそれがあることを書き加えたと説明している[4]。督促の記録に価格の話が出てきたら、状況表の状態を「協議中」に分けて、ただの未回答と同じ扱いをしない。
回答が返ってこない背景に、価格を上げたいが言い出せない事情がある場合もある。公正取引委員会の特別調査は、受注者の立場で、商品・サービスについて価格転嫁を要請した割合(要請率)が 7 割以上と回答した割合を、令和 7 年度調査で 53.9% としたうえで、要請の対象はコストが上昇した商品・サービスの全てではなく、受注者が発注者に受け入れられると考えるものに限定されている可能性があることに留意が必要だとしている[5]。黙っている相手の中に、言い出していない値上げが含まれている前提で記録を見る。
期限の延長と、期限を過ぎて届いた見積
期限を延ばすときは、1 社からの申し出で延ばす場合でも、新しい期限を全社に同じ日付で伝え、状況表の「回答期限」を全行書き換える。伝えた日と手段は督促の記録と同じ表に残す。先に回答を出した会社には、出し直してもよいことを伝える。延長を一部の会社にしか伝えないと、比べる見積の前提が会社ごとに違ってしまう。
期限を過ぎて届いた見積をどう扱うかも、先に決めておく。受け付けるなら、受け付けることを全社に伝え、期限を延ばしたのと同じ扱いにする。受け付けないなら、届いた見積は比較に入れず、その旨を相手に伝える。
比較に入れなかった見積でも、保存は別に考える。国税庁が保存不要の例として挙げているのは、書き損じのあるもの、正式な見積書になる前の検討段階の粗々なもの、取引を望む会社が一方的に送りつけてきた見積書などである[2]。こちらが依頼して届いた見積は、期限を過ぎていても一方的に送られてきたものとは言いにくい。保存しておくほうが安全である。
状況表は、索引簿を兼ねられる
電子データで受け取った見積書は、税務の上では日付・金額・取引先で検索できる形で保存する必要がある。国税庁は、専用のシステムを入れていなくても、表計算ソフトなどで索引簿を作り、その機能を使って検索する方法で対応できるとしている[1]。索引簿のイメージとして示されているのは、連番・日付・金額・取引先・備考の列を持つ表である[1]。
回答状況表の「回答済み」の行に、受け取った日・回答金額・取引先・保存したファイル名を入れておけば、そのまま索引簿の役目も果たせる。国税庁の事務処理規程の例でも、保存する取引関係情報の最初に見積依頼情報と見積回答情報が並んでいる[2]。状況表と保存の台帳を別々に作るより、1 つにしておくほうが書き漏れが減る。ただし、金額の入れ方(数量帯がある見積のどの金額を入れるか、税抜か税込か)は、課税期間の途中で変えないようにする。
Excel のままでよい場合
同時に動いている見積依頼が数件で、依頼先も数社、担当者が 1 人という規模なら、ここまで書いた回答状況表と督促の記録の 2 枚の表で十分に回る。毎朝「次にやる日」で並べ替えて、その日の分を片付ければよい。
表で追うのが難しくなるのは、同時に動いている依頼が増え、状態を更新する人が複数になったときである。受信箱を見て表を書き換える作業そのものが手間になり、表が受信箱より遅れはじめる。表が実態より遅れると、誰も表を信用しなくなり、また受信箱で追う運用に戻る。この段階が、状態を記録する作業を道具に任せる境目になる。依頼をメールの添付から外す方法は見積依頼をメール添付で出さないで、比較の作業を移す方法は相見積の比較表を Excel から移すで扱う。
システムに移すときに決めること
状態の定義を、道具の状態に合わせる。道具が持っている状態(たとえば依頼済み・回答済み・辞退)と、自社の表で使っていた状態を対応させる。道具に無い状態(質問中・協議中など)をどこに記録するかを決める。
督促を誰が・いつ送るか。自動で送る道具もあれば、人が相手を選んで送る道具もある。送る人と時点を決めておかないと、自動に任せたつもりで誰も送らない、ということが起きる。
辞退をどう受けるか。相手が画面から辞退を返せる作りなら、辞退は自動的に記録に残る。メールや電話の辞退は、受けた人が記録に入れる。
期限の延長と締めの操作。送ったあとに回答期限を変えられるか、締める操作があるかは道具によって違う。変えられない作りなら、延長するときの手順(依頼を出し直す、など)を決めておく。
移行の時点で動いている依頼。表で追っている途中の依頼は、表のまま最後まで回し、新しい依頼から道具で出す。
よくある質問
督促は何回まで送ってよいですか
回数の目安と、督促が問題になる線は見積回答が返ってこないときの督促と期限管理で扱った。記録の面では、督促の記録を 1 回 1 行で残しておけば、同じ相手に短い間隔で重ねて送ることは防げる。
見積を開封したかどうかを記録したほうがよいですか
相手が依頼を見たかどうかが分かれば、「届いていない」と「見たが動いていない」を分けられるので役に立つ。ただし、メールの開封確認は相手の設定で返らないことが多く、当てにはしにくい。表では「受付確認」を相手の返事があったときだけ入れる、と決めておくほうが確実である。
辞退した会社に、次回も依頼してよいですか
よい。辞退は、その時点で受けられないという連絡であって、取引をやめるという意味ではないことが多い。辞退の理由(設備が空かない、材料が手当てできない、条件が合わない)を記録に残しておくと、次に依頼するときに同じ理由で断られる依頼を避けられる。受ける側が辞退をどう書くかは見積依頼への返信の書き方で扱っており、相手が書きやすい辞退の形を知っておくと、依頼文に添える一言も決めやすい。
まとめ
見積の回答が揃わない案件で最初に要るのは、督促の文面ではなく、各社の状態を担当者の受信箱から取り出すことである。回答状況を「1 行=1 依頼×1 社」の表にし、状態は決めた出来事が起きたときだけ動かす。督促は別の表に 1 回 1 行で残し、価格の話が出たら「協議中」に分けて扱う[3][4]。辞退は締切時未回答と分けて記録する。
期限を延ばすときは全社に同じ日付で伝え、期限後に届いた見積も依頼に対するものなら保存しておく[2]。状況表に日付・金額・取引先・ファイル名を持たせれば、受け取った見積データの索引簿を兼ねられる[1]。表を更新する手間が受信箱を見る手間を超えはじめたら、状態の記録を道具に移す時期である。
出典・参考資料
- 電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください【令和 6 年 1 月以降用】(国税庁/令和 5 年 7 月)
- 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(国税庁/令和 7 年 6 月)
- 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
- 令和 7 年度における取適法の運用状況及び中小事業者等の取引適正化に向けた取組(公正取引委員会/令和 8 年 6 月 10 日)
- 「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」の結果について(公正取引委員会/令和 7 年 12 月 15 日)
回答していない相手を、受信箱で探さない
この記事で扱った項目のうち、Newji one では、見積依頼ごとに各取引先が回答済みか辞退かを画面で確かめられ、まだ回答していない相手を選んでリマインドのメールを送れます。リマインドは人が相手を選んで送るもので、同じ相手には 24 時間に 1 回までです。取引先はメールのリンクから回答も辞退も返せ、リマインドの送信や辞退は見積依頼の操作履歴に残ります。なお、送信したあとの見積依頼は回答期限を含めて編集できず、回答用のリンクは期限を過ぎると使えなくなります。期限を延ばすときは、依頼を出し直す運用を決めておいてください。
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