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投稿日:2026年10月2日

見積依頼の回答率・辞退率を数える——分母の揃え方と、数字が低いときに疑うこと

この記事のポイント(結論先出し)

「あの会社は返事が遅い」という印象を数字に置き換えるには、回答率・辞退率・締切時未回答率・回収日数の 4 つで見る。3 つの率は分母を「依頼した社数の延べ」に揃えて数え、回収日数は回答が届いた依頼だけで平均する。辞退は悪い結果ではなく、断りの連絡をくれたという記録なので、締切時未回答と分けて数える。数字が低いときは、まずこちらの側を疑う。期限が短すぎないか、仕様が曖昧でないか、そしてその会社の見積を一度でも採用しているか。数字は取引先を外すためではなく、定期的な話し合いの材料として使う[2]。今後の取引への影響をちらつかせて何かを求める使い方は、優越的地位の濫用として問題になりうる[3]。

印象ではなく、数字で見たい理由

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購買の担当者は、取引先ごとに「返事が早い」「いつも期限ぎりぎり」「すぐ断ってくる」といった印象を持っている。この印象は多くの場合当たっているが、困るのは担当者が替わったときと、印象どうしがぶつかったときである。新しい担当者には前任者の印象が引き継がれず、同じ会社について「遅い」と言う人と「普通」と言う人がいても、どちらが正しいかを決める材料がない。

見積依頼への応え方を数字で持っておくと、次の依頼をどこに出すか、回答期限を何日に置くか、どの会社と話し合いの場を持つかを、印象ではなく記録から決められる。数える対象は、見積依頼を出すたびに必ず生まれている記録である。依頼を送った日、回答か辞退が届いた日、その中身。国税庁が示す事務処理規程の例でも、保存する取引関係情報として見積依頼情報と見積回答情報が挙げられており[5]、もともと残しておくべきデータから数字を起こすことになる。

取引先の総合的な評価の作り方(品質・納期・価格・対応をどう点数にするか)はサプライヤー評価の項目と点数化で扱った。この記事は、そのうち「見積依頼への応え方」だけを、正しく数えるための定義と読み方に絞る。

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4 つの数字と、揃える分母

数える前に決めるべきことは、分母である。「1 件の見積依頼」を数えるのか、「1 社への依頼」を数えるのかで、同じ記録から違う数字が出る。取引先ごとに見たいなら、分母は依頼した社数の延べにする。1 件の依頼を 5 社に送ったら、5 社それぞれに「依頼 1 回」が付く。

そのうえで、依頼 1 回ごとの結末を、回答・辞退・締切時未回答の 3 つのどれかに振り分ける。結末がまだ出ていない依頼(回答期限前のもの)は分母に入れない。入れると、期限前の依頼が多い時期ほど回答率が低く見える。

次の表は、ある取引先に半年で依頼した 10 回の結末を想定した架空の例である。

数字 数え方 架空の例(依頼 10 回) 読むときの注意
回答率 回答した回数 ÷ 依頼した回数 7 ÷ 10 = 70% 辞退を回答に含めるかを先に決める
辞退率 辞退した回数 ÷ 依頼した回数 2 ÷ 10 = 20% 高いこと自体は悪くない
締切時未回答率 回答も辞退もなく締めた回数 ÷ 依頼した回数 1 ÷ 10 = 10% いちばん手を打つべき数字
回収日数 回答が届いた日 − 依頼を送った日(回答した 7 回の平均) (5+6+6+7+7+8+6)÷ 7 = 約 6.4 日 暦日か営業日かを揃える
こちらの採用率 採用した回数 ÷ 回答を受けた回数 1 ÷ 7 ≒ 14% 相手から見た受注率。低いと回答が減る

回答率・辞退率・締切時未回答率の 3 つを足すと 100% になるように数えるのが、いちばん読み違えが少ない。回答率だけを見ると、「辞退」と「黙って終わった」の区別がつかない。辞退率が 20% で締切時未回答が 10% の会社と、辞退 0% で締切時未回答 30% の会社は、回答率がどちらも 70% でも、付き合い方がまるで違う。

最後の行の「こちらの採用率」は、取引先の数字ではなく自社の数字である。見積を出しても採用されない状態が続けば、相手は見積に手間をかけなくなる。回答率が下がってきた会社について、この数字を並べて見ると、原因がこちら側にあることがよくある。

Excel で数えるやり方

見積依頼ごと・取引先ごとに 1 行を持つ回答状況の表があれば、数字は表計算ソフトの集計機能で出せる。表の作り方は見積の回答が揃わないときで扱う。最低限、次の列があれば足りる。

依頼番号・取引先・依頼を送った日・回答期限・結末(回答/辞退/締切時未回答)・結末が出た日・採用したか。

期間で絞り込み(たとえば直近 180 日に送った依頼)、取引先ごとに結末の件数を数えれば、回答率・辞退率・締切時未回答率が出る。回収日数は「結末が出た日 − 依頼を送った日」を、結末が回答の行だけで平均する。

集計で気をつけることが三つある。

暦日か営業日か。連休をはさんだ依頼は、暦日で数えると回収日数が大きく伸びる。月ごとに比べるなら、どちらかに揃えておく。表計算ソフトには土日と祝日を除いて日数を数える関数があるので、祝日の一覧を別のシートに置けば営業日でも数えられる。

期限を延ばした依頼。期限を延ばした依頼で、延ばしたあとに届いた回答をどう数えるかを決める。回収日数は送った日から数えるのが単純だが、延長が多い会社は数字が悪く見える。延長したかどうかの列を足しておけば、あとから分けて見られる。

件数が少ないとき。半年に 3 回しか依頼していない会社は、1 回の結末で率が 33 ポイント動く。件数が少ない会社は率ではなく「依頼 3 回・回答 2・辞退 1」と件数のまま並べ、期間を 1 年に延ばしてから率を出す。

数字が低いとき、まずこちらを疑う

締切時未回答が多い、回収日数が長い、という数字が出たとき、その会社の対応が悪いと決めつける前に、依頼の側を見直す。

期限が短すぎないか。依頼から期限までの日数を同じ表に入れておくと、「期限が 5 日しかない依頼では回答率が下がる」といった傾向が見える。会社ごとの数字ではなく、依頼ごとの条件が原因のこともある。

その会社の得意な品目か。板金の会社に切削品の見積を頼めば、辞退か無回答になる。品目の種類ごとに数字を分けて見ると、苦手分野への依頼が数字を下げていると分かることがある。

採用しているか。前の表の「こちらの採用率」が低い会社に、回答率の高さを求めるのは筋が通らない。採用する見込みが薄い会社に、比較のためだけの依頼を出し続けていないかを確かめる。

仕様が曖昧ではないか。質問が多く来る依頼は、こちらの依頼書に不足がある。依頼書に書く項目は見積依頼書に書くべき項目で整理している。

数字は、話し合いの材料として使う

数字ができると、それを取引先の選別に使いたくなる。依頼先の候補を見直すこと自体は発注側の判断だが、数字の使い方には気をつけたい点がある。

一つは、取引先と共有して話し合う材料にすることである。内閣官房と公正取引委員会の指針は、発注者と受注者が共通に採るべき行動として定期的にコミュニケーションをとることを挙げ、多くの場合発注者の方が取引上の立場が強く、受注者からはコストの中でも労務費は特に価格転嫁を言い出しにくい状況にあることを踏まえ、発注者が受注者との間で定期的にコミュニケーションをとる仕組みを用意し、受注者の置かれている状況を日頃から把握するよう努めることを求めている[2]。公正取引委員会のテキストに資料として収録されている振興基準も、委託事業者と中小受託事業者が少なくとも年に 1 回以上の協議を行うものとしている[4]。辞退が増えている会社に、辞退の理由を聞く場を年に一度持つだけでも、数字の背景が分かる。設備が埋まっているのか、材料の手当てがつかないのか、それとも今の単価では受けられないのか。

もう一つは、数字を圧力に使わないことである。公正取引委員会の優越的地位の濫用に関する考え方は、購入・利用強制の想定例の一つとして、購入しなければ相手方との取引を打ち切る、取引数量を削減するなど、今後の取引に影響すると受け取られるような要請をすることにより購入させることを挙げている[3]。「回答率が低いので取引を減らす」と伝えながら別の何かを求める形は、この想定例と同じ構図になりうる。回答率の数字は、相手に何かを呑ませる材料ではなく、依頼の出し方を一緒に直す材料として使う。

品質マネジメントシステムの規格である JIS Q 9001 には「外部から提供されるプロセス,製品及びサービスの管理」という箇条(8.4)がある[1]。この規格の認証を受けている会社では、取引先を評価する仕組みが既にあることが多い。見積への応え方をその評価に入れるかどうかは各社の判断で、入れるなら、ここで書いた定義のまま評価表へ渡せる形にしておくとよい。

Excel のままでよい場合

見積依頼が月に数件、依頼先が十数社までなら、回答状況の表に結末と日付を入れておき、半年に一度集計するやり方で足りる。集計そのものは表計算ソフトの集計機能で数分で終わる。購買の金額の集計を毎月の手作業から外す話はピボットで作っている購買実績の集計を手作業から外すで扱う。

難しくなるのは、回答状況の表を複数の担当者がそれぞれ持っている場合である。表の列の定義(いつ「回答済み」にするか、辞退をどう書くか)が人によって違うと、集計した数字は比べられない。また、担当者が表を更新し忘れた依頼は、締切時未回答として数えられてしまう。数字を信用できる状態にするには、結末の記録が依頼の操作と一緒に残る形にしておく必要がある。

システムに移すときに決めること

回答率の分母と、辞退の扱い。道具の集計が、辞退を回答に含めているか、別に数えているか。分母が依頼の件数か、依頼した社数の延べか。下書きのまま送っていない依頼が分母に入らないか。画面に出る数字の定義を、Excel で数えていたときの定義と突き合わせる。

期間の区切り。依頼を作った日で区切るのか、送った日で区切るのか。期間の選び方(30 日・半年・1 年など)が、件数の少ない取引先の数字を読める長さになっているか。

過去の数字をどうするか。Excel で数えていた過去の数字を道具へ移す必要はない。切り替えた日を記録しておき、それより前の数字は Excel の集計のまま残す。切り替えの前後で定義が違えば、数字は連続しない。

よくある質問

辞退は回答率に含めるべきですか

どちらでもよいが、含めるかどうかを決めて変えないことが大事である。この記事のように回答・辞退・締切時未回答の 3 つに分け、合計が 100% になるように数えておけば、どちらの見方にもすぐ組み替えられる。

回収日数が長い会社は、期限を短くして急がせるべきですか

逆である。回収日数が長い会社には、その日数に合わせて期限を長く取るほうが、締切時未回答が減る。期限を短くして急がせると、こちらの日程が崩れたときに短納期の発注につながりやすい。

数字を取引先に見せてもよいですか

見せてよいが、他社の数字や順位を見せる必要はない。その会社の依頼回数・回答・辞退・回収日数を、定期的な話し合いの場で一緒に見るのがよい[2]。

まとめ

見積依頼への応え方は、回答率・辞退率・締切時未回答率・回収日数の 4 つで見る。分母は依頼した社数の延べにし、3 つの率の合計が 100% になるように数える。辞退は断りの連絡をくれた記録なので、黙って終わった締切時未回答と分ける。件数が少ない会社は率ではなく件数で見る。

数字が低いときは、期限の長さ、品目の向き不向き、自社の採用率、依頼書の不足を先に疑う。数字は取引先と定期的に話し合う材料として使い[2][4]、取引への影響をちらつかせて何かを求める材料にはしない[3]。

出典・参考資料

  1. JIS Q 9001:2015 品質マネジメントシステム―要求事項(無料プレビュー)(日本規格協会/2015 年 11 月 20 日改正。追補 JIS Q 9001:2015/AMENDMENT 1:2025 が 2025 年 3 月 21 日に発行されている)
  2. 労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針(内閣官房・公正取引委員会/令和 5 年 11 月 29 日・令和 8 年 1 月 1 日改正)
  3. 優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(公正取引委員会/平成 22 年 11 月 30 日・令和 8 年 6 月 17 日改正)
  4. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  5. 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(国税庁/令和 7 年 6 月)

見積への応え方を、表を数え直さずに見る

この記事で扱った項目のうち、Newji one の見積分析では、見積依頼に対する回答率・辞退率・回答までの平均日数を 30 日・90 日・180 日・365 日の期間で集計し、依頼の多い上位 20 社までは取引先ごとにも並べて見られます。採用した単価の前回からの変動や、目標価格を入れた依頼では目標との差も確かめられます。辞退は取引先がメールのリンクから返せるので、回答とは別に記録されます。ただし数え方は本文と違います。分母は期間内に作成した見積依頼の全取引先で、下書きのまま送っていない依頼、回答期限前の依頼、取り消した依頼も含みます。平均日数も、依頼を送った日ではなく作成した時点から数えます。本文の定義で見たい場合は、画面の数字をそのまま比べず、自社でこれまで使っていた定義と突き合わせてからお使いください。

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