- お役立ち記事
- 購買のデータを経理にCSVで渡すとき——帳簿から逆算する列と、戻してもらうもの
購買のデータを経理にCSVで渡すとき——帳簿から逆算する列と、戻してもらうもの

この記事のポイント(結論先出し)
購買のデータを経理に CSV で渡すときは、どの時点の行を、どの粒度で、どちら向きに流すかを先に決め、列は経理が作る帳簿の記載事項から逆算する。国税庁は、仕入税額控除の要件となる帳簿に、相手方の氏名または名称、課税仕入れを行った年月日、内容(軽減税率の対象ならその旨)、支払対価の額の 4 つを書くとしており、税率ごとに区分して記帳する区分経理も求めている。渡す CSV には、少なくともこの 4 つに対応する列と税率の区分、それに取引先を引き当てるコードが要る。ずれやすいのは返品・値引・単価未確定・外貨の行である。もう一つ見落としやすいのが逆向きの流れで、取適法の対象取引では、代金の増減額とその理由、支払額・支払日・支払方法を 7 条記録に残す必要があるため、経理で処理した値引や支払の結果を購買に戻す経路も作っておく。
目次
いまの渡し方と、どこで食い違うか
月末が近づくと、購買の担当者が発注や検収の一覧を表計算ソフトから抜き出し、経理に送る。経理はそれを見ながら会計ソフトに仕入を入力するか、列を並べ替えて取り込む。届いた請求書との突き合わせも経理の側で行う。多くの中小製造業で、購買と会計はこのくらいの距離でつながっている。
この渡し方で食い違いが起きる場所は、だいたい決まっている。第一に、行の単位が合わない。購買の一覧は発注の明細 1 行ずつだが、経理が記帳したいのは請求書 1 枚ごと、あるいは取引先と月ごとの合計である。第二に、列の意味が人によって違う。「金額」が税抜なのか税込なのか、「日付」が発注日なのか納品日なのか、送った側と受け取った側で取り違える。第三に、月の途中で起きた変更が伝わらない。値引や返品が決まったことを、購買は知っていても経理は請求書が届くまで知らない。第四に、送ったファイルが何回も作り直され、どれを使って帳簿を作ったかが分からなくなる。
システムをつなぐ方式(CSV か API か)や、CSV で起きやすい文字コードの事故は、購買システムと会計・生産管理のつなぎ方で扱った。この記事は、人が CSV を作って経理に渡す運用を前提に、何を揃えれば食い違いが減るかに絞る。
📄 実務で使うなら — 検収・支払・棚卸(全 5 章・無料サンプルあり)
先に決める 3 つのこと
どの時点の行を渡すか
経理が仕入を計上する日が、出荷の日か、入荷の日か、検収の日かによって、渡すべき行と日付が変わる。発注しただけの行を渡しても、経理はそれを仕入として記帳できない。どの基準を選ぶかは購買だけでは決められないので、会計の基準をまず経理に確かめる。基準ごとの考え方は仕入はいつ計上するかにまとめてある。ここで決めるのは、「計上の基準になる出来事が起きた行だけを、その出来事の日付を付けて渡す」という一点である。
どの粒度で渡すか
明細の行で渡すか、取引先と月ごとの合計で渡すかを決める。合計で渡すと経理の入力は少なくなるが、請求書と金額が合わないときにどの発注が原因かを追えない。明細で渡したうえで、経理の側で取引先ごとに集計するほうが、後から原因を探しやすい。中間の形として、明細の CSV と取引先ごとの合計の表を一緒に送る方法もある。
どちら向きに流すか
購買から経理へ流すだけでなく、経理から購買へ戻すものがある。後で詳しく見るが、取適法(中小受託取引適正化法)の対象になる取引では、支払った金額や日付も購買側の記録に残す必要がある。月に一度、経理から支払の結果を購買へ返す、と最初から決めておく。
列は、帳簿の記載事項から逆算する
経理が作る仕入の帳簿には、法令で書くことが決まっている事項がある。国税庁は、仕入税額控除の要件となる帳簿への記載事項として、課税仕入れの相手方の氏名または名称、課税仕入れを行った年月日、課税仕入れに係る資産または役務の内容(軽減税率の対象であれば、資産の内容と軽減対象である旨)、課税仕入れに係る支払対価の額(消費税額などを含む)の 4 つを挙げている[1]。あわせて、税率が軽減税率と標準税率の 2 つあるため、取引を税率ごとに区分して記帳する区分経理が必要だとしている[1]。
購買から渡す CSV に、この 4 つに対応する列と税率の区分が揃っていれば、経理は請求書を見るまでもなく帳簿の骨格を作れる。足りない列があると、経理はそこだけ請求書や購買担当への問い合わせで埋めることになる。
仕入税額控除には、帳簿に加えて請求書等の保存も必要で、適格請求書には発行事業者の氏名または名称と登録番号が書かれる[2]。登録番号は発注の明細ごとに持つものではなく、取引先ごとの情報である。購買の CSV には取引先のコードを入れておき、経理の側で取引先の登録情報と引き当てられるようにしておく。社名で引き当てると、「株式会社」の位置や旧社名で外れる。取引先の情報を一か所にまとめる方法は散らばった取引先の情報をまとめるで扱う。
金額を税抜で渡すか税込で渡すかは、経理の帳簿の処理方法に合わせる。国税庁は、電子取引のデータを検索できるようにしておく項目の「取引金額」について、基本的には帳簿と同じ金額で検索できるようにしておくべきで、帳簿の処理方法(税抜経理か税込経理か)に合わせるべきと考えられる、と説明している[3]。渡す CSV も同じ考え方で、どちらかに決めて列名に書いておく。迷う場合は、税抜の金額と消費税額を別の列にしておけば、どちらの処理方法にも使える。
| 列 | 経理での使い道 | 購買の側で揃えること |
|---|---|---|
| 取引先コード・取引先名 | 帳簿の「相手方の氏名または名称」。登録番号の引き当て | 経理の取引先と同じコードを使う。名前で突き合わせない |
| 計上日(検収日・入荷日など) | 帳簿の「課税仕入れを行った年月日」 | 発注日と取り違えない。基準を経理と合わせる |
| 品名・品番 | 帳簿の「資産または役務の内容」 | 略称や社内の呼び名だけにしない |
| 税率の区分 | 区分経理。軽減税率の対象である旨 | 「10」「8」など値の一覧を決める |
| 税抜金額・消費税額・税込金額 | 帳簿の「支払対価の額」。請求書との照合 | どれが入っているかを列名で明示する |
| 発注番号 | 請求書と合わないときの追跡 | 分納や返品の行も元の発注番号を持たせる |
| 勘定科目・部門 | 仕訳 | 誰が付けるかを決める。購買が付けるなら科目の一覧を経理から受け取る |
| 通貨・為替 | 円への換算 | 外貨の行は円と同じ列に混ぜない |
| 区分(通常・返品・値引) | マイナスの仕訳 | 金額の符号だけで表さず、区分の列を作る |
勘定科目と部門をどちらが付けるかは、会社によって答えが違う。購買の担当者は、何をどの部署のために買ったかを知っているが、勘定科目の使い分けは経理のほうが詳しい。購買が付けるなら、経理から科目の一覧と使い分けの例を受け取り、一覧に無い値を入れない。経理が付けるなら、購買は「何のために、どの部署が使うか」が分かる列を渡す。
ずれやすい行をどう渡すか
1. 返品と値引
返品や値引は、元の行を消したり書き換えたりせず、マイナスの行として足す。元の発注番号を持たせ、区分の列に「返品」「値引」と書く。後から見たときに、いつ、何の理由で金額が変わったかが追える。
2. 単価が決まっていない行
物は入ったが単価が決まっていない、という行は月末をまたぐと扱いが割れる。仮の単価で渡すのか、決まるまで渡さないのかを経理と決めておく。会計に載る金額と注文書の単価の関係は受発注・会計・在庫はどこで線を引くかで扱っている。
3. 分けて納めてもらった行
1 つの発注を何回かに分けて納めてもらうと、計上の行も分かれる。どの納入分を今月渡したかが分かるように、発注番号に加えて納入の回や日付を持たせる。分納の持ち方は1 つの発注を分けて納めてもらうときの管理にまとめる。
4. 外貨の行
外貨建ての発注は、どの日の相場で円にするかで金額が変わる。円の行と同じ金額の列に外貨の数字を入れると、合計の意味が無くなる。通貨の列を分け、換算は経理の決めた相場で行う。外貨建ての発注の持ち方は外貨建ての発注と単価の管理で扱う。
経理から購買へ戻すもの
取適法の対象になる製造委託では、委託した側は取引の経緯を記録して 2 年間保存しなければならない(7 条記録)。公正取引委員会と中小企業庁のテキストは、記録する事項として、代金の額に変更があった場合の増減額とその理由、代金の支払に金銭を使った場合の支払額・支払日・支払方法(口座振込ならその旨)などを挙げている[4]。さらに、これらの事項は事実が生じたときに速やかに記録し、中小受託事業者別に記録しなければならないとしている[4]。
購買が発注と検収を記録し、経理が値引と支払を処理していると、7 条記録の事項が 2 つの部署に分かれる。テキストは、記録事項を別々の書類や電磁的記録に記録する場合には、その相互の関係を明らかにしなければならないとしている[4]。経理が値引を決めたのに購買の記録に残っていない、支払の日付が購買からは分からない、という状態は、この関係が切れている状態である。月に一度、経理から購買へ、発注番号ごとの支払額・支払日・支払方法と、値引や返品の金額と理由を戻す。戻った値は、元の発注の記録に結びつける。7 条記録の全体像は発注の記録を 2 年どう残すかにある。
渡し方の手順を決めておく
列が揃っても、渡し方が人任せだと毎月ずれる。決めておくのは次のことである。
- いつ渡すか:締め日の何営業日後に、どの範囲の行を渡すか
- 誰から誰へ:担当が休んだときに誰が作るか、受け取る側は誰か
- どう添えるか:件数と金額の合計を本文に書き、受け取った側が同じ数になるかを確かめる
- 直すとき:送ったあとで誤りに気づいたら、ファイル全体を送り直すのか、訂正の行だけを送るのか
- 何を残すか:送ったファイルを、送った日付を付けて上書きせずに残す
送ったファイルを残すのは、どの版から帳簿を作ったかを後で確かめられるようにするためである。法人は帳簿と取引に関する書類を、事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から 7 年間保存しなければならず、注文書や契約書もその書類に含まれる[5]。青色申告で欠損金が生じた事業年度の分は、その欠損金の繰越しの適用を受けようとする場合、10 年間の保存になる(法人税法施行規則第 26 条の 3)[7][5]。経理に渡した CSV が帳簿を作る元になっている場合、帳簿の数字が何に基づくのかを説明できるように、渡したファイルと受け取った日を結びつけておく。
企業会計審議会がまとめた内部統制の実施基準(金融庁)は、入力の漏れや誤りを防ぐ統制や、例外となった処理を直してやり直す統制を例に挙げたあとで、こうした統制は人の手でも行えるが、システムに組み込めば効率よく正確に処理できる、と述べている[6]。上場会社の財務報告のための基準だが、件数と合計を添えて渡す、誤りは訂正の行として扱う、という手順は、規模に関係なく使える手作業の統制である。
CSV の手渡しのままでよい場合
仕入の件数が月に数十件で、取引先も限られ、購買と経理がそれぞれ 1 人で話がすぐ通じる会社なら、ここまでの列と手順を決めるだけで、手渡しの CSV でも十分に回る。システムで自動につなぐことを考えたほうがよいのは、件数が増えて経理の打ち直しが締めに間に合わない、請求書と合わない原因を毎月探している、値引や支払の結果が購買に戻らずに 7 条記録が埋まらない、といった状態が続く場合である。どの業務から順に移すかはエクセルの購買業務をシステムに移す順番で扱う。
よくある質問
発注日の一覧を渡して、経理に計上日を判断してもらえばよいですか
経理には、発注のあとに物が届いたか、検収したかが分からない。発注日だけの一覧からは、計上の基準になる日付を作れない。購買の側で、入荷や検収といった計上の基準になる出来事の日付を持ち、その日付を付けて渡す。
会計ソフトの取り込みの形式に合わせて CSV を作るべきですか
合わせられるなら合わせたほうが、経理の打ち直しは減る。ただし、会計ソフトの形式は仕訳の形をしているので、購買の側で勘定科目や借方・貸方まで決めることになる。誰が仕訳に責任を持つかを決めずに形式だけ合わせると、誤りの直し役が曖昧になる。まずは明細の CSV を渡し、経理が仕訳を作る形から始め、件数が増えてから形式を合わせても遅くない。
取適法の対象かどうかが取引先によって違います。全部の取引で支払の結果を戻す必要がありますか
7 条記録の義務がかかるのは対象になる取引だけだが、取引先ごとに戻す・戻さないを分けると、手順が複雑になり漏れが出る。発注番号ごとの支払額と支払日は、対象かどうかに関係なく一律に戻しておくほうが、運用としては単純である。
まとめ
購買のデータを経理に CSV で渡すときは、計上の基準になる出来事の行だけを、その日付を付けて、明細の粒度で渡すことを基本にする。列は帳簿の記載事項から逆算し、相手方・年月日・内容・支払対価の額に対応する列と、税率の区分、取引先を引き当てるコードを揃える。税抜か税込かは帳簿の処理方法に合わせ、列名に書く。返品・値引はマイナスの行として足し、単価未確定・分納・外貨の行は扱いを経理と決めておく。取適法の対象取引では、経理から購買へ支払額・支払日・支払方法と値引の理由を戻し、元の発注の記録に結びつける。渡す日、渡す人、件数と合計の添え方、訂正の仕方、送ったファイルの残し方を決めておけば、手渡しの CSV でも食い違いは減らせる。
出典・参考資料
- No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項(国税庁)
- No.6625 適格請求書等の記載事項(国税庁)
- 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(国税庁/令和 7 年 6 月)
- 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
- No.5930 帳簿書類等の保存期間(国税庁)
- 財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準(金融庁 企業会計審議会/令和 5 年 4 月 7 日改訂)
- 法人税法施行規則(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
発注の明細を CSV で書き出す
この記事で扱った項目のうち、Newji one(製造業の見積・発注クラウド)では、発注の一覧を明細の行ごとに CSV で書き出せます。列は発注番号・ステータス・発注元・発注先・発注日・品番・品名・数量・単価・金額・小計・税額・税込の合計・備考です。品目・受注・在庫・見積依頼・見積書・単価改定・価格変動履歴も CSV で書き出せます。会計ソフトへ自動で送る機能は無く、書き出す発注の CSV には検収日や税率の列が無いため、計上日と税率の区分は会計の基準に合わせて別に揃える必要があります。
この記事の理解を深める
無料ホワイトペーパーをプレゼント
製造業の現場で使える実務資料(PDF)を無料でお届けします。"こんな資料が届きます" ↓ 下のボタンからどうぞ。
FREE DOCUMENT — サービス資料(PDF・無料)
見積依頼から比較まで、
ひとつの画面にまとめる方法
Newji one は、製造業の調達・受発注に特化したクラウド/AIエージェント。見積依頼・発注書作成・進捗管理・承認をひとつの画面に集約し、AIが比較と異常検知を担当。最後の「GO」だけ人が押す仕組みです。
▶ 見積依頼から比較までをひとつの画面にまとめる方法を、資料で見る(PDF・無料)
- 見積〜発注〜納期を一元管理。催促・転記のムダをゼロに
- AIが相見積もり比較と異常検知。あなたは判断だけに集中
- 取引先は「招待」で完全無料。自社コストだけで取引先ごとデジタル化
※ 取引先から招待された企業様は完全無料でご利用いただけます
見積・発注クラウド Newji one
受発注が増えるほど、入力・確認・催促が重くなる。
受発注管理を“仕組み化“して、ミスと工数を削減しませんか。
見積・発注・納期まで一元管理できます。
