外貨建ての発注の記録——「円でいくらか」は 4 つある | newji
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投稿日:2026年10月2日

外貨建ての発注の記録——「円でいくらか」は 4 つある

この記事のポイント(結論先出し)

外貨建ての発注では、「円でいくらか」が一つに決まらない。社内で見込みを立てるときの相場、仕入を計上する日の相場、輸入の課税価格に使う税関の公示相場、支払った日の実際の相場はそれぞれ違い、法人税・関税・社内管理で使い分けが定められている[2][3][7]。だから発注の記録は契約の通貨のまま持ち、円の額を書くなら「どの目的で、どの相場で換算したか」を必ず添える。為替予約で円の額を確定させたなら、その旨を予約の日に帳簿書類に記載しておく[1]。そして為替で生じた差を、あとから仕入先の代金に戻さない。国内の受託事業者の代金から「為替差益割戻し」と称して差し引いた例は、代金の減額として勧告の対象になっている[5]。

外貨建ての発注は、Excel でどう持たれているか

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海外の仕入先や、外貨で値決めをする国内の商社から部品を買っている会社で、発注の記録を Excel で持っているとき、よく見る形は 3 つある。

1 つ目は、見積書の外貨の単価を、その日の相場で円に直して入れる形。発注台帳はすべて円で統一されていて見やすいが、どの相場で直したのかが残っていない。2 つ目は、外貨の単価と円の単価を 2 列で持つ形。相場の欄が無いので、円の列がいつの値なのか分からず、相場が動いたあとも古い円の値が残り続ける。3 つ目は、発注台帳は外貨のまま、円の額は経理が支払のときに決める形。購買の側では金額の比較ができず、予算と実績を突き合わせるときに経理へ聞きに行くことになる。

どれも間違いではないが、共通して欠けているものがある。円の額を何に使うのかと、どの相場を使ったのかが記録に無いことだ。外貨の単価そのものをどう持つか(契約の通貨と支払の通貨を分ける、円換算額を単価の欄に焼き付けない)は購買単価の持ち方で扱ったので、この記事は「発注 1 件ごとに、外貨と円をどう記録し、為替の差をどこで処理するか」に絞る。

「円でいくらか」は、場面ごとに違う

1 件の外貨建ての発注には、少なくとも 4 つの「円の額」がある。下の表は、1 万米ドルの発注を仮の相場で並べたものである(相場はすべて説明のための仮置き)。

場面 使う相場 仮の相場(円/ドル) 10,000 ドルの円の額 決まり
発注の予算・社内の見込み 社内で決めた相場 148 1,480,000 社内の取り決め
仕入の計上(法人税) 計上すべき日の電信売買相場の仲値が原則 150 1,500,000 法人税法・法人税基本通達[1][2]
輸入の課税価格(関税・輸入消費税) 税関長が毎週公示する相場 149 1,490,000 関税定率法に基づく公示[7]
実際の支払 支払った日に銀行で換えた相場(予約があれば予約の相場) 152 1,520,000 計上額との差は為替差損益

この例では、計上した 150 万円と実際に払った 152 万円の差 2 万円が為替差損になる。購買の担当者が気にするべきなのは、この 2 万円を部品の値段が上がったと読まないことである。ドル建ての単価は 1 円も動いていない。Excel の発注台帳が円の列しか持っていないと、相場の変化と単価の変化を切り分けられず、為替で膨らんだ額を仕入先との値上げ協議の材料と取り違える。

法人税の換算のしかた

法人税法は、外国通貨で支払が行われる資産の購入などの外貨建取引について、円換算額をその取引を行った時の外国為替の売買相場で換算した金額とすると定めている[1]。法人税基本通達は、この換算を、取引を計上すべき日の電信売相場と電信買相場の仲値で行うのを原則とし、継続適用を条件に、仕入などの費用は取引日の電信売相場によることもできるとしている[2]。さらに継続適用を条件として、取引日の属する月の前月末の相場や前月の平均相場のように、1 か月以内の一定期間の相場を使うことも認めている[2]。発注 1 件ごとに毎日の相場を引くのが負担なら、「前月末の仲値を当月の換算に使う」のように決めて、毎回同じやり方を続けることができる。

税関の換算のしかた

輸入の課税価格を計算するときは、輸入申告の日の外国為替相場で円に換算する。その相場は、申告の日の属する週の前々週の実勢相場の週間平均に基づき、税関長が毎週公示している[7]。法人税の換算とは目的も相場も違うので、輸入の書類に出てくる円の額と、経理が計上した円の額は一致しないのが普通である。購買の側で「どちらが正しいか」を詰める必要はなく、どの円の額がどの決まりで出たものかを記録の上で区別できればよい。

発注 1 件に残す項目

外貨建ての発注を記録するとき、Excel でもシステムでも、次の項目を 1 件ごとに持っておくと、上の 4 つの円の額を後から説明できる。

1. 契約の通貨と外貨の金額
注文書に書いた通貨と金額をそのまま残す。円に直した値で上書きしない。

2. 支払の通貨
見積書や注文書が外貨で表示されていても、支払が円で行われることとされている取引は、法人税でいう外貨建取引には当たらない[2]。表示の通貨と支払の通貨が違う取引を同じ扱いにしないために、欄を分ける。

3. 社内の見込みに使った相場と、その相場の決め方
予算と実績の比較に使う。毎回同じ決め方(前月末の仲値など)にしておけば、相場の欄は日付だけで足りる。

4. 為替予約の有無と、予約で確定させた円の額
法人税法は、先物外国為替契約等で円換算額を確定させ、その締結の日に財務省令で定めるところにより帳簿書類に記載したときは、その確定させた額を円換算額とすると定めている[1]。通達も、計上までに予約で円の額を確定させているとき(帳簿書類に所定の記載がある場合に限る)は、その額を円換算額とすることができるとしている[2]。予約は財務や経理の判断だが、どの発注に対する予約なのかは購買の記録と結び付かないと分からない。発注番号を予約の記録に書いてもらうか、発注の記録に予約の番号を書く。

5. 前払金の有無
海外の取引では、発注時に代金の一部を前払いすることがある。通達は、前払金を払っている部分は、その前払金の帳簿価額をそのまま費用の額とし、計上日の相場で改めて換算しないことができるとしている[2]。前払いをした発注は、同じ 1 件の中に換算の相場が 2 つあることになるので、どの部分をいつ払ったかを残しておく。

社内レートで換算するなら、差の行き先を決めておく

購買の現場では、相場を毎日引かずに、期初や月初に決めた「社内レート」で外貨の発注を円に直していることが多い。これ自体は管理の工夫として問題ないが、税務上の換算は先に見た方法で行う必要がある。通達は、外貨建てで購入した原材料の仕入金額を社内レートで換算するなど所定の方法によらなかった場合、所定の方法で換算した額との差額は原材料受入差額に当たるとしている[2]。

つまり、社内レートで計上した額と、通達の方法で換算した額の差は、どこかで調整しなければならない。購買の担当者が自分で処理するものではないが、社内レートを使うと決めたら、差を経理がどこで拾うかを決めておかないと、期末に原材料の評価が合わなくなる。発注台帳に社内レートで換算した円の額を書くなら、「社内レートによる見込み額」と明記し、経理の計上額と混ぜない。

為替の差を、仕入先の代金に戻さない

ここからは、相手が国内の会社で、取適法の対象になる取引の話である(自社と相手の取引が対象になるかは自社の取引は取適法の対象かで判定できる)。国内の部品メーカーに製造を委託しているが、相手が海外から材料を買っているため、為替に合わせて代金を動かしたい、という場面がある。

動かすこと自体は禁じられていない。公正取引委員会のテキストは、具体的な金額を明示することが困難なやむを得ない事情がある場合に算定方法で代金を明示できる例として、原材料費が外的な要因で変動し代金が連動する場合を挙げ、「工賃+実際に海外から調達した原材料費(ドル建て)×為替レート(調達した時点の市場の終値)+一般管理費」という明示例を示している[5]。ポイントは、どの時点のどの相場を使うかを、発注の時点で書いておくことである。算定方法で明示した場合は、記録の側にも、その算定方法と、それで定まった具体的な金額、算定方法を変えたときは変更後の方法・金額・理由を記載しておく必要がある[6]。

やってはいけないのは、代金を決めた後で、為替で得をした分を相手から取り返すことである。テキストに収録された過去の勧告の一覧には、製造委託の代金から「為替差益割戻し」と称して一定額または代金に一定率を掛けた額を差し引いた事案が、代金の減額の禁止に違反したものとして載っている[5]。為替が円高に動いて自社の輸出の採算が良くなった、あるいは相手の材料費が下がったはずだ、という理由で、決めた代金を後から削ることはできない。下げたいなら、次の発注の前に協議して、新しい代金を決める。代金を後から下げることに当たる行為と当たらない行為の線は代金を後から下げる——減額に当たる行為と、当たらない行為で整理している。

逆向きも同じで、円安で相手の材料費が上がっているのに代金を据え置き続けると、買いたたきの論点になる。材料の相場と為替の両方で値が動く品目の取り決め方は、アルミの価格変動と価格スライド条項の作り方で為替の扱いまで含めて書いている。

外貨建ての請求書と消費税

国内の商社などから外貨建ての請求書を受け取る場合、消費税の処理にも換算が出てくる。国税庁のQ&Aによると、外貨建ての取引でも適格請求書に記載が必要な事項は変わらず、「税率の異なるごとに区分した消費税額等」を除いて、外国語や外貨で記載しても問題ない。ただし消費税額等は円換算した金額を記載する必要がある[4]。

受け取る側の仕入税額の計算では、請求書等に記載された消費税額等を積み上げて計算する方法をとっていれば、その請求書の消費税額等が自社の円換算の方法と違うやり方で出されていても問題なく、記載された消費税額等を基礎に計算する、とされている[4]。つまり、相手の請求書の円の消費税額と、自社が計上した円の仕入額が、換算の違いで整合しないことは起こりうる。照合で差が出ても、それだけで請求書の誤りとは限らない。

また、消費税の基本通達は、外貨建ての債権債務に係る為替換算差損益や為替差損益は、資産の譲渡等の対価の額や課税仕入れに係る支払対価の額に含まれないことに留意するとしている[3]。冒頭の例の 2 万円の為替差損は、仕入の対価の一部ではない。

海外から直接輸入する場合は、輸入の際に税関で消費税を納める形になり、ここで述べた国内の請求書の話とは書類の流れが違う。海外の仕入先への発注で、注文書に出ない運賃や無償で預けた金型の費用が課税価格に加わる点は、海外の仕入先へ英語・中国語で発注するで扱う。

Excel のままでよい場合

外貨建ての発注が少なく、次のような状態なら、Excel のままで十分管理できる。

1. 外貨の取引先が 1 社で、通貨も 1 つ
通貨の欄、外貨の金額、相場の決め方の 3 列を足せば、上の項目はほぼ持てる。

2. 為替予約や前払いをしていない
1 件の中に相場が 2 つ以上出てこないので、記録が単純で済む。

3. 国内の取引先との間で、為替に連動する代金の取り決めが無い
算定方法の明示と記録が要らないので、Excel の欄の設計で悩む必要が小さい。

外貨の取引先が増えて通貨が 2 つ以上になった、予約や前払いを使い始めた、国内の取引先との間で為替連動の算定方法を使い始めた、という時点で、Excel の列だけで項目の関係(どの発注にどの予約が付いているか、どの算定方法でいくらに決まったか)を保つのが難しくなる。

仕組みに移すときに決めること

外貨建ての発注を受発注のシステムに移すときは、次の点を先に決めておく。どれも、システムが自動で決めてくれるものではない。

1. 発注の記録は契約の通貨で持つと決める
システムの画面が円の合計しか出さない作りでも、注文書と記録の金額は外貨のまま残る形にする。円の合計だけを見て判断しないよう、外貨の発注を集計から外すのか、どの相場で円に直すのかを確かめる。

2. 円換算をどこで行うかを決める
購買のシステムでは見込みの円の額だけを扱い、計上の換算は会計の側で行う、という分け方が多い。両方で換算すると額が合わなくなるので、正とする場所を 1 つにする。受発注・会計・在庫の線の引き方は受発注・会計・在庫はどこで線を引くかで扱っている。

3. 予約と前払いを、発注番号で結べるようにする
予約の記録や前払いの記録に発注番号を書く欄を設ける。システムに専用の欄が無ければ、備考の書き方を決めて統一する。

4. 単価の比較は通貨をそろえてから行うと決める
外貨の見積と円の見積を同じ表で比べるときは、どの相場でそろえたのかを表に書く。過去の購入単価と比べるときの補正の考え方は届いた見積を過去の購入単価と比べるにある。

Excel の購買データを経理に渡すときに揃える列は購買のデータを経理にどう渡すか、ピボットで作っている集計を毎月の手作業から外す話はピボットの集計を購買ダッシュボードへで扱う。どちらも、外貨の行を円の行と同じ列に混ぜないことが前提になる。

よくある質問

発注書に円の参考額を書いておくべきですか

相手に送る注文書には書かないほうがよい。どの相場で換算した額かが相手に伝わらず、支払の段階で「円で約束したのか」という誤解を生む。社内の記録には、見込みの額として相場の決め方と一緒に書いておけばよい。

相場が大きく動いたので、発注済みの注文の外貨の金額を変えてよいですか

外貨の金額は相手との合意なので、一方的には変えられない。相手が国内の受託事業者なら、決めた代金を後から下げることは減額に当たりうる[5]。相場の変動を代金に反映したいなら、算定方法として先に取り決め、その方法と結果を記録に残す[6]。

社内レートは毎月変えるべきですか、年 1 回でよいですか

社内の見込みに使うだけなら、会社の判断で決めてよい。ただし税務上の換算は通達の方法によるので、社内レートとの差(原材料受入差額)を経理がどう処理するかを決めておく[2]。相場が大きく動く時期に年 1 回のレートを使い続けると、見込みと実績の差が大きくなり、予算の管理に使えなくなる。

外貨の取引は、取適法の記録でも外貨で書けばよいですか

取適法の記録規則は、代金の額や支払額を記載することを求めているが、通貨を円に限るとは書いていない[6]。発注時に明示した通貨のまま、明示した金額と支払った金額を対応づけて記録しておけば、後から確かめられる。

まとめ

外貨建ての発注には、社内の見込み・仕入の計上・輸入の課税価格・実際の支払という、少なくとも 4 つの円の額があり、それぞれ使う相場が違う。発注の記録は契約の通貨のまま持ち、円の額を書くときは目的と相場を添える。表示と支払の通貨は欄を分け、為替予約と前払いは発注番号で結ぶ。社内レートで換算するなら、税務上の換算との差を経理がどこで拾うかを決めておく。国内の受託事業者との取引で為替を代金に反映するなら、相場の時点まで含めた算定方法を先に明示して記録し、決めた代金から為替の差を後で差し引かない。外貨の取引が 1 社・1 通貨なら Excel の列を足すだけで足りるが、通貨・予約・算定方法が増えたら、項目の関係を保てる仕組みに移す時期である。

出典・参考資料

  1. 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  2. 法人税基本通達 第13章の2 第1節 外貨建取引に係る会計処理等(13の2-1-1〜)(国税庁)
  3. 消費税法基本通達 第10章第1節 課税資産の譲渡等(10-1-7 外貨建取引に係る対価)(国税庁)
  4. 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(国税庁 軽減税率・インボイス制度対応室/平成 30 年 6 月・令和 8 年 5 月改訂)
  5. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  6. 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第七条の書類等の作成及び保存に関する規則(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  7. 1406 価格の換算に用いる外国為替相場(カスタムスアンサー)(財務省関税局・税関)

外貨建ての発注を、契約の通貨のまま記録する

Newji one は、製造業の見積依頼から発注までを扱う見積・発注クラウドです。この記事の項目のうち、発注ごとに契約の通貨を持てます。発注の通貨は日本円・米ドル・ユーロ・人民元・韓国ウォン・台湾ドル・タイバーツから選べ、発注書 PDF の金額はその通貨で表記されます。一方で、円換算と為替差の処理は会計の側で行う前提です。また、AI による見積価格の判定は日本円で依頼した見積を前提としており、購買実績の集計(BI)には外貨建ての発注が含まれません。

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