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投稿日:2026年10月2日

海外の仕入先へ英語・中国語で発注する——正本は 1 つ、言語は表示の違いにする

この記事のポイント(結論先出し)

海外の仕入先への発注を、英文の Excel テンプレートと担当者個人のメールで回していると、詰まるのは英語力ではなく「和文と英文のどちらが正本か分からない」「品名の訳が発注ごとに揺れる」「通貨と条件を毎回手で写す」「送った記録が個人の送信箱にしかない」「時差のある返信が別のスレッドに散る」の 5 つである。対策は、発注の中身(品目・数量・単価・通貨・条件)を 1 か所に 1 つだけ持ち、言語はそれを表示するときの違いとして扱うこと。あわせて、発注書の金額はそのまま輸入の課税価格にはならない。税関は、支払う価格に輸入港までの運賃や、買い手が無償で提供した材料・金型の費用などを加えて課税価格を計算すると説明している[5]。発注の記録には、発注書に書かない費用まで残しておく。

海外への発注は、いまどう回っているか

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海外の仕入先と取引のある中小の製造業で、よく見る形はこうである。国内向けの注文書は基幹システムや Excel の定型で出しているが、海外向けだけは別の Excel ファイルがあり、そこに英語(相手によっては中国語)の注文書の雛形が入っている。担当者は国内の注文書の内容を見ながら、英文の雛形に品番・品名・数量・単価・納期を打ち直し、PDF にして自分のメールから送る。相手からの受注確認や出荷の連絡は、そのメールへの返信として届く。

件数が月に数件で、担当が 1 人なら、これで回る。英語の雛形を一度きちんと作れば、あとは数字を入れ替えるだけである。英文の注文書に入れる項目や、日本語のまま英訳すると通じない表現は英文の見積依頼・発注書の書き方で整理しているので、この記事では雛形の中身ではなく、その雛形を Excel とメールで回し続けたときに何が起きるかと、仕組みに移すときに何を決めるかを扱う。

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Excel とメールで回すと、どこで詰まるか

和文と英文の「どちらが正本か」が分からなくなる

国内向けの記録(社内の発注台帳や基幹システム)と、相手に送った英文の注文書が別々に作られているので、片方だけが直される。数量を 500 から 450 に減らした連絡をメールで送り、英文の注文書は作り直したが、社内の台帳は 500 のまま、ということが起きる。逆に社内の台帳だけ直して、相手には旧版の注文書が残っていることもある。どちらも「間違い」ではなく、正しい値がどちらにあるのかを誰も決めていないことが原因である。

品名の訳が、発注ごとに揺れる

同じ部品なのに、ある月の注文書では “Bracket”、別の月には “Mounting plate”、中国語の注文書では担当者がその都度訳した名前が入る。相手の工場は品番で引いているので当面は困らないが、品番を書き落とした回や、図面の版が上がった回に取り違えが起きる。品名の訳を発注のたびに作っていると、訳の数だけ別の品目があるように見える。

通貨と条件を、毎回手で写している

海外の発注では、単価の通貨(米ドルか人民元か)、建値の条件(どこまでの費用と危険を誰が持つか)、支払の条件が、国内の注文書には無い欄として加わる。これを毎回手で写していると、前回の発注から写した条件が今回の合意と違っていても気づきにくい。前の取引先の雛形を流用して、別の会社の注文書に前の会社の振込先や港名が残っていた、という形の誤りもここから出る。

送った記録が、担当者の送信箱にしかない

注文書を送ったかどうか、いつ、どの版を送ったかは、担当者のメールの送信済みフォルダを見ないと分からない。担当者が休めば、相手から「注文書を受け取っていない」と言われても確かめようがない。後で述べるとおり、メールで送った注文書は税法上保存しなければならないデータでもあるので、個人の送信箱に置いたままにすること自体が問題になる。

時差のある返信が、別のスレッドに散る

相手からの受注確認や納期の回答は、元のメールへの返信で来ることもあれば、相手の担当者が新しくメールを起こして来ることもある。時差があると返信は翌朝にまとめて届き、どれがどの注文への回答かを読み解く作業が毎朝発生する。注文番号を件名に入れるだけでも探しやすくなるが、相手が件名を書き換えると効かない。

正本は 1 つ、言語は表示の違いにする

5 つの詰まりは、根が同じである。発注の中身が、言語ごとに別々のファイルとして作られている。直す方向は、発注の中身を 1 か所に 1 つだけ持ち、英語や中国語の注文書はその 1 つを相手の言語で表示したものとして扱うことだ。こうすると、数量を直せば社内の記録も相手に送る注文書も同じ値になる。

これを Excel のまま実現するなら、1 枚の発注明細のシートを正本にし、英文・中文の注文書の書式はそこから値を参照するだけにする。注文書の側で数字を打たないことが要点である。品名の訳は、品目の一覧に「英語名」「中国語名」の列を足して 1 品目 1 つに固定し、注文書はそこを引く。訳を変えるときは一覧の側で 1 回だけ直す。

どちらの言語の文面を契約の解釈の基準にするかは、別の話として決めておく。英文の注文書を正としても、社内の記録が日本語であることは変わらないので、「相手との間では英文が正、社内の数字は発注明細が正、両者は同じ値から作る」と書いておけば足りる。言語を混ぜた記録の持ち方で迷うと、たいてい正本が 2 つになる。

海外の取引先について、記録に足す項目

取引先の情報の持ち方そのもの(発注・支払・管理・法令に必要な項目)は取引先マスタに何を持つかで整理している。海外の取引先では、そこに次の項目が加わる。どれも、Excel では担当者の頭の中か、前回の注文書の中にしか無いことが多い。

項目 なぜ要るか Excel で回しているときの置き場所
注文書を送る言語 相手ごとに英語か中国語かを決めておかないと、担当者ごとに違う言語で届く 担当者の判断
取引の通貨 単価の比較と支払の換算の起点になる。契約の通貨と支払の通貨が違う取引もある 前回の注文書
建値の条件と引渡しの場所 注文書の金額に運賃や保険が入っているかが決まり、輸入の課税価格の計算にも効く 見積書の片隅
輸入の手続きを誰が行うか 輸入申告は貨物を輸入しようとする者が行い、通関業者に代理を頼むこともできる[4]。自社か、商社か、通関業者に頼むのかで書類の流れが変わる 物流担当の頭の中
無償で渡している材料・金型 注文書の金額に出てこないが、輸入の課税価格に加える費用になりうる[5] 金型台帳(別ファイル)
品目の外国語名 訳の揺れを止める。品番とセットで注文書に出す 注文書ごとの手入力

発注書の金額は、輸入の課税価格と同じではない

海外から部品を買う場合、発注書の金額をそのまま関税・輸入消費税の計算の元にするわけではない。税関の説明では、原則的な課税価格は、買い手が売り手に現実に支払う価格に、その価格に含まれていない費用(加算要素)を加えて計算する[5]。加算要素として挙げられているのは、輸入港に着くまでの運賃・保険料その他の運送に関する費用、買い手が負担する手数料(買付けの代理人に払う手数料を除く)や容器・包装の費用、そして買い手が無償または値引きで提供した材料・部分品、工具・鋳型、生産に関する技術・設計などの費用である[5]。

ここで発注の記録の持ち方が効いてくる。たとえば積出港での引渡しを条件に発注すると、注文書の金額には海上運賃が入っていない。運賃は別に払うので、課税価格の計算ではそれを加える。金型を自社で用意して海外の工場に無償で預けている場合も、注文書の単価には金型の費用が現れないが、課税価格では加算の対象になりうる。発注の記録に「この注文の金額に何が含まれ、何が含まれていないか」が残っていないと、通関の担当者や通関業者に必要な情報を渡せない。

次の表は、仮の数字で関係を示したものである(為替は説明のための仮置き)。

金額の内訳(仮の数字) 米ドル 注文書に出るか 課税価格での扱い
部品代(積出港渡しの条件で 1,000 個 × 10 ドル) 10,000 出る 現実支払価格
海上運賃(買い手が別に手配) 600 出ない 加算する
貨物保険料 30 出ない 加算する
無償で預けた金型の費用のうち、この輸入分に割り当てる額 (割当て方は税関に確認) 出ない 加算の対象になりうる
合計(金型分を除く) 10,630 — これを税関の公示相場で円に換算する

円への換算にも注意がいる。課税価格の計算に使う外国為替相場は、輸入申告の日の属する週の前々週の実勢相場の週間平均をもとに、税関長が毎週公示している[6]。発注した日の銀行の相場とも、支払った日の相場とも違う。発注の記録に円の金額を 1 つだけ書いておくと、どの相場で換算した額なのかが分からなくなるので、海外の発注は契約の通貨のまま持ち、円の額はどの目的で、どの相場で換算したかと一緒に残すのがよい。外貨建ての発注の記録の持ち方は外貨建ての発注と単価の管理で詳しく扱う。

関税の負担や輸入者をどちらにするかを契約で決める話は米国の関税措置と購入契約の取り決め、原産地の証明で関税を下げる話は原産地規則と EPAに譲る。この記事で言いたいのは一点で、注文書に出ない費用を、発注の記録の側で落とさないことである。

メールで送った注文書は、保存しなければならないデータになる

英文の注文書を PDF にしてメールで送ると、その PDF は電子帳簿保存法でいう電子取引のデータになる。国税庁は、注文書・契約書・見積書・請求書などに相当する電子データをやりとりした場合はそのデータを保存しなければならず、受け取った場合だけでなく送った場合も保存が必要だと説明している[2]。相手が海外の会社でも、自社が法人税の帳簿書類を保存する義務を負う以上、扱いは変わらない。

保存のしかたには要件がある。改ざん防止の措置、ディスプレイやプリンタの備付け、そして「日付・金額・取引先」で検索できることである[2]。検索については、取引年月日その他の日付・取引金額・取引先を条件に設定できること、日付または金額は範囲を指定できること、二以上の任意の項目を組み合わせられることが求められている[3]。このうち範囲の指定と組み合わせは、税務職員からダウンロードを求められたときに応じられるようにしておけば省ける[3]。それでも、担当者の送信済みフォルダに注文書が散らばっている状態は、少なくとも「取引先で引ける」を満たしにくい。

専用のシステムが無くても満たす方法はある。国税庁は、ファイル名に日付・金額・取引先を規則的に入れて特定のフォルダに集める方法や、表計算ソフトで索引簿を作る方法を示しており、改ざん防止も事務処理規程を定めて守る方法で対応できるとしている[2]。また、基準期間の売上高が 5,000 万円以下の事業者などは、税務職員のダウンロードの求めに応じられるようにしていれば検索機能の確保が不要になる[3]。外貨の金額をファイル名に入れるときは、通貨を添えておく(「USD10630」のように)と、円の金額と取り違えない。システムを使わずに要件を満たす方法の全体は電子帳簿保存法の対応——システムなしで満たす方法にまとめている。

海外のクラウドに保存してよいかを気にする人もいる。国税庁は、保存場所に置いた電子計算機とサーバが通信回線でつながっていて、そこで速やかに画面と書面に出力できるなら、クラウドサービスを使う場合や海外にサーバを置く場合でも保存場所に保存されているものとして扱うと回答している[3]。ただしこれは税法上の保存場所の話で、取引先の情報を海外に預けてよいかという個人情報や契約上の判断は別に要る。

英文でやりとりしていても、取引の相手が国内の会社(国内の商社や、国内の工場に製造を委託する場合)であれば、取適法の対象になりうる(判定は自社の取引は取適法の対象か)。その場合、注文書をメールで送ること自体は認められている。公正取引委員会のテキストは、電磁的方法による明示の方法として電子メール等を送信する方法を挙げている[1]。具体的な金額を明示することが困難なやむを得ない事情がある場合には、金額の代わりに算定方法で代金を明示できるとされ、為替に連動して代金が動く取引の明示例として「工賃+実際に海外から調達した原材料費(ドル建て)×為替レート(調達した時点の市場の終値)+一般管理費」という形も示されている[1]。どの時点のどの相場を使うかまで書いてある点が、ここでも要になる。

Excel のままでよい場合

海外の発注をすべて仕組みに移す必要はない。次の条件がそろっているなら、Excel とメールで続けてよい。

1. 海外の取引先が 1〜2 社で、発注が月に数件
正本を 1 枚の発注明細に決め、注文書はそこから参照する形にしておけば、二重管理はほぼ起きない。

2. 送る言語が 1 つ
英語だけなら雛形は 1 つで済む。中国語の相手が加わると雛形が 2 つになり、片方だけ直す事故が起きやすくなる。

3. 送信の記録を、共有の場所に残せている
送った PDF を共有フォルダに規則的なファイル名で置き、担当者以外も開ける状態なら、送った記録の問題は解ける。

4. 無償で預けている材料や金型が無い
注文書に出ない費用が無ければ、発注の記録と課税価格の計算をつなぐ必要が小さい。

反対に、海外の取引先が増えて言語が 2 つになった、担当者が 2 人以上になった、金型を預けている取引先がある、という時点で、Excel の正本を守り続けるための手間が増え始める。

仕組みに移すときに決める順番

海外の発注を受発注のシステムに移すときは、画面を触る前に次の順で決めておくと、移したあとに正本が 2 つに戻らない。

1. 品目の外国語名を、品目の側に 1 つずつ決める
これまでの注文書から実際に使った訳を拾い、1 品目 1 つに絞る。迷ったら相手の工場が使っている名前に合わせる。

2. 取引先ごとに、送る言語と通貨を決める
「この会社には英語・米ドル」のように取引先の側に持たせ、発注のたびに選ばなくて済むようにする。

3. 建値の条件と、注文書に含まれない費用の扱いを決める
運賃・保険・無償で預けたものを、発注の記録のどこに残すかを決める。システムに欄が無ければ、備考の書き方を決めて統一する。

4. 送付の記録を、個人の送信箱から外す
システムから送るのか、共有のアドレスから送るのかを決め、送った版と日時が担当者以外にも見えるようにする。

5. 相手からの返信の受け口を決める
受注確認や納期の回答をどこで受け、誰が記録に戻すかを決める。システムから自動で送ったメールは返信先が無いこともあるので、相手に連絡先を別途伝える。

移すデータの範囲や切替日の決め方は受発注システムへのデータ移行、発注書の PDF を手で作って送る作業そのものの置き換えは発注書を手で PDF にして送るのをやめる、取引先の情報が人ごとに散らばっている問題は取引先の情報を一か所にまとめるで扱う。

よくある質問

英文と和文の注文書を両方送るべきですか

両方送ると、どちらが正かを相手との間でも決める必要が出る。相手が読める言語の 1 通に絞り、社内の記録は同じ値から作るほうが食い違いが起きにくい。どうしても両方送るなら、どちらの言語の文面を優先するかを注文書に一文で書いておく。

中国の工場に中国語で送るとき、品名は誰が訳せばよいですか

発注のたびに担当者が訳すのをやめ、品目の一覧に中国語名を 1 つ登録しておく。最初の訳は、相手の工場が見積書や出荷書類で使っている名前を採るのが確実である。品番は必ず併記する。

注文書の金額を円で書いて、外貨で払うことはできますか

できるが、どの相場で換算するかを決めて書かないと、支払の段階で金額が合わなくなる。外貨で払うなら契約の通貨のまま書くのが基本で、外貨表示・円払いのように表示と支払の通貨が違う取引の扱いは購買単価の持ち方で整理している。

輸入の課税価格の計算は、購買担当が行うのですか

計算と申告は輸入者(または依頼を受けた通関業者)が行う[4]。購買担当の役割は、注文書の金額に何が含まれ、何が含まれていないか(運賃・保険・無償で預けた材料や金型)を記録に残し、通関の担当に渡せるようにしておくことである。

まとめ

海外の仕入先への発注で詰まるのは、英語の文面より、発注の中身が言語ごとに別のファイルとして作られていることである。正本を 1 つに決め、英文・中文の注文書はそこから作る表示として扱えば、数量や単価の食い違いは起きにくくなる。品名の訳は品目の側に 1 つだけ持ち、言語と通貨は取引先の側に持たせる。注文書の金額は輸入の課税価格と同じではなく、運賃・保険や無償で預けた材料・金型の費用が加わることがあるので、注文書に出ない費用まで記録に残す。メールで送った注文書は送った側も保存が必要な電子取引のデータであり、個人の送信箱に置いたままにしない。Excel で回すか仕組みに移すかは、取引先の数・言語の数・担当者の数・預けているものの有無で判断すればよい。

出典・参考資料

  1. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  2. 電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください【令和 6 年 1 月以降用】(国税庁/令和 5 年 7 月)
  3. 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(国税庁/令和 7 年 6 月)
  4. 1101 輸入通関手続の概要(カスタムスアンサー)(財務省関税局・税関)
  5. 1403 原則的な課税価格の決定方法(カスタムスアンサー)(財務省関税局・税関)
  6. 1406 価格の換算に用いる外国為替相場(カスタムスアンサー)(財務省関税局・税関)

海外の取引先への発注書の送付を、取引先ごとの言語と通貨で

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