発注の記録を 2 年どう残すか——取適法と税務では対象も起算点も違う | newji

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投稿日:2026年9月6日

発注の記録を 2 年どう残すか——取適法と税務では対象も起算点も違う

この記事のポイント(結論先出し)

発注の記録をどこに置くかは、「何年残すか」を先に決めても答えが出ない。取適法の記録は2年、法人税で残す書類は7年(欠損金が生じた事業年度は 10 年)で、数え始める日も、取り出せる状態にしておく条件も、訂正した履歴を残す義務の有無も違うからである。とくに効くのは取り出し方で、取適法の記録に求められる検索条件は「取引先」と「発注日の範囲指定」の2つ、税務側は「日付・金額・取引先」の3項目。フォルダを1本に決めて両方を通そうとすると、どちらかの条件が必ず落ちる。実務で決めるべきなのは年数ではなく、現役・保管・退避の3層に分けて、層ごとに取り出し方と責任者を決めることである。

「何年残すか」から入ると、置き場所の設計を間違える

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発注の記録について社内で話が始まると、たいてい最初の質問は「何年残せばいいのか」になる。ところがこの質問に答えても、フォルダの構成は1つも決まらない。年数が決まっても、年で切るのか取引先で切るのか、途中で担当が代わったらどこに引き継ぐのか、システムを入れ替えたときに古い分をどうするのかは、何ひとつ決まらないままだからである。

置き場所の設計を決めるのは、年数ではなく取り出し方である。保存の義務は「持っていること」ではなく「求められたときに出せること」を求めており、その出し方の条件が制度ごとに具体的に書かれている。しかも、発注まわりの記録には性質の違う2つの義務が同時にかかる。取適法(中小受託取引適正化法)の記録と、法人税・消費税・電子帳簿保存法の保存である。この2つを同じ枠に押し込むと、片方の条件が静かに欠ける。

調達現場で押さえるポイント

「7年のほうが長いから、全部7年で持てば安全」は半分しか合っていない。長いほうに合わせると年数は満たせるが、要件は満たせない。取適法の記録には、税務側には無い「訂正・削除の履歴」と「取引先での検索」が付いてくる。年数だけを揃えて置き場所を1つにまとめると、落ちるのはこの2つになる。

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取適法の記録は、取り出し方まで決められている

取適法第7条は、委託事業者に対し、中小受託事業者の給付・給付の受領・代金の支払その他の事項を記載し又は記録した書類又は電磁的記録を作成し、これを保存しなければならないと定めている[3]。何を書くかは公正取引委員会規則(記録規則)に委ねられており、記録規則第1条第1項には第一号から第十三号までの 13 号が並ぶ[2]。中小受託取引適正化法テキストは、この 13 号を実務で書きやすい形に割り直して「具体的な記録事項」として①から⑰までの 17 項目に整理している[1]。数え方が2通りあるので、社内資料を作るときはどちらの枠で数えているかを明記しておくと、あとで突き合わせるときに混乱しない。

保存期間は本文ではなく規則の末尾にある。記録規則第3条は「その記載又は記録をすべき事項の全部の記載又は記録をした日から二年間、保存しなければならない」と書いている[2]起算点が発注日でも支払日でもなく、書くべきことを全部書き終えた日であることが、置き場所の設計に効いてくる。何を書くのか・いつから数えるのかの詳細は、取適法が求める記録——何を書いて、2 年間どう残すかで条文ごとに整理してある。この記事は、その先の「では、どこに置くか」を扱う。

作らなかった場合・保存しなかった場合の位置づけも確認しておく。第 14 条第3号は、第7条に違反して書類若しくは電磁的記録を作成せず、若しくは保存せず、又は虚偽の記録を作成したときに、違反行為をした代表者・代理人・使用人その他の従業者を 50 万円以下の罰金に処すると定めており、第 16 条の両罰規定により法人にも同じ刑が科される[3]禁止行為(第5条)とは違い、記録の不備は勧告ではなく罰則が置かれている類型である。取適法そのものの全体像を社内で共有する必要があるなら、法令改訂対応パック(中小受託取引適正化法)に条文と実務の対応を通しでまとめてある。

電磁的記録で持つときの3要件

記録規則第2条第3項は、記録を電磁的記録に記録する場合に満たすべき要件を第一号から第三号までの3つ挙げている[2]。テキストも同じ3点を、公正取引委員会等の検査に当たって内容が容易に確認できるようにするためのものだと説明している[1]

第一号は訂正・削除である。記録事項について訂正又は削除を行った場合に、その事実及び内容を確認することができること。第二号は表示と出力。必要に応じ、記録された事項を電子計算機の映像面に表示し、書面に出力することができること。第三号は検索。イとして第1条第1項第一号の事項——中小受託事業者の商号・名称や事業者別に付された番号その他その事業者を識別できるもの——を検索の条件として設定できること、ロとして製造委託等をした日について範囲を指定して条件を設定できることが求められている[2]

置き場所の観点で読み替えると、こうなる。取引先の軸で引けること、発注日の期間で切れること、後から直した跡が残ること、画面と紙の両方に出せること。この4つが同時に成り立つ入れ物であれば、置き場所として成立する。逆に、担当者ごと・案件ごとにフォルダを切ると、取引先の軸で横断できないので第三号イが怪しくなる。

「取引先ごと」がどこにかかるか

ここは条文とテキストで書き方に幅があるので、正確に押さえておく。記録規則第2条第2項は「書類に記載する場合には、中小受託事業者別に記載しなければならない」と、書類について明記している[2]。一方、テキストの「7条記録の作成・保存に当たっての留意事項」は「当該事項を書類又は電磁的記録に記載し又は記録する場合には、中小受託事業者別に記載し又は記録しなければならない」と、書類と電磁的記録の双方について同じ趣旨を書いている[1]

電磁的記録で持つ場合は、いずれにせよ第2条第3項第三号イの検索要件がかかるので、「取引先で取り出せる状態にしておく」という結論は、条文の読み方によらず同じ場所に着地する。紙で持つならファイル自体を取引先別に分ける、データで持つなら取引先の項目で絞り込める、と考えておけばよい。

事項を分けて持つときは、相互の関係を明らかにする

実務では、発注の記録・検収の記録・支払の記録が別のシステムや別の帳票に分かれていることが多い。これは禁じられていない。記録規則第1条第3項は、第1項および第2項の事項を「その相互の関係を明らかにして、それぞれ別の書類等に記載又は記録をすることができる」と定めている[2]。テキストも、別々に記録する場合にはその相互の関係を明らかにしなければならないとしている[1]

つまり分散して持ってよいが、「この発注に対応する検収記録はこれ」と後から辿れる鍵が要るということである。設計上は、発注番号のような一意の番号を全部の記録に持たせ、その番号で串刺しできる状態を作るのが素直な答えになる。番号の付け方を担当者の裁量に任せていると、この鍵が壊れる。

もう1つ、混同しやすい点を潰しておく。テキストの Q&A は、発注内容・単価・納期等を4条明示した内容の写しを7条記録の一部とすることは可能だとしたうえで、7条記録は受託取引の経緯に係る記録なので、取引開始時に定めた事項のみが明示されている写しを保存するだけでは記録事項を全て満たすことはできず、作成・保存義務に違反することとなると答えている[1]。4条明示の記載事項は明示規則第1条第1項の第一号から第八号までの8号[6]、記録は 13 号[2]で、そもそも数が合わない。発注書の控えのフォルダをそのまま記録の棚に流用する設計は、この時点で成り立たない。

税務側の保存は、対象も年数も起算点も違う

もう一方の義務を見る。国税庁のパンフレットは、申告所得税・法人税について帳簿と書類の保存義務がある者を対象に、注文書や契約書、送り状、領収書、見積書、請求書といった書類に当たる電子データを授受したときは、その電子取引データを保存しなければならないとしている[5]受け取った場合だけでなく、送った場合も対象で、保存するファイル形式は問わない[5]

ここで性質の違いが出る。税務側が求めているのは「やりとりしたデータそのもの」、取適法が求めているのは「取引の経緯についての自社の記録」である。前者は受け渡した現物を残す話、後者は自分で書き起こす話で、同じ発注についての義務でありながら残すものが違う。

年数も違う。一問一答は、電子取引データもそれぞれの法律で定められた期間保存する必要があるとしたうえで、法人の場合は帳簿7年・書類7年、青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた事業年度等は 10 年間(平成 30 年4月1日前に開始した事業年度は9年間)と示している[4]起算日は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日である[4]。さらに、消費税の課税事業者が仕入税額控除の要件として保存すべき請求書等および適格請求書発行事業者として交付した適格請求書の写しや提供した電磁的記録は、上記にかかわらず7年間保存する必要があるとされている[4]。年数そのものの数え方は、注文書・見積書は何年保存するかで決算期に当てはめて整理してある。

取り出し方の条件も違う。税務側は「日付・金額・取引先」で検索できること、さらに日付または金額について範囲を指定した検索ができること、3項目のうち2つ以上の任意項目を組み合わせて検索できることが求められる[5]。改ざん防止については、タイムスタンプの付与、訂正・削除の履歴が残る(又は訂正削除ができない)システムでの授受・保存、改ざん防止のための事務処理規程を定めて守る、といった方法から選べる[5]履歴の残るシステムは必須ではなく、選択肢の1つという位置づけである。システムを入れずに満たす具体的な方法は、電子帳簿保存法の対応に索引簿とファイル名の型まで書いてある。

2つの制度を並べると、どこを分けるべきかが見える

比べる軸 取適法の記録(7条記録) 税務の保存(法人税・消費税・電帳法)
残すもの 取引の経緯についての自社の記録[1] やりとりした電子データそのもの[5]
記載事項の数 規則で 13 号/テキストの整理で 17 項目[1][2] 規定なし(受け渡した現物)[5]
保存年数 2年[2] 7年(欠損金の生じた事業年度は 10 年)[4]
数え始める日 記載すべき事項の全部を記載した日[2] その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日[4]
まとめる単位 中小受託事業者別[1][2] 規定なし(保存期間は事業年度ごとに決まる)[4]
検索の条件 取引先を識別できるもの/発注日の範囲指定の2つ[2] 日付・金額・取引先の3項目+範囲指定+2項目以上の組合せ[5]
金額での検索 要件に含まれない[2] 要件に含まれる[5]
訂正・削除の履歴 電磁的記録で持つなら必須[2] 改ざん防止措置の選択肢の1つ(事務処理規程でも可)[5]
検索要件の緩和 規定なし[2] 基準期間の売上高 5,000 万円以下等で不要[5]
守らなかったとき 50 万円以下の罰金・両罰規定[3] 猶予措置に当たらなければ、ルールに従った保存と認められない[5]

この表で読み取ってほしいのは年数の差ではなく、「まとめる単位」と「検索の条件」の行が食い違っていることである。取適法は取引先で束ね、税務は事業年度で束ねる。取適法は金額で引く必要がなく、税務は金額で引ける必要がある。単一のフォルダ構成に両方を担わせようとすると、必ずどちらかの軸が犠牲になる。だから、置き場所は1つに決めるのではなく、層で分ける。

置き場所を3層に分ける

年数で棚を割るのをやめ、取り出す理由で層を割る。理由が違えば、必要な取り出し方も、触ってよい人も違うからである。

層1:現役(進行中の取引)

まだ動いている発注。見に来るのは自社の担当者と承認者で、頻度は毎日。ここで大事なのは検索性より更新の記録である。数量が変わった、納期が動いた、検収に落ちた——こうした事実が発生したときに、その都度書くことが求められている。記録規則第2条第1項は「それぞれその事項に係る事実が生じ、又は明らかになったときに、速やかに当該事項について行わなければならない」と定めている[2]。月末にまとめて書き起こす運用は、この条文と正面から合わない。

層1で決めるのは、置き場所ではなく入力の経路である。変更が起きる場所(電話・メール・訪問)から、記録に届く経路が1本になっているか。ここが複線だと、あとの層で何をしても記録は埋まらない。

層2:保管(完了したが、まだ求められうる取引)

取引は終わったが、検査や税務調査で出す可能性がある期間。ここが取適法の2年と税務の7年が重なる層で、いちばん設計が要る。必要なのは、取引先で引けること、発注日の範囲で切れること、日付・金額・取引先で引けること、画面と紙に出せること、直した跡が残っていること。前の表の要件を全部背負う層である。

実務的な割り切りとしては、層2の入れ物を1つに決めて、そこに全部の軸を持たせるのが最も壊れにくい。フォルダを取引先別と年度別の二重に切ると、片方に入れ忘れたものが永久に見つからなくなる。1つの入れ物に対して「取引先でも年度でも金額でも絞り込める」状態を作るほうが、運用の手数が少ない。

層3:退避(システムの外に出した形)

層2を担っているのが自社のサーバーであれクラウドであれ、その入れ物がいつか使えなくなる前提で、外に出した形を用意しておくのが層3である。契約の終了、システムの入れ替え、事業の譲渡。どれも保存期間より短い周期で起きうる。

退避の形は、画面のコピーで足りる場面もある。一問一答は、税務当局から電子データの書面への出力を求められた場合について、書面により作成される場合の帳簿書類に準じた規則性を有する形式であればよく、その形式については定めがないため、画面印刷(いわゆるハードコピー)であっても要件を満たせば認められるとしている[4]ただしこれは求めに応じた出力の話で、データ本体の保存に代えて書面で持つことは認められていない点に注意がいる[4]。層3は層2の代わりではなく、層2が失われたときの受け皿として持つ。

捨てる日をどう決めるか

2年は下限であって上限ではない。取適法は2年間保存しなければならないと言っているだけで、2年を過ぎたら消せとは書いていない[2]。だから実務では、長いほうの7年に揃えて持ち続ける会社が多い。それ自体は合理的だが、揃えているのは年数だけで、要件は揃っていないことを忘れないほうがいい。

具体的にはこうなる。2年を過ぎた発注を「もう取適法の対象ではない」と判断して、履歴の残らない別の保管場所に移す。この移動自体は問題ない。ところが、移す判断を発注日で行っていると事故る。2年の起算点は、記載すべき事項の全部を記載した日だからである[2]。支払や遅延利息まで含めて最後の事項を書いたのが発注の1年後なら、2年が満了するのは発注日から3年後になる。

よくある落とし穴

保管期間の設定を「発注日から◯年」で組んでしまうこと。取適法の2年は最後の記載を終えた日から、税務の7年は確定申告書の提出期限の翌日から数える[2][4]。どちらも発注日ではない。設定画面の数字を合わせる前に、その数字が何日から数えられているかを確認する。

担当者が代わるとき、記録は誰のものか

置き場所の設計がいちばん試されるのは、人が代わったときである。異動・退職・産休。そのたびに「あの案件の経緯はどこにあるのか」が問題になる会社は、記録の置き場所が個人に紐づいている。

個人のメールボックスに入っている記録

取引先とのやりとりが担当者の受信箱にしかない状態は、2つの意味で危うい。税務側では、その電子データ自体が保存対象である[5]。担当者の退職でアカウントを閉じれば、保存すべきデータが消える。取適法側では、経緯を記録に起こす入力元がそこにある。受信箱が閉じれば、そもそも記録を書き起こせない。

対策は「メールを転送させる」ではなく、取引先とのやりとりが着く先を個人ではなく取引の側に置くことである。発注の記録に紐づいた形でやりとりが残っていれば、担当が代わっても、引き継ぐのは「担当者」であって「記録」ではなくなる。メールと表計算で回している場合に何が先に壊れるかは、相見積をメールとエクセルで回す限界で件数の増え方から整理してある。

責任者を決めて、管理の規則を書いておく

誰が引き継ぐかを人事の都度決めていると、間が空いたときに誰も見ていない期間ができる。一問一答は、外部記憶媒体への保存に関する説明のなかで、サーバー等で保存していた電磁的記録と外部記憶媒体に保存している電磁的記録は当然に同一のものでなければならないとしたうえで、必要に応じて電磁的記録の保存に関する責任者を定めるとともに、管理規則を作成し、これを備え付けるなど、管理・保管に万全を期すことが望ましいと述べている[4]

これは義務ではなく望ましいとされている事項だが、引き継ぎの設計としてはそのまま使える。役職で責任者を決めておけば、人が代わっても引き継ぎ先が自動的に決まる。誰が発注し、誰が検収し、誰が記録を管理するかを分けて置く考え方は、発注する人と検収する人を分ける(職務分掌)と同じ発想である。

システムを入れ替えるときに、何が切れるか

保存期間より短い周期でシステムは変わる。移行のときに落ちるものは3つある。データ本体、訂正・削除の履歴、検索の手段である。

このうち履歴については、一問一答が正面から答えている。旧システムから電磁的記録を取り出し、新システムへ取り込むまでの間は、改ざん防止が担保できない期間となることから、移行期間中においても改ざん防止措置を行う必要があるとされる[4]。そのうえで、タイムスタンプを引き継ぐなどの対応ができない場合であっても、データ移行時における訂正削除の防止に関する事務処理規程を制定し遵守することで、改ざん防止措置の要件を満たすとされている[4]

移行の際の加工についても示されている。通達を引きながら、見積りから決済までの取引情報を取引先・商品単位で一連のものに組み替える、重複を排除するなど、合理的な方法により編集(取引情報の内容を変更することを除く)をしたものを保存する場合はこれを認めるとされ、移行に際して編集があっても、取引情報の内容に変更が生じない程度のものであれば合理的な方法による編集として問題ないとしている[4]並べ替えや重複の排除は許され、中身を書き換えることは許されない、という線である。

検索の手段については、もっと素直な答えがある。一問一答は、検索機能は現在使用しているシステムで確保しなければならないのかという問いに対し、変更前のシステムを用いること等により検索機能が確保されているのであれば、現在使用しているシステムにより検索ができなくても差し支えないと答えている[4]。旧システムを1台残しておく、という古典的な対処が否定されていないということである。あわせて、取扱説明書等を保存しておくなど、移行前のシステムでどのように保存の要件を満たしていたのかを説明できるようにしておくことが望ましいとされている[4]

受発注システム側では、どこまで形が残るか

ここまでの要件を、道具の側で何がどこまで受けられるかに落とす。Newji one の発注まわりで実際に持っている仕組みは次のとおりである。

保存期間は会社ごとに設定する。設定画面で保存年数を選ぶと、その期間を過ぎた「完了」の発注が候補として一覧に出る。選べる年数は1・2・3・5・7・10 年の6つで、初期値は3年。候補の判定は各発注の最終更新日で行うので、あとから支払や検収の記録を追記した発注は、その分だけ候補に上がる時期が後ろにずれる。前節で書いた「2年の起算点は最後の記載を終えた日」という考え方と同じ向きに動く。

アーカイブは削除ではない。候補を選んでアーカイブすると、その発注に日時の印が付いて通常の一覧から外れるだけで、データは消えない。アーカイブ済みの一覧から元に戻せる。一括で処理する場合も、確認のうえで人がボタンを押す形で、勝手に走ることはない。

変更の履歴は発注ごとに残る。ステータスや数量、納期といった項目を直すと、いつ・誰が・どの項目を・何から何へ変えたのかが、人が読める要約とあわせて発注に紐づいて記録される。品目単位の変更は、その品目に紐づけて残る。

発行した帳票は、発行時点の内容ごと凍結される。納品書などの帳票は、発行した時点の内容を値としてコピーして保持し、PDF についてはハッシュ値も持つ。訂正して出し直す場合は元の番号に枝番を付けた新しい版として発行され、どの版がどの版を置き換えたのかが辿れる。取り消す場合は取消の日時・実行者・理由が残る。

取り出し方。発注の一覧は、発注番号・取引先名・品目のコードや名称での検索と、発注日の範囲指定に対応している。金額は列で並べ替えられる。取引先の軸と発注日の範囲という、記録規則第2条第3項第三号が求める2つの条件[2]に対応する引き方は、この一覧でできる。ただしアーカイブ済みの分は別の一覧に分かれるので、どこまでを現役の一覧に残すかは保存年数の設定で決めることになる。

道具を入れても、自社で決めることは残る

保存年数を何年にするか、事務処理規程を作るか、退避の形をいつ取るか、責任者を誰にするかは、システムの設定では決まらない。要件を満たしているかどうかの判断は、自社の取引の実態に当てて行う必要がある。道具が担えるのは、決めたことを毎回同じ形で残すところまでである。

よくある質問

発注書の控えを取引先別のフォルダに入れておけば、記録になりますか

なりません。テキストの Q&A は、4条明示した内容の写しを7条記録の一部とすることは可能だが、取引開始時に定めた事項のみが明示されている写しを保存するだけでは記録規則の記録事項を全て満たすことはできず、作成・保存義務に違反することとなると答えています[1]検収の結果、代金の変更、支払の日と方法といった、発注のあとに起きた事実が入らないためです。

クラウドに置いてあれば、置き場所の設計は要りませんか

要ります。一問一答は、記憶媒体の種類にかかわらず保存時に満たすべき要件は同じであり、外部記憶媒体に限った要件はないとしています[4]置いた場所が要件を決めるのではなく、取り出せるかどうかが要件です。クラウド上でも、取引先で引けない・後から直した跡が残らないという状態であれば、要件との関係は同じ問題になります。

2年を過ぎたら消してよいですか

取適法の側では、2年を過ぎた記録の保存は義務ではなくなります[2]。ただし同じ発注に関する注文書・請求書などのデータは税務側で7年(欠損金が生じた事業年度は 10 年)の対象になりえます[4]「取適法の2年が満了したこと」と「捨ててよいこと」は別の判断です。捨てる前に、その発注に紐づくどのデータがどちらの義務にかかっているかを分けてください。

記録を発注・検収・支払で別々のシステムに持っていますが、問題ありますか

相互の関係を明らかにしてあれば、別々に持つことは認められています[2]問われるのは分けたことではなく、後から突き合わせられるかどうかです。発注番号のような共通の鍵を全部の記録に持たせ、その鍵で辿れることを実際に試しておいてください。鍵の付け方が担当者ごとに違うと、この条件が崩れます。

システムを解約したら、保存義務はどうなりますか

義務は残ります。解約はシステム変更と同じ問題で、移行期間中も改ざん防止措置が必要とされ、タイムスタンプを引き継げない場合でも移行時の事務処理規程を制定し遵守することで要件を満たすとされています[4]解約を決めた時点で、何をどの形で出すかを先に決めてください。出せる形を確認する前に契約を止めると、取り出す手段のほうが先に無くなります。

まとめ

発注の記録の置き場所は、年数を決めても設計できない。取適法の記録は最後の記載を終えた日から2年[2]、税務の書類は確定申告書の提出期限の翌日から7年(欠損金が生じた事業年度は 10 年)[4]で、束ねる単位も、引ける条件も、履歴を残す義務の重さも違う。長いほうに合わせて年数を揃えても、要件は揃わない。

決めるべきは3つである。取引先と発注日の範囲で引ける入れ物を1つ用意すること(記録規則第2条第3項第三号[2])。事項を分けて持つなら、後から突き合わせる鍵を先に決めておくこと(同第1条第3項[2])。役職で責任者を決め、システムが変わる前提で外に出した形を持つこと(一問一答の管理規則と移行時の取扱い[4])。この3つが決まっていれば、担当が代わってもシステムが変わっても、記録の置き場所は動かない。

出典・参考資料

  1. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  2. 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第七条の書類等の作成及び保存に関する規則(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  3. 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  4. 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(国税庁/令和 7 年 6 月)
  5. 電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください【令和 6 年 1 月以降用】(国税庁/令和 5 年 7 月)
  6. 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則(e-Gov 法令検索(デジタル庁))

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