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すずめっき JIS H 8619 の指定——等級と膜厚、光沢・無光沢・リフロ、ウィスカ試験の扱い

この記事のポイント(結論先出し)
端子や電気部品に付けるすずめっき(スズめっき)は JIS H 8619(電気すずめっき)で、最小厚さで 1〜5 級(3〜30 μm)に分かれ、リフロ処理をしたものは記号に f を付ける[1]。光沢か無光沢かは規格が決めず、受渡当事者間の協定で選ぶ[1]。はんだぬれ性はこの規格では指定の有無にかかわらず満たすべき品質で、250 ℃・3 秒の浸せき試験の方法まで決まっている[1]。ウィスカ(自然に伸びる金属の突起)は JIS H 8619 では試験せず、JIS C 60068-2-82 のウィスカ試験方法で評価する(コネクタのかん合部は除き、IEC 60512-16-21 による)。めっき業者や薬品の変更は、関係者間で別に合意していなければ新たな認定の対象になる[2]。
目次
この記事の範囲
すずめっき(スズメッキ、錫めっき)は、コネクタの端子、リード線、バスバー、電子部品の電極などで、はんだ付けしやすくするためと錆を防ぐために使われる。この記事は、すずめっきを付けた部品を発注する側が、規格で何が決まり、何を注文書で決めるか、ウィスカをどう確かめるかを整理する。食品缶のブリキ(すずめっき鋼板)や、溶融すずめっきの話は扱わない。
めっきの発注で共通に決める項目(記号、有効面、膜厚の測り方、密着性の試験方法)はめっきの発注で指定することで扱った。接点に金を使う部品の指定は、同じ束の金めっき(JIS H 8620)の指定にまとめた。プリント基板のはんだ付け面の表面処理(置換すず、はんだレベラーなど)の選び方はプリント基板の発注で指定することで扱っている。
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JIS H 8619 の対象と等級
JIS H 8619 の適用範囲は、電気部品などのはんだぬれ性、防食性などの向上の目的で金属素地上に行った有効面の電気すずめっきで、電気めっきされた光沢または無光沢のめっきと、電気めっき後に溶融処理によって溶融光沢化されためっきを含む[1]。対応国際規格は ISO 2093:1986 で、最新改正は 1999 年、2023 年に確認されている[1]。
めっきの等級は最小厚さによって 5 等級に分かれ、記号はめっきの厚さまたは等級を表す記号の後に、リフロ処理を表す記号 f を付けて表すほか、JIS H 0404 による[1]。
| 等級 | めっきの最小厚さ | 参考:ISO のサービスコンディションナンバ |
|---|---|---|
| 1 級 | 3 μm | - |
| 2 級 | 5 μm | 1 |
| 3 級 | 10 μm | 2 |
| 4 級 | 15 μm | 3 |
| 5 級 | 30 μm | 4 |
数値は JIS H 8619 の表 1 による[1]。使用環境の記号(D:通常の屋内、C:湿度の高い屋内、B:通常の屋外、A:腐食性の強い屋外)とサービスコンディションナンバ 1〜4 の対応は、規格の参考表 1 に示されている[1]。
等級の数字だけを書いても、リフロをするかどうかは決まらない。リフロする部品は、記号の f まで書く。厚さは有効面での最小厚さで、JIS H 0404 でも、厚さを表す数字は有効面での最小厚さを μm で示したものとされている[4]。
光沢・無光沢・リフロは、発注側が選ぶ
JIS H 8619 は、めっきの外観について、有効面に焦げ、膨れ、こぶ、ピット、しみ、変色、素地または下地の露出などの使用上有害な欠陥があってはならないとし、続けて「光沢又は無光沢の選定は,受渡当事者間の協定による」としている[1]。仕入先の標準が光沢すずか無光沢すずかで、同じ図面から違うものが届きうる。
リフロについて、JIS H 8619 は光沢、はんだ付け性向上などの好ましい性質を付与するためにめっきを溶融する処理と定義し、溶融処理、ヒュージング、溶融光沢化を同義語として挙げている[1]。JIS H 0400 は、リフロ処理を、すずまたははんだめっき後に光沢化、ウィスカ防止及び密着性を向上させるために加熱して溶融させる処理と定義している[3]。めっき後の加熱処理(光沢化、ウィスカ防止、鉄及び鋼素地の水素ぜい性除去など)が指定されている場合、その条件は受渡当事者間の協定による[1]。
発注側が書くのは、外観の種類(光沢・無光沢・リフロ)と、加熱処理を求めるならその目的と条件である。プレスした後にめっきする部品か、めっきした条をプレスする部品かでも、切断面にすずが付くかどうかが変わる。切断面のはんだ付けが要るなら、どちらの工程順かを確かめる(当方の注意)。
厚さの判定と測り方
JIS H 8619 は、局部厚さを指定面積内における指定された測定回数の平均値、平均厚さを分析による試験方法で得た値または測定を有効面全体に均一に分散させたときの平均測定値と定義している[1]。そのうえで参考として、有効面が 100 mm2 未満の製品では最小厚さは平均厚さの最小値、100 mm2 以上の製品では局部厚さの最小値とする、としている[1]。小さな端子では「最小厚さ」の意味が大きな部品と違う。
厚さ試験は、JIS H 8501 の顕微鏡断面、電解式、渦電流式、磁力式、蛍光 X 線式、β 線式、質量計測によるめっき付着量試験のいずれかによる[1][5]。注には、酸性すずめっきの場合、有機添加剤の種類や添加量によっては電解式で正しい結果が得られないか測定不能な場合もある、と書かれている[1]。また、直径 20 mm の球が触れることのできるすべての有効面について、規定された方法の中で最も適切な方法で指定面積を測る、と備考にある[1]。成績書の厚さがどの方法の値かは、毎回確かめる。
はんだぬれ性と密着性
はんだぬれ性は、JIS H 8619 では満たすべき品質として規定されている。10.6 の試験を行い、浸せきした部分は均一にぬれており、はんだの表面は平たんでこぶがあってはならない[1]。浸せき試験の手順は、松やにをアルコールに溶かしたような非腐食性のフラックスを塗り、250±5 ℃ に保った共晶組成のはんだ浴(JIS Z 3282 の H60A・H63A またはこれと同等のもの)に 3 秒浸し、余分なはんだを振り切って空冷する、というものである[1]。JIS C 0050 など、協定で有効と認めた別の方法も使える[1]。浸せきの後に曲げ試験を加え、はんだがうろこ状に飛んだり、はがれたりしないことも確かめる、と備考にある[1]。
この試験は、規格が指定する組成のはんだと温度・時間で行うものである。製品の実装で使うはんだ(鉛フリーはんだなど)とは組成も温度も違うことがあり、規格の浸せき試験に合格しても、実装の条件で確かめたことにはならない。実装条件に合わせた評価が要るなら「協定で有効と認めた方法」として、はんだの組成・温度・時間を注文書に書く(当方の提案)。
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密着性は、JIS H 8504 のへらしごき、テープ、曲げ、熱衝撃の各試験方法のいずれかで調べ、はく離や膨れがあってはならない[1]。耐食性は、JIS H 8502 の中性塩水噴霧試験方法または JIS C 0024 の方法によるが、品質と試験時間は用途によって協定で決める[1][6]。
下地めっきと素地
JIS H 8619 は下地めっきを、拡散防止、はんだぬれ性、耐食性、密着性の向上などの目的で素地上にあらかじめ施すめっきと定義し、行う場合の種類と厚さは協定による、としている[1]。銅合金の素地では、すずと素地の間の拡散を抑えるために下地を入れることがあり、その有無はウィスカの試験でも結果の扱いに関わる(次の節)。下地の種類と厚さは、JIS H 8619 の付記事項「下地めっきのある場合には,その種類と厚さ」として注文書に数値で書く[1]。ニッケルめっきそのものの性質は、同じ束のニッケルめっき(JIS H 8617)の指定で扱う。
鉄及び鋼素地でめっき前の応力除去が指定されている場合、条件は協定によるが、参考として、冷間加工された鋼部品では 190〜220 ℃・1 時間、浸炭・焼入れした鋼部品では 130〜150 ℃・5 時間以上の処理が望ましいとされている[1]。
ウィスカは JIS C 60068-2-82 で評価する
JIS H 8619 にはウィスカの試験は無い。すずめっきのウィスカは、JIS C 60068-2-82(環境試験方法-電気・電子-第 2-82 部:試験-試験 Xw1:電気・電子部品のウィスカ試験方法)で評価する。2021 年の改正版で、IEC 60068-2-82:2019 と一致している[2]。
この規格は、電気・電子部品と、プレス抜きまたは圧縮成形された機械部品(ジャンパー線、静電気保護シールド、圧入ピンなど)に、すずまたはすず合金めっきした完成段階の表面仕上げのウィスカ成長傾向を試験する方法を定めている[2]。コネクタのかん合領域には適用されず、そちらは IEC 60512-16-21 による[2]。ウィスカは保管中または使用中に自然に成長する金属突起と定義され、この規格ではアスペクト比(長さ/直径)が 2 を超え、長さが 10 μm 以上のものをウィスカとしている[2]。
| 試験 | 条件 | 時間・回数 |
|---|---|---|
| 室温試験 | (25±10)℃・相対湿度(50±25)% | 4 000 時間 |
| 高温高湿(定常)試験 条件 1 | (85±3)℃・(85±5)% | 1 000 時間 |
| 高温高湿(定常)試験 条件 2 | (55±3)℃・(85±5)% | 2 000 時間又は 4 000 時間 |
| 温度急変試験 | 低温(-40±5)℃又は(-55±5)℃/高温(85±5)℃ | 1 500 サイクル |
| プレスフィットの室温試験 | (25±10)℃・(50±25)% | 2 000 時間(1 000 時間で中間検査) |
数値は JIS C 60068-2-82 の表 3〜表 6 による[2]。どの試験を行うかは、規格の図 2 のフローチャートで、プレスフィットかどうか、はんだ付け・溶接用の部品か、素地とめっきの熱膨張係数の差などから選ぶ[2]。めっき後、前処理と試験までの保管期間は 30 日以上 120 日以下とされている[2]。
合否の判定は、関連する規格に規定がない場合、プレスフィット用途ではクラス 4(200 μm 以上 400 μm 未満)を超えるウィスカを、そのほかの用途ではクラス 1(25 μm 以上 50 μm 未満)を超えるウィスカを不合格とみなすことが推奨されている(附属書 C・参考)[2]。同じ附属書は、ウィスカの発生密度(単位面積当たりの個数)はウィスカによるリスクと全く関係しないので、合否判定基準に定める正当な理由はない、としている[2]。仕様書に「ウィスカの個数○個以下」と書くのは、この附属書の考え方と合わない。厳しく求めるなら、個数ではなく長さのクラス(例:クラス 0)で書く。附属書は、工程とめっき薬品を最適化すればクラス 0 が実現可能だとしている[2]。
試験の結果を部品の使い方にどう当てはめるかについて、規格はウィスカの主な危険を二つの独立した導電面の間の短絡とし、プリント配線板のように導電性の面が近くにある場合に関係する、と説明している[2]。部品の分類は、民生用のレベル A、業務用のレベル B、生命維持など故障が許されない用途のレベル C に分かれ、レベル C の電子機器用部品の新規認定には高温高湿の試験条件 1 の適用が必須とされている[2]。
めっき業者の変更は、新たな認定の対象
JIS C 60068-2-82 の箇条 9 は、技術または製造工程の主要な変更は新しい認定対象として扱い、関係者間で合意されていない場合は新たな認定を受けなければならない、としている[2]。表 8 の変更の例には、母材合金や母材の納入業者、最表面めっきの組成と膜厚、下地めっきの組成と厚さ、めっき薬品(添加剤など)、めっき槽と装置の納入業者、後処理(変色防止剤と処理の順番)、アニーリングの条件、新工場の立ち上げ、めっき加工業者の変更(セカンドソース)、めっき工程の外注委託先の変更などが並んでいる[2]。注には、すずめっきに銅の拡散を制限するのに十分な下地めっきが用いられる場合には、銅合金の変更に技術的な受入試験は必要としない、とある[2]。
めっき業者の側にも求めがある。規格は、めっき業者がウィスカ抑制のためにめっき工程を定期的に評価するシステムを確立していなければならないとし、関連規格に記載がない場合は 6 か月の周期でモニタリングの試験を行うことを推奨している[2]。部品を購入する側は、仕入先にこのモニタリングの結果の提出を求めるか、変更があったら知らせる取り決めを結ぶ。コネクタなどの購入部品の変更通知の取り決め方はコネクタを調達するときで扱っている。
注文書に書くこと
JIS H 8619 の箇条 14 は、発注者が書く基本事項を、素地材料の性質・状態、めっきの記号、めっきの有効面(図面に指示するか、印を付けた実物見本を提示する)、外観(光沢、無光沢など。限度見本を提示するとよい)、許容できるめっき表面の欠陥の種類・大きさ・範囲及び場所、検査方法(用いられる密着性試験方法など)の 6 つとしている[1]。付記事項は、必要な熱処理、必要とするめっき品質とその試験方法、下地めっきのある場合の種類と厚さ、特別なめっき前処理、皮膜の純度に対する特別な要求事項、めっきされた部品に対する特別な包装の必要条件、特別なめっき後処理の 7 つである[1]。
すずめっきの部品で付記事項に書くことが多いのは、下地めっき(種類と厚さ)、リフロなどの加熱処理、皮膜の純度(すず合金にするか、純すずか)である。ウィスカの評価を求めるなら、付記事項の「必要とするめっき品質とその試験方法」に、JIS C 60068-2-82 のどの試験を、どの合否基準で行うかを書く。
よくある質問
Q. 「すずめっき 3 μm」と書けば足りますか。
等級 1 級の最小厚さに当たるが[1]、光沢か無光沢か、リフロをするか、下地を付けるかは決まらない。これらは協定または付記事項で決める項目である[1]。
Q. リフロすればウィスカは出ませんか。
JIS H 0400 はリフロ処理の目的の一つにウィスカ防止を挙げているが[3]、ウィスカが出ないことの保証ではない。JIS C 60068-2-82 は、溶融処理やアニーリングなどウィスカ成長の抑制を目的とする後処理が異なるものを、技術的に類似した製品とはみなさないとしている[2]。リフロ品はリフロ品として試験する。
Q. 鉛入りのすず-鉛めっきから切り替えたい。
最表面めっきの組成の変更は、JIS C 60068-2-82 の表 8 で新たな認定の対象に挙がっている[2]。切り替えの前に、ウィスカの試験とはんだ付けの評価を計画に入れる。
まとめ
電気すずめっきは JIS H 8619 で、最小厚さによる 1〜5 級と、リフロの記号 f で表す[1][4]。光沢・無光沢は協定で選び、リフロは光沢化とウィスカ防止などのための溶融処理である[1][3]。厚さは有効面の大きさで判定の意味が変わり、測り方を確かめる[1][5]。はんだぬれ性は規格の品質だが、耐食性の時間は協定で決める[1][6]。ウィスカは JIS C 60068-2-82 で長さのクラスで判定し(コネクタのかん合部は除き、IEC 60512-16-21 による)、めっき業者や薬品の変更は、関係者間で別に合意していなければ新たな認定の対象になる[2]。
出典・参考資料
- JIS H 8619:1999 電気すずめっき(JIS 検索)(日本産業標準調査会/1999 年 8 月改正・2023 年 10 月確認)
- JIS C 60068-2-82:2021 環境試験方法-電気・電子-第 2-82 部:試験-試験 Xw1:電気・電子部品のウィスカ試験方法(JIS 検索)(日本産業標準調査会/2021 年 2 月改正)
- JIS H 0400:1998 電気めっき及び関連処理用語(JIS 検索)(日本産業標準調査会/1998 年 11 月改正・2023 年 10 月確認)
- JIS H 0404:1988 電気めっきの記号による表示方法(JIS 検索)(日本産業標準調査会/1988 年 3 月改正・2025 年 10 月確認)
- JIS H 8501:1999 めっきの厚さ試験方法(JIS 検索)(日本産業標準調査会/1999 年 8 月改正・2023 年 10 月確認)
- JIS H 8502:1999 めっきの耐食性試験方法(JIS 検索)(日本産業標準調査会/1999 年 8 月改正・2023 年 10 月確認)
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