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割りピン JIS B 1351 の指定——呼び径はピン穴の径、ボルト径からの選び方と鋼ピンだけの硬さ

この記事のポイント(結論先出し)
割りピンの JIS は B 1351 で、鋼・黄銅・ステンレスの 3 種類を規定し、形状・寸法は ISO 1234 によっている[1]。呼び径はピンの太さではなく、ピン穴の径で、実際の脚の太さはそれより小さい[1]。どの呼び径を使うかは、規格の付表にある「適用するボルト及びピンの径」の範囲で選び、軸直角方向の繰返し荷重を受けるクレビスピンには表より一段階太いものを使う[1]。注文は規格番号・種類・呼び径×長さ・材料で書き、表にない長さは注文者が指定する[1]。硬さの規定は鋼ピンだけで、黄銅とステンレスには硬さの値が無い[1]。めっきは一般に施さず、要る場合は注文者が指定する[1]。
目次
割りピン JIS B 1351 の範囲
この記事は、機械・設備の部品として工業用の割りピンを発注し、受け入れる立場で、注文書と図面に何を書き、受け取るときに何を確かめるかをまとめる。自転車や家庭用品の補修に使う話ではなく、溝付きナットやクレビスピンの抜け止めとして設計に組み込む割りピンを対象にする。
JIS B 1351(割りピン)は 1952 年に制定され、最新改正は 1987 年、2023 年 10 月 20 日に確認されている規格である。一般に用いる鋼製割りピン(鋼ピン)、黄銅製割りピン(黄銅ピン)、ステンレス鋼製割りピン(ステンレスピン)を規定し、形状・寸法は ISO 1234(Split pins-Metric series)によっている[1]。改正が古いからといって廃止されたわけではなく、確認を経て有効な規格である。
規格の中身は、曲げ、硬さ、形状・寸法、外観、材料、表面処理、検査、製品の呼び方、包装の表示で構成されている[1]。発注でよく問題になるのは、呼び径の意味、長さの決め方、材料と硬さの扱い、めっきの 4 点である。
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呼び径は「ピン穴の径」で読む
割りピンの付表の備考は、呼び径はピン穴の径によると定めている[1]。例えば呼び径 3.2 の割りピンは、脚の太さ d の基準寸法が 2.9 mm で、3.2 mm の穴に通す前提の寸法になっている[1]。脚の太さ d の許容差はマイナス側にだけ振られている[1]。
このため、図面や注文書に「割りピン φ3」のようにピンの太さらしい数値を書くと、呼び径 3.2 のことか、脚の太さが約 3 mm のもの(呼び径 4 の脚の太さは 3.7 mm)かが読み分けられない。「呼び径」と明記し、規格の呼び径の数値(0.6、0.8、1、1.2、1.6、2、2.5、3.2、4、5、6.3、8、10、13、16、20)から選ぶのが確実である[1]。付表のピン穴径の欄は参考値として呼び径と同じ数値が並んでいるので、相手部品のピン穴もこの数値で図面に書く[1]。
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ボルトの径から呼び径を選ぶ
付表には、割りピンを通すボルトとクレビスピンの径の範囲が呼び径ごとに示されている[1]。よく使うボルトの呼び径で読むと、次のとおりである。
| ボルトの呼び径 | 付表のボルト径の範囲 | 割りピンの呼び径(=ピン穴の径) | 脚の太さ d の基準寸法 |
|---|---|---|---|
| M8 | 7 を超え 9 以下 | 2 | 1.8 mm |
| M10 | 9 を超え 11 以下 | 2.5 | 2.3 mm |
| M12 | 11 を超え 14 以下 | 3.2 | 2.9 mm |
| M16・M20 | 14 を超え 20 以下 | 4 | 3.7 mm |
| M24 | 20 を超え 27 以下 | 5 | 4.6 mm |
| M30 | 27 を超え 39 以下 | 6.3 | 5.9 mm |
クレビスピン(U 字形の金具どうしをつなぐピン)の場合は、ボルトより範囲が小さめにずれている。例えば外径 10 mm のクレビスピンは「9 を超え 12 以下」の欄に入り、呼び径 3.2 になる[1]。ただし付表の注は、軸直角方向の繰返し荷重を受けるクレビスピンの場合は、この表の割りピンより一段階太いものを用いるとしている[1]。この例なら呼び径 4 を選ぶことになる。リンク機構や揺動するピンのように力が繰り返し掛かる所は、図面に呼び径を書くときにこの注を当てはめたかどうかを設計に確かめる。
溝付き六角ナットと組み合わせるとき
割りピンの相手として多いのが、溝付き六角ナット(キャッスルナット)である。JIS B 1170(溝付き六角ナット)は鋼製とステンレス鋼製の溝付き六角ナットを規定し、二面幅の大きさで並形と小形、形状と高さで 1 種〜4 種と高形・低形に分けている[2]。ねじの公差域クラスは 6H または 7H で、指定が無ければ 6H である[2]。
溝付き六角ナットの寸法表には、参考として組み合わせる割りピンの寸法の欄がある[2]。また、溝の数と溝の位置は指定によって変えることができる[2]。ナットを締めたときに溝とボルトのピン穴の位置が合わないと割りピンが通らないので、組立の手順(締付けトルクで締めてから、溝が合う位置まで回すか、戻すか)を作業標準で決めておく。この判断はナットの規格にも割りピンの規格にも書かれていないので、発注側か組立側が決めることになる。ナット側の考え方はフランジナットとロックナットの記事でも扱っている。
ローラチェーンの継手リンクにも、ピンの一端を割りピンで止める形がある。チェーン側の記号と選び方はローラチェーンの記事を見てほしい。
長さと先端の形を決める
付表の長さ l は呼び径ごとに太線の枠内の値が使え、枠内の数値はその許容差を示している[1]。許容差は長さに応じて ±0.5 mm から ±2 mm までで、表にない長さを特に必要とする場合は注文者が指定する[1]。どの長さを選ぶかは、ボルトの外径や溝付きナットの寸法、脚を曲げる余裕から設計で決める事柄で、規格は長さを決める式を定めていない。
先端の形状は、とがり先でも平先でもよく、どちらかが必要な場合は指定する[1]。脚を開くときに工具を差し込みやすい形を現場が決めているなら、先端の形まで注文書に書く。頭部は軸心から著しく傾いてはならない[1]。
材料と硬さ——硬さが決まっているのは鋼ピンだけ
材料は原則として、鋼ピンが JIS G 3505(軟鋼線材)の SWRM6〜17 または JIS G 3539(冷間圧造用炭素鋼線)の SWCH6R〜17R、黄銅ピンが JIS H 3260(銅及び銅合金線)の C 2600 W または C 2700 W、ステンレスピンが JIS G 4315(冷間圧造用ステンレス鋼線)である[1]。
硬さの規定は「鋼ピンの硬さは表 1 による」とされ、呼び径 1.6 以下が HV180〜240、1.6 を超え 2.5 以下が HV160〜220、2.5 を超えるものが HRB67〜92 である[1]。黄銅ピンとステンレスピンには硬さの値が無いので、硬さを受入の条件にしたいなら、値と測り方を注文書に書く必要がある。
全種類に共通する性能の確認は曲げである。ピンを外側に約 90 度、往復 3 回繰り返して折り曲げても割れが生じてはならず、曲げ半径はほぼピン径とする[1]。割りピンは脚を曲げて抜け止めにする部品なので、この試験がいちばん実用に近い確認になる。
めっきを付けるとき
規格は、ピンには一般に表面処理を施さず、めっきその他の表面処理を必要とする場合は注文者が指定するとしている。電気めっきを施した鋼ピンは、必要に応じてもろさ除去の処理を行う[1]。
締結用部品の電気めっきの規格である JIS B 1044 は、ボルトやナットだけでなく、座金・ピン・クリップ・リベットなど、ねじのない締結用部品にも適用すると書いている[3]。めっきを指定するなら、めっきの種類と付着量を JIS B 1044 の呼び方で書き、もろさ除去(脱水素)の処理を行うかどうかを仕入先と決める。B 1044 が硬さ別にベーキングの要否を定めているのは焼入焼戻しを施した締結用部品についてであり[3]、焼入れしない線材で作る割りピンにその区分をそのまま当てはめるのではなく、処理の有無を協定で決めておくのが確実である。
注文書の書き方と、受け取るときに確かめること
製品の呼び方は、規格番号または規格名称、種類、呼び径×長さ、材料の順で、指定事項がある場合はその後に付け加える。材料は製品材料の一般名称でもよい[1]。記入の例を示すと次のようになる。
「JIS B 1351 鋼ピン 3.2×25 SWRM10 先端:平先 表面処理:無し」
「JIS B 1351 ステンレスピン 4×32 ステンレス 硬さ:指定しない」
規格の検査は、曲げ検査、鋼ピンの硬さ検査、形状・寸法検査、外観検査の 4 つで、ロット検査の抜取検査方式は受渡し当事者間の協定による[1]。外観は表面が滑らかで、使用上有害な割れ・きず・かえり・さび・密着面のずれなどの欠陥があってはならない[1]。
抜取方式を取り決めていないときの受入の手順は、締結用部品の受入検査の規格 JIS B 1091 が使える。この規格は、事前の合意がない場合に購入者が実施する締結用部品の検査の手順を定め、ボルト・ナット・ピン・座金・リベットなどの検査ロットに適用する[4]。受渡当事者間で合否の合意ができない場合や規定への適合に疑義が生じた場合の参照手順にもなっている[4]。
包装には、規格名称、呼び径×長さ、材料、数量・指定事項、製造業者名またはその略号を表示することになっている[1]。現品票の呼び径と長さが注文と合っているかを、まず包装で確かめる。
発注のときに食い違いやすい点
一つ目は、種類と材料の書き分けである。規格の「種類」は鋼ピン・黄銅ピン・ステンレスピンの区分で、材料はそれぞれ表 2 の線材から作るのが原則とされている[1]。注文書に「ステンレス」とだけ書くと、ステンレスピンの意味か、鋼ピンにステンレス色のめっきを付ける意味かが仕入先によって読み違えられることがある。種類の名称で書けば、この取り違えは起きにくい。
二つ目は、規格に書かれていない使い方の決まりである。割りピンの再使用の可否、脚を何度まで開くか、どちらの脚を曲げるかといった組付けの作法は、JIS B 1351 には定められていない[1]。これらは仕入先に聞いても答えが揃わないので、自社の組立作業標準に書いておく。部品の受入検査で確かめられるのは、規格の曲げ・硬さ・寸法・外観までである。
三つ目は、同じ呼び径でも長さの枠が違う点である。付表は呼び径ごとに使える長さの範囲を太線の枠で示しており、細い呼び径ほど表に載っている長さの上限が短い[1]。図面の長さが枠の外にあれば、それは「表以外の長さ」として注文者が指定する扱いになるので、在庫品で対応できるかを見積の段階で確かめる。
よくある質問
図面に「割りピン 3×20」と書いてあります
3 という呼び径は規格に無い[1]。脚の太さが約 3 mm という意味なら呼び径 3.2(脚の太さ 2.9 mm)か呼び径 4(3.7 mm)のどちらかで、ピン穴の径を図面で確かめて決める。
ステンレスの割りピンで硬さを確かめたい
規格はステンレスピンの硬さを定めていない[1]。受入で硬さを見るなら、値と試験方法を注文書に書いて仕入先と合意しておく。
他の抜け止めピンとどう使い分けますか
割りピンは脚を曲げて止める部品で、穴にはめあいで固定する平行ピンやスプリングピンとは役割が違う。そちらは平行ピン・スプリングピンの記事で扱っている。
まとめ
割りピンは JIS B 1351 で、呼び径はピン穴の径を表し、脚の太さはそれより小さい。呼び径は付表のボルト・クレビスピンの径の範囲から選び、繰返し荷重を受けるクレビスピンには一段階太いものを使う。注文書は規格番号・種類・呼び径×長さ・材料で書き、表にない長さや先端の形は指定する。硬さの規定は鋼ピンだけなので、ステンレスや黄銅で硬さを見るなら値を取り決める。めっきは一般に施さず、施すなら JIS B 1044 の呼び方ともろさ除去の処置を決める。受入では曲げ・寸法・外観を確かめ、抜取方式が無ければ JIS B 1091 の手順を参照する。
同じ束では、皿ばね、シム・シムリング、カラー・スペーサー、リニアブッシュの指定も扱う。
出典・参考資料
- JIS B 1351:1987 割りピン(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 10 月 20 日確認)
- JIS B 1170:2011 溝付き六角ナット(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
- JIS B 1044:2024 締結用部品-電気めっき皮膜システム(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
- JIS B 1091:2023 締結用部品-受入検査(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
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