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Oリング JIS B 2401 の呼び番号の選び方——P・G・Vとシリーズ F、溝とバックアップリング

この記事のポイント(結論先出し)
O リングの JIS B 2401 には、呼び番号の系列が 5 つある。運動用 P・固定用 G・真空フランジ用 V は日本独自の系列で、ISO の O リングはシリーズ F(一般工業用)とシリーズ S(精密機器用)として附属書に入っている[1]。同じ「25」でも P25 と G25 は太さが違い、P と G を取り違えると溝に合わない[2]。材料を NBR から FKM に替えると、内径の許容差が 1.2 倍に広がる[1]。圧力がかかる溝では、すきまが規格の表の値を超えたらバックアップリングを併用し、その種類(スパイラル・バイアスカット・エンドレス)まで発注書に書く[2][3]。
この記事は、工業用の機器・装置に使う O リングを、呼び番号と溝の側から指定する話を扱う。水栓の修理など家庭での交換の話はしない。材料の識別記号・硬さの測り方・外観の等級といった識別コードの中身はO リングとガスケットを発注するときで書いたので、ここではどの系列の呼び番号を選ぶか、溝とバックアップリングを誰がどう決めるかに絞る(溝の考え方の総論も同じ記事にある)。
目次
JIS B 2401 の O リングは 5 つの系列に分かれている
JIS B 2401-1 は、O リングの種類を表 1 で 5 つに分けている。運動用 O リング(P)、固定用 O リング(G)、真空フランジ用 O リング(V)、ISO 一般工業用 O リング(F)、ISO 精密機器用 O リング(S)である[1]。
このうち P・G・V は本文で寸法を決めている。規格の対比表は、一般機器用の P・G・V の寸法は国内で JIS B 2401 として広く普及しているので追加した、と書いている[1]。一方、ISO 3601-1 の O リングは附属書 JA(シリーズ F)と附属書 JB(シリーズ S)に置かれている[1]。つまり、国内の機械で長く使われてきた「P26」「G80」のような呼び番号は日本独自の系列で、海外の機械の部品表に出てくる 3 桁の番号とは別の系列である。
| 系列 | 用途 | 寸法を決めている箇所 | 識別コードの例 |
|---|---|---|---|
| P | 運動用 | 本文 表 5 | OR NBR-70-1 P26-N |
| G | 固定用 | 本文 表 6 | OR NBR-70-1 G80-N |
| V | 真空フランジ用 | 本文 表 7 | (P・G と同じ並び) |
| F | ISO 一般工業用 | 附属書 JA | OR ISO-F-011-A-S |
| S | ISO 精密機器用 | 附属書 JB | OR ISO-S-C0545-CS |
出典: JIS B 2401-1 の表 1・箇条 11 の例から作成[1]。識別コードの空白は 1 文字分。
P と G は、同じ数字でも太さが違う
呼び番号の数字は、おおむね O リングをはめる軸や穴の径を表しており、O リングの太さは系列と番号の範囲で決まっている。O リングの取付け部の面取り寸法を示した JIS B 2401-2 の表 6 には、太さの区分が並んでいる。P22A〜P50 は太さ 3.5 mm、G25〜G145 は太さ 3.1 mm である[2]。P25 と G25 は同じ「25」でも太さが 0.4 mm 違う。
溝は O リングの太さに合わせて深さと幅が決まっているので、P の溝に G を入れる、あるいはその逆をすると、つぶし代が規格の想定から外れる。図面に「O リング 25」とだけ書いてあったり、保全の現場から「25 のリング」と依頼されたりしたときは、P か G かを必ず確かめる。現物しかないときは、内径だけでなく太さも測る。
A 付きの番号と、表にない寸法
P の系列には、P10A・P22A・P48A のように「A」が付いた番号がある[1]。これらは同じ数字の番号と太さの区分が違う(P10 は太さ 1.9 mm の区分、P10A は 2.4 mm の区分)[2]。手書きの依頼や古い部品表で A が落ちると、別の O リングが届く。
表にない寸法の O リングは、規格本文では受渡当事者間の協定によるとされている。そのうえで識別コードは、例えば「OR FKM-70 86.5×5.5-CS」のように内径×太さで書く形が例示されている[1]。特注寸法を頼むときは、内径と太さの許容差も協定の対象になることを前提に、図面か仕様書で数字を決める。
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海外の機械の O リングは、シリーズ F で考える
海外製の装置の交換部品として O リングを手配すると、部品表に「011」「214」のような 3 桁の番号が書かれていることがある。JIS B 2401-1 では、ISO 3601-1 の一般工業用 O リングがシリーズ F として附属書 JA に入っており、呼び番号 001・002 のような 3 桁の番号ごとに、内径と太さの基準寸法と許容差が表になっている[1]。
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シリーズ F には、内径の許容差がクラス A とクラス B の 2 つある。規格は、クラス B は一般用途に用い、クラス A は航空機用などの厳しい許容差が要求される用途に適している、と書いている[1]。識別コードは「OR ISO-F-011-A-S」のように、呼び番号の後に許容差のクラス、その後に外観の品質等級を並べる[1]。
発注で気をつけたいのは、3 桁の番号を P や G の番号に読み替えて国内品で代用することである。寸法の系列が別なので、内径と太さが近い P・G の番号があっても同じものではない。代用するなら、装置側の溝の寸法を確かめたうえで、設計部門か装置の製造業者の了解を取る。シリーズ F の溝の基本寸法は、JIS B 2401-2 の附属書 JA に別に定められている[2]。
シリーズ S(精密機器用)は、外観の等級を指定しないときの扱いも違う。JIS B 2401-3 は、使用者が購買の時点で等級を指定しなければ等級 N とする一方で、シリーズ S については等級 S とする、と書いている[4]。
材料を替えると、内径の許容差が変わる
JIS B 2401-1 の P・G・V の寸法表には、表の下に注がある。FKM・VMQ・HNBR・ACM の内径の許容差は、VMQ と ACM については表の許容差の 1.5 倍、FKM と HNBR については 1.2 倍とする、というものである[1]。表の値は NBR などを前提にした許容差で、ふっ素ゴムやシリコーンゴムでは内径のばらつきを広く認めている。
たとえば P26 の内径は基準寸法 25.7 mm、許容差 ±0.26 mm である[1]。これを FKM で作ると許容差は 1.2 倍の約 ±0.31 mm、VMQ なら 1.5 倍の約 ±0.39 mm になる。耐熱のために NBR から FKM に切り替えたとき、受入検査の内径の合否線を NBR のまま使うと、規格に適合している FKM の O リングを不合格にしてしまう。材料を替えるときは、受入の判定値も一緒に見直す。材料ごとの使い分けはニトリルゴム(NBR)の発注とフッ素ゴム(FKM)の発注に書いた。
海外の材料表は IRHD で書かれていることがある
O リングのゴム材料の選定指針 JIS B 2410 は、ISO 3601-5 を翻訳した規格で、ゴム材料の呼び方を「NBR 70 IRHD」のように国際ゴム硬さで書く形を示している[5]。同じ表には参考として、IRHD に対するタイプ A デュロメータ硬さの増減が載っており、NBR 70 では 0〜+5、FKM 70 では+3〜+4 とされている[5]。JIS B 2401-1 の材料記号の数字はタイプ A デュロメータ硬さなので、海外の仕入先の「70」と国内の「70」が同じ試験の数字とは限らない。どちらの硬さで書いた値かを確かめる。
溝の寸法は、O リングの仕入先ではなく部品の図面で決まる
O リングを規格品で買っても、はめる溝が規格と違えば漏れる。JIS B 2401-2 は、バックアップリングなしとバックアップリング付きの溝(ハウジング)の形状と寸法を定めている。P と G の円筒面の溝は表 3、平面(フランジ)の溝は表 4、真空フランジ用は表 5 で、表 3 には溝の寸法と許容差に加えて、つぶし代とつぶし率が参考として載っている[2]。
溝の面の表面性状も、用途ごとに表で決まっている。運動用で O リングが滑る面は算術平均高さ Ra 0.4 μm、運動用の溝の側面と底面はバックアップリングを使わない場合 Ra 0.8 μm、使う場合 Ra 1.6 μm である[2]。同じ運動用の溝でも、バックアップリングの有無で求められる面が変わる。粗さの指定と測り方は表面粗さの指定と測定条件で扱っている。
購買の立場では、O リングの発注と、溝を加工する部品の発注は別の仕入先になることが多い。O リングを規格品で手配するなら、溝を持つ部品の図面に、規格のどの表の寸法と表面性状を使うかが書かれているかを、部品を発注する前に確かめる。規格は、特殊な用途の溝の寸法は使用者と製造業者の協定によるとしている[2]。
取付け部の面取りも溝の側の図面で決める
O リングは組み付けるときに傷が付きやすい。JIS B 2401-2 は、O リングを傷つけないように端部や穴に面取りを施す必要があるとし、太さごとの面取り長さの最小値を表 6 に示している。P3〜P10(太さ 1.9 mm)なら 1.2 mm、P22A〜P50(太さ 3.5 mm)なら 1.8 mm である[2]。横穴のエッジに O リングが干渉する誤った取付けの図や、ねじ部を通すときにキャップをかぶせて取り付ける図も載っている[2]。組立を外部に出すなら、この面取りと取付け方法を作業指示に入れておく。
バックアップリングが要るかは、すきまと圧力で決まる
圧力がかかると、O リングは溝のすきま(直径すきま)にはみ出そうとする。JIS B 2401-2 は、使用状態で直径すきま 2g が表 2 の値以下ならバックアップリングを使わなくてもよいが、表 2 の値を超える場合はバックアップリングを併用する、と定めている[2]。
| 使用圧力(MPa) | 硬さ A70 の O リング:直径すきまの最大値(mm) | 硬さ A90 の O リング:直径すきまの最大値(mm) |
|---|---|---|
| 4.0 以下 | 0.35 | 0.65 |
| 4.0 を超え 6.3 以下 | 0.30 | 0.60 |
| 6.3 を超え 10.0 以下 | 0.15 | 0.50 |
| 10.0 を超え 16.0 以下 | 0.07 | 0.30 |
| 16.0 を超え 25.0 以下 | 0.03 | 0.17 |
出典: JIS B 2401-2 の表 2「バックアップリングを使用しない場合の直径すきま(2g)の最大値」[2]。この値を超えるときはバックアップリングを併用する。
表から読み取れることは二つある。一つは、圧力が上がるほど許されるすきまは急に小さくなること。もう一つは、同じ圧力でも硬さ A90 の O リングのほうが大きなすきまを許されることである。圧力の高い装置で、O リングだけを A70 から入手しやすい別の硬さに替えると、この前提が崩れる。硬さを変える提案が仕入先から来たら、使用圧力とすきまを設計部門に確かめる。
バックアップリングの種類と使い分け
JIS B 2401-4 は、バックアップリングの種類を材料・色・形状で 6 つに分けている。四ふっ化エチレン樹脂(乳白色)のスパイラル T1・バイアスカット T2・エンドレス T3 と、充材入り四ふっ化エチレン樹脂(茶褐色)の F1・F2・F3 である[3]。
形状ごとの使い方も書かれている。スパイラルは圧力 10 MPa から 20 MPa の間で使い、使用温度が 100 ℃を超える場合は 10 MPa 未満で使う。バイアスカットは最も広く使われ、エンドレスより装着しやすく、圧力 15 MPa から 20 MPa を超えても O リングの保護に優れる。エンドレスは一体溝や小口径では装着が難しいが、圧力と温度に対する保護に優れ、圧力 25 MPa・温度 135 ℃を超える場合に適している[3]。
バックアップリングを使う溝は、使わない溝より幅が広い。JIS B 2401-2 の表 3 は、バックアップリングなし・1 個・2 個で溝の幅(b1・b2・b3)を分けて載せている[2]。圧力が片側からだけかかるか両側からかかるかで 1 個か 2 個かが変わり、JIS B 2401-4 には装着位置の図がある[3]。つまり、バックアップリングの要否と数は溝の図面が決まった時点で決まっており、O リングの発注のときに後から決めるものではない。
バックアップリングの識別コード
P と G の O リングに使うバックアップリングは、「BR JIS B 2401-4-T1-P20」のように、略号・規格番号・種類・呼び番号で表す[3]。シリーズ F と S に使うものは、O リングの太さを 100 倍した 3 桁、用途の記号(ピストン運動用 PD、ピストン固定用 PS、ロッド運動用 RD、ロッド固定用 RS)、ロッド径またはシリンダ内径、溝径を並べる形になっている[3]。
材料の特性も規格の表 3 に決まっていて、四ふっ化エチレン樹脂は引張強さ 14.7 MPa 以上、伸び 100 % 以上、硬さタイプ D 50 以上などである。引張強さ・伸び・硬さの試験片は製品と同一条件で成形した板から採る、とされている[3]。寸法の検査は 25±2 ℃で行う[3]。樹脂は温度で寸法が動くので、受入で寸法を測る部屋の温度も合わせる。
発注書と図面に書くこと
ここまでを、書き手ごとに分けて並べる(規格の要求と当方の提案を分けて書く)。
1. O リングの発注書
識別コード(系列・呼び番号、または内径×太さ)、材料の識別記号、外観の品質等級。シリーズ F なら許容差のクラス A か B。材料を NBR 以外にするなら、内径の許容差が広がることを受入側に伝える(提案)。
2. バックアップリングの発注書
JIS B 2401-4 の識別コード(種類 T1〜T3・F1〜F3 と呼び番号)。O リングと同じ発注で手配し、セットで在庫する(提案)。
3. 溝を持つ部品の図面
JIS B 2401-2 のどの表の寸法を使うか、バックアップリングの有無と数、溝の面と相手面の表面性状、取付け部の面取り。
4. 使用条件(仕様書)
使用圧力、圧力のかかる向き、運動か固定か、流体と温度範囲。直径すきまはこれで判断される。
注文書の書き方の例を示す。「O リング:OR NBR-70-1 P26-N(JIS B 2401-1)。バックアップリング:BR JIS B 2401-4-T2-P26、1 個。溝は JIS B 2401-2 表 3 のバックアップリング 1 個の寸法による(図面番号○○)。使用圧力 14 MPa(圧力は片側から)、作動油、使用温度 −10〜80 ℃、運動用。」このように書けば、O リングの仕入先と溝の加工先が同じ前提で動ける。
よくある質問
現物の O リングしかなく、呼び番号が分かりません
内径と太さを測り、JIS B 2401-1 の P・G・V の表と、シリーズ F の表の両方で近い番号を探す[1]。ゴムは押すと変形するので、太さはノギスで強く挟まず数か所を測る。それでも決めきれなければ、溝の寸法を測ったほうが確実である。系列が決まらないまま「同等品」で手配しない。
P の O リングを固定用の溝に使ってもよいですか
規格は、運動用の溝と固定用(円筒面)の溝の寸法を同じ表 3 にまとめている[2]。P の番号は運動用の名前だが、P の溝として設計された固定部に P を使うこと自体は図面どおりである。問題になるのは、溝が G の寸法なのに P を入れるような、系列の取り違えである。
バックアップリングを付けずに漏れ止めできますか
直径すきまが JIS B 2401-2 の表 2 の値以下なら、規格上は使わなくてもよい[2]。超えるなら併用する。すきまは部品の寸法公差と、圧力で部品が広がる量で決まるので、購買の判断ではなく設計部門の判断である。
保管はどうすればよいですか
JIS B 2410 は、O リングを ISO 2230 の規定に従って保管しなければならないとしている[5]。保管条件の中身はこの記事では書かない。予備品として長く置くなら、包装に表示される製造年月で古い順に使う管理にしておく。
まとめ
JIS B 2401 の O リングは、日本独自の P・G・V と、ISO のシリーズ F・S の 5 系列に分かれる[1]。P と G は同じ数字でも太さが違い、A 付きの番号は区分が別なので、呼び番号は系列と記号まで正確に書く[2]。海外の機械の 3 桁の番号はシリーズ F で考え、許容差のクラスを指定する[1]。材料を FKM や VMQ に替えると内径の許容差が広がるので、受入の判定値も見直す[1]。溝の寸法・面・面取り、バックアップリングの要否と数は、溝を持つ部品の図面で決まる[2]。バックアップリングは種類と識別コードで O リングと一緒に手配する[3]。
同じ束では、ゴムシート・ゴム板の発注、ホースバンド・ホースクランプの指定、突合せ溶接式管継手の指定も書いた。回転軸のシールはオイルシール JIS B 2402 の発注を参照してほしい。
出典・参考資料
- JIS B 2401-1:2012 O リング-第 1 部:O リング(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2012 年 3 月 21 日制定・2026 年 6 月 22 日確認)
- JIS B 2401-2:2012 O リング-第 2 部:ハウジングの形状・寸法(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2012 年 3 月 21 日制定・2026 年 6 月 22 日確認)
- JIS B 2401-4:2012 O リング-第 4 部:バックアップリング(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2012 年 3 月 21 日制定・2026 年 6 月 22 日確認)
- JIS B 2401-3:2012 O リング-第 3 部:外観品質基準(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2012 年 3 月 21 日制定・2026 年 6 月 22 日確認)
- JIS B 2410:2005 O リング-ゴム材料の選定指針(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2005 年 3 月 20 日制定・2024 年 10 月 21 日確認)
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