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ゴムシート・ゴム板の発注——JIS K 6380 の性能区分、厚さの測り方と許容差

この記事のポイント(結論先出し)
工業用のゴムシート(ゴム板)そのものには JIS の製品規格が無い。パッキンやガスケットに使う材料なら、2026 年 3 月に改正された JIS K 6380 の性能区分で、耐熱性・耐油性・耐寒性の 3 文字と、硬さ・引張強さ・切断時伸び・圧縮永久ひずみの 5 桁を書いて指定できる[1]。ただし耐熱性の区分の温度は促進老化試験の温度で、実際に使える温度ではないと規格自身が注記している[1]。厚さは、配管用のシートガスケットでも呼び厚さ 3.0 に実寸 3.0 mm と 3.2 mm があるように、呼びと実寸が一致しない[4]。測り方は JIS K 6250 の A 法(規定の圧力をかける)で、許容差は図面か仕様書で決める[2]。
この記事は、パッキン・ガスケットの打ち抜き材、緩衝・防振の敷き材、シュートやホッパーの内張りなど、工業用途のゴムシートを材料として発注する話を扱う。家庭の滑り止めや DIY の防振の話はしない。ゴム部品一般の材質と硬さの指定はゴム部品の材質と硬さの指定に書いたので、ここではシート(板)として買うときに決めることに絞る。
目次
ゴムシートには JIS の製品規格が無い
日本産業標準調査会の JIS 検索で、規格名称に「ゴムシート」「ゴム板」を含む規格を引くと、出てくるのはウェハー形ゴムシートバタフライ弁(JIS B 2032)という弁の規格だけで、ゴムシートを製品として定めた規格は見当たらない(2026 年 10 月に確認)。鋼板の SPCC や SS400 のように、記号一つで材質・寸法・許容差が決まる買い方はできない。
そのため、ゴムシートの発注は「NBR 3 mm」「天然ゴム 5t」のような書き方になりやすい。これで決まるのは原料ゴムの種類と、おおよその厚さだけである。同じ「NBR」でも配合で耐油性も硬さも変わることは、ニトリルゴム(NBR)の発注で書いた。シートを買うときは、材料の性能と、シートとしての寸法・形態を分けて決める。
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パッキン・ガスケット用なら JIS K 6380 の性能区分で書ける
JIS K 6380 は、パッキン、ガスケット及びこれに類するゴム製品に使用する加硫ゴム材料の、性能に基づく区分を定めている[1]。ゴムシートを打ち抜いてパッキンやガスケットにするなら、この区分で材料を書ける。規格は 2026 年 3 月 23 日に改正されている[1]。
区分の表示は、基本性能(耐熱性・耐油性・耐寒性)を 3 文字の英字で、物理特性(硬さ・引張強さ・切断時伸び・圧縮永久ひずみ)を 5 桁の数字で表す。規格の表示例「BCD50373」は、耐熱性 B(試験温度 100 ℃)、耐油性 C(体積変化率 81 %〜120 %)、耐寒性 D(50 % 衝撃ぜい化温度 −40 ℃)、硬さ 50±5、引張強さ 7 MPa 以上、切断時伸び 400 % 以上、圧縮永久ひずみ 50 % 以下を表す[1]。
| 表示数字 | 引張強さ(最小)MPa | 切断時伸び(最小)% | 圧縮永久ひずみ(最大)% |
|---|---|---|---|
| 0 | 規定せず | 規定せず | 規定せず |
| 3 | 7 | 150 | 50 |
| 5 | 14 | 250 | 30 |
| 7 | 20 | 400 | 20 |
| 9 | 35 | 600 | 5 |
出典: JIS K 6380 の表 4 から抜粋[1]。5 桁のうち 1・2 桁目は硬さの設計値(許容差 ±5)、3 桁目が引張強さ、4 桁目が切断時伸び、5 桁目が圧縮永久ひずみ。同じ数字でも列によって意味が違い、圧縮永久ひずみは数字が大きいほど厳しい。
この表の読み方で取り違えやすいのは、5 桁目の向きである。引張強さと伸びは表示数字が大きいほど高い値を求めるが、圧縮永久ひずみは表示数字が大きいほど小さい値(厳しい要求)になる[1]。仕入先の材料表を照らすときは、桁ごとに表で確かめる。
耐熱性の区分は「使える温度」ではない
耐熱性の区分 A〜K は、促進老化試験の温度(A が 70 ℃、B が 100 ℃、…、K が 300 ℃)で 72 時間熱老化させたとき、引張強さの変化率・切断時伸びの変化率・硬さの変化が規定に入る上限の温度である[1]。規格の注は、この試験温度は促進老化試験の温度なので必ずしも実使用で耐える温度の意味ではなく、実使用の材料選定には用途・使用環境・使用設備などを考えた総合的な判断が要る、と書いている[1]。
「耐熱性 C の材料だから 125 ℃で使える」と読むのは誤りである。使う温度と時間を仕様書に書き、仕入先に材料の適合を確かめさせる。区分の記号は、その確認の結果を短く書き表すために使う。
耐油性は試験用の油での体積変化
耐油性の区分 A〜G は、試験用潤滑油 No.3 油に 100 ℃で 72 時間浸せきしたときの体積変化率で決まる。F は 0〜20 %、G は体積変化率が負のもの(油に成分が抽出されて縮むもの)で、A は 140 % を超えるか規定しない[1]。体積変化率には、油を吸って膨らむ変化と、油に成分が抜けて縮む変化の両方が含まれる[1]。
試験用の油は、実際の設備の油とは別物である。実際に接する油や薬品が決まっているなら、その液体で浸せき試験をする。耐液性の求め方は JIS K 6258 が定めており、体積変化率は 3 個の試験片の値の中央値で報告する[5]。K 6380 にも、基本性能のほかに耐水性(EA)・耐薬品性(EN)・耐オゾン性(C)・汚染性(P)などの追加性能を、追加記号と試験条件の数字で書く方法が附属書にある[1]。追加性能の特性値は受渡当事者間で取り交わす、とされている[1]。
厚さ:呼びと実寸、測り方、許容差
ゴムシートの厚さは、発注でいちばん揉めやすい項目である。理由は三つある。呼びの厚さと実際の厚さが一致しないこと、ゴムは押すと縮むので測り方で値が変わること、許容差を決める JIS の製品規格が無いことである。
呼びと実寸は一致しないことがある
配管のフランジに使うガスケットの寸法を定めた JIS B 2404 には、ゴムシート(布入りゴムシートを含む)をシートガスケットの一つとして挙げたうえで、シートガスケットの呼び厚さと厚さの対応表がある。呼び厚さ 1.0 は厚さ 0.8 mm と 1.0 mm、1.5 は 1.5 mm と 1.6 mm、3.0 は 3.0 mm と 3.2 mm に対応する[4]。ガスケットの規格でさえ、一つの呼びに二つの実寸がある。
シートを「3 mm」と書いて発注すると、仕入先は 3.0 mm と 3.2 mm のどちらも 3 mm として扱いうる。厚さが締付けや組立の寸法に効く用途なら、呼びではなく基準寸法と許容差を数字で書く(提案)。
厚さの測り方は JIS K 6250 の A 法
ゴムの物理試験の通則 JIS K 6250 は、30 mm 未満の平らで平行な面をもつ試験片または製品の厚さを測る A 法を定めている。平板台と直径 2 mm〜10 mm の円形の圧子からなる装置を使い、硬さ 35 IRHD 以上のゴムには (22±5) kPa、35 IRHD 未満には (10±2) kPa の圧力をかけて測る。場所を変えて少なくとも 3 回測り、中央値を報告する[2]。
現場でよく使うノギスやマイクロメータでシートを強く挟むと、ゴムが縮んで薄く測れる。受入で「薄い」と判定する前に、仕入先と同じ測り方をしているかを確かめる。発注書に「厚さは JIS K 6250 の A 法による」と書いておけば、測り方が一つに決まる(提案)。
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許容差は図面か仕様書で決める
JIS K 6250 には試験片の厚さと許容差の表(たとえば厚さ 2.0 mm で ±0.2 mm)があるが、これは試験に使う試験片の値で、製品のシートの許容差ではない[2]。同じ規格は、製品の品質管理で寸法を測る場合は ISO 3302-1 を参照する、と注記している[2]。ゴム製品の寸法許容差の国際規格だが、その中身はこの記事では引かない。
結局、シートの厚さの許容差は、発注側が図面か仕様書に数字で書くか、仕入先が出す製品仕様の値を承認するかのどちらかになる。数字が無いまま受け入れて、後から「厚さが外れている」と言っても、基準が無い。受入の基準を発注の時点で書いておく理由はO リングとガスケットを発注するときでも触れた。
薄いシートの硬さは、そのままでは測れない
デュロメータ硬さの規格 JIS K 6253-3 は、試験片の厚さをタイプ A では 6.0 mm 以上、薄い試験片に使うタイプ AM でも 1.5 mm 以上としている。足りない場合は 3 枚以内で積み重ねてよいが、積み重ねた試験片の結果と積み重ねない試験片の結果は一般に一致せず、比べるなら単一の試験片同士か、積み重ねた試験片同士とする[3]。厚さ 1 mm のシートは、タイプ AM でも単板のままでは厚さが足りない。タイプ A の硬さ計を厚さ 1〜3 mm のシートにそのまま当てた値は、規格の条件で測った値と比べられない。
シートで硬さを確かめるなら、タイプ A か AM か、何枚重ねて測るか(仕入先の値と比べるなら同じ枚数で)、読み取りの時間を仕入先と合わせておく。硬さの測り方の詳しい条件はゴム部品の材質と硬さの指定でまとめた。
シートとして決めること:形態・表面・補強
ここからは規格ではなく、シートを材料として買うときに発注側が決めておく項目の提案である。
1. 形態と寸法
ロール(幅と長さ)か切板(縦×横)か。切板なら、縦横の寸法の許容差と、角の直角度をどこまで求めるか。打ち抜いて使うなら、打抜き品として買うか、シートで買って自社や加工先で打ち抜くか。
2. 補強の有無
布入りか、布なしか。布入りは伸びにくいが、打ち抜いたときの切り口に布が出る。JIS B 2404 も、シートガスケットの種類として布入りゴムシートを含むゴムシートを挙げている[4]。
3. 表面
両面とも平滑か、布目が付いているか、粘着加工があるか。表面は打ち抜いたあとのシール面になることがある。
4. 色
色で材質を見分ける運用をしているなら、色を指定する。ただし色は材質の証明にならない。
5. 接するもの
食品・飲料水・薬品に触れる用途なら、その適合を確かめる。食品に触れる部品の確かめ方は食品に触れる部品の調達で扱っている。
ガスケットとして使うときの注意
ゴムシートを打ち抜いて配管フランジのガスケットにする場合、JIS B 2404 が決めているのはガスケットの種類と寸法である。シートガスケットの中芯は継目のない一体品とし、一体品が製造できない場合には、購入者がガスケットの製造業者または供給者と協議することが望ましい、とされている[4]。フランジ規格とガスケットの種類の組合せでも、一般的でない組合せは購入者が製造業者または供給者と協議することが望ましい、と書いている[4]。
ゴムシートのガスケットを、どの流体・圧力・温度まで使ってよいかは、シートの材料と使う条件で決まる。購買が「ゴムシートで作れば安い」と判断して置き換えるのではなく、設計部門とガスケットの製造業者の確認を経る。
受け入れるときに確かめること
ゴムの物理試験の通則 JIS K 6250 は、加硫ゴムの試験を加硫後少なくとも 16 時間経過してから行うこと、製品の試験を行う場合は製造してから 3 か月以内、または入手してから 2 か月以内とすることを定めている[2]。試験室の標準温度は (23±2) ℃で、取決めによって (27±2) ℃としてもよい[2]。倉庫に長く置いたシートを後から測って「性能が出ていない」と言っても、規格の試験条件からは外れていることがある。性能を受入で確かめるなら、届いてから早めに試験する。
受入の項目は、品名・材料の区分表示・ロット・寸法(厚さは A 法)・外観(きず・異物・気泡)を基本に、性能の試験成績はロットごとか定期的かを決めておく(提案)。
注文書の書き方の例を示す。「ゴムシート:NBR、JIS K 6380 の性能区分 BFC70455 相当(耐熱性 B・耐油性 F・耐寒性 C、硬さ 70±5、引張強さ 10 MPa 以上、切断時伸び 250 % 以上、圧縮永久ひずみ 30 % 以下)。布なし、両面平滑、黒。厚さ 3.0 mm ±0.2 mm(JIS K 6250 の A 法で測定)、切板 1 000 mm×1 000 mm。硬さは JIS K 6253-3 のタイプ A、重ねた厚さが 6.0 mm 以上になるようシートを 3 枚重ねて(約 9 mm)測定、読み取り 3 秒。使用流体:作動油(ISO VG46)、使用温度 −10〜80 ℃。ロットごとに硬さと厚さの成績を添付。」許容差の数字は例であり、用途に合わせて設計部門と決める。
よくある質問
「天然ゴム」「合成ゴム」と書けば足りますか
足りない。原料ゴムの種類を略号(NR、NBR、EPDM など)で書いても、配合で性能は変わる。パッキン・ガスケット用なら JIS K 6380 の区分で性能を書き[1]、それ以外の用途でも、使う温度と接する液体を仕様書に書く。EPDM の使いどころはEPDM の発注で扱った。
スポンジのシートでも同じ書き方でよいですか
発泡したスポンジは、密度や圧縮応力など別の指標で指定する。スポンジゴムの発注を参照してほしい。
防振のための敷き材にも K 6380 を使えますか
K 6380 はパッキン・ガスケットとそれに類する製品の材料の区分である[1]。防振を目的にするなら、ばね定数などで指定する考え方が別にある。防振ゴムの選び方と発注で扱った。
まとめ
ゴムシートには JIS の製品規格が無いので、材料の性能とシートの寸法・形態を分けて書く。パッキン・ガスケット用なら 2026 年改正の JIS K 6380 の性能区分で、3 文字と 5 桁で性能を表せる[1]。耐熱性の区分は使える温度ではなく[1]、耐油性は試験用の油での体積変化なので、実際の液体での確認は JIS K 6258 で行う[5]。厚さは呼びと実寸が一致しないことがあり[4]、JIS K 6250 の A 法で測り、許容差は数字で決める[2]。薄いシートの硬さは、タイプ AM(1.5 mm 以上)か 3 枚以内の積み重ねで測り、仕入先とは同じ条件の値で比べる[3]。
同じ束では、O リング JIS B 2401 の呼び番号と溝の指定、ホースバンド・ホースクランプの指定、アルミ合金鋳物 AC4C・AC7A の発注も書いた。
出典・参考資料
- JIS K 6380:2026 パッキン及びガスケット用の加硫ゴム材料-性能区分(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2026 年 3 月 23 日改正)
- JIS K 6250:2019 ゴム-物理試験方法通則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2019 年 6 月 20 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
- JIS K 6253-3:2023 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第 3 部:デュロメータ硬さ(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 2 月 20 日改正)
- JIS B 2404:2018 管フランジ用ガスケットの寸法(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2018 年 2 月 20 日改正・2022 年 10 月 20 日確認)
- JIS K 6258:2016 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-耐液性の求め方(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2016 年 8 月 22 日改正・2026 年 10 月 20 日確認)
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