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ホースバンド・ホースクランプの指定——締付範囲とホース外径、形式・材質・取付けの確かめ方

この記事のポイント(結論先出し)
工業用のホースバンド(ホースクランプ)には、JIS の製品規格が無い。JIS にあるのは家庭用のガス用ゴム管に使うガス用ゴム管バンド JIS S 2190だけで、それも適用範囲はガス用ゴム管とガス栓などのホースエンドの接続に限られる[1]。だから工業用は、製造業者の形式番号と締付範囲で指定し、その範囲に実際のホースの外径が入っているかを確かめる。外径の測り方は JIS K 6330-1 にある[2]。内径の大きいクランプを取り付けて締付力が落ち、燃料が漏れるおそれがあるとしてリコールになった例もある[3]。高圧の油圧ホースは、ホースバンドではなく継手金具で組み立てたホースアセンブリとして規格が決まっている[6]。
この記事は、工業用の装置・設備・製品に組み込むホースバンドを、部品として発注・受け入れるときの話を扱う。車や洗濯機の修理、家庭の水道の補修の話はしない。冷却水・潤滑油・圧縮空気などの低圧のホースを、口金(ホースニップル)に差し込んで外から締めて留める部品を想定する。
目次
工業用のホースバンドには JIS の製品規格が無い
日本産業標準調査会の JIS 検索で、規格名称に「バンド」「クランプ」を含む規格を引くと、ホースを留めるバンドの製品規格として出てくるのは JIS S 2190「ガス用ゴム管バンド」だけである(2026 年 10 月に確認)。JIS S 2190 の適用範囲は、JIS K 6348 に規定するガス用ゴム管を JIS S 2120 に規定するガス栓・燃焼器具などのホースエンドに接続する場合に、ゴム管を抜けにくくするために取り付けるバンドである[1]。家庭や業務用のガス器具の接続を前提とした規格で、工場の冷却水配管や装置のホースに使うバンドを対象にしたものではない。
そのため、工業用のホースバンドは「JIS 品」で発注することができない。製造業者のカタログの形式番号で指定するか、必要な性能を仕様書に書いて仕入先に選ばせるかのどちらかになる。どちらの場合でも、何を決めておけば別のものが届かないかを、以下で整理する。
JIS S 2190 から読み取れる「決めるべき項目」
対象は違うが、JIS S 2190 は、ホースバンドについて何を決めればよいかの見本になる。種類はバンドの形式(ばね式・ねじ式)と使うゴム管の径(9.5 用・13 用)で区分され、性能は引抜き荷重増加率・永久変形・耐久性・耐食性、寸法は最小時内径・最大時内径・締付け本体部の幅・内径偏差で決められている[1]。
| 項目(JIS S 2190) | 9.5 用 | 13 用 | 工業用で発注側が決めること(提案) |
|---|---|---|---|
| 引抜き荷重増加率 | 20 % 以上 | 20 % 以上 | 抜けを確かめる試験をするか、するなら条件 |
| 永久変形 | 3 % 以下 | 4 % 以下 | 再使用するか(しない前提なら交換と明記) |
| 最大時内径(mm) | 17.5 以上 | 22.5 以上 | 締付範囲の上限と下限 |
| 締付け本体部の幅(mm) | 6 以上 15 以下 | 7 以上 15 以下 | バンド幅(口金の長さに収まるか) |
| 耐食性 | 機能を損なうような赤さびの発生がないこと(塩水噴霧試験) | 材質、使う環境、試験を求めるか | |
出典: JIS S 2190 の表 1・表 2[1]。左の 2 列はガス用ゴム管バンドの規定値で、工業用のホースバンドに当てはまる値ではない。
表の右の列は当方の提案である。規格の数値をそのまま工業用に持ち込むのではなく、「どの項目を決めたか」を発注書で一つずつ埋めていく使い方をする。
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サイズは「締付範囲」と、ホースの実測外径で決める
ホースバンドは、ホースの内径ではなく外径に掛かる部品である。同じ内径のホースでも、肉厚や補強層の有無で外径は変わる。仕入先の形式番号には「締付範囲 ○〜○ mm」が付いているので、ホースの外径がその範囲の中ほどに入る形式を選ぶ。範囲の端で使うと、締め込みの余裕が無かったり、締め切っても締付力が足りなかったりする(これは当方の提案)。
選び方を誤った例は、国土交通省に届けられた自動車のリコールにある。ある車両では、燃料ホースの端部に内径の大きいクランプを誤って取り付けたため、使い続けるとクランプの圧着力が低下し、最悪の場合ホース端部から燃料が漏れるおそれがあるとして、クランプを正規品に、燃料ホースを新品に交換している[3]。この例では、正規品と誤品はクランプ横の刻印の数字で識別されていた[3]。別の届出では、燃料ホースの材質が不適切で強度が不足していたことに加えて、ホース外径に対して不適切なホースクランプが取り付けられているものがあり、ホース接続部が損傷して燃料が漏れ、最悪の場合は車両火災に至るおそれがあるとされた[4]。
見た目が似たバンドは取り違えやすい。部品表にはサイズが読み取れる形式番号を書き、組立の現場で区別できるよう、刻印か包装の表示で識別できることを仕入先に確かめておく。
ホースの外径をどう測るか
ゴム及びプラスチックホースの寸法の測り方は JIS K 6330-1 が定めている。ホースの外径は、製品または製品からの切断品(長さ 150 mm 以上)で測り、A 法・B 法・C 法では末端から 25 mm 以上離れた位置で測る[2]。外面が筋入りや蛇腹のホースは最大外径(山部)を測る[2]。A 法ではノギスか外側マイクロメータを使い、ほぼ直角の 2 方向について、ホースを変形させないように測る。精度が要るときは、ホース内径に等しい外径のマンドレルを入れて変形を防ぐ[2]。
購買の立場で押さえたいのは、ホースの外径にも許容差があることと、ホースを口金に差し込むと外径が広がることである。締付範囲を決めるときは、カタログの呼び寸法ではなく、実際に使うホースを口金に差し込んだ状態の外径を設計部門に確かめる。ホースと口金とバンドを別々の仕入先から買うなら、この 3 つの寸法を同じ図面か仕様書でそろえる。
形式と材質を決める
ホースバンドには、ねじで締めるもの、ばねの力で締めるもの、かしめて留めるものなど、いくつもの形式がある。JIS S 2190 でも、ばね式とねじ式を別の種類として扱い、ねじ式については、ナットの有効ねじ山数が 3 つ以上あること、つまみ部が 1.47 N・m のトルクに耐えることを構造として定めている[1]。形式によって、締める工具、締付けの管理方法、外したあとに再使用できるかが変わる。
形式の違いが問題になった例もリコールにある。エンジンオイルクーラーホースで、ホースの抜け圧力が低いものがあり、そのまま使うと接続部からホースが抜けて、漏れたオイルが排気管にかかり火災に至るおそれがあるとして、ホースとホースクランプを対策品に替え、板ばねクランプに加えてねじ式のクランプを追加した届出である[5]。この届出は原因が判明していないための暫定対策とされている[5]。形式の選択だけで抜けを防げると読むのではなく、形式を変える提案が仕入先から来たら、抜けに対する確認を設計部門と一緒に行う。
材質と防食
JIS S 2190 は、締付け本体部の材料として、冷間圧延鋼板(JIS G 3141)や硬鋼線・ピアノ線に防せい処理を施したもの、ステンレス鋼の板・線・ばね用鋼帯などを挙げ、これらと同等以上の品質をもつ金属でもよいとしている[1]。耐食性は塩水噴霧試験(JIS Z 2371)で、機能を損なうような赤さびが出ないことを求めている[1]。
工業用でも、バンドの本体・ねじ・ハウジングの材質がすべて同じとは限らない。屋外や洗浄水がかかる装置では、本体だけステンレスでねじが鋼にめっき、という組合せだとねじから錆びる。「ステンレス製」と書くときは、どの部品がステンレスかまで仕入先に確かめる(提案)。耐食試験を受入の条件にするなら、塩水噴霧試験を仕様に入れるとき決めることで書いたとおり、試験の種類・時間・判定を数字で決める。
ホースバンドを使ってはいけない所
高い圧力がかかる油圧の配管は、ホースバンドで留める前提になっていない。JIS B 8360 は、鋼線または繊維で補強した液圧用ゴムホースと継手金具によって構成する液圧用ゴムホースアセンブリを規定し、最高使用圧力 3.5 MPa〜42 MPa の範囲で用いるものに適用できるとしている[6]。油圧のホースは、ホースと継手金具が組み立てられたアセンブリで発注する。指定の仕方は油圧ホース(JIS B 8360)の発注で扱った。
圧縮空気の配管も、外れたときに危険がある。厚生労働省の職場のあんぜんサイトには、工場を巡回中に粉砕機から樹脂製の高圧空気ホースがいきなり外れ、作業者の顔に当たりそうになったというヒヤリ・ハット事例が載っている[7]。この事例は外れた原因を書いていないが、ホースの接続部が外れると、ホースそのものが人に当たる。空気圧の配管に使う継手の選び方はワンタッチ継手とエアチューブの選び方で扱っている。どの圧力までバンドで留めてよいかは、ホース・口金・バンドの製造業者の仕様と、使う設備の設計で決まる。購買が決める数字ではない。
ガス用のゴム管とガス器具の接続に使うバンドは、JIS S 2190 の範囲である[1]。工業用の汎用バンドで代用するのではなく、ガス器具の仕様に合ったものを使う。
取付けの位置と向きも決めておく
ホースバンドは、締めたあとのねじ部や締付け部が外に飛び出す。農耕トラクタのリコールでは、近接するホースクランプの組付指示が不適切だったためにブレーキホースと干渉するものがあり、走行やエンジンの振動でホースが損傷し、ブレーキオイルが漏れて制動力が低下するおそれがあるとして、クランプの組付けの向きを直し、ブレーキホースとの距離を保つ部品を追加している[8]。
組立を外部に出すときは、バンドの位置(口金の端からの距離)、締付け部の向き、締付けの方法(工具と締付け量の管理)を作業指示か組立図に書く。これは規格の要求ではなく、発注側の提案である。締め過ぎでホースを傷めないことも合わせて確かめる。管を締め付ける金具の締め過ぎについてはU ボルトの発注でも触れた。
発注書に書くことと、受入で確かめること
1. 形式番号と製造業者
カタログの形式番号で指定するなら、製造業者名と形式番号を両方書く。同等品を認めるかどうかも書く。
2. 締付範囲と、対象のホースの外径
形式番号に加えて締付範囲の数字を書き、使うホース(品名・外径)を添える。仕入先がサイズ違いに気づける材料を渡す(提案)。
3. 材質
本体・ねじ・ハウジングの材質。めっきの種類。
4. 識別
サイズや形式を、刻印・包装の表示で見分けられるか。
5. 使い方の条件
流体、温度、圧力の範囲。再使用するかしないか。
受入では、形式番号と包装の表示、刻印、数量を照合し、抜取りで締付範囲の最小・最大を確かめる。材質の証明を求めるなら、どの部品の材質を証明させるかを発注時に決めておく。
注文書の書き方の例を示す。「ホースバンド:(製造業者名)形式○○、締付範囲 22〜34 mm(ねじ式)。対象ホース:耐油ゴムホース 内径 19 mm(口金挿入時の外径 約 28 mm、図面番号○○)。本体・ねじともステンレス鋼。サイズの刻印または包装表示があること。同等品への変更は事前承認。」
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よくある質問
「JIS 品のホースバンド」と指定してよいですか
工業用のホースバンドに JIS の製品規格は無いので、その指定では物が決まらない。JIS S 2190 はガス用ゴム管のバンドの規格である[1]。製造業者の形式番号か、締付範囲・幅・材質を数字で書く。
バンドを二重に付ければ抜けにくくなりますか
リコールの中には、ねじ式のクランプを追加した対策がある[5]。ただしその届出も暫定対策とされており、何が効いたのかは書かれていない[5]。二重にするかどうかは、口金の長さとホースの種類を含めて設計部門が決める。購買の判断で付け足さない。
保全用に、外したバンドを再使用してよいですか
形式によって再使用を前提にしているものと、していないものがある。JIS S 2190 でも、ばね式とねじ式で耐久性の確かめ方が違う[1]。製造業者の取扱説明で確かめ、保全の手順書に「交換」か「再使用可」かを書いておく。
まとめ
工業用のホースバンドには JIS の製品規格が無く、JIS S 2190 はガス用ゴム管のバンドに限られる[1]。形式番号と締付範囲で指定し、実際のホースの外径を JIS K 6330-1 の測り方でそろえる[2]。サイズや形式の取り違えはリコールにもなっている[3][4][5]。高圧の油圧はホースアセンブリで発注し[6]、空気圧も外れたときの危険を前提に継手を選ぶ[7]。取付けの位置と向きまで指示しておく[8]。
同じ束では、O リング JIS B 2401 の呼び番号と溝の指定、ゴムシート・ゴム板の発注、突合せ溶接式管継手の指定、アルミ合金鋳物 AC4C・AC7A の発注も書いた。
出典・参考資料
- JIS S 2190:1993 ガス用ゴム管バンド(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1993 年 7 月 1 日改正・2026 年 10 月 20 日確認)
- JIS K 6330-1:2003 ゴム及びプラスチックホース試験方法-第 1 部:ホース及びホースアセンブリの寸法測定(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2003 年 12 月 20 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
- リコール届出 改善箇所説明図(燃料ホースのクランプの誤組付け)(国土交通省 自動車のリコール・不具合情報)
- リコール届出 改善箇所説明図(低圧側燃料ホースとホースクランプ)(国土交通省)
- リコール届出 改善箇所説明図(エンジンオイルクーラーホースの抜け)(国土交通省)
- JIS B 8360:2015 液圧用の鋼線又は繊維補強ゴムホースアセンブリ(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
- ヒヤリ・ハット事例「粉砕機から外れた高圧空気ホースが危うく顔に当たりそうになった」(厚生労働省 職場のあんぜんサイト)
- リコール届出 改善箇所説明図(農耕トラクタのホースクランプとブレーキホースの干渉)(国土交通省)
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