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投稿日:2025年5月24日

車載用48V電源搭載におけるシステム開発と最新技術および動向

はじめに:車載用48V電源システムの重要性

自動車業界は現在、100年に一度の大変革期を迎えています。

自動運転、電動化、コネクテッド(つながる車)、CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)の進展が業界全体を塗り替えつつあります。

その中で、従来の12V電源に代わり48V電源システムが注目を集めています。

従来の12Vシステムでは対応しきれない高出力機器や多様な電子部品が車内に導入され、効率的かつ安全な電力供給のために48V化が進められています。

本記事では、20年以上の実務経験で得た現場目線をベースに、車載用48V電源搭載におけるシステム開発の実際、最新テクノロジー、業界動向を徹底的に解説します。

あわせて、バイヤーやサプライヤーの方が現場で真に求めていること、日々の課題解決に活かせる知見をご紹介します。

48V電源システム誕生の背景とその技術的意義

なぜ48Vが選ばれたのか?

従来の12Vバッテリーを中心とした車載電源は、20世紀に基本設計が固められました。

しかし近年、下記の課題が顕在化しました。

– 電動パワートレインやアイドリングストップなどへの対応に必要な出力の増大
– LEDヘッドライトや高度なADAS(先進運転支援)搭載による機器の多様化
– 電線の太さ・重量増加による燃費悪化や設計スペースのひっ迫

このため、12Vシステムでは配線の大電流化に対応できず、より高電圧かつ安全性も担保できる48Vへと移行が進みました。

48V電源は電流を約1/4で伝送できるため、細い配線で同じ仕事量がまかなえます。

これにより、重量削減・コスト低減・省スペース化・信頼性向上など多くのメリットが生まれます。

欧州を皮切りに世界へ広がる48Vシステム

特に欧州自動車メーカーが低燃費化とCO2規制強化への切り札として48Vを積極的に採用してきた歴史があります。

今や日米アジアの自動車OEMも48V化への流れを追随しており、世界中のTier1・Tier2部品メーカーも次世代対応に追われています。

日本国内でもトヨタ、日産、ホンダ、マツダなど主要完成車メーカーが相次ぎ48V電源搭載車を市場投入しています。

車載用48Vシステムの構成と技術的ポイント

基本的なシステム構成

現行の48Vシステムは、従来の12Vシステムと並立させる「デュアルボルテージ構成」が主流です。

主な構成要素としては、
– 48Vリチウムイオンバッテリー
– DC/DCコンバーター(48V→12V変換)
– 48Vモーター/ジェネレーター(Mild Hybrid:マイルドハイブリッド)
– インバーター、コンデンサー
– 48V専用エレクトロニクス搭載デバイス(ターボ、空調、オイルポンプ等)

48Vバッテリーはエンジン始動やエネルギー回生モーター、電装品への高効率電源として活躍し、DC/DCコンバーターで通常の12V電装品へ安定供給されます。

各サブシステムの開発ポイント

1. 電源供給の高信頼化
エンジンルーム内での使用のため温度・振動・水分・化学的ノイズ耐性が必須。
特にバッテリーやDC/DCコンバーターはAEC-Q規格に準拠した高信頼部品の選定が命です。

2. サプレッション(抑制)技術
高電圧化によるサージやノイズ、リーク電流の管理はより重要です。

設計初期段階からEMC(電磁両立性)規格、グランド設計、リアルタイム監視の取り込みが不可欠になります。

3. 安全規格・法規制対応
48Vは感電リスクも増加します。

ISO26262(機能安全)や各国独自の車載安全規格も強く意識しなければなりません。

現場目線では、テスト工程の自動化・省人化も重要な課題となっています。

システム開発現場での課題と現場の知恵

バイヤーとサプライヤー、それぞれの視点

部品調達の現場では、「コスト」と「リスク管理」のせめぎ合いが繰り返されています。

バイヤー(調達部門)は、高品質・低コスト・短納期という三大要素を満たすことを最優先します。

一方、サプライヤーは48V対応となることで従来12V品よりも高い規格・信頼性を満たすため、新規設備投資や先端技術導入の負担が増えます。

現場目線で強く必要とされているのは
– 電源系部品の歩留まり向上
– ライン自動化による人的ミスの排除
– トレーサビリティ(部品履歴管理)の徹底
– 早期故障解析・フィードバックループの高速化

これらを実現するため、IT(IoT・AI・データ解析)の活用が現場でも加速しています。

今後は“調達部門×生産現場×IT部門”の垣根を越えた横断プロジェクトが成否の鍵を握ります。

昭和的アナログ現場の課題と変革

日本の製造業現場には「現場主義」「カイゼン文化」という強みが根付いている一方、アナログ的な慣習もまだ多く残っています。

例えば
– 紙図面/手書き伝票による管理
– 口頭やFAX(いまだ現役!)でのやり取り
– 先輩・ベテランの経験値頼み

これがライン切り替えの遅れや仕様伝達の“ズレ”につながるケースも散見されます。

48V化の流れは、こうしたアナログ業務を大きく見直す絶好の契機でもあります。

実際、デジタルツイン(仮想工場)、自動検査機器、バーコード管理、Web会議、オンラインQCサークルなど、普段のカイゼン活動にもデジタルが着実に入り込み始めています。

最新技術・業界動向:48Vで進むスマートファクトリー革命

IoT/AI活用による“つながる工場”への進化

48V搭載車の増産開始に伴い、「生産現場のスマート化」はいよいよ実践段階に入りました。

設備の稼働状況、品質データ、ラインモニタリング、エネルギー管理をIoTで可視化・分析し、不良の予兆やロス削減を“見える化”します。

例えば
– 48Vバッテリーの充放電サイクルデータを自動集計し、異常をAIで即座にアラート
– 生産設備のサイクルタイム変動から、作業負荷のバランス調整・省エネ化
– トレーサビリティをクラウド管理し、リコール発生時に即座に原因特定・追跡

こういった仕組みがすでに現場レベルまで普及し始めており、伝統的な日本の製造現場も大きな転換期を迎えています。

グローバルトレンドとサプライチェーン再編

近年の半導体不足、物流の乱れによるサプライチェーン(供給網)の危機管理も、48V化推進のなかで最重要テーマとなっています。

– “地産地消”部品調達
– 複数購買ルートの確保
– サプライヤー各社のIT連携強化

特に部品レベルでの仕様互換性(グローバル共通設計)や、サプライヤーの選別(サプライヤーマネジメント)は今まで以上に厳格化しています。

現場サイドでは、不足部品をどうリカバリーするか、有事の際の調達フローをどこまで柔軟にできるかが生死を分ける時代になりました。

今後を見据えたバイヤー・調達担当者へのヒント

48V化の流れに乗るには、「現場のリアルな課題」と「経営判断」「技術トレンド」を三位一体で捉えることが不可欠です。

そのために特に意識すべきポイントをご紹介します。

1. 現場・サプライヤーとの“生の対話”
コストやスペックだけでなく、モノづくりの現場で何が起きているのか。
検査・ライン構築・設備保全・教育――そういった部分にまで現場担当者自らが足を運び、実情をつぶさに観察することが変革の第一歩です。

2. リスク分散、パートナー選定力
昭和時代の“一見様お断り”や“長年の付き合い”という属人的取引から、技術力・納期・コスト・信頼性を総合評価するパートナー選定へ進化が問われています。

48V化を軸にした新規サプライヤーとの関係構築、海外調達・ローカル部品仕入れも含めたリスク分散が重要です。

3. 調達から現場へリアルな提案を
「この部品がなぜ値上がりしたのか」「なぜ品質基準が変わったのか」を現場目線で噛み砕き、現場側にも理解・納得してもらう“説明力”が調達力の差に直結します。

現場との共創・共育こそ、これからの強い工場づくりの礎です。

まとめ:新時代の48V搭載開発に挑む人すべてへ

車載用48V電源システムは、単なる電圧アップの話に留まらず、製造現場・調達購買・サプライヤー・IT・品質管理…全ての領域を巻き込んだ大変革です。

従来の常識や慣習に捉われず、現場発の工夫や「つながる仕組み」へのチャレンジが企業の未来を形作ります。

今や、48V電源車載システムは自動車・製造業の競争力を左右するコア技術となりました。

これからのバイヤーやサプライヤーは、単に安く仕入れるだけでなく、「課題発見力」「チームで現場を動かす力」「新技術の現場実装力」を強く持つことが求められています。

自動車業界の次の100年は、まさにこうした現場“発”のイノベーションから生まれていくのです。

私自身も、これからの現場で仕事をする皆さんとともに成長し続けたいと心より願っています。

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