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作業員を駒扱いする上司の態度がハラスメントと認識される時代

目次
はじめに:昭和の労働観はもはや通用しない
かつての製造業現場では、職人気質や厳しい上下関係、いわゆる「モノ言わぬ作業員文化」が色濃く残っていました。
その影響か、上司が現場作業員を「歯車」や「部品」のように扱うことも珍しくありませんでした。
「お前らは言われた通りにやればいい」「考えるな、手を動かせ」といった指示も日常茶飯事。
昭和・平成初期の工場現場では、効率やスピードを優先し、「人の感情」や「個々の成長」は二の次にされがちでした。
しかし時代は大きく変わりました。
令和の現代、社会全体で働き方や多様性、ハラスメント対策への意識が高まる中、製造業といえども旧態依然としたマネジメントでは通用しません。
作業員を「駒」として扱うような上司の態度やマネジメント手法は、時にハラスメントと見なされる時代になっています。
本記事では、製造業現場のリアルな目線で「作業員の駒扱い」が現代においてなぜ大きなリスクとなるのか、バイヤーやサプライヤーの視点も交えながら解説します。
長年業界に身を置いた経験から、表面的な取り組みで終わらせない“本質的な職場改善”のヒントをお伝えします。
駒扱いがもたらす組織への悪影響とは
作業員のモチベーション低下
作業員を「指示されたことだけをこなす単なる労働力」とみなすと、必然的にモチベーションが低下します。
人は尊重され、自己成長の機会が与えられることで初めて自発的に力を発揮します。
逆に言われた仕事を“こなすだけ”に終始させられると、やる気も創意工夫も生まれなくなります。
結果として、現場の改善提案が出なくなり、不良率や事故発生率の上昇、離職率の増加という形で組織の競争力を奪います。
筆者も現場で、「上司の顔色だけをうかがい、臨機応変な判断ができなくなる新入社員」「現場の問題点を指摘しなくなるベテラン作業員」を何度も目の当たりにしてきました。
ハラスメントの観点からのリスク増大
現在、パワーハラスメント防止法の施行もあり、上司の言動や態度が「ハラスメント」に該当するかどうかが非常に重要視されています。
作業員を感情無き“部品”や“歯車”と見立て「自分の思い通りに動かせば良い」という態度は、それ自体がパワハラと認定されるリスクを孕んでいます。
指示待ちや命令口調は業務上の必要最小限に留め、作業員一人ひとりを“人”として尊重する姿勢が問われます。
厚生労働省のガイドラインにも「人格や尊厳を傷つける行為はパワハラ」とされています。
取引先(バイヤー・サプライヤー)からの評価にも影響
近年では、サプライチェーン全体を視野に入れたCSR(企業の社会的責任)経営が加速しています。
バイヤー(購買側)は、取引先であるメーカーやサプライヤーの労働環境、ハラスメント体制を重視する傾向を強めています。
「作業員を駒扱い」するようなブラックな職場環境が露呈すれば、契約打ち切りや取引縮小を招く時代です。
また、外部監査やインタビュー時には、作業員が忖度せず本音を話せる雰囲気づくりや、上司による圧力がかかっていないことも確認の対象です。
なぜ製造業界だけアナログ対応が長く続いたのか
大量生産・単純作業モデルの弊害
製造業、とりわけ自動車や家電分野は、長らく「多数の作業員が同じ作業を時間内に繰り返す」大量生産モデルで発展してきました。
QCサークル活動やトヨタ生産方式(TPS)など現場改善は進んだものの、個人の自律性や創造性より、標準作業とラインバランス重視の流れが長かったのです。
そのため、「作業員は手を早く動かせれば良い」「言われたことを間違いなくやれば良い」といった考え方が現場にしみつき、人を一律化・均質化して管理しやすくする文化が根強く残りました。
IT化・自動化の遅れと現場依存
一方で、バッチ生産や多品種少量生産への移行、IoTや自動化技術の導入が進む中、現場作業員に求められるスキルや役割も高度化・多様化しています。
昭和型アナログ管理のままでは、現場が複雑化するばかりです。
にもかかわらず、「昔ながらの管理が一番効率的」という思い込みから変革に腰が重い、ITリテラシー不足、管理職の成熟不足といった壁が、アナログ文化の根強い温床となってきました。
現場の現実と上層部のギャップ
現場の苦労や声が経営陣に届かないまま、「今まで通りで上手く回っている」「余計なことを言うと逆に現場の負担が増える」という誤解が温存されます。
これが、ハラスメントや駒扱い文化の温床となる大きな要因です。
今、現場管理者に求められる新しいマネジメントとは
作業員一人ひとりの“人間力”を引き出す
今後の工場現場におけるマネジメントは、作業員を「部品」ではなく「チームメンバー」として見なし、対話と信頼で巻き込む力が求められます。
個々の強みや興味・課題意識を把握し、「今何に困っているか」「こうすればもっと効率が良くなるのでは」という現場の工夫を引き出せる職場づくりが大切です。
全てを上司が意思決定するのではなく、自主性と納得感を高めるために、小さな課題解決でも意見をヒアリングし、その声に耳を傾け、具体的なフィードバック・謝意を伝える運営が不可欠です。
エンゲージメント向上と人材の定着
駒扱いされた現場では、「ただ居るだけの作業員」が増えてしまいます。
これは技能伝承や多能工化を阻害し、結果として生産性向上やコストダウンの足を引っ張ります。
逆に、作業員が業務や組織に目的意識や帰属感を持ち、仕事そのものにやりがいを感じられるような環境が整えば、意欲的なアイディアや生産改善提案が次々と生まれる好循環が生まれます。
今やエンゲージメント(熱意・貢献意欲)の高い職場だけが成長を遂げる時代です。
働き方改革とダイバーシティ推進
ハラスメント対策だけでなく、女性・高齢者・外国人など多様な人材が活躍できる環境整備も急務です。
固定観念を脱却し、「どうせ現場は何も変わらない」という諦めではなく、一人ひとりが「自分たちの現場は自分たちで良くできる」という自律・協働の文化を育むことが重要です。
バイヤー・サプライヤー双方に必要な視点
購買担当者(バイヤー)が確認したい現場マネジメントのレベル
バイヤーにとってサプライヤー選定時に重要なのは、納期・価格・品質だけではなく「どのような現場運営をしているか」という視点です。
つまり、「作業員が駒扱いされておらず、現場の声が経営や改善活動に活かされているか」「ハラスメントの未然防止策やダイバーシティへの取り組みがあるか」が“サプライヤーとしての資格”に直結しています。
また、働きやすい職場づくりに積極的な企業は、品質トラブルなど有事の際にも現場が一丸となって改善やリカバリーに取り組みやすいため、バイヤーからも信頼されやすい傾向があります。
サプライヤー(供給側)が意識すべきポイント
サプライヤーは、自社だけの都合で動くのではなく、相手方バイヤーが「何を大事にし、何をリスクと考えているか」を深く理解する必要があります。
顧客サイドでESG重視や従業員満足度調査、外部監査が強まっている場合は、表面的な対応でなく、本質的な現場改善・人づくりに取り組んでいるかを自問しなければなりません。
「うちのやり方は昔からこうだから」という言い訳に逃げるのではなく、「御社の期待に持続可能な形で応えたい」「現場の意識やスキルも最新の水準に高めたい」という姿勢を見せることが最重要です。
現場、管理者一人ひとりが切り拓く未来の製造業
令和の時代、最高の設備、最新のITツールだけでは競争優位にはなりません。
使うのは“人”、変えるのも“人”、支えるのも“人”であることを、もう一度現場に根付かせる必要があります。
作業員を単なる駒として扱うのは、マネジメントの「時代遅れ」「リスク認識不足」を世間に露呈する行為です。
それはもう、現場の仕事を通じて感じ取れる「空気」でバイヤーにもサプライヤーにも伝わります。
真に強い現場とは、誰もが意見を言いやすく、ハラスメントや型にはまった価値観に縛られない、柔軟で前向きな“挑戦と成長”の土壌がある現場だと私は思います。
まとめ:価値観をアップデートし、未来の工場を共につくろう
作業員を駒扱いする上司の態度が、ハラスメントや組織リスクと認識される今。
買い手も売り手も、「働く人を人として扱うこと」こそが最大の競争力となる時代です。
まずは現場リーダーや管理者自身が、「今まで通り」が通じないと気づき、一歩踏み出す勇気を持つこと。
そこから現場は変わります。
昭和の成功体験に甘んじることなく、新しい風を現場に吹かせましょう。
今ここで、あなたの一歩が業界の未来を切り拓くのです。
ぜひ、一緒に製造業の地平線をアップデートしましょう。
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