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投稿日:2025年6月9日

距離画像センシング(TOF/ステレオカメラ)の基礎と活用事例

距離画像センシング(TOF/ステレオカメラ)とは何か

距離画像センシング(Depth Image Sensing)は、空間内の物体までの距離情報を画像として取得する技術です。

近年では、製造現場の自動化や高度な品質管理、ロボティクスへの応用など、その活用領域が急拡大しています。

とりわけ「TOF(Time of Flight:飛行時間方式)」や「ステレオカメラ方式」は、古くから存在する技術でありながらも、画像処理・AI・IoTの進化とともに再び脚光を浴びています。

ここでは、これら2つの方式の基礎原理と、製造業現場に根付く具体的な活用事例、導入時のポイント・業界トレンドを、工場現場でのリアルな経験も交えて分かりやすく解説します。

TOFセンサーの原理と特長

TOFセンサーは、光やレーザーを発射し、対象物から反射して戻ってくるまでの「飛行時間」を計測することで距離を算出します。

飛行時間をナノ秒単位で精密に計測するため、短時間で広範囲の3D情報が取得できます。

以下がTOF方式の主な特長です。

計測精度と応答速度

TOFは秒速数万回のパルス光を飛ばして一瞬で空間全体の深度マップを作成することができます。

したがって、人の手では到底できない高速・高精度な三次元検査が可能です。

シンプルな設計と組込み容易性

カメラ本体に発光素子と受光素子を一体化できるため、筐体設計もシンプル。

工場ラインに後付けする際にも、設置・調整工数を削減できます。

環境変化への強さと課題

赤外線を用いるため、明るさが足りない工場内や夜間でも安定して計測可能です。

一方、強い外光やガラスを通した反射など環境要因によるノイズには注意が必要です。

ステレオカメラの原理と特長

ステレオカメラ方式は、人間の両目の仕組みと同じように、左右2つのカメラから得た画像の「視差」をもとに、対象物までの距離を計算します。

実装のしやすさや、高精細な画像情報の活用力が魅力です。

用途によるカスタマイズ性

ステレオカメラは撮影条件や設置位置、カメラ間距離を柔軟に変えられるため、用途に合わせた最適な構成を組めます。

精細度や視野角の調節も容易です。

カラー画像・解像度の高さ

ステレオ方式ではカラー情報やテクスチャも同時に取得できるため、部品の外観検査・微細な傷の検知など、複合的な画像処理による検証に最適です。

照明条件への依存

一方で、暗所や極端な明暗コントラスト下では計測精度が低下しやすいという弱点があります。

製造ラインでは専用照明の工夫や画像補正アルゴリズムが不可欠です。

製造業の現場における活用事例

私が長年携わった現場でも、距離画像センシングは着実に実績を積み重ねてきました。

以下に実践的な活用例を紹介します。

ピッキング・仕分けロボットの導入

人手作業が当たり前だった部品供給・仕分工程では、TOFカメラを搭載したハンド型ロボットの採用が進んでいます。

バラ積み部品からピックアップする際、それぞれの部品までの高さや位置を瞬時に把握。

人間並みの柔軟さでワークを持ち上げ、仕分けられるようになりました。

これにより、属人的で非効率だった作業が、正確かつ24時間連続稼働できる工程に生まれ変わりました。

完成品の外観・寸法自動検査

従来は人の目視やアナログゲージで検査してきた自動車部品の外観判定でも、ステレオカメラによる「全数自動計測」を実現。

表面の微小な凹凸やキズ、ねじれ、寸法誤差を、高分解能で3Dデータ化し、全数記録・トレーサビリティ維持まで一気通貫に管理できるようになりました。

これにより、見逃しやムラがちな人手作業から完全脱却。

品質不良の早期発見・再発防止にもつながりました。

ロジスティクス倉庫の物流最適化

自動倉庫ではステレオカメラ付き搬送ロボットが、荷物の大きさ・配置高さをリアルタイム取得し、最短ルートで棚入れ・棚出しします。

これにより、従来なら空間がムダになっていた無駄スペースを最小化。

在庫管理・出荷作業の効率化に結び付いています。

昭和的なアナログ管理からの脱却と課題

日本の製造業界では、今でも根強く残る「職人技」「経験知」への依存、そして紙ベースの帳票・手書きの記録文化があるのも事実です。

距離画像センシング導入にも「デジタル化は難しい」「今のやり方で十分」と抵抗感は根強く、経営層へ投資効果を伝えるのも一苦労という現場が多いのが現実です。

しかし、時代は急速に変わりつつあります。

グローバル調達競争や労働人口減少、品質基準の厳格化など新たな外圧が、デジタル化・自動化への本格転換を迫っています。

昭和のアナログ管理から脱却したいバイヤーや生産管理担当者にとって、TOFやステレオカメラはその突破口と言えます。

バイヤー・サプライヤー視点で考える投資効果

バイヤー(調達担当者)の立場で最大の悩みは、「導入にどれだけコストをかけて、どの程度の投資対効果が上がるのか」でしょう。

具体的なポイントを挙げてみます。

生産性向上と人件費削減

距離画像センサーによる自動化で、24時間安定稼働+品質安定が実現します。

目視検査を1ラインだけでも機械化すれば、年間数百万円単位の人件費削減は珍しくありません。

さらに、検査記録や工程データのデジタル保存で、トレーサビリティの管理工数が半減します。

不良流出の防止とクレームコスト低減

全数検査や自動判定によって、顧客への不良品流出を激減。

保証対応やリコールコストの削減、取引先からの信頼上昇も期待できます。

サプライヤーにとっても「品質保証」「納期厳守」で交渉力強化につながり、Win-Winの関係を築くことが可能です。

属人的ノウハウからの脱却、デジタル継承

技能伝承や人材育成の観点でも、デジタル技術を活用した自動化システムは強力な武器です。

これまでベテランしか判別できなかった微細な不具合も、センサーによるデータ記録とAI判定で誰でも再現・解析が可能です。

導入時の注意事項・成功のポイント

距離画像センシング導入で失敗しないために、現場経験から重視すべきポイントを整理します。

実データを用いた現場トライアル

カタログスペックだけで判断せず、現場ラインの実データ(対象物の反射率、形状、光環境など)で検証しましょう。

社内外のエンジニアやサプライヤーと密に連携し、POC(概念実証)を繰り返すことが重要です。

既存設備との連携と後工程設計

センサー単体では成果は限定的です。

例えば、検査結果をPLCやMESと連携しリアルタイムフィードバック、異常時に自動停止やリカバリをかけられるシステム設計が不可欠です。

現場教育と運用ルールの構築

新しい機器・システムの導入時には、現場作業者・管理者それぞれへの教育と実践トレーニングがキーとなります。

「なぜ導入するのか」「どんな成果を目指すのか」をしっかり共通認識化することで、現場の抵抗感や運用ミスの回避につながります。

時代が求める「距離画像センシング」の未来

今後、距離画像センシングはAIや5G通信、クラウド活用と組み合わさり、工場DX(デジタルトランスフォーメーション)の主役になっていくでしょう。

たとえば、AIによる自動学習によって、ライン停止なし(フルオート)で工程改善が進む。

遠隔地の専門家がクラウド経由で現場データを分析・指導できる、など、従来の常識を覆す世界がすぐそこにきています。

バイヤーとしては「いかに仕組みで品質と効率を担保するか」、サプライヤーとしては「自社の技術提案力をいかに高めるか」が最重要課題です。

距離画像センシングは、「新しい工場の当たり前」を創る技術の一つだと言い切れます。

まとめ:現場×デジタルの融合が生むイノベーション

昭和の職人魂、安全・高品質という伝統を守りつつ、距離画像センシングという新しい技術で次の時代に飛躍する。

「現場主義の目線」と「デジタル技術」の融合は、きっと製造業の未来に大きなイノベーションをもたらします。

導入検討の際は、現場で培った知恵や経験を最大限に活かしつつ、臆せず新技術にチャレンジしてください。

距離画像センシングは、その一歩を共に踏み出す最良のパートナーになります。

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