月間83,046名の
製造業ご担当者様が閲覧しています*

*2025年5月31日現在のGoogle Analyticsのデータより

投稿日:2025年5月17日

GPSGNSSの基礎と高精度化最新技術

GPS・GNSSの基礎知識:いまさら聞けないその仕組み

GPSとGNSSの違いとは?

GPS(Global Positioning System)は、アメリカ国防総省が開発した全地球測位システムです。
一方、GNSS(Global Navigation Satellite System)は、GPSを含む全ての全球測位衛星システムの総称です。
具体的には、ロシアのGLONASS、欧州のGalileo、中国のBeiDouなどがGNSSに含まれます。
現在、位置情報の高度化・安定化のため、これら複数の衛星システムを組み合わせて利用する「マルチGNSS」が広く普及しています。

衛星測位の基本的な仕組み

GPSをはじめとするGNSSは、地球を周回する複数の衛星から発信される時刻付き電波信号を、地上の受信機で受信します。
受信機は複数の衛星からの信号到達までにかかった時間差をもとに、自分の位置(緯度・経度・高度)を三次元的に割り出します。
最低4機以上の衛星信号を受信することで、位置・高度・時刻を高精度に算出できるようになります。

従来のGPS精度と限界

一般利用における精度

商用・一般用のGPSは、水平精度がおおむね「数メートル」程度です。
これは自動車ナビやスマートフォンでの検索には十分ですが、工場オートメーションや精密農業、ドローンの自律飛行、自動運転車両など、「センチメートル級」の位置決め精度が要求される分野での利用には限界がありました。

精度を制限していた要因

GPS精度をさらに高めるには、以下の3つの要因がボトルネックとなっていました。

・大気(電離層や対流圏)の影響による誤差
・衛星と受信機の時刻誤差
・衛星の軌道予測モデルの誤差

これらの要因をいかに補正し、克服するかが「高精度化技術」のカギとなっています。

昭和的アナログ現場が抱える課題とGNSS高精度化の意味

未だ根強い“現場合理主義”と紙運用

多くの日本の製造業現場では、今なお紙帳票や人海戦術による現場管理、アナログ測量が強く根付いています。
これは「現場経験が一番」「デジタルは信用できない」といった価値観や、投資対効果への懐疑、中小企業を中心とするITリテラシーやマンパワー不足が背景にあります。

しかし、市場のグローバル化や人手不足、高度化する製品品質要求に対応するためには、IoTやAI、新技術導入による効率化・精度向上が不可欠です。
こうした過渡期において、GPS/GNSS高精度化は、現場にデジタルイノベーションを持ち込む“突破口”としての価値を持ちます。

高精度測位がもたらす現場DXの新たな可能性

高精度GNSS技術を活用すれば、掘削工事の自動制御や無人搬送車の位置管理、部品トレーサビリティに至るまで、これまで人手と勘頼みだった現場業務に“デジタル地図”を与えることができます。
例えば、測量作業はGNSSで自動化し「現場出力をそのままCADやERPに連携」「作業員の安全管理をリアルタイムで可視化」、バイヤーは正確な入出荷データと一元管理された履歴を元にサプライチェーン全体の可視化が可能になります。

高精度化を実現する最新技術

RTK(リアルタイム・キネマティック)測位

GNSSの高精度化技術として最も普及しているのが「RTK測位」です。
固定基地局(Reference Station)と移動局(Rover)を用意し、基地局がリアルタイムに測量誤差(位相情報)を補正信号として送信、移動局で位置補正を行います。
この方式により、誤差は従来の数メートルから3cm~1cmレベルまで向上します。
インフラ工事現場や精密農業、建設機械の自動化などで活用が進んでいます。

CORS(基準点網)ネットワークによる補正

日本全国には国交省や各民間事業者によって整備された「電子基準点網(CORS:Continuously Operating Reference Stations)」が張り巡らされています。
これらのステーションが観測・補正データを数秒ごとに発信することで、広域のどこでもスマートフォンや専用受信機で高精度測位が可能になっています。
インターネット経由で補正データを受信し活用できるため、現場ごとの専用基地局設置が不要となり、導入障壁が大幅に下がりました。

PPP(Precise Point Positioning:精密単独測位)

PPPは、従来のRTKが基地局との相対測位であったのに対し、外部から得られる「精密軌道情報」「クロックデータ」などの補正情報を活用し、世界中どこでも高精度測位が実現可能です。
長距離移動体や海洋・山間地、航空機・ドローン等の広域利用、既存インフラの少ないエリアでも数センチ~数十センチ精度の位置情報が得られるのが魅力です。

マルチGNSS受信とマルチバンド対応

近年の測位受信機は、GPS単体だけでなく複数の衛星(GNSS)を同時利用し、さらには複数周波数帯(L1/L2/L5等)に対応しています。
これにより、大気の影響や衛星配置による死角を減らし、瞬断を極小化、また誤差推定の高速化が可能になっています。
都市部や山間部でも、安定かつ高精度な位置情報を得られるようになりました。

業界導入事例と“バイヤー目線”でみる将来性

工場物流・建設現場での最新活用

日本の大手自動車メーカー、電子部品工場では、高精度GNSS受信機を組み込んだAGV(無人搬送車)の自律走行が本格普及しています。
現場レイアウトや資材棚の移動にあわせて仮想地図を再設計し、数センチ単位のピンポイント停車で荷役・搬送作業を省人化。
建設現場でも、重機の自動運転や掘削深度のリアルタイム表示が実現し、熟練技能者不足を補うデジタル技能伝承にもつながっています。

トレーサビリティとサプライチェーンのDX

バイヤーやサプライヤーを問わず、物品や部品・完成品の「いつ・どこで・誰が・どう動かしたか」を、デジタルで正確に記録・参照できることが求められています。
高精度GNSSを活用することで、従来の「紙の納品伝票」や「人手による伝達」から脱却し、自動で信頼性の高い履歴管理・入出荷タイミング管理が可能になります。
これは、不良品発生時の迅速なリコールや、グリーンサプライチェーン(輸送・保管効率化によるCO2削減)の取り組みでも非常に大きな効果を発揮します。

導入・投資判断のポイント:バイヤーとサプライヤーの本音

高精度測位技術は、現場の省力化・精度維持・安全強化だけでなく、サプライチェーン全体の可視化、調達先評価、納期短縮、トレーサビリティ拡充など、バイヤーの“要求水準”引上げにも直結します。
一方で、サプライヤー側も「精度を担保できる工場・現場」は大きな差別化ポイントになるでしょう。
ただし導入コストやシステム運用の負担、現場教育や運用定着など、いわゆる“昭和の現場”ならではのリスクや懸念点もあります。

導入時には、目的達成のためのKPIを明確にし、段階的導入・現場トライアルによる理解浸透、ベンダーとの密な連携が欠かせません。
ROI(投資対効果)の最大化を、部門横断(調達~生産~品質~物流一貫)で検討することが成功のカギとなります。

まとめ:高精度GNSSは“製造現場の地図”を塗り替える

GPS/GNSSの高精度測位は、昭和的な作業効率・勘と経験だけに頼る現場からの脱却、新しいデジタル技術との融合を進める起爆剤です。
バイヤーを目指す方は“精度データの有無”が交渉カードになる時代、サプライヤーも現場の見える化や省力化を武器に、次のステップへ踏み出す好機です。
いま求められるのは「技術に使われる」のではなく、現場の知恵と経験を活かしながら“技術を使いこなす”こと。
GPS・GNSSの進化を味方につけて、製造現場のDXとサプライチェーンの未来を切り拓きましょう。

資料ダウンロード

QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。

ユーザー登録

受発注業務の効率化だけでなく、システムを導入することで、コスト削減や製品・資材のステータス可視化のほか、属人化していた受発注情報の共有化による内部不正防止や統制にも役立ちます。

NEWJI DX

製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。

製造業ニュース解説

製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。

お問い合わせ

コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)

You cannot copy content of this page