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押出コーティング・ラミネーション技術の基礎と加工技術における問題点および不具合の解決策・事例

目次
押出コーティング・ラミネーション技術の基礎知識
押出コーティング・ラミネーションは、現代のものづくり現場において必要不可欠な技術です。
特に包装材、電機絶縁材料、建材、車載部材といった分野で幅広く活用されています。
この技術はフィルムやシート、布、不織布、紙などの基材(サブストレート)に、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂を溶融状態で押し出し、基材の表面にコーティングや貼り合わせを行うというものです。
押出コーティングは主に基材の片面への樹脂コーティングを指し、さらに複数の層を貼り合わせる工程をラミネーションと呼びます。
この2つの技術は密接に関連しており、製品のバリア性、耐熱性、防湿性、機械的強度の付与など、さまざまな性能を実現できるのが特長です。
押出コーティング・ラミネーションの加工プロセス概要
押出コーティング・ラミネーションは一見シンプルな技術に見えますが、実際の現場では高い精度や安定した品質が求められ、ノウハウの結集が必要です。
基本的な加工プロセスは以下の通りです。
1. 基材(サブストレート)の準備
コーティングや貼り合わせの対象となる基材をロール状で用意し、まずはクリーニング(ダスト除去)やプライマー処理、コロナ放電処理などの前処理を行います。
コロナ処理は、樹脂の密着性を高めるために基材表面の活性化を図る重要なステップです。
2. 押出機による樹脂の供給
ペレット状の熱可塑性樹脂(代表的なのはポリエチレンやポリプロピレン)を押出機(エクストルーダー)に投入し、加熱・溶融させます。
螺旋状スクリューで混練・溶融された樹脂は、ダイを通してシート状に押し出されます。
3. コーティング・ラミネーション工程
溶融状態の樹脂が、基材の上に均一にのるように流されます。
「リバースロールコーティング」「グラビアコーティング」「エアーナイフコーティング」など樹脂の塗布方法は多数ありますが、押出の場合はダイからシート状で滴下されます。
ラミネーションの場合は、2種類以上の基材の間に溶融樹脂が挟み込まれます。
4. 冷却・巻き取り
加圧・冷却され、樹脂が固化することで基材との強固な一体化が完成します。
その後、自動巻取機でロール状に仕上げます。
それぞれの工程には、温度・圧力・速度の最適制御や、異物混入の防止、平滑性維持、高速運転下での化学的・物理的トラブルの防止など、緻密な管理技術が求められます。
押出コーティング・ラミネーションで発生する典型的な問題点
押出コーティングやラミネーションの現場では、現場経験者だからこそ分かる“昭和の職人技”が重視されがちです。
一方で、そもそも業界の構造・商習慣としてアナログ思考が根深く、デジタルな可視化・自動化が遅れています。
技術的な課題として、主に以下のような問題点・不具合が発生しやすいです。
1. 剥離不良・密着不良
樹脂層が基材にうまく密着せず、製品が剥がれてしまう現象です。
原因としては、基材表面のコロナ処理不足、基材自体の汚染、樹脂温度不足、巻き取りテンション過多など、複数の要素が絡みます。
特に多品種少量生産の現場では、基材ロット違い・前処理違いによる微妙な差が大きな不良に繋がりやすいのが実情です。
2. ピンホール・異物混入
押出コーティングでは、微細な気泡(ピンホール)や埃、そのほか異物が樹脂層や基材の間に残り、不良となるケースがあります。
とくに、工場内に静電気が多い時期や、換気不良・老朽化した設備では顕著に発生します。
ピンホールは最終製品のバリア性を大きく損ない、顧客クレームの原因となりやすいです。
3. 外観不良(うねり・しわ・厚みムラ)
加工途中でコーティング層に厚みのムラや波打ちが生じたり、巻取時にシワが入ったりします。
代表的な原因は、押出機やダイの温度分布の偏り、ライン速度の変動、冷却ロールのコンディション不良、基材のセットミスです。
昭和から連綿と続く「現場の勘」だけに頼っていると、根本的な再発防止策が難しくなります。
4. 適合性不良(スペック逸脱)
樹脂層の厚みや接着強度、剥離強度がスペックを満たしていない場合や、後工程での熱収縮・変色・耐溶剤性の低下なども問題になります。
これは、原材料メーカー・基材サプライヤー・委託加工先との綿密な仕様共有・管理が甘いと発生しやすい不良です。
問題点への現場発想による解決策
伝統的な製造業の現場では「設備は古いが知恵は新しい」状態がよくあります。
長年の経験則や“勘”が頼りにされがちですが、現代はデータや工程管理の自動化も加速しています。
現場のプロ目線と新たなラテラルシンキング(横断的発想)を組み合わせた具体的な解決策を紹介します。
1. コロナ処理・前処理工程の可視化
密着性不良はとにかく前処理が肝心です。
設備投資が厳しい現場ではありますが、コロナ処理強度の自動測定器やリターナブルなチェックシートを最後の砦とするべきです。
基材の品番ごとの最適パラメータを累積データで蓄積し、“ヒューマンエラー集約表”などのアナログツールも活用して、作業者教育を実施します。
また、頻発する剥離試験の品質管理を抜き取りからインライン化することで、異常傾向を即発見できる体制を築きます。
2. 工場自動化/クリーン度アップ
昭和の設備を延命・修理しながら使う現場は多いですが、必要最低限のクリーンブース化、ライン全体防塵化で異物混入・ピンホールの発生を抑制できます。
静電気対策・加湿、日常清掃マニュアルの徹底、「異物混入速報システム」なども現場スタッフの意識を変革します。
3. 不良分析データベース化とフィードバック
コーティング・ラミネーションは「運転条件を最適化するトライ&エラーの蓄積」が成功の鍵です。
不良速報書を工程別・品目別に蓄積し、なぜ同じ品番でも時期やシフトで異なる不良が発生するのか―と現場MTGで水平展開します。
ヒートマップやグラフ化、マニュアル事故例集も作り、ナレッジとして次世代に伝承します。
4. サプライヤー・バイヤーとの連携強化
原材料メーカーや基材サプライヤーとの定期的な品質改善会議を設け、一方的な“指示型”ではなく「双方向コミュニケーション化」にします。
スペック厳守だけに縛られず、現場と現場がつながることで、狭間の責任転嫁文化を脱却します。
バイヤーとサプライヤーが同じチームの目線で歩み寄ることが、不良率の根絶につながります。
加工トラブルの実事例と解決の現場プロセス
私自身も工場長を務めた現場で、大小さまざまな加工不具合に直面してきました。
トラブル事例と、その現場発想による実践的な解決プロセスを紹介します。
事例1:基材ロットによる密着不良の発生
新規バリアフィルム案件で、基材のロットごとに剥離強度が大きく変動し、剥離不良クレームが多発。
【解決アプローチ】
– コロナ処理時の電子密度ログ値を数値化し、ロットごとにグラフ管理。
– 基材サプライヤーと合同で素材表面のSEM解析を実施。
– 作業者への現場教育だけでなく、基材入庫時の現物チェックリストを作成。
– 対策後、密着不良率は1/10以下に低減。
事例2:高速運転時のピンホール・異物混入
ライン速度アップによる生産効率向上を試みたものの、ピンホール不良件数が増加。
【解決アプローチ】
– クリーンブースの防塵フィルターを増設。
– 原材料の事前乾燥条件を厳密化し、乾燥機管理台帳を作成。
– 静電気除去装置の増設と、冬季の加湿管理ルール策定。
– 結果的に生産性を維持しつつ、不良発生率も低減。
事例3:ライン再起動時の厚みムラ・シワ発生
設備トラブルの復旧後、初期ロットに厚みムラやシワが多発。
【解決アプローチ】
– ライン再起動時のウォーミングアップマニュアルを再整備。
– ダイや冷却ロールの温度・湿度管理の見える化。
– 作業開始前に必ず“サンプルデータ採取→即判定”ワークフローを導入。
– チェックリスト管理と“異常出たら即ストップ”権限を現場の班長に付与。
これらの取り組みで、顧客の信頼回復と現場力の底上げを実現しました。
今後の業界動向と、バイヤー目線・サプライヤー目線からのひと工夫
押出コーティング・ラミネーション業界は、課題先進国である日本国内でこそ高度な品質・効率化ノウハウが培われてきました。
今後はEV、自動車の内外装材、食品ロス低減のためのハイバリアラミネートなど、新しい需要が次々と拡大しています。
一方、人口減少・高齢化といった人手不足の中で、如何に「昭和の伝統技」を形式知・自動化できるかが問われています。
バイヤーを志す方であれば、単なるコスト・スペック比較ではなく、「現場に寄り添いヒト・モノ・コトで一丸となって不良率を下げる」新たな関係構築が重要視されています。
サプライヤー側も、顧客工場のライン全体を俯瞰し、不良発生の“因果関係”を共に突き止め、問題発生時は根本原因まで議論できる関係を築いていくことが信頼につながります。
まとめ:現場力+新発想で業界を変える
押出コーティング・ラミネーション技術は、現場の経験知とトラブル対応力こそが最大の差別化要因です。
一方で、古き良き現場力の継承と、DX(デジタルトランスフォーメーション)や自動化技術の融合が不可避となっています。
製造業従事者、これからバイヤーを目指す方、サプライヤーとしてバイヤーとより良い関係を構築したい方。
みなさんが「現場×データ」「経験×仕組み化」「アナログ×デジタル」の新たな地平線を切り拓くことを心より願っています。
現場目線の“リアル”と、業界変革への“新しい発想”で、押出コーティング・ラミネーション加工の未来を一緒にアップデートしていきましょう。
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