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初めての製品化で信頼できるOEMを見極めるための現場チェックリスト

目次
はじめに:OEM選定で失敗しないための「現場の目利き力」
製造業において、新製品の開発や事業の多角化を進める中でOEM(Original Equipment Manufacturer)の活用はますます一般的となっています。
しかし、初めてOEMを利用する場合、「どの企業に生産を委託すればよいのか」「信頼できるパートナーかどうか」をどのように判断すべきか悩む方も多いのではないでしょうか。
現場で20年以上、調達・生産管理・品質管理・工場運営に従事してきた経験から言えるのは、「調達先の選定は8割が現場で決まる」ということです。
本記事では、初めての製品化で失敗を避けるための“現場目線でのOEM選定チェックリスト”を徹底解説します。
バイヤーを志す方も、サプライヤーとしてOEM企業に選ばれたい方も必見の内容です。
なぜ「現場チェック」が重要なのか?OEM選定の落とし穴
カタログやホームページだけではわからない「現実」
OEM候補の企業選びは、まずネットやカタログで企業情報を比較するところから始まります。
しかし、これらはあくまでも自社の“アピールポイント”を並べたものに過ぎません。
現実には、工場運営や生産の実態はかなり幅があります。
受注が急増したときの生産対応力や、製品トラブルが起きた際の現場力、情報管理体制など、冊子やサイトだけでは絶対に見抜けない部分がたくさんあるのです。
昭和のアナログ現場に潜むリスク
特に、ものづくり現場は今なお“昭和的”な価値観や、古い慣習が色濃く残っています。
「言われたものは一応作るが、それ以上はやらない」「帳票は手書き・FAX」「属人的な『勘』頼み」など、表では見えない“地雷”が潜んでいます。
現場を実際に見て、聞いて、体感することで初めて把握できるリスクも多いのです。
信頼できるOEMを見極めるための現場チェックリスト
ここからは、バイヤーの立場で実務的に「どこをどう確認すればよいか」を解説していきます。
このリストは実際に工場長や現場担当としてOEM先の監査・選定を行ってきた経験から体系化したものです。
1. 工場の“5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)”レベルを確認
5Sは製造現場の基本です。
床に工具やゴミが落ちていないか、部品置き場は表示が明確か、作業者の服装や靴は乱れていないか、などを見てください。
5Sが崩れている工場は、品質不良や工程の抜け・ムダの温床になっています。
また5Sが行き届いていれば、トラブル発生時の対応も早くなります。
2. 現場スタッフとのコミュニケーション能力の有無
経営陣や営業担当だけではなく、実際に手を動かしているオペレーター・班長・現場リーダーと話すことが重要です。
「この工程で一番大変なことは?」「改善活動で困ることは?」など現場目線で質問します。
明確な言葉が返ってくれば、その現場は情報共有と意識が高い証拠です。
逆に「聞かれても分からない」「すべて上司任せ」な現場は要注意です。
3. 設備管理・保守の体制と“日常点検”の実際
設備や機械の故障状況や、日々の点検ログを必ずチェックしましょう。
日常保全や月次点検が「形だけ」なのか、しっかりと記録され活かされているかが見えるポイントです。
ラインにトラブルが頻発していても“隠蔽”しがちな工場もあります。
「この半年でどんな不具合があり、どう対応したか」を尋ねて、実態を確認した方が安全です。
4. 品質管理体制と“トレーサビリティ”の実現度合い
不良品やクレームへの対応で、そのOEMの「本気度」が分かります。
「どの工程でどんな検査をしているか」「不良発生時にどのレベルまで遡って調査できるか」を書類+口頭でダブルチェックしましょう。
製品・原材料・部品がロットでしっかり管理されている現場は、万が一の時にも被害を最小限に食い止められます。
5. 生産計画・納期管理の見える化レベル
生産スケジューラーや、生産管理システム(ERP/MES)の導入有無だけを聞いて満足してはいけません。
「どのように日々計画を立て、現場でどう進捗フォローしているか」を、実際の工程表・ホワイトボード・ガントチャートで見せてもらいましょう。
“担当者の頭の中”だけで納期を組んでいる場合は要注意です。
これでは納期遅れリスクがつねに潜んでいます。
6. サプライチェーン管理の現実力
調達部門のヒアリングも不可欠です。
「主要原材料や部品をどこから買っており、代替サプライヤーの確保は?」を確認しましょう。
災害やサプライチェーン危機など、非常時の調達対応力もOEM選定では重要です。
特に“丸投げ型”のOEMは調達の脆弱性を抱えやすいので要注意です。
7. ドキュメント・品質証明の実在性と管理
ISOや認証取得を掲げていても、現場では運用されていないケースも少なくありません。
「過去一年間で発行した品質保証書や試験報告書」「顧客への仕様変更承認フロー」を実物で確認してください。
“紙だけ・名目だけの品質”に騙されないようにしましょう。
8. 技術・開発担当者の“考える力”と柔軟性
初回製品化には予期せぬ設計変更や、生産工程上の大小さまざまなトラブルがつきものです。
「なにかトラブルが起きた時、どう現場で吸収・改善してきたか」という生の経験談を聞いてください。
問題提起や改善提案の文化がある現場は、製品の品質・納期・コストすべてにおいて強いです。
9. コンプライアンス・セキュリティ意識
下請法・知的財産の扱い・情報セキュリティなど、サプライヤーとしての“以上義務”をどこまで意識しているかも重要です。
「顧客秘密や設計情報をどのように守っているか」「外部流出リスクにどう対策しているか」まで確認しておきましょう。
工場の出入り口管理やUSB封鎖など、見えやすい物理セキュリティもポイントです。
10. 経営層・現場リーダーの「顔」と「方針」
最後に、経営層や現場のリーダーと直接話してみてください。
組織として方向性や価値観が定まり、それがしっかりと現場まで浸透しているかどうかは、短時間の会話でも伝わってくるものです。
この信頼感が、長い取引の成否を大きく左右します。
業界アナログ文化に根付く“実践知”をどう活かすか
現場で聞き出す「暗黙知」こそ、選定のカギ
昭和から続く製造業界の現場には、データ化・文章化されていない“実践知”や“暗黙知”が蓄積されています。
実際には、管理システムだけでなく、「この人の経験と判断力」に依存している工程が多いのが実情です。
現場で具体的な失敗談、工夫、判断基準を直接“本人の言葉”で聞き出すこと。
これが、選定リスクを減らすための最重要ポイントとなります。
IT化は手段でしかない、重要なのは“人の文化”
DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる昨今ですが、現場がITツールを本当に活かせているかは別問題です。
紙帳票やエクセル運用が残っていても、情報連携や判断の速さを支える“人の文化”がある現場は頼りになります。
制度や道具より“現場力”を優先評価しましょう。
サプライヤー側も知っておきたい「選ばれるための現場改革」
サプライヤーの立場で、バイヤーに選ばれるには“現場でそのまま見せても恥ずかしくない体制”を準備することが求められます。
単なる「ISO取得」「最新設備導入」だけでは弱いのです。
現場ガイドツアーや、現場トークで“見せられる経験” “改善事例”を蓄積しておきましょう。
バイヤーの「ここを見ている」を逆手にとって、現場運営の透明化やナレッジ共有に取り組むことも、次の受注や長期取引への近道となります。
まとめ:現場百遍、OEM見極めは「現場力の直観」に帰結する
初めての製品化でOEM選定に失敗しないためには、「努力して作り込まれた現場力」と「現場で暮らす人々の考える力」を見抜くことが不可欠です。
本記事のチェックリストを使って、書類・システムだけでなく、“現場に根ざす本物の力”をしっかり見極めましょう。
バイヤーを目指す方は、現場監査やヒアリングの経験を積み上げることで“目利き力”を身につけ、より強いサプライチェーンを築くことができます。
サプライヤーの皆さんも、自社の現場改革やコミュニケーション力強化を図ることで、よりよい取引先に選ばれていくはずです。
「現場にしかない情報を自分の目で確かめる」――これこそが、OEMによる失敗・苦労を未然に防ぐ最強のリスクヘッジであることを、ぜひ心に刻んでください。
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