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全ねじボルトと半ねじボルトの選び方——JIS B 1009 のねじ部長さとせん断面・グリップ

この記事のポイント(結論先出し)
「全ねじ」は円筒部をもたないボルト、「半ねじ」は円筒部の径がほぼ呼び径に等しい呼び径ボルトのことで、JIS の用語では全ねじボルトと呼び径ボルトという[1]。半ねじのねじ部長さは製品規格で決まり、規格にない場合は JIS B 1009 の式(呼び長さ 125 mm 以下なら b=2d+6 など)で求め、円筒部が 0.5d 以下になる短いボルトは全ねじとして扱うのがよいとされている[2]。どちらを使うかは、締め付ける板の厚さ(グリップ)と、せん断面がどこを通るかで決まる。NASA の締結部品設計マニュアルは、ねじ部がせん断を受けないようにグリップの長さを選ぶのが標準的な設計の慣行だとしている[5]。ボルトのせん断強さは、せん断面が円筒部にあるかねじ部にあるかで、それぞれの断面積を使って評価する[6]。発注書には呼び長さだけでなく、必要ならねじ部長さか円筒部の長さを寸法で書く。
目次
「M12×50」と書くと、ねじがどこまで切られているかは決まっていない
購買の現場では、ボルトを「六角ボルト M12×50」「全ねじ M12×50」のように、呼び径と長さで手配することが多い。呼び長さが同じでも、頭の下までねじが切られた全ねじと、頭の側にねじのない円筒部が残る半ねじでは、締め付けたときにどこが力を受けるかが違う。半ねじなら、ねじ部がどこから始まるか(円筒部がどこまで続くか)で、ナットが締め付けられるか、板の合わせ目にねじ山がかかるかが決まる。
JIS B 0101(ねじ用語)は、ボルトを円筒部の種類で、呼び径ボルト(円筒部の径がほぼねじの呼び径に等しい)、全ねじボルト(円筒部をもたない)、有効径ボルトなどに分けている[1]。現場で「半ねじ」と呼ぶのは呼び径ボルトである。同じ用語の規格は、円筒部をもつおねじ部品では、円筒部と完全ねじ部の境界にある不完全ねじ部はねじ部に含めず、全ねじのおねじ部品では首下とねじ先の不完全ねじ部をねじ部に含める、と定義している[1]。この記事は工業製品の機械部品・装置の締結に使うボルトについて、全ねじと半ねじの選び方と、ねじ部長さの指定、受入での確認をまとめる。ボルトの形状・部品等級と呼び方の並びは六角ボルト・六角ナットの規格で、六角穴付きボルトのねじ部長さの決まり方は六角穴付きボルトの規格と指定で扱った。
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半ねじのねじ部長さは、どう決まっているか
製品規格にないときの式:JIS B 1009
おねじ部品の呼び長さとねじ部長さを定める JIS B 1009 は、軸線に直交する座面をもつボルトの呼び長さを、座面からねじ先の端面までの長さとしている[2]。ねじ部長さ b は、製品規格に規定されていない場合、次の式で求めるとしている[2]。
1. 呼び長さ 125 mm 以下
b=2d+6(d はねじの呼び径)
2. 呼び長さ 125 mm を超え 200 mm 以下
b=2d+12
3. 呼び長さ 200 mm を超える
b=2d+25
さらに、長さの短いボルトで計算の結果、円筒部(ねじがない部分)の長さが 0.5d 以下になる場合は、全ねじとして扱うのがよいとしている[2]。頭部をもつボルトのねじ部長さの許容差は、円筒部長さ lg とねじのない円筒部の長さ ls の許容限界寸法で表し、lg の最大は呼び長さから b を引いた値、ls の最小は lg の最大からピッチの 5 倍を引いた値とされている[2]。六角ボルトの JIS B 1180 も、寸法表の注で lg と ls の同じ式を示している[3]。
六角ボルトの JIS では、短いものは全ねじの表に移る
JIS B 1180 は、呼び径六角ボルトと全ねじ六角ボルトを別の種類として、それぞれ寸法表を持っている[3]。呼び径六角ボルトの寸法表ではねじ部長さ b は「参考」の欄にあり、規格として規定しているのは円筒部の長さ(ls・lg)のほうである。太い階段線の上側にある短い呼び長さは、全ねじ六角ボルトの表によるのがよいとされている。この点は六角ボルト・六角ナットの規格で扱った。附属書の六角ボルトでは、ねじ部長さと不完全ねじ部の長さの和が呼び長さ以上になる場合は全ねじとする、と定めている[3]。
数字で見る:M12 の例
次の表は、M12(並目・ピッチ 1.75 mm)の半ねじボルトについて、JIS B 1009 の式でねじ部長さと円筒部の長さを計算したものである[2]。最後の列は、円筒部の断面(直径 12 mm の円の面積)と、JIS B 1051 のねじの有効断面積 84.3 mm²[8]を並べたものである。
| 呼び長さ l mm | ねじ部長さ b(式による)mm | 円筒部長さ lg の最大 mm | ねじのない円筒部 ls の最小 mm | 断面積の比較 |
|---|---|---|---|---|
| 50 | 30(2×12+6) | 20 | 11.25 | 円筒部 約 113 mm²/ねじ部の有効断面積 84.3 mm²(円筒部の約 75%) |
| 80 | 30 | 50 | 41.25 | |
| 150 | 36(2×12+12) | 114 | 105.25 |
M12×50 の半ねじなら、座面からおよそ 11〜20 mm の範囲でねじが始まる。締め付ける板の合計が 15 mm なら、板の合わせ目がねじ部にかかるかどうかは、この範囲のどこでねじが始まるかで変わる。製品規格に表がある品は、表の値を優先する。
選び方 1:せん断を受ける継手では、ねじ部をせん断面に入れない
板どうしがずれようとする力(せん断)をボルトの軸で受ける継手では、せん断面がどこを通るかが強さを左右する。日本建築学会の論文(橋本・山田、1992 年)は、高力ボルトと中ボルトの二面せん断試験を行い、ボルトの終局せん断強度は、せん断面の位置に応じて、円筒部なら円筒部の公称断面積、ねじ部ならねじ部の公称有効断面積を使って求める式を示している[6]。同じ論文は、高力ボルトの首下長さの選び方と規格のねじ部寸法を整理すると、ナット側の鋼材が 12 mm 程度以下のときは、せん断面にねじ部が存在することがありうるとしている[6]。
NASA の締結部品設計マニュアル(1990 年)は、ねじ部がせん断を受けることがないようにグリップの長さを選ぶのが標準的な設計の慣行で、ちょうどのグリップ長さのボルトがないときは、ナットやボルト頭の下に入れる座金の厚さを変えて調整できる、としている[5]。表のとおり、M12 ならねじ部の有効断面積は円筒部の約 4 分の 3 しかない。せん断を受ける継手で全ねじを使うと、せん断面は必ずねじ部を通ることになる。
発注側としては、せん断を受ける継手のボルトについて、次のことを図面か部品表で決めてもらう。これは規格の要求ではなく、発注側の確認の提案である。
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1. 半ねじか全ねじか
せん断を受けるなら半ねじで、せん断面が円筒部にかかる長さを選ぶ。
2. グリップ(締め付ける板の合計の厚さ)
板厚と座金の枚数・厚さを決め、ねじの始まりがせん断面より外にあることを確かめる。
3. 置き換えの禁止
「同じ長さの全ねじしか在庫がない」という置き換えを、無断でさせない。
選び方 2:引張を受ける締結では、どこで壊れるかを考える
ナットの強度区分を定める JIS B 1052-2 は、ボルトとナットの結合体に引張力が作用したときの破壊の形を、ナットのねじ山のせん断破壊、ボルトの引張破断、ボルトのねじ山のせん断破壊の三つのうち、最も小さい荷重のものとして整理し、十分な伸び変形の後に遊びねじ部(ナットにかみ合わずに、頭とナットの間に出ているねじ部)でボルトが破断するのが、過大な負荷が作用した場合に意図する破壊モードだとしている[4]。ナットの高さと強度区分は、この考え方で決められている。半ねじのボルトでは、遊びねじ部が短いと、伸びて破断する部分が短くなる。
疲労については、神戸大学の福岡俊道が、疲労強度の向上を目的としたボルトとして、軸部を細くした伸びボルトを紹介している。伸びボルトは、用語の規格でも円筒部の一部または全部の径を細くして伸びやすくしたボルトと定義されている[1]。軸部を細くすると断面の平均応力が上がるので静的強度は下がるが、外力を受けたときの応力振幅を低く抑えることができる、としている[7]。同じ解説は、グリップ長さが大きくなるように締結部の形状を工夫すると、剛性の低い長いボルトを使えて、接合面の相対すべりが起きにくくなる、ともしている[7]。どちらも設計の手段で、購買が「全ねじのほうが丈夫」「半ねじのほうが強い」と一般論で置き換えてよいものではない。振動を受ける部位や疲労が問題になる部位のボルトは、ねじ部の長さまで設計の指定どおりに買う。
選び方 3:全ねじが合う場面
全ねじは、締め付ける厚さが部位によって違い、ナットの位置を長さ方向に調整したい場合や、短いボルトで円筒部がほとんど残らない場合に使われる。JIS B 1009 が円筒部 0.5d 以下の短いボルトを全ねじとして扱うのがよいとしているのも、短いボルトに中途半端な円筒部を残しても意味が小さいからである[2]。長い棒の全長にねじを切った寸切りボルトや植込みボルトは、それぞれ寸切りボルトの規格と発注、植込みボルトの指定で扱った。
全ねじにすると、ナットや相手のめねじにかかるのは常に完全ねじ部になり、ねじの始まりの位置を気にしなくてよい。その代わり、せん断面と遊びねじ部がすべてねじ部になる。せん断を受けない、引張だけの締結や、位置決めをピンなど別の部品でしている締結では、全ねじでも問題にならないことが多い。どちらでもよい部位なら、在庫と価格で決めてよいかを設計に一度確かめ、部品表に「全ねじ可」と書いてもらうと、手配の自由度が上がる。
半ねじで起きやすいもう一つの失敗:ねじが足りない
半ねじのボルトでは、グリップがねじのない円筒部より薄いと、ナットを締め込んでもナットがねじの終わり(円筒部との境)で止まり、締め付けられないまま「締まったように見える」ことがある。逆にグリップが厚すぎると、ナットの先に出るねじが足りず、ナットの中に不完全ねじ部やねじ先がかかったまま締め付けることになり、かみ合う完全ねじ山の数が減る。用語の規格は、完全ねじ部を山の頂と谷底の形状が両方とも完全な山形となっているねじ部、不完全ねじ部をねじの加工工具の面取り部や食い付き部などで作られた山形が不完全なねじ部と定義している[1]。図面でグリップを決めるときは、ナットが完全ねじ部だけにかかり、ナットの先にねじが余ることを確かめる。めねじにねじ込む場合も同じで、ねじ込む深さとねじ穴の深さの関係は同じ束のねじの下穴径とねじ穴の指定で扱う。
発注書に書くこと
半ねじを標準品で買う場合は、規格の呼び方の並びで書けばねじ部長さも規格の値になる。せん断面やグリップの関係で、ねじの始まりの位置が機能に効く部位では、次のように書き足す。
「呼び径六角ボルト-JIS B 1180-ISO 4014-M12×50-8.8-部品等級 A。ねじのない円筒部の長さ ls は 15 mm 以上、円筒部長さ lg は締め付ける板の合計厚さ(座金を含む)より短くする(図面による)。全ねじ品への置き換えは不可。」
規格の表と違うねじ部長さが要るときは、呼び方に続けてねじ部長さか円筒部の長さを寸法で書き添える。特注のねじ部長さは標準品より入手しにくく、ロットや納期にも影響するので、見積を取る段階で仕入先に伝える。全ねじでよい部位は「全ねじ六角ボルト-JIS B 1180-ISO 4017-M12×50-8.8-部品等級 A」のように種類から書く[3]。
受け入れるときに確かめること
1. 全ねじか半ねじか
現品を見れば分かる。包装の表示の種類と一致しているか。
2. ねじのない円筒部の長さ
寸法を指定した品は、ノギスで円筒部の長さを測る。ねじの始まりは不完全ねじ部を含む範囲なので、どこから測るかを図面の定義に合わせる。
3. 呼び長さ
座面からねじ先の端面までで測る[2]。座付きの頭やフランジ付きの頭では、座面の位置を間違えない。
4. 強度区分の表示
全ねじと半ねじで強度区分が違う品が混ざっていないか。強度区分の確かめ方はボルトの強度区分と規格の指定を参照してほしい。
よくある質問
全ねじと半ねじ、強いのはどちらですか
荷重のかかり方で変わる。せん断を受ける継手では、せん断面が円筒部にあれば円筒部の断面積で、ねじ部にあればねじ部の有効断面積で強さを評価する[6]ので、せん断面が円筒部にかかる半ねじのほうが有利である。引張では、強度区分の規格が最小引張荷重と保証荷重をねじの有効断面積から決めているとおり[8]、どちらもねじ部の断面で強さが決まる。疲労では、軸部を細くした伸びボルトのように、軸の形を変えて応力振幅を下げる方法もある[7]。一般論で決めず、締結部の条件で設計が選ぶ。
半ねじの在庫がないので、同じ長さの全ねじで代用してよいですか
せん断を受ける継手では、せん断面がねじ部に入ることになる。NASA のマニュアルは、ねじ部がせん断を受けないようにグリップを選ぶのが標準的な設計の慣行だとしている[5]。代用してよいかは設計に確かめ、部品表に「全ねじ可」とある部位だけ置き換える。
ねじ部長さを指定しないで発注すると、どうなりますか
製品規格の表の値、規格にない品なら JIS B 1009 の式の値で作られる[2]。呼び長さ 125 mm 以下なら b=2d+6 である。それでせん断面やナットのかかりが問題にならないかを、図面の段階で確かめておく。
まとめ
全ねじは円筒部をもたないボルト、半ねじは円筒部の径がほぼ呼び径の呼び径ボルトで、半ねじのねじ部長さは製品規格の表か、JIS B 1009 の式(125 mm 以下は b=2d+6 など)で決まる。円筒部が 0.5d 以下の短いボルトは全ねじとして扱うのがよい。選び方の軸は、グリップとせん断面の位置で、せん断を受ける継手ではねじ部をせん断面に入れないのが標準的な設計の慣行とされ、M12 ではねじ部の有効断面積は円筒部の約 75% しかない。引張では遊びねじ部での破断が意図された壊れ方で、疲労には軸の形で対策する設計もある。ねじの始まりが機能に効く部位では、発注書に円筒部の長さかねじ部長さを寸法で書き、全ねじへの置き換えを承認事項にする。
同じ束では、メートル細目ねじの指定、ねじの下穴径の指定、タッピンねじの指定、座金組込みねじ(セムス)の発注も扱う。
出典・参考資料
- JIS B 0101:2013 ねじ用語(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2013 年 4 月 22 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
- JIS B 1009:2014 締結用部品-おねじ部品-呼び長さ及びねじ部長さ(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2014 年 9 月 22 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
- JIS B 1180:2014 六角ボルト(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2014 年 4 月 21 日改正・2019 年 10 月 21 日確認)
- JIS B 1052-2:2025 締結用部品-炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-第2部:強度区分を規定したナット(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2025 年 1 月 20 日改正)
- Fastener Design Manual(NASA Reference Publication 1228)(Richard T. Barrett/NASA/1990 年 3 月)
- 橋本篤秀・山田丈富「高力ボルトの終局せん断強度」日本建築学会構造系論文報告集 440 号(日本建築学会/1992 年 10 月)
- 福岡俊道「ねじの疲労とゆるみの防止策」日本マリンエンジニアリング学会誌 58 巻 3 号(日本マリンエンジニアリング学会/2023 年)
- JIS B 1051:2014 炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-強度区分を規定したボルト,小ねじ及び植込みボルト-並目ねじ及び細目ねじ(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2014 年 9 月 22 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
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