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FEMの基礎と解析精度向上および強度設計・強度解析への活かし方

目次
はじめに:製造業現場が直面する設計・解析の課題
製造業の現場では、強度設計や品質確保が日々の重要課題です。
特に近年は、コストダウン、短納期化、SDGsへの対応など、さまざまな社会的要請に応えるべく、設計や開発段階での“正確な強度予測”がますます重要視されています。
そうした背景の中で、図面やCADだけでモノづくりを進めていく従来型の“昭和的アナログ手法”から、解析技術を基盤とした“デジタル設計”へのシフトが急速に進んでいます。
とりわけ、有限要素法(FEM:Finite Element Method)による構造解析は、設計品質向上・トライ&エラー工数削減・軽量化・原価削減などに不可欠な手段となりつつあります。
現場目線で言えば、FEM解析なしに設計したものは、いざ工場の試作で破損したり、過剰設計で不必要にコストがかかったりと、経営の根幹にまで影響が波及するのです。
本記事では、FEMの基礎・解析精度向上・強度設計への応用まで、現役プロの知見と業界トレンドを交えつつ解説します。
FEM(有限要素法)の基礎知識
FEM(有限要素法)とは何か
FEMは、機械や建造物などの構造物が外部から力を受けたときの「変形」「応力」「ひずみ」などを解析するための数学的手法です。
解析対象物を“無数の小さな要素(エレメント)”に分割し、それぞれの要素について方程式を立てて全体の挙動を計算していく、という考え方が核となっています。
1960年代に発展して以来、今や自動車、航空宇宙、精密機器、建築、半導体、電機といった幅広い業界で活用され、ソフトウェアも豊富に普及しています。
FEMの基本プロセス
FEM解析には、以下のようなプロセスがあります。
1. 解析モデルの作成(ジオメトリ作成、メッシュ分割)
2. 材料物性値の設定(ヤング率、ポアソン比など)
3. 境界条件・荷重条件の設定
4. 解析の実行(ソルバー処理)
5. 結果の評価(変形量、応力分布、安全率など)
パラメータ設定や前提条件を誤ると、現実から大きく外れた結果が出てしまうため、“FEMは魔法の箱”ではありません。
きちんとした工学的知識と現場感覚の両立が、分析力の精度を大きく左右します。
昭和的アナログからの脱却と、現場でのFEM活用の実態
なぜ未だにアナログな手法が根強いのか
現場レベルでは、「過去の経験値」「手計算」「試作実験」など、アナログな手法を愛用する設計者も根強く存在します。
理由は、FEM導入に際し
– 解析ノウハウが属人化している
– 適切な人材育成が追いついていない
– 現場実感となじみにくい、“机上の理論”と誤解されがち
といった障壁が残っているからです。
また、FEMソフトは“使えば安全で最適解を出せる”という誤解もありがちです。
現場の経験値とFEM解析とを融合し、強度設計に直結させるには現場との対話、業務プロセス全体の見直しが不可欠です。
FEMが現場にもたらす革新
一方で、DX(デジタル・トランスフォーメーション)推進や、設計予算の適正化、軽量化ノルマの増大といった業界トレンドは、FEMの活用加速を強力に後押ししています。
– 試作回数の大幅削減
– 現場での不具合発生率低減
– 部材・工法最適化による原価低減
これらを実現するため、設計部門・生産技術部門・品質部門が一体となってFEMノウハウを蓄積・共有する体制が構築され始めています。
FEM解析の精度を向上させるカギ
メッシュ設計の重要性
FEMの精度に最も影響するのは、モデルの「メッシュ分割」です。
メッシュとは、構造物を微小な要素(たとえば四面体や六面体)に分解する工程であり、粗すぎると実現象を再現できません。
逆に過度に細かくしすぎると計算コストが膨大になり、設計の“現場スピード”を損なってしまうジレンマも抱えます。
現場目線では、以下のポイントが肝心です。
– 応力集中しやすい部分は細かく、それ以外は粗くといった“使い分け”
– 解析目的(たとえば疲労解析・衝撃・線形/非線形…)に応じた最適化
– 実物との寸法公差・形状公差をきちんと反映する“ギャップのないCAD設計”
材料特性・境界条件・荷重条件の精度管理
現場ノウハウと乖離しがちなのが、材料特性(弾性率・降伏点など)や荷重条件(実環境下で実際にどんな応力がかかるのか)です。これを疎かにすると、いくらFEMモデルが綺麗でも解析結果は絵に描いた餅になりかねません。
– 他社材料スペックの流用でなく、自社で材料試験を行う
– 現場ヒアリングで“最大荷重”“偏荷重”などを収集し、現実的な荷重パターンに展開
など、“数字”だけでなく、“現場の感覚値”や“ヒヤリハット事例”もFEM前提に組み込むことが必要です。
FEM特有の落とし穴と対策例
FEM解析は以下のような誤用もしばしば発生します。
– 境界条件を現実より過剰に“固定”してしまい、応力過小評価になる
– 荷重分布を一カ所に集中させ現実よりも過大な応力値が出る
– 応力集中や接触問題(ボルト・リベット接合部など)を過小評価する
こうした現場乖離を減らすため、実験データによるフィードバックループ、エンジニア同士のピアレビュー(設計検討会・CAレビュー)も大切です。
FEMを強度設計・強度解析へ活かすノウハウ
設計初期段階でのFEM活用
従来は“形が決まってから解析”という後追い手法が主流でしたが、最近は“設計初期段階からのFEM利用”がトレンドです。
概念設計段階でラフなモデルでもよいのでFEMを掛けてみることで、以下のメリットが得られます。
– 強度・剛性の過大または過小設計リスクの早期発見
– トップダウン型の設計検証による、イノベーションの創出
– 軽量化、材料コストの大幅な圧縮
設計において“実測値ありき”から“シミュレーションドリブン設計”への転換は不可逆的トレンドとなっています。
設計・製造・品質部門の連携を強化する
FEMの解析結果(応力分布、安全率分布、変形量など)は、設計担当者だけのものではありません。
工場現場では、たとえば
– 組立て順序や治具設計
– 品質保証検査項目設計
などにも直結する情報です。
設計部門と現場(生産・品質保証部門)が“FEMで共有できる知見”を持つことで、不具合防止策の高度化や生産歩留りの安定につながります。
また、解析情報を設計図面や製造指示書に“見える化”する(AR/VR利用含む)ことで、現場作業者の理解度も一段上がります。
強度保証プロセスにおけるFEMと実験の融合
FEM=万能ではありません。
特に破壊・疲労・溶接部など、理論計算では“読みきれない”ところを現場感覚で補う必要があります。
– FEM解析結果で一次フィルタをかける
– 重要部・新規構造は実機強度試験でダブルチェックする
– 結果に差異がある場合は“現場”に降りて原因解明・条件修正する
このような“現場⇔シミュレーションのPDCAサイクル”こそが、強度保証の土台を揺るぎないものにします。
業界トレンドとFEMの未来展望
AI・クラウド・IoT連携によるFEM進化
最新の業界動向として、FEMデータのビッグデータ化・AI解析連携も現実味を帯びています。
設計変更履歴や過去の解析結果をAIが分析し、“最適な初期条件のサジェスト”や“最速メッシュ生成”などが可能になりつつあります。
また、工場のIoTセンサデータ(稼働履歴や応力ログ)とFEMモデルを連動させて、リアルタイム健全性監視や予防保全に活かす動きも加速しています。
中小製造業こそFEM活用が鍵に
「こんなのは大手メーカーの話、うちは手作業と勘と経験が大事」というアナログ志向の中小現場も、クラウドCAEやレンタルFEM解析サービスの普及で状況が一変しています。
小ロット・多品種・高付加価値型モノづくりの現場ほど、
– FMEによる短期試作/開発
– リエンジニアリングや逆解析による技術伝承
といった新たなアプローチがコストダウンや付加価値向上に直結しています。
まとめ:FEMで拓く強度設計と現場の未来
FEM解析技術は、現場に根ざした強度設計の“新たなスタンダード”となりつつあります。
確かに現場にはアナログの知恵も重要であり、使いこなすには一定の時間とノウハウが求められます。
しかし、FEMを武器とすることで
– 品質不良リスク
– 無駄なコスト
– 開発サイクルの長期化
を大きく減らし、“生産性の高い現場”に変革できるのです。
設計・調達バイヤー・サプライヤーのいずれにとってもFEM活用の本質は、「現場の声」「理論的裏付け」「デジタルデータ」の三位一体を繋ぐことにあります。
これからの製造業の強度設計—それは、アナログの経験と最先端解析を“現場で融合”させる現場主導型イノベーションです。
FEMリテラシーを高め、失敗と学びを繰り返しながら、ぜひ“現場目線でのFEM活用”を推進してください。
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