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*2025年6月30日現在のGoogle Analyticsのデータより

投稿日:2025年6月10日

車載デバイスにおける信頼性向上技術とそのポイント

はじめに:車載デバイスの信頼性とは何か?

自動車産業は、安全と快適さを両立させながら進化し続けています。
近年では、コネクテッド化、自動運転技術の進展にともない、車載デバイスの役割が飛躍的に重要になっています。
一方で、こうした高度な機能を司る電子制御ユニット(ECU)や各種センサー類は、常に厳しい環境下に置かれ、長期の安定稼働が求められます。
ここで問われるのが「信頼性」です。

信頼性は、不具合や故障なく所定の機能を定められた期間中発揮し続ける能力を指します。
これが担保できなければ、安全性やブランドイメージに直結する大きな損失となります。
本記事では、現場管理者や調達担当、バイヤーの視点も交えて、「車載デバイスにおける信頼性向上技術とそのポイント」を深掘りします。
時代遅れなアナログ的発想にとどまらず、現代のトレンド・課題に対応した実践的なノウハウを展開します。

車載デバイスが置かれる過酷な環境と信頼性要求

温度・振動・湿度への対策

自動車に搭載されるデバイスは、-40℃の極寒から+125℃を超える炎天下まで、短時間で激しく変化する温度環境にさらされます。
また、道路からの衝撃や微細な振動、夏冬で大きく変動する湿度も大敵です。
このため、基板の実装技術(リフロー、はんだ付けプロセス)、筐体設計、シーリング材選定など、各工程で「壊れにくい」設計が必須となります。

EMC(電磁両立性)とノイズ耐性

車内のECUや各種センサーが複雑に連携する現在、電磁ノイズによる誤作動や相互干渉のリスクが増しています。
EMC規格への準拠はもちろん、プリント基板の層構造設計や、部品配置の工夫、適切なグラウンド処理によるノイズ低減対策が求められます。

長寿命化への要請

消費者が求める自動車の耐用年数は、今や10年・20万kmが当たり前です。
その間、一度も不具合を起こさない「ゼロディフェクト」は理想ですが、現実には膨大なリスク管理が必要となります。
そのため、不良の「芽」を現場レベルでゼロに近づける設計、部品選定、量産段階での予防的品質管理が要となります。

信頼性向上のための具体的な技術と現場の工夫

FMEA・FTAによるリスク設計

Failure Mode and Effect Analysis(故障モード・影響解析:FMEA)は、設計段階で起こりうるあらゆる故障パターンとその影響を「点」と「線」で可視化し、対策優先順位を絞り込みます。
最近ではAIやIoTによるシミュレーションも進化していますが、現場の「経験値」を最大限活かし、カスタマイズしたFMEAを構築すると効果的です。

Failure Tree Analysis(故障の木解析:FTA)は、不具合が発生した時に「なぜ起きたのか」を因果関係まで遡るアプローチです。
これにより、表面的なリワーク(再作業)ではなく、構造的な設計・工程改善への道筋が立ちます。

信頼性評価の徹底

評価試験は信頼性設計の「最終関門」といえます。
温度サイクル試験、振動・衝撃試験、通電耐久、湿度試験、サーマルショックなど、多角的な条件下で製品サンプルを徹底的に「いじめる」ことが求められます。
また、不適合が見つかった場合には、原因解析→設計や部品仕様へのフィードバック→再試験と高速PDCA(計画・実行・検証・改善)を回す現場力も重要です。

調達(バイヤー)の視点:サプライヤーとの協調開発

最新の信頼性向上技術は、「部品調達」から始まっています。
たとえばチップ抵抗やコンデンサといった電子部品一つでも、ESD耐性、発熱分布、樹脂の耐薬品性など、要求特性は年々厳しくなっています。

バイヤーには、単なるコスト削減ではなく「技術と品質で選ぶ目利き力」が要求されます。
優秀なサプライヤーと長期的な協力体制を築き、初期段階からVE(Value Engineering)提案や、共同試作・評価まで関与することが不良ゼロ・長寿命化につながります。

現場で起こりがちな「とりあえず合格した部品を使う」「仕様書の記載だけで合否を判断する」といった昭和型の調達手法は、もはや通用しません。

生産現場での自動化・見える化技術

従来の人手頼みの製造ラインでは、どうしても「作業者ごとの差」が品質バラツキの温床となります。
近年の工場自動化(FA化)は、車載デバイス製造の現場にも深く浸透してきました。

代表的なのは、はんだ付け自動検査(AOI)、レーザー計測による組立位置管理、画像AIによる外観検査などです。
また、IoTセンサーで設備稼働状況や製品トレース情報をリアルタイム収集→異常時は即座にアラーム表示・ライン停止と「未然防止」のレベルが上がってきています。

見える化とデータドリブンの品質改善が、現場の「勘と経験」をデジタルで補完する時代になりました。

アナログの現場力をデジタルで昇華する

「現場で鍛えられた作業者のカンがすごい」「調達も口約束でカバーできる」——こうした昭和型の美徳は確かに現場を守ってきました。
しかし、現代のクレーム発生時には秒単位でトレーサビリティ証跡、データ提出が一般的です。
データ・自動化とアナログ力の融合が新時代の製造業には不可欠です。

まだまだ「ペーパー文化」や「ブラックボックス工程」が色濃く残る企業も少なくありません。
そこには、現場目線ならではの「納期の概念」「工作機械の癖」「作業者の気質」といったアナログ思考が土台となっています。
これを否定するのではなく、信頼性向上技術の進化とともに丁寧にアップデートしていくことが、組織の底力・競争力につながります。

信頼性向上技術の最新動向

材料・部品の新技術

半導体や車載用電子部品では、高温耐性や低消費電力、高集積化といったアプローチが進行中です。
材料面では、セラミック基板の適用領域拡大、耐熱はんだやプリント基板用樹脂の高性能化も加速しています。

また、ワイヤレスデバイスに不可欠なノイズシールド技術や、自己診断機能を持つ「スマートIC」も信頼性向上を後押ししています。

サイバーセキュリティも信頼性の一部へ

コネクテッドカーやOTA(Over The Air)アップデートの普及により、ソフトウェア的なリスクも無視できません。
不正アクセスやハッキングに対するサイバーセキュリティ対策が、今やハードウェアの「壊れにくさ」と並ぶ信頼性要件となっています。
現場でのUSB端子管理や、ソフトファームの改ざん検出技術も現場レベルでの監視が不可欠です。

まとめ:バイヤー・サプライヤー・現場がともに磨く信頼性

車載デバイスの信頼性向上は、単なる技術イノベーションやコストダウンだけでは達成できません。
要求仕様の本質を理解し、不良のリスクに先回りしながら「現場」「設計」「調達」が三位一体となることが不可欠です。

バイヤーは単なる目利き役ではなく、技術と品質のパートナーとして価値を共創する存在です。
サプライヤーも“売って終わり”ではなく、自らの技術力・情報発信力で顧客に「安心」を届ける必要があります。
現場管理者・作業者は、デジタル化や自動化技術をむしろ武器にし、自分たちの経験値と組み合わせる「進化の現場力」を身につけましょう。

これからの製造業では、「不具合ゼロ」「長寿命」を実現する信頼性向上の現場ノウハウこそが、最大の競争力となります。
技術・人・データ、そのすべてを組み合わせて、新しい地平線を共に切り拓いていきましょう。

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