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材料力学および有限要素法の基礎と強度設計への応用

目次
はじめに
材料力学や有限要素法(FEM)という言葉は、製造業に身を置く方々なら一度は耳にしたことがあるでしょう。
これらは設計・開発、品質保証から生産技術、生産管理、そして調達購買に至るまで、業界の多層に深く関係しています。
しかし、昭和的な経験則や勘が色濃く残る現場では、理論が現実的な業務にどう活きているのか、十分に理解されていないことも多いです。
本記事では、「材料力学および有限要素法の基礎と強度設計への応用」を現場目線で掘り下げ、実践的なヒントも交えてお伝えします。
材料力学とは何か
材料力学の基本概念
材料力学は、部品や構造物に外部から力(荷重)が加わったとき、材料がどのように変形し、どんな内部応力が生まれるのかを定量的に解き明かす学問です。
製造業においては、「設計通りにモノが壊れずに使える」ことを保証するための理論的土台となります。
材料力学の主な考え方は、以下の4つに大別できます。
– 荷重(力やモーメント)
– 応力(材料内部に生じる力の密度)
– ひずみ(材料の変形量)
– 変形・破壊の基準(降伏、破断など)
応力とひずみの関係
材料力学の最も基本的な公式が「フックの法則」です。
これは「応力=ヤング率×ひずみ」で表され、材料内の応力と変形の関係を直線的に表現します。
実際には材料ごとに特性が大きく異なり、金属、樹脂、ゴムなど性質を理解したうえで使い分ける必要があります。
なぜ材料力学が製造業で不可欠か
製品開発や設備設計の現場では、安全性確保やコストダウンのため、部品の最適な寸法・形状提案が欠かせません。
設計値の根拠が曖昧だと、余計なコストや重量増加、逆に危険な強度不足を招いてしまいます。
材料力学の知識があれば、「なぜこの板厚なのか」「なぜこのボルトサイズなのか」に明確な説明ができます。
経営者・調達担当に対する価格交渉やコスト削減提案にも絶大な説得力を持たせられるのです。
有限要素法(FEM)の基礎
有限要素法とは何か
有限要素法(FEM:Finite Element Method)は、複雑な構造物の応力・変形・熱伝導などを数値解析で求めるための強力な手法です。
材料力学の基礎方程式を、微小な「要素」に分割し、その集合体として解析します。
昔であれば、著名な梁(はり)や板、軸など単純形状だけ手計算していましたが、設計の高度化・複雑化とともに、FEMが主流となっています。
代表的な活用分野は以下のとおりです。
– 自動車や機械の部品強度設計
– 金型や治具などの熱変形予測
– 衝撃・落下テストのシミュレーション
– 構造最適化(Topology Optimization)
FEMの実務プロセス
FEM解析は、次のような流れで行います。
1. 形状モデル(CADデータなど)の準備
2. 要素分割(メッシュの作成)
3. 材料定数の設定(ヤング率、ポアソン比など)
4. 境界条件・荷重条件の定義(固定や荷重の入力)
5. 解析実行と結果評価(変形・応力の分布など)
現場経験上、最重要なのは「3」「4」です。
材料定数や荷重・固定条件の「決め方」が間違っていると、いくら解析しても机上の空論になりかねません。
ここに、職人や熟練技術者の「勘所」をFEMに落とし込めるかが、業界のデジタル化成否の分水嶺です。
FEMが現場力を強くする理由
従来は「相応の安全率」で分厚く作り込むのが当たり前でした。
ただ、人件費・材料費・物流コストの高騰や環境配慮設計が求められる現代では、薄肉軽量で「壊れないギリギリ」を見極める必要があります。
FEMなら、現物試作や破壊試験なしで解析・検証でき、時間とコストを大幅に削減できます。
不具合品の発生を未然に防ぐリスク管理にもつながります。
強度設計への実践的な応用
強度設計の実務ステップ
現場で強度設計を進めるうえでの基本プロセスは、のようになります。
– 使用環境・荷重条件の明確化(温度、繰返し荷重、衝撃、腐食など)
– 材料選定(コスト、加工性、入手性、サステナビリティ)
– 強度計算(材料力学+FEM活用)
– 安全率設定(業界標準や自社基準に基づく)
– 試作・量産後のフィードバック反映(現場との連携)
勘や慣例だけに頼るのではなく、材料力学やFEMによる数値データで「なぜそうしたか」を説明可能にします。
これはバイヤー側から要求仕様・見積依頼(RFQ)を受けたとき、サプライヤーが自信を持って回答したり、価格や構造の妥当性を訴求するときも有効な武器になります。
調達部門/バイヤーの視点
調達購買部門では、サプライヤーからの提案や見積根拠の妥当性を見極める力が求められます。
材料力学やFEMに裏付けされたエビデンス(解析レポートや試験成績書)があれば、現場との技術的な会話もスムーズになり、特命発注や単純なコストダウンだけでなく、WIN-WINの関係構築が可能です。
また、使用材料の過剰スペックや安全率の過大上乗せを適切に是正し、コスト削減や納期短縮にも繋がります。
サプライヤーの立ち位置と強み創出
サプライヤー視点では、単なる「作業請負」から一歩抜け出し、「解析にも強い」「強度設計で差別化できる」という付加価値が大きな武器となります。
多くの企業がカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーなど新時代の潮流に直面する中で、材料力学・FEM活用の蓄積は明確なビジネスチャンスです。
自社から能動的に「強度計算書」「FEMレポート」を提出し、QCD(品質・コスト・納期)改善提案できれば、取引先からの信頼は飛躍的に高まります。
昭和的アナログ現場からの脱却
現場に根付く「勘と経験」へのリスペクト
私自身、現場で20年以上、匠の技、技能伝承の現場に立ち会ってきました。
たしかに熟練者の「一目で分かる」という直感は侮れません。
しかし、曖昧な根拠だけで設備投資や先行調達を判断する時代は終わりを迎えつつあります。
定量的な材料力学・FEMを導入することで、若手技術者や多国籍の現場スタッフも含めた「共通言語」を作ることが、現場力の持続的な進化に直結します。
教育・デジタル化推進の壁と打開策
現場でFEM活用が進まない理由は、以下のような声に集約されます。
「難しそう」「費用がかかる」「誰も使える人がいない」
この壁を崩すカギは、「100点の解析」ではなく「60点でも現場に役立つ解析」の文化醸成です。
たとえば、無料のFEMソフトやクラウドサービス、教育コンテンツの積極活用が有効です。
また、ベテランの勘所を「解析条件の設定ノウハウ」として可視化し、ナレッジデータベース化することも大切です。
業界トレンド:設計~調達~現場一体の強度保証
近年は、上流の設計段階から調達購買、現場の生産管理・品質保証まで、部門横断的なFEM・材料力学データの共有が進みつつあります。
「設計部門のブラックボックス」を排し、一次・二次・三次サプライヤーも含めたQCD一体管理が競争力のカギです。
これにより設計変更リードタイムの短縮、不良削減、納入品質の安定化など、昭和的(属人・分断型)体質からの脱却が加速します。
まとめ:製造業発展のために今できること
材料力学と有限要素法は、けっして特殊な理系分野だけのものではありません。
現場で「なぜそうするのか」「何が根拠か」を問う場面でこそ本領を発揮します。
調達購買・生産管理・サプライヤー、どの立場でも、「数値」と「解析」を武器にできる人材がいま強く求められています。
自社の明日の競争力を創るため、FEMや材料力学の活用に一歩踏み出しましょう。
そして、設計から仕入・現場生産までの部門連携を強化し、業界のアナログな慣習を「見える化」「データドリブン」に進化させる挑戦を始めてみてください。
この一歩が、現場で培った知恵と最先端の技術が融合する、日本のものづくりの新たな夜明けを切り拓くはずです。
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