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投稿日:2025年6月11日

設計ミス防止のための検図のポイントと効果的な手法・事例

はじめに ― 設計ミスがもたらす影響と検図の重要性

製造業の現場において、設計図面のミスは想像以上に大きな波紋を呼びます。

部品の加工から組立、品質保証、さらには現場作業の効率やコストにも直結し、一つの小さなエラーが数百、数千万円規模の損失や納期遅延につながることもしばしばです。

だからこそ「検図」(けんず)――すなわち設計図面のチェック工程は、製造業において絶対に外せない重要な行為です。

しかし、昭和の時代から日本の製造業に根付く“アナログなやり方”が今も一部では色濃く残り、デジタル化や自動検図ツールの導入が進まない現場も珍しくありません。

本記事では、実際の現場感覚を大切にしつつ、設計ミス防止につながる検図のポイント、効果的な手法、さらには失敗事例や成功事例から得られた教訓を、余すところなくお伝えします。

バイヤーを目指す方、工場にお勤めの方、サプライヤーとしてバイヤーの視点を知りたい方に、日々の業務に役立てていただける実践的な内容です。

検図とは何か ― その基本的な意味と目的

検図の定義と目的

検図とは、作成した図面(設計図)が各種要件を満たしているか、誤りや抜け漏れがないかを第三者または複数人で確認する工程を指します。

主な目的は、以下の4点です。

・設計ミスの早期発見
・ミスによる後工程(生産、調達、組立て等)への影響防止
・コストや納期の超過の回避
・製品品質の安定と顧客信頼の確保

検図が重要な理由

設計ミスは、設計者が図面作成時に自ら気付けない「思い込み」「勘違い」「ヒューマンエラー」が主な原因です。

さらに、昨今は製品の高機能化、サプライチェーンの多様化、取引先からの品質要求の高度化により、設計品質がますます重視されています。

図面のエラーが後戻りしづらい工程(例えば金型作成後、量産出荷後など)で発覚すれば、多大なコストと時間を要する手戻りが発生します。

そのため、検図による早期修正こそが、ひいては全体のコスト低減や納期遵守、顧客満足度の向上へとつながるのです。

実践的な検図のポイント

1. ダブルチェック体制の徹底

設計者ご本人だけでなく、必ず第三者がダブルチェックを実施してください。

特に大手メーカーでは部門横断的な「設計レビュー会議」を月次や週次で行うほか、チェックリストを用いて複数人での確認を徹底しています。

複眼的な視点でみることで、設計者自身が陥りがちな“思い込み”バイアスを排除できます。

2. 「本質」を確認するチェックリストの作成

形式的なチェックだけでは不十分です。

例えば、以下のような本質的な観点の項目を必ず押さえましょう。

・部品同士の干渉チェック(クリアランスや突出寸法の確認)
・部品点数やアセンブリ順序といった組立性
・材料・表面処理・コーティングの指定ミスがないか
・調達品(購入品)におけるメーカー指定や型番誤り
・ユニット標準品との整合性
・公差指示が現場要求や顧客要求に合致しているか
・現場作業者(加工・組立)の目線で「つくりやすい」図面か
・帳票や他部門(生産管理・購買)への必要情報が明記されているか

これらは「設計する側」ではなく、「使う側・作る側」の視点も忘れずチェックすることがポイントです。

3. 現場(加工・組立・検査担当者)の意見をヒアリングする

設計図面は設計者だけの“自己満足”になりがちです。

しかし実際には現場の加工担当者、購買担当者、検査員の方々こそが図面の使用者です。

試作前の段階で現場の人たちの「組み立てしにくい」「難しい」「加工機に入らない」といった生の声を吸い上げ、設計段階にフィードバックをかけることがミスの防止に大きく貢献します。

4. デジタルツールや3D CADの活用

図面検証にITを活用することも有効です。

2D CAD図面だけでなく、3D CADモデルを用いることで、組立てや部品間の干渉チェックに威力を発揮します。

また近年では、「自動干渉チェック」や「寸法誤差検出」などの機能を搭載した専用ソフトも登場しています。

アナログな現場でも、最低限PDF上でコメント挿入や差分抽出機能などは積極的に導入したいところです。

5. コミュニケーション、属人化防止、教育

検図工程を“誰か一人のノウハウや勘”に依存させるのは危険です。

若手・ベテラン混合チームでのレビューや、チェックリストのマニュアル化、検図教育の定期的実施も、持続的なミス防止体制には不可欠です。

学んだこと・気づきを必ず現場にフィードバックし、部署横断的なナレッジとして蓄積・共有していきましょう。

具体的な失敗事例・成功事例から学ぶ

失敗事例:型番指定ミスによる発注エラー

ある大手電機メーカーで、設計図上の機械部品の型番指定を誤り、発注担当が間違った部品を大量購入してしまうという事態が発生しました。

原因は、図面の「部品表記号」に一文字だけ誤記があり、設計部と購買部でチェックする際、誰も気付かなかったことです。

結果として量産直前に判明し、納期遅延と数千万円の損失が発生しました。

この事例から学べるのは、設計者・購買者双方でのダブルチェックと、部品リスト・型番表記の整合性チェックの大切さです。

また、ITを活用した型番DBとの突合せ一括チェックなども有効策となります。

成功事例:現場フィードバックの仕組化でミス激減

自動車部品メーカーA社では、設計図面の検図を設計部門だけの専売特許とせず、必ず現場(加工・組立)担当者がレビュー会議に参加します。

経験豊富な現場担当者が「この穴の位置ではボルトを締められない」「この加工は治具が必要」など、実務的な指摘を行い、未然に設計ミスを発見できる体制を作っています。

その結果、量産移行時のトラブルが年20件から2件に激減し、コスト削減にも大きく貢献しました。

現場の知恵と設計者のアタマの“間を埋める”コミュニケーションこそがミス低減につながる好事例です。

昭和型アナログからの脱却 ― それでも残る業界課題と今後の展望

なぜアナログ型検図から脱却できないのか?

古くから続く製造現場では、紙図面に赤ペンを入れて確認するという昭和型のやり方が今なお根強いです。

その背景には「ITツールの導入コスト」「現場の高齢化によるITリテラシー懸念」「過去の慣習から抜け出せない閉鎖的な文化」など、日本独特の事情があります。

また、現場主義を重んじるあまり、形式的なチェックになりがちで本質的なミスの予防策までは浸透しきれない現実もあります。

現代のトレンド:デジタル化と標準化の推進

しかし、脱アナログ化はもはや避けられない流れです。

デジタル図面、クラウドベースの情報共有、AIによる自動エラー検出、部品リスト管理の自動化、紙レス化など、ツール導入を進める会社が急増してきています。

複数拠点や外部サプライヤーとの図面共有も、セキュリティを重視しつつ効率よく進められるように進化しています。

また、業界横断の標準化(例:ISO等)対応も求められるようになってきました。

求められる人材像とサプライヤーの立ち位置

今後ますます重視されるのが、設計・生産・調達・現場作業まで“すべての工程を俯瞰できる人材”です。

バイヤーを目指す方なら、検図のポイントを知ることでサプライヤー提出図面の評価や、早期の問題発見力を高められます。

サプライヤーであっても「バイヤーがどこを重視して見ているか」「検図落ちで発生する隠れたコストやリスク」への深い理解が信頼構築や競合優位性につながるでしょう。

まとめ ― 検図は製造業の“品質ゲート”

設計ミスは完全にゼロにはできません。

しかし、検図工程のレベルを上げることで、後工程の手戻りやコスト・納期リスクは大きく減らせます。

ダブルチェック、現場視点の導入、デジタルツールの活用、教育・ノウハウの標準化。

これらの要素を組み合わせ、「本質を見抜く検図」にぜひチャレンジしてみてください。

常に時代の変化を取り入れながら、現場感覚を忘れずに――それが、昭和から続くアナログな現場でも活躍できる、強い現場力の秘密です。

検図の意義をあらためて見直し、製造業の現場に革新と安心をもたらしましょう。

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